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黒のスケスケ
翌日出勤した愛理は、いつも通り淡々と仕事をこなしていた。なるべく残業したくない愛理は(もちろん家でくつろぎたいため)てきぱきと早く・的確に仕事を進めていく。昨晩ゲームをしながらビールを飲み、熱中するあまり缶をひっくり返して零してしまった情けない姿など、会社の誰も想像がつかない。
そんな愛理の元へ、恐る恐る近づく人影が見えた。
「お、か、べ、さん!」
「え? あ、小野寺さん」
「ご結婚おめでとうございます! これ、みんなからのお祝いです!」
数名の女子社員が愛理を囲んでうきうきした顔をしている。その中心の小野寺は、真っ白で上品そうな紙袋を愛理に差し出した。可愛らしくリボンがついている。
「え? いいって言ったのに……」
「昨日の帰り、みんなで相談したんです! やっぱり絶対あげたいよなあって……受け取ってください」
「あ、ありがとう」
愛理は素直に受け取ることにした。みんなが心から祝福してくれることは素直にありがたいし、邪険に扱うことも出来ない。小野寺たちには笑顔でありがとうと言うのが一番いいのだ。
愛理は膝の上に紙袋を乗せ、すぐに中を覗き込む。これまた上品にラッピングされているが、見たところ何か柔らかい素材のものだ。タオルとかだろうか?
「見てもいい?」
「今ならいいです! そっとですよ!」
同僚たちが辺りをきょろきょろしながら、愛理の周りに壁を作るように立っているのが気になったが深くはツッコまず、愛理は中の物を取り出す。そこに入っていた物を見て目が点になった。
黒のスケスケランジェリー。
これ着る意味ありますか? 全裸と何か変わりはありますか? そう問いかけたい代物だった。
愛理の顔が即座に熱くなる。
「なっ……! こ、これ……!」
「絶対岡部さんに似合うってみんなで相談したんです! 岡部さんスタイルもいいし……ぜひ! 活用してくださいね!」
小野寺は声のボリュームこそ抑えているが、期待感を隠し切れない声色で愛理に言った。愛理は薄い布を手に握ってわなわなと震える。
(うちの女子社員たち大丈夫なの? それとも、これが普通の女の子の感覚……!?)
結婚祝いって、生活雑貨だとかカタログギフトとか、そういうものを普通贈るんじゃないの?? 力を入れたら破れてしまいそうな布をプレゼントだなんて、一体どういうことだ。
いや待て、でも新婚なら普通男女は仲良く一番いちゃこいてる時期……本当の新婚なら、こういうものを貰って喜ぶんだろうか? 『自分では恥ずかしくて買えないから貰ったら助かる』……的な!? 若い子は特にこういうのが流行ってるのかも!
今まで自分は無難すぎる結婚祝いを知人にあげてきたのかもしれない。
愛理は一度咳ばらいをすると、普段の落ち着いた表情に戻り、焦ってしまったのを必死に隠しながら答えた。
「ちょっとびっくりしちゃったけど、ありがとう」
「んもー! 岡部さん絶対似合いますよ! 旦那さん喜びますって~。あ、それとももう似たようなの持ってました……!?」
小野寺はわくわく顔で声を潜めながら聞いてきた。その周りも、何かに期待するような顔で愛理を見つめており、ぐっと言葉に困る。
(ここは仲いいアピールをしておくべきだよね……? 無難に言っておこう)
愛理はふっと微笑んで見せる。
「黒は持ってなかったかな」
「きゃー!! でも他の色はあるんだっ。さすが岡部さんです、かっこいい! 憧れます!」
(何に憧れられてるんだろう私……)
「そういえば旦那さんの写真とかないんですか? 見たいですー」
ギクッと反応してしまう。そういえば、付き合いは長いものの湊斗の写真なんて持っていなかった。晴れ屋の会で全員で撮ったものならあるが、あれじゃあ新婚感はまるでない。付き合って二年、そして新婚ならば、ツーショットの写真がないとおかしい。
