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憧れの人
謎が解ける
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彼は目をまん丸にして停止していた。瞬きもせず、言葉も失くしているようだった。思った以上の反応だ、こんなにびっくりさせるなんて。
少しして、一瞬眉を下げた。けれど、にこっとあの人懐こい笑顔を見せてくれたのだ。
「そっか! いやーやっとか、うんうん。なるべくしてなったって感じだよね」
「え? なるべくして?」
「うん。だって九条さん、前から光ちゃんのことは特別視してたよね」
サラリと言われて、今度は私が目を見開く番だ。え、前から、私を?
「え!?」
「多分本人無自覚だったんだろうねー鈍いのも罪だよ。僕はわかってたよ。だから、光ちゃんが振られたって聞いてびっくりした。絶対九条さんは断らないと思ってたから」
私はそんなの、まるで気がつかなかった。告白したのも、振られることは分かりきってて、それでも告げたのだ。九条さんが私を特別に見てた? そんな馬鹿な。
でも、この伊藤さんが言うならそうなのかな、と思ってしまう。だって、彼の洞察力ってすごいんだもん。
そこであっと気がつく。伊藤さんが九条さんに不思議なことを言っていた、あの夜のことだ。
「そっか! 伊藤さん、だからあの夜、あんなこと言ってたんですね……九条さんを焚きつけようとしてたんですか!」
ぱっと言ってしまってすぐに後悔した。
あれは私が盗み聞きしていたんだということ、すっかり忘れてしまっていたのだ。
案の定、伊藤さんは驚いたように言った。
「起きてたの?」
「あっ、えっと、す、すみません……盗み聞きするつもりはなかったんですけど、夜中目が覚めて、聞いちゃって……」
小さくなって答えた。しまった、自分馬鹿にも程がある。でも、どうしてあんなことを言っていたのか気になってたから、その疑問が解決して嬉しくて。
伊藤さんが私を……なんて、やっぱりあるわけないんだって。
彼は困ったように頬をかきながら、笑った。
「あはは! うん、そうだね。九条さんが全然自覚しないもんだから、ちょっと焦らせてやろうと思って。九条さんが素直にならないと、光ちゃんは僕が貰いますよーなんてね、ちょっとたちの悪い冗談だったかな」
「あ、やっぱり……!」
「効果あったのかな。だいぶ戸惑ってたみたいだからね。あ、あの後、冗談ですよって本人にはちゃんとフォローも入れておいたから」
事の真相を知り、うるうると泣いてしまいそうだ、伊藤さんがいい人すぎて。私が失恋して落ち込んでいたのを哀れに思ったんだろう、そんな形で協力してくれてたなんて。全人類に爪の垢でも煎じて飲ませたい。きっと平和が訪れる。
「伊藤さん、本当にいい人すぎます! ありがとうございます。
伊藤さんのおかげです。もう、何でそんなに神さまなんですか」
「神さまって」
笑っている伊藤さんを拝んでおいた。色々なことを考えてくれたんだなって、改めて知れたから。
これで全部スッキリした。胸に残っていた小さなモヤもいなくなった。全部伊藤さんが仕組んだことで……
あれ、でも、九条さんがいない時に、何だか意味深な発言を私にしていたのは……。
「まあ、あながち冗談でもなかったんだけど」
「え? 何ですか?」
「ううん、なんでもなーい。さて掃除しよっかなー」
そう笑った彼は、私に背を向けて仕事を始めた。聞き取れなかった言葉を確かめることも出来ず、首を傾げる。伊藤さんは大きく伸びをしながら独り言を言った。
「そっかそっかー、うん、よかったよほんと。やっとだね」
そう言う彼の表情は、こちらからは見えなかった。
少しして、一瞬眉を下げた。けれど、にこっとあの人懐こい笑顔を見せてくれたのだ。
「そっか! いやーやっとか、うんうん。なるべくしてなったって感じだよね」
「え? なるべくして?」
「うん。だって九条さん、前から光ちゃんのことは特別視してたよね」
サラリと言われて、今度は私が目を見開く番だ。え、前から、私を?
「え!?」
「多分本人無自覚だったんだろうねー鈍いのも罪だよ。僕はわかってたよ。だから、光ちゃんが振られたって聞いてびっくりした。絶対九条さんは断らないと思ってたから」
私はそんなの、まるで気がつかなかった。告白したのも、振られることは分かりきってて、それでも告げたのだ。九条さんが私を特別に見てた? そんな馬鹿な。
でも、この伊藤さんが言うならそうなのかな、と思ってしまう。だって、彼の洞察力ってすごいんだもん。
そこであっと気がつく。伊藤さんが九条さんに不思議なことを言っていた、あの夜のことだ。
「そっか! 伊藤さん、だからあの夜、あんなこと言ってたんですね……九条さんを焚きつけようとしてたんですか!」
ぱっと言ってしまってすぐに後悔した。
あれは私が盗み聞きしていたんだということ、すっかり忘れてしまっていたのだ。
案の定、伊藤さんは驚いたように言った。
「起きてたの?」
「あっ、えっと、す、すみません……盗み聞きするつもりはなかったんですけど、夜中目が覚めて、聞いちゃって……」
小さくなって答えた。しまった、自分馬鹿にも程がある。でも、どうしてあんなことを言っていたのか気になってたから、その疑問が解決して嬉しくて。
伊藤さんが私を……なんて、やっぱりあるわけないんだって。
彼は困ったように頬をかきながら、笑った。
「あはは! うん、そうだね。九条さんが全然自覚しないもんだから、ちょっと焦らせてやろうと思って。九条さんが素直にならないと、光ちゃんは僕が貰いますよーなんてね、ちょっとたちの悪い冗談だったかな」
「あ、やっぱり……!」
「効果あったのかな。だいぶ戸惑ってたみたいだからね。あ、あの後、冗談ですよって本人にはちゃんとフォローも入れておいたから」
事の真相を知り、うるうると泣いてしまいそうだ、伊藤さんがいい人すぎて。私が失恋して落ち込んでいたのを哀れに思ったんだろう、そんな形で協力してくれてたなんて。全人類に爪の垢でも煎じて飲ませたい。きっと平和が訪れる。
「伊藤さん、本当にいい人すぎます! ありがとうございます。
伊藤さんのおかげです。もう、何でそんなに神さまなんですか」
「神さまって」
笑っている伊藤さんを拝んでおいた。色々なことを考えてくれたんだなって、改めて知れたから。
これで全部スッキリした。胸に残っていた小さなモヤもいなくなった。全部伊藤さんが仕組んだことで……
あれ、でも、九条さんがいない時に、何だか意味深な発言を私にしていたのは……。
「まあ、あながち冗談でもなかったんだけど」
「え? 何ですか?」
「ううん、なんでもなーい。さて掃除しよっかなー」
そう笑った彼は、私に背を向けて仕事を始めた。聞き取れなかった言葉を確かめることも出来ず、首を傾げる。伊藤さんは大きく伸びをしながら独り言を言った。
「そっかそっかー、うん、よかったよほんと。やっとだね」
そう言う彼の表情は、こちらからは見えなかった。
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