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家族の一員
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「子供相手でしたか」
「それぐらいしか分からないそうです。声も聞こえないしって」
「なるほど。とりあえずこのまま撮影は続けましょう、あとは祓ってくれる相手ですが、やはりなかなか見つかりませんね。ここまでくると偶然とは思えないほど」
私は俯いた。確かにこれだけ伊藤さんや九条さんが動いてくれてるのに見つからないとなれば、何か不思議な力が働いているのだと疑わざるを得ない。
彼は何やらスマホをいじりながら言う。
「伊藤さんが藤原さんを探してくれてますが、もし割れたとしてそこからどれほどの情報が得れるか。何も予想がつきません。困りました」
私は黙り込む。普段の浄霊を目指すのとはだいぶ違う。ゴールも分からない。一体これからどうなってしまうんだろう。
静かな私をちらりと横目で見た九条さんは、近くのテーブルの上にあったパンを手に取って食べた。珍しい、彼がポッキーじゃないなんて。
もぐもぐとそれを食す。
「大丈夫です、あなたは見た目より気が強いし度胸もありますから、そう簡単に呑まれませんよ」
「はあ……」
「昼食も終わったし休んだらどうですか。今のあなたに重要なのは常に万全な体調でいること。どうぞ昼寝でもなさってください」
簡単に言ってくれるなほんと。私は目を座らせた。働いてる九条さんの隣で昼寝なんて出来ないよ。いつも事務所でぐうぐう昼寝してる九条さんとは違うんだから。
それでも、彼の言う『重要なのは万全な体調でいること』という意味も勿論分かっている。私は特に反論せず、とりあえずソファの上に移動して休むことにした。
床に座っている九条さんをぼうっと眺めながら、私はやることもなく、目の前に置かれた飲み物をちびちび飲んでみる。
部屋は何も音がない。時々九条さんが何かを掴んだり食べたりする音だけが響いていた。私は何か出来ることでもないか、と考えを巡らしながら、そのままうとうとと眠気に誘われていく。昨晩はぐっすり眠ったつもりだったが、どうやら疲れも溜まってるらしい。昼寝なんて出来ないよ、と思ったのはどこの誰だ。
静けさと退屈が眠気に拍車をかける。昼寝なんてできるわけないと思っていたくせに、私はいつのまにか昼の光を浴びながら目を閉じてしまっていた。
ふと瞼が開いた時、寝る前に浴びていた白い光が赤くなっていることに気がついた。
あっと思い起き上がる。ソファで寝ていたせいか少しだけ腰が痛んだ。慌てて辺りを見渡すと、寝る前と同じような光景がそのままあった。床に座る九条さん、その前には監視カメラを見るためのモニター。伊藤さんはまだ帰ってきていないようだった。
「すみません寝ちゃって」
そう言うと同時に、一点だけ先ほどとは違うところがあることに気がついた。パンが入った袋が置かれているテーブルに、もう一つ赤いものがあった。
あの人形がひっそりとそこに立っていた。
赤い夕日を浴びているそれは、なんだかいつもより増して末恐ろしいものに感じた。ぞくりと感じる恐怖感につい体を固める。人形は九条さんの方を向いていた。
モニターを見つめていた彼がゆっくりとこちらを振り返る。どこか厳しい顔をしているその表情に緊張しながら、とりあえず声をかけた。
「あ、すみません、ぐっすり」
「いいえ、疲れが取れてるといいのですがね」
それだけ言った九条さんは再びモニターの方を向いた。気になった私は尋ねてみる。
「あの、人形九条さんが持ってきたんですか?」
「いいえ」
その返答を聞いてピタリと止まる。いいえ、って? 伊藤さんはまだいないし、私は寝ていた。
もしかして?