「うーん、恥ずかしいからまた今度ね」
「もークール~! いつか絶対見せてくださいよ!」
小野寺たちは勝手に期待しながら、ようやく愛理のそばから離れて仕事に取り掛かっていった。ちらりと愛理が周囲を見てみると、どこか気まずそうにしている男性社員の姿が目に入る。
(……絶対聞こえたじゃん)
下着は見えてないと思うが、会話からしてえぐいデザインのランジェリーだとは察しただろう。私は黒以外のスケスケ下着を揃えている女という印象になってしまった。愛理は静かに頭を抱えた。
仕事を終えた愛理は、帰り支度をしてエレベーターを待っていた。今日もあまり遅くならずに済んでほっとしている。新しい家への帰り道はまだ慣れていないので、少し歩きながら何があるか観察してみてもいいかな、とぼんやり頭で考えていた。
「岡部! おつかれ」
声を掛けて隣に並んだのは山本だった。彼も帰宅するようで、カバンを手に持っている。
「山本君、お疲れ様」
「今日は早く帰れてよかったわ。昨日トラブっちゃって」
「災難だったね」
「岡部は新婚生活もあるし、特に早く帰りたいよな」
エレベーターが到着したので、扉が開いたところへ二人で乗り込む。山本が行き先のボタンを押して扉を閉めた。
「新婚だけど……平日は向こうも忙しいし」
「そっか。でも一人暮らしじゃなくなったってでかくない? そこんとこどう?」
愛理はうーんと唸って考える。
「楽だよ。相手は子供の頃から知ってるから、私の好みとか性格も熟知してるし。無理しなくていいっていうか」
「はい惚気ー」
「え!? これ惚気!?」
「理解度が高い旦那様、ってかー。いいねー」
(おお、こういうのが苦手な私が、自然にそれっぽいせりふが言えた……!)
しかし今回の発言に関しては、愛理の本音を言ったつもりだった。湊斗との生活は始まって間もないが、きっとうまく行く気がしている。それは相手が湊斗だからだということもわかっていた。
愛理が好きな食べ物も知っている。夜にビールを飲んでだらしなくしていることも元々わかっている。だから気取ることもないし、素を曝け出せているから楽なのだ。
(この前、湊斗について聞かれた時も改めて思えば惚気っぽいし、相手が湊斗だから自然とそれが出来てよかった……)
エレベーターが一階に到着し、二人して玄関へ向かう。
「まあ、でもなんかあったら相談ぐらい乗るから言えよ」
「相談?」
「男の気持ちは男に聞くのが一番だろ? 旦那についての悩みとかあればさ、いつでも」
「そう……そうね」
(まあ噓の結婚生活だし、そんな悩みなんて絶対出てこないだろうけど……ここはありがたく受け取っておこう)
愛理がそうさらりと受け答えながら外に足を踏み出した時、突然聞き覚えのある声がした。
「愛理!」
「……え、湊斗?」
嬉しそうに走り寄ってきたのは湊斗だった。ここにいるはずがない湊斗の姿に愛理は驚きを隠せない。
「どうしたの!?」
「帰りに一緒に買い物行かないかと思って。ラインしといたんだけど、見てない?」
「あっ、ごめんバタバタしてて……」
「いいよいいよ、時間が合ったら行こうかなって思ってただけだから。でも今帰りなら丁度よかった!」
そう笑った湊斗は、愛理のすぐ隣の山本に気づき、首を傾けた。
「同僚の方?」
「あ、同期の山本くんなの」
「ああ……」
愛理が話していた男か。湊斗は心でそう呟くと、山本に対して爽やかな笑みを浮かべた。だがすぐに山本の異変に気付き、きょとんとしてしまうことになる。
山本は湊斗の顔を見て驚愕したように目を見開いていた。そして同時に、強い憎しみの視線を送ってきている。
(……初対面、だよな?)
記憶を辿るも、山本に見覚えはないので間違いなく初めて会ったはずだ。だがどうも相手は自分を知っているような表情に見えるが……。
(それとも、想いを寄せる愛理の旦那が登場して、敵意を隠しきれていないのか?)
