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➈殺人鬼
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【陰キャグループ】花江祐介の母、花江みなこは苛立っていた。
「岩本さんと葛森さんが来ない……」
保護者グループに呼びかけをしたところ、驚く事にほとんどのお宅の子供たちが帰っていないとのこと。その保護者の方々は皆、参加すると連絡を寄越してきた。
大体が母親で、一組だけ夫婦で来ている者もいる。秋柏岡広場には現在、十五名もの保護者が集まっていた。
各々、《巡回》に出る教師達に抵抗する為、刃物や木刀を武装していて、ちょっとした暴力集団のようになっている。
来ていない二人が来れば、連絡の取れた方の全員揃うのだが。
みなこは、未着の二人の事を考える。
確かその二人は、家がお隣さんであり、この公場からは遠いお宅だった。
まだ《巡回》が始まっていないとはいえ、もう外には危険が潜んでいるかもしれない。
一緒に来るために、連絡を取っていたりして遅れているのか。
しかし、それにしても遅い。
この公園まで遠いとは言え、かかっても十五分程度で来られるはず。
彼女等から『すぐ、向かいます』と連絡を受け取ってから丁度十五分が経とうとしている。
「花江さん!その二人いつ来るのですか?もう探しに行ってもいいですか!」
保護者の誰かが騒ぎだした。
「待ってください。もう少しで来るはずです。そうしましたら、効率よく手分けして探すようにしましょう!《巡回》が始まったら連絡取れなくなりますから」
「あっ!来た!」
誰かが気付き、みなこは振り返ると、遠目に二名の人影が見えた。
待たされた何人かが文句を言おうと身を乗り出したが、不満の声は飲み込まれた。
その人影の様子がおかしかったのだ。
岩本こずえと、【陽キャグループ】葛森尚也の母である葛森智子が来たのかと思ったが、そこに現れたのは智子と、見知らぬ男だった。
さらに智子の方は、どういうわけか号泣している。よく見ると、失禁までしていた。
そして、謝罪の言葉を口にした。
「うっ、ぐ……ご、ごめんなさい」
「葛森さん!どうしたんですか?大丈夫ですか?」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
みなこが駆け寄り、事情を聞こうとするも、智子は呪いのように謝罪を繰り返すのみである。
「大丈夫ですから落ち着いて、何かあったのですか?」
みなこは、彼女と共に来た男にようやく目を移した。美しい顔立ちの彼は、号泣する智子を平然とした表情で見ている。
「彼方はどなたですか?葛森さんのご家族の方ですか?それとも岩本さん……?」
突如、得体の知れない不安がみなこを襲った。
もしも、両方とも無関係だったらこの人は何者だろう?何でこんなに落ち着いている?岩本さんはどうしたのだろう?伊達さんと何かあった?わからない。この人は……この人は?………この人
みなこが考えを巡らせていたその時。
「ああっ!」
既に集まっていた保護者のうちの誰かが、男を見て叫んだ。
そして、智子が最後の謝罪を口にした。
「ごめんなさいぃィいぃぃぃィィぃ!」
その悲痛の声を発した口から、叫びと共に血が噴き出した。
智子の吐いた血がみなこの顔面に吹きかかり、彼女の視界は真っ赤になった。
辺りが騒がしい。耳を劈く(つんざく)ような悲鳴が沸き起こっている。
みなこは、なんとか状況を把握しようと、赤黒い視界を必死に視た。
彼女が視たのは、迫りくる男だった。
「岩本さんと葛森さんが来ない……」
保護者グループに呼びかけをしたところ、驚く事にほとんどのお宅の子供たちが帰っていないとのこと。その保護者の方々は皆、参加すると連絡を寄越してきた。
大体が母親で、一組だけ夫婦で来ている者もいる。秋柏岡広場には現在、十五名もの保護者が集まっていた。
各々、《巡回》に出る教師達に抵抗する為、刃物や木刀を武装していて、ちょっとした暴力集団のようになっている。
来ていない二人が来れば、連絡の取れた方の全員揃うのだが。
みなこは、未着の二人の事を考える。
確かその二人は、家がお隣さんであり、この公場からは遠いお宅だった。
まだ《巡回》が始まっていないとはいえ、もう外には危険が潜んでいるかもしれない。
一緒に来るために、連絡を取っていたりして遅れているのか。
しかし、それにしても遅い。
この公園まで遠いとは言え、かかっても十五分程度で来られるはず。
彼女等から『すぐ、向かいます』と連絡を受け取ってから丁度十五分が経とうとしている。
「花江さん!その二人いつ来るのですか?もう探しに行ってもいいですか!」
保護者の誰かが騒ぎだした。
「待ってください。もう少しで来るはずです。そうしましたら、効率よく手分けして探すようにしましょう!《巡回》が始まったら連絡取れなくなりますから」
「あっ!来た!」
誰かが気付き、みなこは振り返ると、遠目に二名の人影が見えた。
待たされた何人かが文句を言おうと身を乗り出したが、不満の声は飲み込まれた。
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さらに智子の方は、どういうわけか号泣している。よく見ると、失禁までしていた。
そして、謝罪の言葉を口にした。
「うっ、ぐ……ご、ごめんなさい」
「葛森さん!どうしたんですか?大丈夫ですか?」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
みなこが駆け寄り、事情を聞こうとするも、智子は呪いのように謝罪を繰り返すのみである。
「大丈夫ですから落ち着いて、何かあったのですか?」
みなこは、彼女と共に来た男にようやく目を移した。美しい顔立ちの彼は、号泣する智子を平然とした表情で見ている。
「彼方はどなたですか?葛森さんのご家族の方ですか?それとも岩本さん……?」
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みなこが考えを巡らせていたその時。
「ああっ!」
既に集まっていた保護者のうちの誰かが、男を見て叫んだ。
そして、智子が最後の謝罪を口にした。
「ごめんなさいぃィいぃぃぃィィぃ!」
その悲痛の声を発した口から、叫びと共に血が噴き出した。
智子の吐いた血がみなこの顔面に吹きかかり、彼女の視界は真っ赤になった。
辺りが騒がしい。耳を劈く(つんざく)ような悲鳴が沸き起こっている。
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