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第12話 どうやら俺は"迷惑系"だったようです(呆然)
でかいモグラだった。
体長は3メートルくらいか。前足の爪がシャベルみたいにでかい。目は……あるのかないのか分からない。つぶらな瞳が申し訳程度についている。
そしてなにやら、プンスカしているようなのだ。
「ブモモモモモモモッ!!ブモッ!ブモモモッ!!」
モグラが吠えている。……威嚇?いや、抗議
とにかく気が荒い。理由は皆目見当もつかないのだが…
「おい、なんか怒ってないか?あれ」
「ブチギレてますね~」
「…なんて言ってるんだ?」
「分かりませんよ~」
リーシャは相変わらずにこにこしている。タフなヤツだ。
オルファは弓を構えて警戒。ダリオたちも道具を構える。
「ブモモモッ!ブモッ、ブヌモモモォ!」
モグラがさらに吠える……埒が明かない。
すると、ヴォル吉くんがモグラの方に向かって「グルル」と鳴いた。
「ヴォル吉くん、分かるのか?」
俺の肩に乗っていたヴォル吉くんは、誇らしげな顔をして
「グルル!グルグル…ググルルッ!!」
「ブモッ?」モグラが反応した。
ヴォル吉くんが「グルルル」と返す。
今度はモグラが「ブモ、ブモモモモッ」
意思疎通ができてるみたいだ。
しばらくして、ヴォル吉くんが俺の方を向いて、前足でジェスチャーを始めた。
まず、耳を押さえる仕草。
次に、頭を抱える。
最後に、地面を指差して「ドカーン」みたいな動き…
「……耳が痛い?頭が痛い?地面がドカーン?」
ヴォル吉くんが頷く。
「あ、あぁ~…もしかして——」
心当たりがあった。
粉塵爆発実験だ。
——話は数日前に遡る。
ドラゴン戦で「粉塵爆発」の威力を実感した俺は、これをもっと効率よく使えないかと考えていた。
で、毎日のように実験をしていたのである。
温泉教会から少し離れた荒野や山。
俺はパチンコで分身を飛ばしては、狂ったように小麦粉をばら撒いて火をつけまくっていた。
ドッガァァァン!!
爆発。地面が抉れる。岩が砕ける。
「おお!今のいい感じだなァ!!」
分身たちと一緒に、ひたすら爆撃を繰り返した。
小麦粉の量、火種の位置、風向き。色々試して、最適な運用を探っていたのだ。
これが日課になっていた。
毎日、朝昼夕に3回。興が乗った日には夜通しやっていたものだ。
ドガァァン!! ドッガァァァン!!
領地の発展、そして防衛には必要な実験。
そう思っていた。
…リーシャも嬉々として応援してくれてたし。
「………」
俺は頭を抱える。
「やっぱり、うるさかった…?」
モグラが「ブモモモモッ!!」と吠える。
俺が見てもわかる。明らかに「そうだよ!!」という感じだ。
「眠れない、と?」
モグラが頷く。
「毎日毎日なにしてんだ!って?」
モグラが頷く。
なるほど。地下に住んでるモグラからしたら、毎日地面が揺れて爆音が響くのは、たまったもんじゃないわけだ。
「……悪かった」
モグラが「ブモッ?」と首を傾げる。謝られるとは思ってなかったらしい。
「でも、ちょっと見てくれ。これには理由があるんだ!」
俺は分身を出した。
ボンッ、ボンッ、ボンッ。
5人の俺が、小麦粉の袋を持って散開する。
「いいか、見てろよ」
「ブモ?」
モグラが身を乗り出す。
分身が小麦粉をばら撒く。空中に白い粉が舞う。
俺はオルファに目配せした。
「了解!」
オルファが火の矢を飛ばし————
ドッガァァァン!!