そうだとすれば、受けて立たねばならない。湊斗はにっこり笑って見せる。
「初めまして、羽柴湊斗と申します。妻の愛理がいつもお世話になっております」
いささか『妻』の部分が強調されていた。だが愛理はそれに全く気付かず、逆に山本はしっかりわかっていた。牽制されているのだ、と。
ぐっと山本は拳を握ったが、すぐに表情を和らげた。
「ああ、岡部の! 山本です。岡部とは同期なんです。こちらこそいつもお世話になってます。結婚したと伺っていました、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「岡部の結婚相手がどんな人か気になってたんですけど、凄く男前な方ですね! お似合いです。岡部が結婚したと知って泣いた男性社員、結構いると思いますよ」
「……へーえ」
「岡部は美人で仕事も出来ますからね。いいやつだし……同期として付き合いが長いのでわかります」
すうっと湊斗の目が細くなる。
(付き合いが長いから分かる? ふざけてんのか、こちとら小学校に上がる前から一緒だぞ)
同じ会社で一緒に働いているというだけで、随分な言い方だ。やはり山本、愛理を狙ってたんだな……。
なんだかぴりついてきた二人だが愛理は全く気付く様子もなく、湊斗に話しかけた。
「じゃあ、買い物いこっか」
「うん、そうしよう。山本さん、これからも愛理をよろしくお願いします」
「はい、では」
愛理と湊斗は並んでその場から離れていった。その後姿を山本がじっと見つめる。
その表情は明らかに湊斗を睨みつけていた。
家の近くのスーパーで、二人並んで食料品を購入した。並んでカートを押す光景を夢見ていた湊斗は一人悶絶していたが、愛理はツマミに何を買うか悩んでいるだけだった。
ずっしり重みのある袋をぶら下げて、二人はマンションへと戻っていく。辺りはすっかり暗くなり、今日の夕飯は簡単などんぶりにしよう、と話していた。
ようやくマンションが見えてきたところで、湊斗はずっと聞きたかったことを愛理に尋ねる。
「さっきの同期の山本さん、だっけ? 仲いいの?」
「まあ、普通に話すよ。部署は違うからそんなに会わないけど」
「へえ……告白されたり?」
「ないない! 普通に友達」
愛理は笑ってそう言ったので、どうやら好意に気づいてないらしい、ということがわかったので湊斗は何だかほっとした。愛理も全く意識していないという証拠だからだ。
(……いや、愛理は元々誰のことも意識してないし、だからこそこんな結婚話に乗ったんだから、不安にならなくていいってわかってるんだけどな)
でも、湊斗の心の中ではどうしてもいろいろ考えてしまう。急に誰かと親密になり、この関係がいつか終わってしまったら、と。
「会社ではほら、やけにキャラが作られちゃってるからさ。山本くんも勘違いしてるんだよね……私が料理できそう、とか」
「はは、まあ言わせておけばいいんじゃない」
「湊斗の方が家事もずっと得意なのにね?」
ため息をつきながら愛理はマンションの玄関に辿り着き、愛理は鍵を開けた。電気をつけて靴を脱ぐ。
「ただいまー! よし、私はお風呂掃除を……」
意気揚々とそう言って靴を脱いだ愛理は、勢い余って前に倒れ込んだ。荷物で両手がふさがっていた湊斗はどうすることも出来ず、倒れていく愛理を見ているしか出来なかった。
「愛理!」
派手に倒れ込んだ愛理だが、咄嗟に両手で体を支えたためけがはなさそうだった。ふうと息を吐きながら起き上がり、一人で笑う。
「顔面から行くとこだった~危ない危ない!」
「……」
「前のアパートと玄関の広さや造りも違うから、気を付けないとだねー」
「愛理、それ……」
湊斗が呆然としてどこか一点を見つめているので不思議に思い、愛理も視線の先を見てみる。
倒れた拍子に持っていた紙袋をぶちまけてしまい、中の物が飛び出してしまっていた。それを湊斗がしっかり見てしまったのだ。
あの全裸と変わりなさそうな、セクシーな下着を。
「なっ……!」
愛理は慌てて回収するが、湊斗の反応からして見られてしまったのは明白だった。もしかしたら、自分の趣味だと勘違いされただろうか。
冗談ではない。こんな派手な下着をいつも着ていると勘違いされては非常に気まずい!
