溺愛のフリから2年後は。

橘しづき

文字の大きさ
38 / 38

おまけ



「うう……ん」

 隣で小さな唸り声がした。湊斗は目を開けて、その寝顔を覗き込む。すっかり寝付いた愛理が、気持ちよさそうな寝息を立てていた。

 それを見て、湊斗は優しく微笑む。

 二人用のベッドを購入し、それが届いて五日が経った。毎晩愛理と一緒に寝る喜びは何にも代えがたい。これもしたいことリストのうちの一つだ。

『寝ようか』と言って二人でベッドに入り、そのぬくもりを感じながら眠れる。たまに布団を奪われたりするのも、また楽しみの一つ。いつでも愛理の可愛い寝顔が隣にあると思うと、これ以上の幸せはない。

(こんなに幸せでいいのかな……)

 恋人のフリから無理やり結婚までこぎつけ、そこからついに本当の夫婦に。かなり強引な手を使った自覚はあるが、そうでもしないとこの日々は手に入らなかった。

「んー……」

 寝返りを打ちながらまた愛理が唸る。湊斗は笑ってそれを眺めているが、一つだけ困ったことがあった。


 ムラムラして眠れん。


 
 幸せです、という顔をしている湊斗。本当に幸せなのだが、ここ数日ろくに眠れていない。朝方に数時間眠っているくらいだ。とにもかくにも、ムラムラが止まらない。

 だがここで勘違いしてもらっては困るのが、決して愛理が拒否をしているだとかそんなことは一切ないということ。むしろ、この夜も寝る前にしっかり事を終えていた。そのまま愛理は眠りについたのだが、湊斗だけが起きている。

 まあ分かりやすく言えば『一回じゃ物足りない』ということだった。

 毎日のように致しているのに、まだ足りないなんて愛理には言えなかった。こっちのパワーが度を超えていることを自覚しているのだ。

 だがまあ、幸せな悩みなので別にいい。

(また冷水でも浴びてくるか……いや、それで熱を出してもなあ)

 仕方ないので、ちょっとリビングに行って……

「湊斗?」

 突然、自分の名を呼ぶ愛理の声がした。見てみると、とろんとした目で湊斗を見上げている。

「あ、ごめん起こした?」

「ううん、いいけど……どうしたの? 寝ないの?」

「あっ、うん、今から寝る。愛理は寝てな」

 湊斗は愛理の布団を掛け直してあげる。だが愛理は、湊斗が何かを誤魔化していると瞬時にわかったようだ。付き合いが長い幼馴染は少ししたことでも気が付く。

「湊斗は? なんかあったの?」

「いや、そうじゃなくて……!」

 愛理が起き上がろうとした時、ふと膝に固い物が触れた。湊斗は慌てて体をずらしたが、もう手遅れだった。愛理もさすがに気が付く。

 ポリポリと頭を搔きながら言う。

「変なサイトでも見てたの?」

「まったく違う!!!!」

「ええ、でも」

「言ったけど俺は愛理以外無理だから!!」

 そういえばそう言ってたっけ、と愛理は思い出す。正しく言うと、変なサイトに載っている女性を愛理と見立てることは正直あるが、湊斗は黙っておいた。

(……って、その流れで行くと、じゃあ原因私なの? でも毎日寝る前にしてるのに……?)

 愛理はうーんと考えたが、原因を考えるより対策を考えた方がいいのではないか、と思いつく。非常に軽い感じで彼女は言う。

「そのせいで眠れないなら言ってくれたらいいのに。私、別に協力するし」

「え゛」

 予想外の発言に湊斗は固まる。さらに熱を持ってしまった自身を必死に落ち着かせる。

「い、いやでも明日も仕事だから、愛理も辛いかなって……」

「でもそれで湊斗が眠れないなら、全然いいよ」

「……いいの?」

「なんでも正直に言ってよ。どうしても無理なことは無理って言うからさ」

 愛理は笑ってそう言った。湊斗はぐっと愛おしさに苦しくなりながら、正直に言うことにする。

「愛理!」

「は、はい」

「ぶっちゃけて言いますと、一回では落ち着きません!!」

「本当にぶっちゃけてきたね」

「愛理の負担にならないほどにお願いしたいです!!」

「なんで敬語なの?」

 愛理は笑って湊斗の頬に触れる。思えば、最近目の下にクマができているような気がした。気づくのが遅くなってしまって、申し訳ない。

「私も……湊斗とするそういう時間好きだから、負担なんて考えなくていいよ」

 無事、湊斗は理性を飛ばした。




 湊斗に安眠が訪れる。

 その隣で、脱力した愛理が寝そべっている。

(いや二回でも終わらないんかいっ!! 確かにこれは負担になる日が来るかもしれない!!)