爆発。熱風。土煙。
「モブブブブブッ!?」
モグラが飛び退いた。
固まったまま動かない。完全にドン引きしている。
そして——モグラの視線が、俺の肩の上で、なぜか得意げに胸を張っているヴォル吉くんに移った。
「ブ、ブモモモ……?」
モグラが明らかに動揺している。
——なるほど。うるさい奴らを黙らせようと襲撃しにきたら、ドラゴンがいて、しかもとんでもない爆発を見せられた。で、戦意喪失したってワケか。
「……ブモォ…」
モグラは何か言いたげな顔を残して、ズズズ……と地面に潜っていった。
「……なんだったんだ?」
俺は首を傾げた。
「とりあえず、"敵"ではなかったみたいね」
オルファが弓を下ろした。
「なんかどっと疲れたし…温泉にでも入るかー!」
「賛成~!早くいきましょう!ユーヤ様~」
リーシャが入って教会に向かった。
——3日後。
例のモグラがまた現れた。
今度は1匹ではない。
後ろに、小さなモグラがゾロゾロとついてきている。20匹……いや、30匹以上はいる。眷属的な何かだろうか。
「ブモモ……」
でかいモグラが、俺の前で頭を下げた。
というより、これはひれ伏した感じだろうか。
「……どうしたんだ?これ」
ヴォル吉くんが通訳を始める。
身振り手振りで——「お願いします」「やめてください」「なんでもします」みたいなことを伝えてくる。
「……う~ん?」
つまり、こういうことらしい。
あの爆発を毎日やられたら、マジで眠れない。
地下で暮らしてる身としては死活問題。
だから、どうか勘弁してほしい。
そのためなら、なんでもする。
「なんでもする、ねえ……」
なんだか俺がひどく悪者みたいじゃあないか!
と、憤慨してみても何も変わらないので真面目に考えよう。
正直、実験は続けたい。でも、こいつらの生活を脅かすのは、さすがに申し訳ない。
あ、そうだ!この辺は土が死んでるんだっな…モグラならひょっとして…
「じゃあ、こうしよう!」
モグラに提案する。
「実験は1日1時間だけにする。その代わり、お前らはこの地の開拓を手伝ってくれ」
モグラが「ブモッ?」と首を傾げる。
「お前ら、見た感じ、土属性得意系だろ?畑作りたいんだけど、この辺じゃ難しくてな…なんとかできないか?」
すかさず、ヴォル吉くんが通訳する。
モグラが仲間たちと顔を見合わせて——頷いた。
「ブモモッ」
どうやら、できるみたいだな…さすがモグラだぜ…!
「…ふっ。決まりだな」
俺はモグラに手を差し出した。
モグラが前足を伸ばしてきて——握手。
…ふかふかしてる。意外と気持ちいいな、この手。
その日から、モグラたちは畑を耕し始めた。
——そして、俺たちは驚愕した。
モグラたちが地面に潜ると、土が変わっていくのだ。
灰色だった土が、黒く、柔らかくなっていく。
「ブモモモモモモ」
でかいモグラが興奮気味に説明している。ヴォル吉くんの通訳によると——
土に生気を与えるのが得意で、元々この辺の土を管理してたらしい。
やるじゃんモグラ!
ヴォル吉くんがモグラに何か話しかけた。
そして俺の方を向いて、また身振り手振りを始める。
「なんだ…?」
自分を指差す。軽く火を吐く。——これは「火」と言いだいのだろう。
ヴォル吉くんの言葉も大分わかってきたぞ。
そして牙と鱗、翼を見せつける。
おそらく「竜」を伝えたいのか…?
次に、でかモグラの方を指差す。そして土をぶちまける。
???