「私もいつのまにか寝ていました」
そう言った彼の言葉を聞いて確信した。つまりはこの人形自身が私のそばへ来たということ。私はリビングの隅に置いてある監視カメラをみた。レンズの上側にある赤いランプは光っていて、録画中であることを表していた。
「映ってましたか!?」
「はい」
短い返答に一気に心臓が速まる。録画はうまくいく時もあればいかない時もある。勝手に電源が落ちたりだとか、そういう怪現象は多く出会ってきたのだ。それがまさか、ちゃんと映っていたなんて。
急いでソファから飛び降りて九条さんの隣に座り込む。そこで、彼の表情が暗いことに気がつく。いつも能面みたいな人だけど、それでもわかるほどだ。
「九条さん?」
「あなたは見ない方がいいかと思います」
予想外の言葉に驚く。私は彼に詰め寄った。
「な、なんでですか。気になりすぎます!」
「あまりいい映像とは言えませんから。気持ちが乱れる事が予想されます」
「そりゃ絶対怖い映像でしょうけど……見ないというのもモヤモヤします、私にははっきり見える何かがあるかもしれませんよ! お願いします見せてください!」
手を合わせてお願いした。怖がりだけど、でも私に憑いてる相手の姿をちゃんと見ておかなきゃ。きっと相性がいいんだろうから、私にしか気がつけない事もあるかもしれない。
それでも九条さんは首を縦に振らなかった。私は引き下がれず何度も頼み込む。そのままいくらか攻防が続き、ついに九条さんはため息をつきながら許可した。
「わかりました、確かにあなたから見たら何か気づく事があるかもしれませんから」
「よかった!」
「でも見た後、頑張って気を強く持ってくださいよ」
そこまで言う九条さんにごくりと唾を飲んだ。彼は長い指でモニターを操作し問題の場面まで戻っていく。私は心を落ち着けるように深呼吸した。ちらりと振り返り、こちらを見ている人形に視線を移す。
微笑している美しい顔はどこか楽しんでいるように見えた。その瞳が苦手で、私はそうっとその子を回転させ後ろを向かせておく。少しでも視界に入れたくない。あの子の目はどうも視線となって強く感じてしまう。
「それぐらいしか分からないそうです。声も聞こえないしって」
「なるほど。とりあえずこのまま撮影は続けましょう、あとは祓ってくれる相手ですが、やはりなかなか見つかりませんね。ここまでくると偶然とは思えないほど」
私は俯いた。確かにこれだけ伊藤さんや九条さんが動いてくれてるのに見つからないとなれば、何か不思議な力が働いているのだと疑わざるを得ない。
彼は何やらスマホをいじりながら言う。
「伊藤さんが藤原さんを探してくれてますが、もし割れたとしてそこからどれほどの情報が得れるか。何も予想がつきません。困りました」
私は黙り込む。普段の浄霊を目指すのとはだいぶ違う。ゴールも分からない。一体これからどうなってしまうんだろう。
静かな私をちらりと横目で見た九条さんは、近くのテーブルの上にあったパンを手に取って食べた。珍しい、彼がポッキーじゃないなんて。
もぐもぐとそれを食す。
「大丈夫です、あなたは見た目より気が強いし度胸もありますから、そう簡単に呑まれませんよ」
「はあ……」
「昼食も終わったし休んだらどうですか。今のあなたに重要なのは常に万全な体調でいること。どうぞ昼寝でもなさってください」
簡単に言ってくれるなほんと。私は目を座らせた。働いてる九条さんの隣で昼寝なんて出来ないよ。いつも事務所でぐうぐう昼寝してる九条さんとは違うんだから。
それでも、彼の言う『重要なのは万全な体調でいること』という意味も勿論分かっている。私は特に反論せず、とりあえずソファの上に移動して休むことにした。
床に座っている九条さんをぼうっと眺めながら、私はやることもなく、目の前に置かれた飲み物をちびちび飲んでみる。