「ち、違うの! 職場の後輩たちが結婚祝いをくれたんだけど、まさかのこんなもので、でも突き返すのもおかしいから……!」
必死に弁解しながら湊斗の顔を見上げると、てっきり呆れているか笑っているかと思っていたのに、彼が熟れたトマトのように真っ赤になっていることに気が付いた。いつも涼しい顔をしている湊斗がそんな顔をしているのを初めて見た愛理は、驚きで目を見開いて固まった。
(湊斗……?)
気まずくなり、愛理は持っていた下着を素早く紙袋に押し込む。なぜかドキドキ心臓が鳴ってしまい、愛理の顔まで熱くなる始末。
「だ、だからその、うん、後輩たちの結婚祝いだから……さ、最近の子たちは面白い物を贈るんだね? ははは……」
「……」
「み、湊斗?」
愛理に名前を呼ばれてはっと現実に引き戻される湊斗。彼の脳内では、その下着を着た愛理が勝手に登場しており、湊斗に迫ってくる絵まで再生される始末。とんでもない妄想劇が始まっていたことに自分で愕然としながら、なんとか必死に答えた。
「はは、面白いね。まあ祝ってくれる気持ちはありがたいね」
「だ、だよねえー! 明るくて面白い後輩でさ!」
「確かに面白い子みたいだね。はははは、女性ならでは贈り物だなあーははは」
「ね、ねえ? こういうの持ってましたかとか聞かれちゃって、なんかどう答えていいかわからず他の色はあるとか言っちゃってー」
「え!!??」
「い、いやないよ!? ないけど普通の新婚なら持ってるのかとかいろいろ考えてたらそう答えちゃって、つい!!」
あたふたと事情を説明しつつ、余計なことを言ってしまったとすぐに後悔する。幼馴染とはいえ、さすがに下着の話題は恥ずかしすぎたのだ。
湊斗は完全にフリーズしたコンピュータのように固まった後、口から乾いた笑いを出した。
「は、はははは。まあ、仲いい新婚のフリするならそれぐらいふつ、普通だよ(多分)」
「そ、そうだよね? あはは……」
「はははははは。さて、俺は夕飯を簡単に作るよ」
「ありがとー」
湊斗は何とか食材を持ったまま上がってリビングへ向かった。右手と右足が両方同時に出てしまいぎこちない歩みになったが、愛理は気づいていなさそうだった。これは料理に集中して変な妄想を忘れるしかない……できるだろうか? 一旦トイレに行った方がいいかもしれない。
だが、贈り物をしたという後輩には心の底から感謝した。あんなに恥ずかしそうな顔をしている愛理を見られたので、それだけでとんでもない価値があった。美味しいお菓子でも愛理に持たせようか。
一方、残された愛理は深いため息をついた。
(いくら湊斗とはいえ、やっぱりこういう話題はちょっと恥ずかしいかも……)
ちらりと紙袋の中を覗き、自分には使うことのない結婚祝いに項垂れた。かといってプレゼントだし捨てるわけにもいかないので、箪笥の肥やしになりそうだ。これが本当の結婚だとしたら、みんな着て旦那に迫るんだろうか。高レベルすぎて想像もつかない。
「まあ、セクシー系って本当は私のキャラじゃないしね。職場でなぜかそんなイメージになってるだけで。本当の結婚をしてたとしても多分着られないよこれ」
やれやれと思いながら立ち上がろうとした時、カバンの中のスマホが鳴った。取り出してみると、千紗からメッセージが届いていた。晴れ屋の会以来、一度も会っていない大学時代の友人だ。
『愛理たちの新居、遊びに行きたいな』
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