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番外編
番外編 メアリー、侯爵夫人の座を狙う(メアリー視点)
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エミリアの娘のアリアが結婚した。貴族とだ。
完全なる敗北感に悔しさと妬みでどうにかなってしまいそう。
「ぃやぁああーー!!!」
妬みと怒りにあたしは家の中を暴れ回る。
ガシャーン!!
「何であたしが、あたしがエミリアの娘なんかに負けるのよ!!」
ガシャーン!!
「メアリーやめなさい!!」
暴れ回るあたしを母は制止しようとしたが、
「うるさいクソババア!お前のせいであたしは負けたんだ!!」
その手を払い退け、その拍子に母は床へ尻もちをついた。あたしはそんな母へ目もくれず、怒りのままに暴れ続ける。
『――ひぃ、ば、化け物……』
村人があたしに向けた一言が浮かぶ。
「このあたしが化け物なわけないじゃない!!」
――怒り、屈辱、憎悪、絶望、恐怖、嫉妬……
負の感情が渦巻き、どうしようもない苦しさがあたしを襲う。
この苦しみから解放される為には――アリア、あの女よりもあたしが上だという事を世間に知らしめなければならない。
――アリアが子爵令息と結婚したならば、あたしはそれよりもっと格上の存在――ギルバード領領主、ギルバード侯爵様との結婚を目指す!
一年後――
鏡越しに映る赤いワンピース姿の自分を見つめ、思い出すのはあの時の、あの一言だ。
『……ひぃ、ば、化け物』
脳内を響き渡るその一言を振り払うかのようにあたしは首を振り、にっこりと、愛らしく笑みを作ってみた。
「……うん。今日のあたしも可愛い!」
そう自分に言い聞かせるように声を響かせ、あたしは鏡の前から立ち去る。
ニタァ……と、不気味な笑みを顔に刻んだ自分の顔を脳裏に焼き付けて。
あたしは今、ギルバード侯爵邸へと来ている。ギルバード侯爵家のメイド採用試験を受ける為だ。
平民のあたしにとって、ギルバード侯爵様は接触する事すら難しい雲の上の存在だ。
そんなあたしがギルバード侯爵様との結婚を目論むならば、まずはギルバード侯爵家の使用人となる道しか無いと考えたわけだが、
あたしはそこで、見覚えのある女を目にする。
「あれって、もしかしてエミリア?」
でも、おかしい。エミリアの年齢からして、あの容姿はあり得ない。
かつて、あの女からジョンを奪い取った時のエミリアは明らかに年齢の陰を落としていた。
あれから3年が経つというのに、その陰は深まるどころか、霧散して、女としての魅力が溢れんばかりにみなぎっているようだった。
あたしは近付いて声を掛けた。
「エミリア先輩?」
振り向いた女は確かにエミリアだった。
まるで女としての美しさを取り戻したようなエミリアの美貌に成長したアリアの美貌が重なる。
そして、脳裏に浮かぶのは鏡に映った不気味な笑みの自分。
「30を越えたオバサンが、恥ずかしげもなく侯爵家のメイドを目指すなんて、さすがはエミリア先輩ですね!!恐れ入りました!」
湧き上がる恐怖心を掻き消すかのように、あたしは虚勢を張った。丁度その時、
「ねぇ見て! あの人! すんごい綺麗な人」
「本当だ!」
「それに着ている服装も凄くお洒落!」
「メイドって綺麗な人が多いんでしょ?あんなに綺麗な人がライバルだなんて、私自信無くしちゃう」
遠巻きから聞こえる女達の声。
振り向くとそこには羨望の眼差しでこちらを見る二人の女。あたしがこれまで浴び続けてきた眼差しそのもの。間違いなくあたしに注がれている。
そして、久しくこの感覚から遠ざかっていたあたしは自信を取り戻す。
あたしはニヤリと笑みを深め、エミリアへ渾身の嫌味を吐こうとするが、
「すみません!エミリア先輩! あたしと並んじゃうとエミリア先輩がより一層不憫に見えちゃ――っ!?」
その途中であたしはピタリを口を止めた。
「あのクリーム色のニット何処に売ってるんだろ?」
「あの濃い茶色のスカートも大人っぽくて素敵!」
そして視線を自分の服装へ移す。あたしが着ているのは赤いワンピース。それからエミリアの服装へ視線を移すと同時に、聞こえる女達の言葉はエミリアへ向けられた物だった事を知る。
そして女達のやり取りは更に続く。
「それにしても、一緒にいるもう一人の赤いワンピースの人……」
「私は敢えて触れないつもりでいたのに、そっちにも言及しちゃう?」
「うん、人相が悪いってゆうか……何か恐い貌した人だよね。……なんだか、夢に出てきそう」
「一緒にいる人が美人だと、より一層不憫に見えちゃうね」
「なんか赤い人が可哀想になってきた」
女としての自信を取り戻したのも束の間、あたしは再び奈落の底へ突き落とされる。
アリアに敗北して、更にはエミリアにまで……。
あたしはふとエミリアの顔へ視線を移すと、エミリアは哀れんだような目で、あたしの事を見つめていた。
あたしはエミリアに掴み掛かろうとするが、
「――そんな目であたしを見るな!!エミリアの分際で――っ!?」
駆け付けた警備兵に制止され、あたしはそのまま採用試験を不合格となってしまった。
そしてその後、あたしはギルバード侯爵家のメイドとしてエミリアが採用された事を風の噂で耳にし、
そして更に半年後――
ギルバード侯爵様とエミリアが婚約した事を知り、あたしは絶望感に打ちひしがれるのだった。
完全なる敗北感に悔しさと妬みでどうにかなってしまいそう。
「ぃやぁああーー!!!」
妬みと怒りにあたしは家の中を暴れ回る。
ガシャーン!!
