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番外編
番外編 体は強い方か?
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各方面への理解を得て、晴れて私達は婚約を交わす事ができた。
婚約期間は2ヶ月。私の35歳の誕生日に結婚式が執り行われる運びとなったが、それまでの過程は決して生易しいものではなく、旦那様は何も言わなかったが、私を取り巻く環境からひしひしと、それは感じ取れていた。
その内容として。
おそらくは、平民と貴族との格差婚に対する問題というよりは、私と旦那様との年齢差に対する問題の方が大きかったと思われる。
その根拠として、
そもそも結婚願望の薄かった旦那様へ周りが結婚を勧めた一番の理由、ひいては、侯爵夫人としての一番の役目。
そう。子供を作る事だ。
ここまで言えば、もう分かるでしょ?私が旦那様の結婚相手として問題視される理由が。
そもそも『若さ』とは程遠い私が旦那様のような御方の結婚相手としてすんなりと承認される事の方が不思議なのだ。
旦那様は一体どうやって中央のお偉い方やクライン様を納得させたのだろうか?
ともあれ、結婚式までの残り2ヶ月間、私の強い希望で結婚式の直前までメイドの仕事を続けられる事となり、そして私は今、旦那様から呼び出しを受けて執務室へと向かってるところだ。
「失礼致します、旦那様。お呼びでしょうか?」
「うむ。わざわざ呼び立ててすまなかったな、エミリア」
入室の瞬間、黙々と机に向かっていた旦那様が私の声に反応する、というのがこれまでのパターンだった。
ところが、今回は机に向かっていた様子はなく、両手を組み、最初からこちら側を向いていた。
私が訪れるのを待っていたかのように。
「とんでもごいません、旦那様。いつでもお申し付け下さいませ」
現時点では、あくまで私は『メイド』だ。その事を肝に銘じながらお辞儀をする。
そんな私の様子に旦那様は頬をポリポリと掻きながら苦笑している。
「仕事熱心なのは良い事だが、君は同時に俺の婚約者でもあるんだ。そこまで主従関係に徹しなくてもいいんだぞ?」
「いえ。旦那様の婚約者である前に私は『メイド』です。故に、しっかりとした『メイド』としての振る舞いをするのは当然の事です」
「……分かった、分かった。エミリアの好きにしていい。」
どこか諦めたようにそう言う旦那様は「それでだな――」と、言葉を継ぎ、本題へと言及していく。
「エミリアに、伝えておかなければならない事があって、それで呼んだわけなんだが……」
「はい……それはどういった?」
私は旦那様の言葉に疑問顔で応じる。
「エミリア、君は体は強い方か?」
すると思い掛け無い問い掛けに一瞬驚きの表情をしてしまった私だが、すぐにその表情を元に戻し、それに答えていく。
「はい?……えぇ。まぁ、以前は仕事をいくつも掛け持ちしていた頃もありました故、割と体力はある方だと。それがどうかされましたか?」
「そうか。ならば良かった。……実はだな。エミリアとの結婚を中央の連中に認めさせる際に、ひとつ条件というか、その、約束事を交わしたんだが……」
何か言いにくい事なのだろうか?視線を彷徨わせながら遠回しに言葉を選んでいく旦那様。
「はい……」
話の核心が見えない私は疑問符を掲げながらも相槌を打つ。旦那様は続ける。
「聞けば、中央の連中は俺の世継ぎについて危惧していた。要は子供を産める年齢が限られている中で、エミリアの年齢が議論に上がったわけだ」
まぁ、妥当な懸念だな、と思いつつ私はまた相槌を打つ。
「……はぁ」
「ならばと、俺はひとつ提案をした。それが中央の連中の納得を得て、此度のエミリアとの婚約に至ったわけだ」
年齢による妊娠への懸念、そして、旦那様がしたその提案……要点を整理しつつ、それらを繋ぐと、見えてくるその提案内容……
「その、提案とは……まさか」
「そうだ。子を授かれる期限の長さを懸念するというのならば、子作りの回数をこなすまでと、そう、連中に言ったんだ。まぁ、エミリアも体力には自信があるとの事らしいから、大丈夫だろ?」
やはり、思った通りだった。しかし、中央のお偉いさん達がそこを心配するのは理解できる。
故に、私もその努力はしなければならない。そうしなければたちまちこの結婚は許されないものへと成り下がってしまうだろう。
私は頬に熱を感じながら、小さくその旨を旦那様へ伝える。
「……は、はい。それが旦那様との結婚の条件と言うのならば、私も頑張ります……」
「うむ。無理を言ってしまったようで、すまないな。話はそれだけだ」
「……はい。それでは、失礼します――」
思わず、初夜の時の事を思ってしまった私はドキドキしながら逃げるようにして部屋を後にしたのだった。
―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ――
作者から
次話から3話に掛けてメアリー視点のエピソードとなります。
よろしくお願いします!