最後に先ほどの「竜」のジェスチャー。
「え、つまりそういうことか?」
俺は目を丸くした。
「ドラゴン、なの?」
ヴォル吉くんが頷く。モグラも頷く。
「こいつが…土竜…!?」
——マジか。
どう見てもモグラなんだが。いや、言われてみれば、明らかにでかいし…モグラって「土竜」って書くしな…
で、どうやらヴォル吉くんの方は「火竜」らしい。まぁ火を吹いてたし納得だ。
「じゃあ、他にも色々なドラゴンがいるのか?水、雷、風、光とか……」
二頭が首を傾げた。「分からないけど、可能性はある」といった感じだ。
え~、そんなこと言われちゃ探したくなっちゃうじゃん。
「ていうか、お前」俺はモグラを見た。
「ここに住むなら、その体でかすぎて邪魔だな……同じ"竜"なんだし、お前も小さくなれないの?」
ヴォル吉くんが通訳しモグラが「ブモリ」と頷く。
そして——光った。
次の瞬間、3メートル級の体が——ヴォルと同じ、子犬サイズになっていた。
「できるんですね~」
「……器用ね」
リーシャとオルファが感心している。
小さくなったモグラは、ふかふかで、つぶらな瞳で、正直めちゃくちゃ可愛い。
「よっし、お前にも名前をつけるぞ~!」
俺はモグラを抱き上げた。おもったより軽い。
「土龍だし、土系がいいよなぁ~……究極大地迅雷龍でどうだ?!」
「ダサいし、毎度迅雷要素はどこからくるわけ?」
半分諦めた顔のオルファに雑に却下された。
「じゃあ『テラ沢さん』でいいんじゃないでしょうか~」
リーシャのネーミングセンスも大概だと思うんですけど…
「あ、そうだ。こいつにも首輪つくってやらないとな」
「そうですね~!それの用意もかねて、ちょっと街に出てきてもいいですか~?ドラゴンの鱗を売って、色々調達してきたいんですけど~」
「別にいいけど……問題起こさないでね?」
「もちろんです~!」
リーシャがにこにこしながら去っていった。
……大丈夫かな、あいつ。
————————————————————
翌日の朝。
ダリオが血相を変えて走ってきた。
「お、お頭ァ!!大変っす!!畑が!!」
「畑?なにかあったか?」
「芽が出てるんすよ!!」
「……は?」
俺たちは畑に駆けつけた。
そこには——緑の芽が、ずらっと並んでいた。
「……えっ」
昨日、テラ沢さんたちが耕したばかりの畑。
試しに撒いた種が——たった一晩で芽を出している。
「嘘だろ……」
「こんなの初めてっす……種撒いて次の日に芽が出るなんて……」
ダリオが涙ぐんでいる。
テラ沢さんが地面から顔を出した。
「ブモッ」
得意げな顔をしている。
「お前……こんなことができたのか?!」
「ブモモッ」
当然だろ、と言いたげだ。
どうやら、テラ沢さんたちモグラは——土に生気を与えるだけじゃなく、作物の成長を促進までできるらしい。
普通の畑より数倍早く育つとのことだ。
…ぶっ壊れキャラじゃん!!
「さすが、お頭のペットっすね、ハンパねェっす……!」
「…いや…ほんとにな」
————————————————————
——3日後。
リーシャが帰ってきた。
「ただいま戻りました~!」
リーシャの後ろに、荷馬車が5台。
馬が10頭に牛まで6頭連れている。
なんなんだこの大所帯。
「ユーヤ様~!馬と牛と馬車と~、生活に必要なものをいろいろ調達してきました~!」
馬車の荷台を見ると、武器や工具をはじめとした鉄製品に、布や銀食器、農作物の苗に小麦粉、香辛料、食糧など——ありとあらゆるものが積まれている。
そしてなにより…「酒」!!
それも麦酒と葡萄酒を大樽で5つずつだ!
今日のリーシャは最高すぎるぞ。ここに来てから一番の活躍かもしれない…!
