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白い子猫と騎士と黒い猫の話
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しおりを挟む猫なりの存在意義について思考の海に沈んでた俺。
疑問と不安のないまぜが顔に出ちゃってたのか、いやこれ単に城に行きたくないと不貞腐れてると思われてんのか。
事実だけど。男にほっぺをこねこねされて引き戻される。
「安心しろ、行ったからって引き止められることはない。今のところ王族周りには知られているが一般兵は聖者が無事見つかったことぐらいしかわかっていない。お前が聖者などと普通は誰も思わんから注目もされない」
えーん。
「だから城へ行ったところでいきなり猫を連れてきた変人と俺が周囲に晒されるだけだ」
あっ……それはちょっと……。かわいそう……。
おう……。
まあ目立つのは兎角ただの猫として触ろうと誰彼構わず近づかれるかもしれんから危ないは危ないんだが。
ほら~~。も~~。
特に俺の部下共が手を出しかねん。
んも~~~~~。隊長~~~~~。
下手に警護して特別な猫って興味津々に思われるか、騎士団の隊長に抱えられて運ばれて興味津々になるの選べってか。まだ運ばれる方選ぶわ。尚興味持たれるのは前者は俺。後者は男。
も~。そんなことより構ってください。そして城へ連れてゆくことなど忘れてください。ほら休日なんだから。ほら。ほらほら。
城行くのがやなのって、そりゃ仰々しいとこに行くのが面倒くさいってのは勿論なんだけど、知らんとこ行って兄弟たちが警戒するのもありそうだからやなんだよね。敷地から出たことないって言ったでしょ。なーんでこの家に住処構えて初めて行くおそとが王城なのよ。おかしいやろがい。
散々男にむにむにこねこねされてるから男の匂いは付きまくってるだろうけど、そっちは兄弟たちはもう何も言わないもんね。偶に執拗に匂い嗅がれるけど。もしお兄ちゃんたちにフレーメン反応された日にゃ弟ちょっと悲しむよ。
ついでに、魔術師が来た時は逃げる。知らん人なのもあるにしても、なんかねえ。薬品の匂いなのかな。俺にもわかるけど医者行った時の匂いに近いかな。その他にも色々混ざってる。動物の鼻にはちょっと強いのかもしれない。あと単純に常時フードの外見が怪しい。
それ考えると男の匂いは薄く感じるな。比較対象が強すぎんだな。
ママン? 大好き。おひさまの匂い。
じゃあ俺は?
ふんす。
「どうした?」
自分の後ろ足を伸ばしてふんす。うーん。なんだろう。なんか俺の足裏から香ばしい匂いしない?? なんで??
俺の行動の意味がわかってないから、痒いのか? なんてこしょこしょしてくれる。あっそこそこ。
うちの兄弟たち。男の匂いはもう大丈夫そうだけど、懐いてるかというとまだ微妙。なんでだろう。ご飯くれるっては認識してるのにね。俺が人間になる道のりはまだまだ遠そう。
撫でてくれてる大きな手のひらに鼻先をつける。ふんす。
首筋。ふんす。室内着。ふんすふんす。こっちは石鹸の匂い。うんうん、嫌いじゃない匂い。
「何してるんだ?」
なにしてんでしょうねえ。俺はハッと正気に戻った。
そんな時だ、不意に地面が揺れた。
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