婚約期間は2ヶ月。私の35歳の誕生日に結婚式が執り行われる運びとなったが、それまでの過程は決して生易しいものではなく、旦那様は何も言わなかったが、私を取り巻く環境からひしひしと、それは感じ取れていた。
その内容として。
おそらくは、平民と貴族との格差婚に対する問題というよりは、私と旦那様との年齢差に対する問題の方が大きかったと思われる。
その根拠として、
そもそも結婚願望の薄かった旦那様へ周りが結婚を勧めた一番の理由、ひいては、侯爵夫人としての一番の役目。
そう。子供を作る事だ。
ここまで言えば、もう分かるでしょ?私が旦那様の結婚相手として問題視される理由が。
そもそも『若さ』とは程遠い私が旦那様のような御方の結婚相手としてすんなりと承認される事の方が不思議なのだ。
旦那様は一体どうやって中央のお偉い方やクライン様を納得させたのだろうか?
ともあれ、結婚式までの残り2ヶ月間、私の強い希望で結婚式の直前までメイドの仕事を続けられる事となり、そして私は今、旦那様から呼び出しを受けて執務室へと向かってるところだ。
「失礼致します、旦那様。お呼びでしょうか?」
「うむ。わざわざ呼び立ててすまなかったな、エミリア」
入室の瞬間、黙々と机に向かっていた旦那様が私の声に反応する、というのがこれまでのパターンだった。
ところが、今回は机に向かっていた様子はなく、両手を組み、最初からこちら側を向いていた。
私が訪れるのを待っていたかのように。
「とんでもごいません、旦那様。いつでもお申し付け下さいませ」
現時点では、あくまで私は『メイド』だ。その事を肝に銘じながらお辞儀をする。
そんな私の様子に旦那様は頬をポリポリと掻きながら苦笑している。
「仕事熱心なのは良い事だが、君は同時に俺の婚約者でもあるんだ。そこまで主従関係に徹しなくてもいいんだぞ?」
「いえ。旦那様の婚約者である前に私は『メイド』です。故に、しっかりとした『メイド』としての振る舞いをするのは当然の事です」
「……分かった、分かった。エミリアの好きにしていい。」
どこか諦めたようにそう言う旦那様は「それでだな――」と、言葉を継ぎ、本題へと言及していく。
「エミリアに、伝えておかなければならない事があって、それで呼んだわけなんだが……」
「はい……それはどういった?」
私は旦那様の言葉に疑問顔で応じる。
「エミリア、君は体は強い方か?」
すると思い掛け無い問い掛けに一瞬驚きの表情をしてしまった私だが、すぐにその表情を元に戻し、それに答えていく。
「はい?……えぇ。まぁ、以前は仕事をいくつも掛け持ちしていた頃もありました故、割と体力はある方だと。それがどうかされましたか?」
「そうか。ならば良かった。……実はだな。エミリアとの結婚を中央の連中に認めさせる際に、ひとつ条件というか、その、約束事を交わしたんだが……」
何か言いにくい事なのだろうか?視線を彷徨わせながら遠回しに言葉を選んでいく旦那様。
「はい……」
話の核心が見えない私は疑問符を掲げながらも相槌を打つ。旦那様は続ける。
「聞けば、中央の連中は俺の世継ぎについて危惧していた。要は子供を産める年齢が限られている中で、エミリアの年齢が議論に上がったわけだ」
まぁ、妥当な懸念だな、と思いつつ私はまた相槌を打つ。
「……はぁ」
「ならばと、俺はひとつ提案をした。それが中央の連中の納得を得て、此度のエミリアとの婚約に至ったわけだ」
年齢による妊娠への懸念、そして、旦那様がしたその提案……要点を整理しつつ、それらを繋ぐと、見えてくるその提案内容……
「その、提案とは……まさか」
「そうだ。子を授かれる期限の長さを懸念するというのならば、子作りの回数をこなすまでと、そう、連中に言ったんだ。まぁ、エミリアも体力には自信があるとの事らしいから、大丈夫だろ?」
やはり、思った通りだった。しかし、中央のお偉いさん達がそこを心配するのは理解できる。
故に、私もその努力はしなければならない。そうしなければたちまちこの結婚は許されないものへと成り下がってしまうだろう。
私は頬に熱を感じながら、小さくその旨を旦那様へ伝える。
「……は、はい。それが旦那様との結婚の条件と言うのならば、私も頑張ります……」
「うむ。無理を言ってしまったようで、すまないな。話はそれだけだ」
「……はい。それでは、失礼します――」
思わず、初夜の時の事を思ってしまった私はドキドキしながら逃げるようにして部屋を後にしたのだった。
―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ―― ――
作者から
次話から3話に掛けてメアリー視点のエピソードとなります。
よろしくお願いします!
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