「ちょっと待って。こんな量、どうやって買ったの?」
オルファがなにやら険しい表情で見つめる。
「ドラゴンの鱗を売りました~」
リーシャが金貨の袋をじゃらりと見せた。
「30枚くらい売ってきました。これがお釣りです~」
「……30枚?」
オルファの顔が曇る。
「ドラゴンの鱗は確かに高価だけど…普通は出所を聞かれるし、本物ならその辺りの店程度では金を用意できないはずだけど?」
へ~…そうなんだ。
「えへへ~、ちょっとしたコネがありまして~」
リーシャがにこにこ笑う。
「ありがとうリーシャ。これでグラウエルの開拓も一気に進むよ!」
「いえいえ~!ユーヤ様のためですから~!早く城下町、作りましょ~!」
リーシャが嬉しそうに跳ねる。
今さら別にいいのだが、改めてリーシャって何者なんだろう。
まさか、どこかの貴族とかお偉いさんじゃないだろうな…
体長は3メートルくらいか。前足の爪がシャベルみたいにでかい。目は……あるのかないのか分からない。つぶらな瞳が申し訳程度についている。
そしてなにやら、プンスカしているようなのだ。
「ブモモモモモモモッ!!ブモッ!ブモモモッ!!」
モグラが吠えている。……威嚇?いや、抗議
とにかく気が荒い。理由は皆目見当もつかないのだが…
「おい、なんか怒ってないか?あれ」
「ブチギレてますね~」
「…なんて言ってるんだ?」
「分かりませんよ~」
リーシャは相変わらずにこにこしている。タフなヤツだ。
オルファは弓を構えて警戒。ダリオたちも道具を構える。
「ブモモモッ!ブモッ、ブヌモモモォ!」
モグラがさらに吠える……埒が明かない。
すると、ヴォル吉くんがモグラの方に向かって「グルル」と鳴いた。
「ヴォル吉くん、分かるのか?」
俺の肩に乗っていたヴォル吉くんは、誇らしげな顔をして
「グルル!グルグル…ググルルッ!!」
「ブモッ?」モグラが反応した。
ヴォル吉くんが「グルルル」と返す。
今度はモグラが「ブモ、ブモモモモッ」
意思疎通ができてるみたいだ。
しばらくして、ヴォル吉くんが俺の方を向いて、前足でジェスチャーを始めた。
まず、耳を押さえる仕草。
次に、頭を抱える。
最後に、地面を指差して「ドカーン」みたいな動き…
「……耳が痛い?頭が痛い?地面がドカーン?」
ヴォル吉くんが頷く。
「あ、あぁ~…もしかして——」
心当たりがあった。
粉塵爆発実験だ。
——話は数日前に遡る。
ドラゴン戦で「粉塵爆発」の威力を実感した俺は、これをもっと効率よく使えないかと考えていた。
で、毎日のように実験をしていたのである。
温泉教会から少し離れた荒野や山。
俺はパチンコで分身を飛ばしては、狂ったように小麦粉をばら撒いて火をつけまくっていた。
ドッガァァァン!!
爆発。地面が抉れる。岩が砕ける。
「おお!今のいい感じだなァ!!」
分身たちと一緒に、ひたすら爆撃を繰り返した。
小麦粉の量、火種の位置、風向き。色々試して、最適な運用を探っていたのだ。
これが日課になっていた。
毎日、朝昼夕に3回。興が乗った日には夜通しやっていたものだ。
ドガァァン!! ドッガァァァン!!
領地の発展、そして防衛には必要な実験。
そう思っていた。
…リーシャも嬉々として応援してくれてたし。
「………」
俺は頭を抱える。
「やっぱり、うるさかった…?」
モグラが「ブモモモモッ!!」と吠える。
俺が見てもわかる。明らかに「そうだよ!!」という感じだ。
「眠れない、と?」
モグラが頷く。
「毎日毎日なにしてんだ!って?」
モグラが頷く。
なるほど。地下に住んでるモグラからしたら、毎日地面が揺れて爆音が響くのは、たまったもんじゃないわけだ。
「……悪かった」
モグラが「ブモッ?」と首を傾げる。謝られるとは思ってなかったらしい。
「でも、ちょっと見てくれ。これには理由があるんだ!」
俺は分身を出した。
ボンッ、ボンッ、ボンッ。
5人の俺が、小麦粉の袋を持って散開する。
「いいか、見てろよ」
「ブモ?」
モグラが身を乗り出す。
分身が小麦粉をばら撒く。空中に白い粉が舞う。
俺はオルファに目配せした。
「了解!」
オルファが火の矢を飛ばし————
ドッガァァァン!!
