視えるのに祓えない~九条尚久の心霊調査ファイル~

橘しづき

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家族の一員

全滅

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「全滅です」

 時間をかけて事務所に帰ると、その不安が的中するかのように伊藤さんが厳しい顔ですぐに私たちに言った。

 彼は何やら必死にパソコンに打ち込みながら口だけを動かす。私と九条さんはソファにぐったり座り込んで二人して空を仰いでいた。多分、九条さんもこうなることを予想していたんだろう。

 伊藤さんは珍しく眉を顰めて続けた。

「全てのリストに電話を掛けました、まずあの寺に断られたのなら自分は難しいだろうという返答が四割、現在手が離せない案件を抱えているという返答が三割、残りは連絡がつきません」

 九条さんは天井を睨んだまま考えるようにして呟く。

「まるで何かに操られているかのような展開ですね……」

「僕から朝比奈さんに連絡して今回の流れを説明しました。除霊自体はやるけど、北海道から帰れるのに一週間ほどかかりそうとのことです」

「一週間……」

 私はぼんやりと呟く。麗香さんなら引き受けてくれるだろうと思ってたけど、一週間後か。まあ、元々凄腕の除霊師さんなんだから多忙は仕方ないことなんだけど。

 伊藤さんは頭をかきながら言う。

「一応、電話がつながった人たちに、やってくれそうな人物に心当たりはないか聞いたんですがねえ……。大概似たような答えですよ、法閣寺の住職とか朝比奈さんとか、今回予定が合わなかった人とか」

「堂々巡りですね」

「今も他にいないか探してるところです、県外とかもね」

 九条さんは珍しくポッキーすら食べないまま動かず考え込んでいる。私はどうしていいのかも分からず狼狽えていると、全く違うことに意識が飛んだ。

「あ! というか、ここに人形連れてきちゃって大丈夫なんですか!? 伊藤さんの好かれやすい体質が!!」

 私はばっと遠くに置いてある紙袋を指さした。散々触られまくってもうシワシワになっている白い袋だ。今は窓際にそっと置いてある。事務所に帰ってきてからあれの口をガムテープで貼り付け閉めてあるが、果たして意味があるのかどうかは分からない。

 そう、伊藤さんは霊に好かれやすいスーパー体質だ。今度は彼について行ってしまったら……。

 だが九条さんは動じることなく答えた。

「大丈夫ですよ。昨日の時点で、私と伊藤さんとあなた三人がいる中、人形はあえて光さんを選んでついて行ったんですから。相当お気に入りですよ。伊藤さんについて行きたいなら最初から彼のところへ行っているでしょう」

「……そ、それもそうか」

「さて、今後についてですが」

 ゆっくり九条さんは頭を起こした。非常に厳しい表情をしている。

「私も手を尽くして除霊してくれそうな人を探します。伊藤さんも引き続きお願いします。同時に、なんとかして依頼人の藤原さんを探し出せませんか」

「難題きましたねこれ」

 さすがの伊藤さんも苦笑した。九条さんはそれでも続ける。

「あの人形が果たしてどこから入手されたのか、前の持ち主がどうなったのか、その情報だけでもかなり重要なものです。ま、こんな厄介なものを押し付けてくれたお礼もしたいのですがね」

「でもねえ~、飛び込みできた人だから、電話番号も、下の名前すら聞いてないじゃないですか。やってみますけど流石に期待はしないでください」

 力なく伊藤さんが言った。そりゃそうだ、私だったらまず何から始めていいかも分からないレベルの人さがしだ。期待は薄いだろう。

 私は頭を下げた。

「すみません、色々ご迷惑をおかけして……」

「え!? 光ちゃんが謝ること何にもないじゃん! むしろ一番の被害者だよ、ほんと可哀想。何も気にしないでね、とにかく自分のことだけ考えるんだよ」

 心配そうに言ってくれた伊藤さんに頷く。もうほんと、なんでこんなに好かれちゃったんだろう。この前も変な人に好かれたし、私ってそういう星の下に生まれたの?

 九条さんが一つ頷いた。

「とりあえずこの流れで行きましょう、私もできることは行います。
 ああそれと光さん、しばらくあなたは私の家に一緒に暮らしてもらいます」

「はいわか、え、ん、え!!?」

 流れで頷きかけた首は勢いよく九条さんの方を向いてもげてしまうかと思った。同時にガシャンと何かが落下した音が響く。どうやら伊藤さんがデスクからペンケースを落としたらしかった。慌てて拾っている。



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