 これは今後について、要相談。


感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

はなにゃん
2025.10.07 はなにゃん

卑劣なことをするやつと、それに騙されてのっかるおろかなやつ。
人を呪わば穴二つ。ぜんぶじぶんにかえってくるのに。

2025.10.07 橘しづき

お読みいただきありがとうございます!
まさにその通り…

解除

あなたにおすすめの小説

兄妹じゃないとわかったのでお兄様と結婚したら、全部仕込みでした

こじまき
恋愛
【20260401読みやすいように話を分割しました】 伯爵令嬢ヘイゼルは、兄アリステアに恋をしている。叶わないと知りながら、それでも諦めきれなかった。 しかし子ども時代の「取り違え」が発覚し、子爵令嬢ロレッタとして“正しい場所”で生き直すことに。 そして妹ではなくなった彼女に、アリステアは求婚する。 運命のねじれは正されて、望んだとおりに最愛の人と結ばれた―― けれど――その「正しい運命」は、兄アリステアによって用意されたものだった―― ※「小説家になろう」にも投稿しています。

綺麗な彼女

詩織
恋愛
憧れの人はモデルの彼女がいる。ずっと片思いなのが辛すぎて・・・

ベンチャーCEOの想い溢れる初恋婚 溺れるほどの一途なキスを君に

犬上義彦
恋愛
『御更木蒼也(みさらぎそうや)』 三十歳:身長百八十五センチ 御更木グループの御曹司 創薬ベンチャー「ミサラギメディカル」CEO(最高経営責任者) 祖母がスイス人のクオーター 祖父:御更木幸之助:御更木グループの統括者九十歳 『赤倉悠輝(あかくらゆうき)』 三十歳:身長百七十五センチ。 料理動画「即興バズレシピ」の配信者 御更木蒼也の幼なじみで何かと頼りになる良き相棒だが…… 『咲山翠(さきやまみどり)』 二十七歳:身長百六十センチ。 蒼也の許嫁 父:咲山優一郎:国立理化学大学薬学部教授 『須垣陸(すがきりく)』 三十四歳:百億円の資金を動かすネット投資家 ************************** 幼稚園教諭の咲山翠は 御更木グループの御曹司と 幼い頃に知り合い、 彼の祖父に気に入られて許嫁となる だが、大人になった彼は ベンチャー企業の経営で忙しく すれ違いが続いていた ある日、蒼也が迎えに来て、 余命宣告された祖父のために すぐに偽装結婚をしてくれと頼まれる お世話になったおじいさまのためにと了承して 形式的に夫婦になっただけなのに なぜか蒼也の愛は深く甘くなる一方で ところが、蒼也の会社が株取引のトラブルに巻き込まれ、 絶体絶命のピンチに みたいなお話しです

絶交した幼馴染と大学の合コンで再会した。

孤独な蛇
恋愛
中学生の浅野春樹は上級生と喧嘩騒動を起こしたことがあった。 その上、目つきが悪く地毛は茶髪のため不良少年のような扱いを受けて学校では孤立していた。 そんな中、幼馴染の深瀬志穂だけは春樹のことをいつも気遣ってくれていた。 同じ高校に行こうと声を掛けてくれる志穂の言葉に応えたい一心で受験勉強にも力を入れていた。 春樹にとって、学校で孤立していることは問題ではなかった。 昔から志穂が近くにいてくれるから……。 しかし、3年生なってから志穂の態度がよそよそしくなってきた。 登下校も別々になり、学校で話しかけてくることも無くなった。 志穂の心が自分から離れていってしまっている気がした春樹は焦っていた。 彼女と話がしたい。笑った顔が見たい。 志穂と一緒に帰ろうと、彼女が部活動を行っている体育館へ向かったのだが……。 そこで春樹が耳にしたのは、自分の悪口を言って部活の友達と楽しそうにしている志穂の声だった。 その瞬間、春樹の中で志穂に対する想いや信頼は……消滅した。

逢いたくて逢えない先に...

詩織
恋愛
逢いたくて逢えない。 遠距離恋愛は覚悟してたけど、やっぱり寂しい。 そこ先に待ってたものは…

【完結】泡になった約束

山田森湖
恋愛
三十九歳、専業主婦。 夫と娘を送り出し、静まり返ったキッチンで食器を洗う朝。 洗剤の泡が立っては消えるその繰り返しに、自分の人生を重ねながら、彼女は「ごく普通」の日常を受け入れている。 愛がないわけではない。けれど、満たされているとも言い切れない。 そんな午前中、何気なく出かけたスーパーで、背後から名前を呼ばれる。 振り返った先にいたのは、かつて確かに愛した男――元恋人・佐々木拓也。 平穏だったはずの毎日に、静かな波紋が広がり始める。

ヒロインになれませんが。

橘しづき
恋愛
 安西朱里、二十七歳。    顔もスタイルもいいのに、なぜか本命には選ばれず変な男ばかり寄ってきてしまう。初対面の女性には嫌われることも多く、いつも気がつけば当て馬女役。損な役回りだと友人からも言われる始末。  そんな朱里は、異動で営業部に所属することに。そこで、タイプの違うイケメン二人を発見。さらには、真面目で控えめ、そして可愛らしいヒロイン像にぴったりの女の子も。    イケメンのうち一人の片思いを察した朱里は、その二人の恋を応援しようと必死に走り回るが……。    全然上手くいかなくて、何かがおかしい??

貴方を愛することできますか?

詩織
恋愛
中学生の時にある出来事がおき、そのことで心に傷がある結乃。 大人になっても、そのことが忘れられず今も考えてしまいながら、日々生活を送る