爆発。熱風。土煙。
「モブブブブブッ!?」
モグラが飛び退いた。
固まったまま動かない。完全にドン引きしている。
そして——モグラの視線が、俺の肩の上で、なぜか得意げに胸を張っているヴォル吉くんに移った。
「ブ、ブモモモ……?」
モグラが明らかに動揺している。
——なるほど。うるさい奴らを黙らせようと襲撃しにきたら、ドラゴンがいて、しかもとんでもない爆発を見せられた。で、戦意喪失したってワケか。
「……ブモォ…」
モグラは何か言いたげな顔を残して、ズズズ……と地面に潜っていった。
「……なんだったんだ?」
俺は首を傾げた。
「とりあえず、"敵"ではなかったみたいね」
オルファが弓を下ろした。
「なんかどっと疲れたし…温泉にでも入るかー!」
「賛成~!早くいきましょう!ユーヤ様~」
リーシャが入って教会に向かった。
——3日後。
例のモグラがまた現れた。
今度は1匹ではない。
後ろに、小さなモグラがゾロゾロとついてきている。20匹……いや、30匹以上はいる。眷属的な何かだろうか。
「ブモモ……」
でかいモグラが、俺の前で頭を下げた。
というより、これはひれ伏した感じだろうか。
「……どうしたんだ?これ」
ヴォル吉くんが通訳を始める。
身振り手振りで——「お願いします」「やめてください」「なんでもします」みたいなことを伝えてくる。
「……う~ん?」
つまり、こういうことらしい。
あの爆発を毎日やられたら、マジで眠れない。
地下で暮らしてる身としては死活問題。
だから、どうか勘弁してほしい。
そのためなら、なんでもする。
「なんでもする、ねえ……」
なんだか俺がひどく悪者みたいじゃあないか!
と、憤慨してみても何も変わらないので真面目に考えよう。
正直、実験は続けたい。でも、こいつらの生活を脅かすのは、さすがに申し訳ない。
あ、そうだ!この辺は土が死んでるんだっな…モグラならひょっとして…
「じゃあ、こうしよう!」
モグラに提案する。
「実験は1日1時間だけにする。その代わり、お前らはこの地の開拓を手伝ってくれ」
モグラが「ブモッ?」と首を傾げる。
「お前ら、見た感じ、土属性得意系だろ?畑作りたいんだけど、この辺じゃ難しくてな…なんとかできないか?」
すかさず、ヴォル吉くんが通訳する。
モグラが仲間たちと顔を見合わせて——頷いた。
「ブモモッ」
どうやら、できるみたいだな…さすがモグラだぜ…!
「…ふっ。決まりだな」
俺はモグラに手を差し出した。
モグラが前足を伸ばしてきて——握手。
…ふかふかしてる。意外と気持ちいいな、この手。
その日から、モグラたちは畑を耕し始めた。
——そして、俺たちは驚愕した。
モグラたちが地面に潜ると、土が変わっていくのだ。
灰色だった土が、黒く、柔らかくなっていく。
「ブモモモモモモ」
でかいモグラが興奮気味に説明している。ヴォル吉くんの通訳によると——
土に生気を与えるのが得意で、元々この辺の土を管理してたらしい。
やるじゃんモグラ!
ヴォル吉くんがモグラに何か話しかけた。
そして俺の方を向いて、また身振り手振りを始める。
「なんだ…?」
自分を指差す。軽く火を吐く。——これは「火」と言いだいのだろう。
ヴォル吉くんの言葉も大分わかってきたぞ。
そして牙と鱗、翼を見せつける。
おそらく「竜」を伝えたいのか…?
次に、でかモグラの方を指差す。そして土をぶちまける。
???
