【完結】聖人君子で有名な王子に脅されている件

綿貫 ぶろみ

文字の大きさ
24 / 52
一章

呼び捨て

しおりを挟む
 カゴいっぱいに入ったサクランボを王子は嬉しそうに眺めていた。俺は「取り過ぎですよ!そんなに使えないです!」なんて、水を差すこと言えなかった。

 サクランボ・・・チェリーパイ、コンポート・・・ジルさんにもおすそ分けするとして・・・・それでも消費しきれるかわらかないな・・・


 取り過ぎたサクランボの調理法を考えながら俺とカイル王子は下山した。

「何作るんですか?僕買い占めますよ!」

「店頭に並べる分がなくなるので買い占めないでください。王子の分は王子の分で作りますので」

「本当ですか!ありがとうございます!」

 王子はそう言うといそいそとお財布の中身を確認し始めた。確認しなくても有り余るほど持っているはずなのに。


 作ったチェリーパイを口いっぱいに放り込む。甘くて少し酸っぱい味が口いっぱいに広がる。我ながらなかなかに美味しくできたと思う。

「そういえば!王子って呼ぶの辞めませんか?呼びすて・・・とか?」

「いや、さすがにダメじゃないですか?ほら、立場とか色々ありますし」

 俺がそう言うと王子はムッとした。チェリーパイを一口口頬張る。

「ほういうこといいまふけど!あんはほうひうのはひやなんじゃなひんでふか?」

「何言ってるのか全然わからないです」

 王子は胸をドンドン叩いて飲み込んだ。別に慌てて食べなくてもスイーツは逃げないのに・・・

「そういうこと言いますけど!ダンはそういうのが嫌なんじゃないんですか?」

「そういうのってなんですか?」

「だから、アルファだから~とか、王族だから~てきなのですよ」

「・・・あぁ、まぁ、そうですね」

 まさか、バレているとは思わなかった。顔に出しているつもりは無かったが、嫌悪しているような雰囲気でもあるのだろうか。

「ね!呼んでくださいよ!親しくなったら呼び捨てにするものですよ!ね?」

「親しくなった人がそもそもあまりいないので、分からないんですが」

「もう!固いですね!1回だけでもいいからよんでくださいよ!」

「・・・か、かい」

「すみ・・・ません」

 ベストなタイミングでドアが開いた。思わず心の中でガッツポーズをする。

「はい!」

 お客さんが入って来たので仕方なく席を立つ。あくまで、仕方なくだ。カイル王子は聞こえないと思ったのか舌打ちをした。

「甘い・・・匂いが・・・するんだ・・・やっぱりここだった・・・」

 ドアの前に立っていたのはつい数時間前にあった不思議な空気の男性だった。

「ふふっ・・・やっぱりここにいた」

 男性はへらっと笑った。幼げのある可愛らしい笑みだったが、言ってる内容が怖い。

「何か食べていかれますか?」

「・・・うん」

 ゆっくり頷くと辺りを見渡し、カイル王子の隣の席に着いた。一方のカイル王子はと言うと俺が逃げたことを根に持っているのか、じっとこちらを睨んでいた。

 悪いとは思っているが、男性には助けてくれたサービスとしてパンとサクランボのジャムを出した。男性は「あり・・・がとう」と言うとパンを食べ始めた。

 よくこの場所を見つけれたと感心してしまう。通りからは離れているし・・・俺たちが通った道を使えばすぐに着くけど・・・俺の脳内を跡をつけていたという考えがよぎり背筋がぞっとした。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

追放された味見係、【神の舌】で冷徹皇帝と聖獣の胃袋を掴んで溺愛される

水凪しおん
BL
「無能」と罵られ、故郷の王宮を追放された「味見係」のリオ。 行き場を失った彼を拾ったのは、氷のような美貌を持つ隣国の冷徹皇帝アレスだった。 「聖獣に何か食わせろ」という無理難題に対し、リオが作ったのは素朴な野菜スープ。しかしその料理には、食べた者を癒やす伝説のスキル【神の舌】の力が宿っていた! 聖獣を元気にし、皇帝の凍てついた心をも溶かしていくリオ。 「君は俺の宝だ」 冷酷だと思われていた皇帝からの、不器用で真っ直ぐな溺愛。 これは、捨てられた料理人が温かいご飯で居場所を作り、最高にハッピーになる物語。

悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。 原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。 「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」 破滅フラグを回避するため、俺は決意した。 主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。 しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。 「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」 いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!? 全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ! 小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!