「何であたしが、あたしがエミリアの娘なんかに負けるのよ!!」
ガシャーン!!
「メアリーやめなさい!!」
暴れ回るあたしを母は制止しようとしたが、
「うるさいクソババア!お前のせいであたしは負けたんだ!!」
その手を払い退け、その拍子に母は床へ尻もちをついた。あたしはそんな母へ目もくれず、怒りのままに暴れ続ける。
『――ひぃ、ば、化け物……』
村人があたしに向けた一言が浮かぶ。
「このあたしが化け物なわけないじゃない!!」
――怒り、屈辱、憎悪、絶望、恐怖、嫉妬……
負の感情が渦巻き、どうしようもない苦しさがあたしを襲う。
この苦しみから解放される為には――アリア、あの女よりもあたしが上だという事を世間に知らしめなければならない。
――アリアが子爵令息と結婚したならば、あたしはそれよりもっと格上の存在――ギルバード領領主、ギルバード侯爵様との結婚を目指す!
一年後――
鏡越しに映る赤いワンピース姿の自分を見つめ、思い出すのはあの時の、あの一言だ。
『……ひぃ、ば、化け物』
脳内を響き渡るその一言を振り払うかのようにあたしは首を振り、にっこりと、愛らしく笑みを作ってみた。
「……うん。今日のあたしも可愛い!」
そう自分に言い聞かせるように声を響かせ、あたしは鏡の前から立ち去る。
ニタァ……と、不気味な笑みを顔に刻んだ自分の顔を脳裏に焼き付けて。
あたしは今、ギルバード侯爵邸へと来ている。ギルバード侯爵家のメイド採用試験を受ける為だ。
平民のあたしにとって、ギルバード侯爵様は接触する事すら難しい雲の上の存在だ。
そんなあたしがギルバード侯爵様との結婚を目論むならば、まずはギルバード侯爵家の使用人となる道しか無いと考えたわけだが、
あたしはそこで、見覚えのある女を目にする。
「あれって、もしかしてエミリア?」
でも、おかしい。エミリアの年齢からして、あの容姿はあり得ない。
かつて、あの女からジョンを奪い取った時のエミリアは明らかに年齢の陰を落としていた。
あれから3年が経つというのに、その陰は深まるどころか、霧散して、女としての魅力が溢れんばかりにみなぎっているようだった。
あたしは近付いて声を掛けた。
「エミリア先輩?」
振り向いた女は確かにエミリアだった。
まるで女としての美しさを取り戻したようなエミリアの美貌に成長したアリアの美貌が重なる。
そして、脳裏に浮かぶのは鏡に映った不気味な笑みの自分。
「30を越えたオバサンが、恥ずかしげもなく侯爵家のメイドを目指すなんて、さすがはエミリア先輩ですね!!恐れ入りました!」
湧き上がる恐怖心を掻き消すかのように、あたしは虚勢を張った。丁度その時、
「ねぇ見て! あの人! すんごい綺麗な人」
「本当だ!」
「それに着ている服装も凄くお洒落!」
「メイドって綺麗な人が多いんでしょ?あんなに綺麗な人がライバルだなんて、私自信無くしちゃう」
遠巻きから聞こえる女達の声。
振り向くとそこには羨望の眼差しでこちらを見る二人の女。あたしがこれまで浴び続けてきた眼差しそのもの。間違いなくあたしに注がれている。
そして、久しくこの感覚から遠ざかっていたあたしは自信を取り戻す。
あたしはニヤリと笑みを深め、エミリアへ渾身の嫌味を吐こうとするが、
「すみません!エミリア先輩! あたしと並んじゃうとエミリア先輩がより一層不憫に見えちゃ――っ!?」
その途中であたしはピタリを口を止めた。
「あのクリーム色のニット何処に売ってるんだろ?」
「あの濃い茶色のスカートも大人っぽくて素敵!」
そして視線を自分の服装へ移す。あたしが着ているのは赤いワンピース。それからエミリアの服装へ視線を移すと同時に、聞こえる女達の言葉はエミリアへ向けられた物だった事を知る。
そして女達のやり取りは更に続く。
「それにしても、一緒にいるもう一人の赤いワンピースの人……」
「私は敢えて触れないつもりでいたのに、そっちにも言及しちゃう?」
「うん、人相が悪いってゆうか……何か恐い貌した人だよね。……なんだか、夢に出てきそう」
「一緒にいる人が美人だと、より一層不憫に見えちゃうね」
「なんか赤い人が可哀想になってきた」
女としての自信を取り戻したのも束の間、あたしは再び奈落の底へ突き落とされる。
アリアに敗北して、更にはエミリアにまで……。
あたしはふとエミリアの顔へ視線を移すと、エミリアは哀れんだような目で、あたしの事を見つめていた。
あたしはエミリアに掴み掛かろうとするが、
「――そんな目であたしを見るな!!エミリアの分際で――っ!?」
駆け付けた警備兵に制止され、あたしはそのまま採用試験を不合格となってしまった。
そしてその後、あたしはギルバード侯爵家のメイドとしてエミリアが採用された事を風の噂で耳にし、
そして更に半年後――
ギルバード侯爵様とエミリアが婚約した事を知り、あたしは絶望感に打ちひしがれるのだった。
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