最後に先ほどの「竜」のジェスチャー。
「え、つまりそういうことか?」
俺は目を丸くした。
「ドラゴン、なの?」
ヴォル吉くんが頷く。モグラも頷く。
「こいつが…土竜…!?」
——マジか。
どう見てもモグラなんだが。いや、言われてみれば、明らかにでかいし…モグラって「土竜」って書くしな…
で、どうやらヴォル吉くんの方は「火竜」らしい。まぁ火を吹いてたし納得だ。
「じゃあ、他にも色々なドラゴンがいるのか?水、雷、風、光とか……」
二頭が首を傾げた。「分からないけど、可能性はある」といった感じだ。
え~、そんなこと言われちゃ探したくなっちゃうじゃん。
「ていうか、お前」俺はモグラを見た。
「ここに住むなら、その体でかすぎて邪魔だな……同じ"竜"なんだし、お前も小さくなれないの?」
ヴォル吉くんが通訳しモグラが「ブモリ」と頷く。
そして——光った。
次の瞬間、3メートル級の体が——ヴォルと同じ、子犬サイズになっていた。
「できるんですね~」
「……器用ね」
リーシャとオルファが感心している。
小さくなったモグラは、ふかふかで、つぶらな瞳で、正直めちゃくちゃ可愛い。
「よっし、お前にも名前をつけるぞ~!」
俺はモグラを抱き上げた。おもったより軽い。
「土龍だし、土系がいいよなぁ~……究極大地迅雷龍でどうだ?!」
「ダサいし、毎度迅雷要素はどこからくるわけ?」
半分諦めた顔のオルファに雑に却下された。
「じゃあ『テラ沢さん』でいいんじゃないでしょうか~」
リーシャのネーミングセンスも大概だと思うんですけど…
「あ、そうだ。こいつにも首輪つくってやらないとな」
「そうですね~!それの用意もかねて、ちょっと街に出てきてもいいですか~?ドラゴンの鱗を売って、色々調達してきたいんですけど~」
「別にいいけど……問題起こさないでね?」
「もちろんです~!」
リーシャがにこにこしながら去っていった。
……大丈夫かな、あいつ。
————————————————————
翌日の朝。
ダリオが血相を変えて走ってきた。
「お、お頭ァ!!大変っす!!畑が!!」
「畑?なにかあったか?」
「芽が出てるんすよ!!」
「……は?」
俺たちは畑に駆けつけた。
そこには——緑の芽が、ずらっと並んでいた。
「……えっ」
昨日、テラ沢さんたちが耕したばかりの畑。
試しに撒いた種が——たった一晩で芽を出している。
「嘘だろ……」
「こんなの初めてっす……種撒いて次の日に芽が出るなんて……」
ダリオが涙ぐんでいる。
テラ沢さんが地面から顔を出した。
「ブモッ」
得意げな顔をしている。
「お前……こんなことができたのか?!」
「ブモモッ」
当然だろ、と言いたげだ。
どうやら、テラ沢さんたちモグラは——土に生気を与えるだけじゃなく、作物の成長を促進までできるらしい。
普通の畑より数倍早く育つとのことだ。
…ぶっ壊れキャラじゃん!!
「さすが、お頭のペットっすね、ハンパねェっす……!」
「…いや…ほんとにな」
————————————————————
——3日後。
リーシャが帰ってきた。
「ただいま戻りました~!」
リーシャの後ろに、荷馬車が5台。
馬が10頭に牛まで6頭連れている。
なんなんだこの大所帯。
「ユーヤ様~!馬と牛と馬車と~、生活に必要なものをいろいろ調達してきました~!」
馬車の荷台を見ると、武器や工具をはじめとした鉄製品に、布や銀食器、農作物の苗に小麦粉、香辛料、食糧など——ありとあらゆるものが積まれている。
そしてなにより…「酒」!!
それも麦酒と葡萄酒を大樽で5つずつだ!
今日のリーシャは最高すぎるぞ。ここに来てから一番の活躍かもしれない…!
「ちょっと待って。こんな量、どうやって買ったの?」
オルファがなにやら険しい表情で見つめる。
「ドラゴンの鱗を売りました~」
リーシャが金貨の袋をじゃらりと見せた。
「30枚くらい売ってきました。これがお釣りです~」
「……30枚?」
オルファの顔が曇る。
「ドラゴンの鱗は確かに高価だけど…普通は出所を聞かれるし、本物ならその辺りの店程度では金を用意できないはずだけど?」
へ~…そうなんだ。
「えへへ~、ちょっとしたコネがありまして~」
リーシャがにこにこ笑う。
「ありがとうリーシャ。これでグラウエルの開拓も一気に進むよ!」
「いえいえ~!ユーヤ様のためですから~!早く城下町、作りましょ~!」
リーシャが嬉しそうに跳ねる。
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まさか、どこかの貴族とかお偉いさんじゃないだろうな…
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シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。