悪役令嬢から『薬屋』に転職しました！

私は薬屋のエリーナです

「エリーナちゃん、傷薬はあるかい？」

「はい、こちらですね」

「風邪を引いちまったんだけど」

「風邪薬を出しときますね、食事後に飲んでください」

「二日酔いで頭が痛いんだよ～」

「飲みすぎは体に毒ですよ、薬湯でも飲んでシャキッとしてください」

　今日も今日とて忙しく私はお客さんの対応に走り回っている。

　一年前にこの田舎の町にやってきて薬屋を始めた。

　最初はお客さんの数は少なかったけど徐々に増えていき今ではおかげさまで生活できている。

(王妃教育で薬学を学んだおかげでこうして暮らしていけるんだから人生に無駄なんて無いわね)

　婚約者だった王太子には『お前と会う時間なんて無駄だ』なんて言われたけどね。

「しかしエリーナちゃんは若いのにしっかりしてるね。もしかしていいとこのお嬢ちゃんじゃないのかい？」

「おいおい、貴族の令嬢がこんな何もない町にいるわけ無いだろ、王都で綺羅びやかな暮らしをしてるだろうよ」

　いえ、おじさん、私元公爵令嬢です、しかも王太子の婚約者でした。

　妹に盗られて変な言いがかりをつけられて家まで追い出されたんですよ。

　まぁ、今となってはどうでも良い話なんだけどね。

(もうあれから一年経つのね……)

　ちょっと感慨深い。

　家を追い出された時、私は一冊の本を密かに持っていった。

　それが薬学の本だった。

　その本を元に薬草について勉強して薬草の栽培や調合の仕方とか覚えました。

　そして、薬屋をオープンしました。

　今では町の住人や旅人に愛されています。

　婚約破棄された時は絶望した気分を味わったけど今は幸せだから心の中でガッツポーズをしました。