部屋は何も音がない。時々九条さんが何かを掴んだり食べたりする音だけが響いていた。私は何か出来ることでもないか、と考えを巡らしながら、そのままうとうとと眠気に誘われていく。昨晩はぐっすり眠ったつもりだったが、どうやら疲れも溜まってるらしい。昼寝なんて出来ないよ、と思ったのはどこの誰だ。
静けさと退屈が眠気に拍車をかける。昼寝なんてできるわけないと思っていたくせに、私はいつのまにか昼の光を浴びながら目を閉じてしまっていた。
ふと瞼が開いた時、寝る前に浴びていた白い光が赤くなっていることに気がついた。
あっと思い起き上がる。ソファで寝ていたせいか少しだけ腰が痛んだ。慌てて辺りを見渡すと、寝る前と同じような光景がそのままあった。床に座る九条さん、その前には監視カメラを見るためのモニター。伊藤さんはまだ帰ってきていないようだった。
「すみません寝ちゃって」
そう言うと同時に、一点だけ先ほどとは違うところがあることに気がついた。パンが入った袋が置かれているテーブルに、もう一つ赤いものがあった。
あの人形がひっそりとそこに立っていた。
赤い夕日を浴びているそれは、なんだかいつもより増して末恐ろしいものに感じた。ぞくりと感じる恐怖感につい体を固める。人形は九条さんの方を向いていた。
モニターを見つめていた彼がゆっくりとこちらを振り返る。どこか厳しい顔をしているその表情に緊張しながら、とりあえず声をかけた。
「あ、すみません、ぐっすり」
「いいえ、疲れが取れてるといいのですがね」
それだけ言った九条さんは再びモニターの方を向いた。気になった私は尋ねてみる。
「あの、人形九条さんが持ってきたんですか?」
「いいえ」
その返答を聞いてピタリと止まる。いいえ、って? 伊藤さんはまだいないし、私は寝ていた。
もしかして?
「私もいつのまにか寝ていました」
そう言った彼の言葉を聞いて確信した。つまりはこの人形自身が私のそばへ来たということ。私はリビングの隅に置いてある監視カメラをみた。レンズの上側にある赤いランプは光っていて、録画中であることを表していた。
「映ってましたか!?」
「はい」
短い返答に一気に心臓が速まる。録画はうまくいく時もあればいかない時もある。勝手に電源が落ちたりだとか、そういう怪現象は多く出会ってきたのだ。それがまさか、ちゃんと映っていたなんて。
急いでソファから飛び降りて九条さんの隣に座り込む。そこで、彼の表情が暗いことに気がつく。いつも能面みたいな人だけど、それでもわかるほどだ。
「九条さん?」
「あなたは見ない方がいいかと思います」
予想外の言葉に驚く。私は彼に詰め寄った。
「な、なんでですか。気になりすぎます!」
「あまりいい映像とは言えませんから。気持ちが乱れる事が予想されます」
「そりゃ絶対怖い映像でしょうけど……見ないというのもモヤモヤします、私にははっきり見える何かがあるかもしれませんよ! お願いします見せてください!」
手を合わせてお願いした。怖がりだけど、でも私に憑いてる相手の姿をちゃんと見ておかなきゃ。きっと相性がいいんだろうから、私にしか気がつけない事もあるかもしれない。
それでも九条さんは首を縦に振らなかった。私は引き下がれず何度も頼み込む。そのままいくらか攻防が続き、ついに九条さんはため息をつきながら許可した。
「わかりました、確かにあなたから見たら何か気づく事があるかもしれませんから」
「よかった!」
「でも見た後、頑張って気を強く持ってくださいよ」
そこまで言う九条さんにごくりと唾を飲んだ。彼は長い指でモニターを操作し問題の場面まで戻っていく。私は心を落ち着けるように深呼吸した。ちらりと振り返り、こちらを見ている人形に視線を移す。
微笑している美しい顔はどこか楽しんでいるように見えた。その瞳が苦手で、私はそうっとその子を回転させ後ろを向かせておく。少しでも視界に入れたくない。あの子の目はどうも視線となって強く感じてしまう。
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