追放オメガ聖帝の幸せな結婚〜クールなスパダリ騎士に拾われて溺愛されるまで〜

あきたいぬ大好き(深凪雪花)
BL
ノルディーナ王国の聖帝サーナは、教皇のありもしない嘘のせいで聖宮から追放されてしまう。 行く当てがないサーナが国境に向かうと、そこで隣国ルミルカ王国の騎士であるムーシュと出会う。ムーシュから諸事情により偽装結婚を提案されて、サーナは期限付きの偽装結婚ならばよいと承諾し、一時的に保護してもらうことに。 異国暮らしに慣れていく中で、やがてムーシュから溺愛されるようになり……?

沈黙のΩ、冷血宰相に拾われて溺愛されました

ホワイトヴァイス
BL
声を奪われ、競売にかけられたΩ《オメガ》――ノア。 落札したのは、冷血と呼ばれる宰相アルマン・ヴァルナティス。 “番契約”を偽装した取引から始まったふたりの関係は、 やがて国を揺るがす“真実”へとつながっていく。 喋れぬΩと、血を信じない宰相。 ただの契約だったはずの絆が、 互いの傷と孤独を少しずつ融かしていく。 だが、王都の夜に潜む副宰相ルシアンの影が、 彼らの「嘘」を暴こうとしていた――。 沈黙が祈りに変わるとき、 血の支配が終わりを告げ、 “番”の意味が書き換えられる。 冷血宰相×沈黙のΩ、 偽りの契約から始まる救済と革命の物語。

【本編完結】最強魔導騎士は、騎士団長に頭を撫でて欲しい【番外編あり】

ゆらり
BL
 帝国の侵略から国境を守る、レゲムアーク皇国第一魔導騎士団の駐屯地に派遣された、新人の魔導騎士ネウクレア。  着任当日に勃発した砲撃防衛戦で、彼は敵の砲撃部隊を単独で壊滅に追いやった。  凄まじい能力を持つ彼を部下として迎え入れた騎士団長セディウスは、研究機関育ちであるネウクレアの独特な言動に戸惑いながらも、全身鎧の下に隠された……どこか歪ではあるが、純粋無垢であどけない姿に触れたことで、彼に対して強い庇護欲を抱いてしまう。  撫でて、抱きしめて、甘やかしたい。  帝国との全面戦争が迫るなか、ネウクレアへの深い想いと、皇国の守護者たる騎士としての責務の間で、セディウスは葛藤する。  独身なのに父性強めな騎士団長×不憫な生い立ちで情緒薄めな甘えたがり魔導騎士+仲が良すぎる副官コンビ。  甘いだけじゃない、骨太文体でお送りする軍記物BL小説です。番外は日常エピソード中心。ややダーク・ファンタジー寄り。  ※ぼかしなし、本当の意味で全年齢向け。 ★お気に入りやいいね、エールをありがとうございます! お気に召しましたらぜひポチリとお願いします。凄く励みになります!

聖獣召喚に巻き込まれた俺、モフモフの通訳をしてたら冷徹騎士団長に外堀を埋められました

たら昆布
BL
完璧っぽいエリート騎士×無自覚な愛され系

異世界転移しましたが、私は当て馬聖女でした 〜本来のヒロイン(美少年)が隣国にやってきたので、物理で更地を作ります〜

南條ゆりか
BL
女子大生の天音は、ゼミ室に向かうエレベーターを降りた瞬間、異世界に転移した。 眩い光が消えたあと、目の前に広がるのは、煌びやかな広間と、イケメンたち。 異世界転生、転移ものを読み漁っている天音は、瞬時に自分に与えられた「聖女」の役割を察するのだが……。 どうやら、この世界はそう一筋縄ではいかないようだ。 作中、ウザイほど()書で注釈が入ります。 コメディとして、流していただけると幸いです。

処理中です...