6 / 84
第一章
第6話 決意
しおりを挟む
前世……『魔女』として生きた私は人々から疎まれ、孤独だった。
そんな私は『結婚』に強い憧れを持ち、それは今も変わらない。
前世を孤独に生き、孤独に死んだ私にとって、愛する人と死ぬまで一緒にいられる事は無上の喜びだ。
だから結婚が叶おうとしてる今、今度の人生こそ私は幸せになれると、そう信じていた……
誰かを愛し、誰かに愛され、支え合い、励まし合いながら、苦しくとも険しい人生を共に歩んで行く誓いこそが結婚なんじゃないの?
確かにこの結婚は急遽決まった貴族同士の政略結婚。私とヴィルドレット様も今日初めて会った。
だけれど、私はこの結婚を心から喜んでいるし、ヴィルドレット様の事を心から愛する誓いも立てている。
私はこの結婚に本気で臨んでいるけどヴィルドレット様はそうではないという事?
やっぱり今日の明日、いきなり結婚するのは気が引ける?
――それとも何? 本気だったけど、実際に会ってみて私はヴィルドレット様の好みのタイプでは無かったとか?
まぁ、貴族の間では美人で大人っぽい女性がモテるって言うしね……
それに引き換え、私は童顔で実年齢よりも幼く見られる事が多い……
「よろしければ、理由を……お聞かせ願えませんか?」
その真意を知るべく私は問いた。
で、それに対してヴィルドレット様からもたらされた答えが――
「……この結婚は『政略結婚』だ。故に、この結婚に『愛』は要らないはずだが?」
私が思い描いた幸せのかたちを壊すものだった。
やっぱりこうなるか……
実は、私にとってこの展開は全く予想していなかった事ではなく、むしろ想定内の事。
ただ、その『想定内』は最悪の展開である事に間違はない。
それでも私はなんとか食い下がろうと、ローブの裾をぎゅっと握り締めながら必死に言葉を紡ぎ出す。 結婚の為に――
「確かにこの結婚は政略結婚であり、今の私達の間に愛は無いのかもしれません。ですが、そんな寂しい事を仰らないで下さい。 私はこの結婚に希望を持ち、幸せな結婚生活を夢みているんです。 たとえ政略結婚であっても共に生活していく中で自然と愛は芽生えていくかと思うのですが――」
「――いや、私は無いと思う。……永遠に」
再びヴィルドレット様の言葉が遮った。
そ、そこまで言い切らなくても……
この一言に私の心は砕け散り、その後に返す言葉を失った。
思わず涙が溢れそうになった。でも、なんとか堪える。
今、この人に涙を見せたくない。
「……結婚式は明日だ。今ならまだ間に合う。この結婚取りやめるか?」
今の私の心情を悟った上での提案だろうが、この期に及んで私に選択権はもはや無い。
「いいえ。結構です! 予定通り明日、私達の結婚式を執り行いましょう。」
さっきまでの弱々しい声音から一転、低いトーンではっきりとした口調で私は答えた。 少しばかりの怒りの感情を込めながら。
さて、私達の結婚の有無について話を戻すと、私はこの結婚を無かった事にするつもりは無い。
そもそも、『――妻になってくれるか?』と言われている時点で、下級貴族の私の口からこの結婚を無くす事は出来ない。
それに、形はどうあれ前世の頃から夢焦がれた結婚が現実のものとなるのだ。 夫婦となれるのだ。
こんな形でも『嬉しい』の感情がある事に自分でも驚く。
それほどまでに私は結婚に憧れていたのだろう。 苦楽を共にし、男と女、常に隣りに寄り添い、綺麗な出来事も汚い出来事も出会ってからの一生を共に歩む――そんな結婚の形に。
とはいえ、永遠に愛されない結婚かぁ……という落胆の念も同時にあるのも事実で。
おそらくは愛そうともしてくれないのだろう。
正直腹立たしい気持ちもあるが、私はヴィルドレット様に対して腹を立てれる程きれいな女でもない。
いずれにせよ今更、無くす事の出来ないこの結婚。幸せになれるか、なれないかは私次第だろう。
いつか……
――『愛してる』と。
心からそう言われる女になりたい。そうなれるように努力しよう。いや、そうならなければならないのだ。
誰の為でもない、私自身の為に――
そんな私は『結婚』に強い憧れを持ち、それは今も変わらない。
前世を孤独に生き、孤独に死んだ私にとって、愛する人と死ぬまで一緒にいられる事は無上の喜びだ。
だから結婚が叶おうとしてる今、今度の人生こそ私は幸せになれると、そう信じていた……
誰かを愛し、誰かに愛され、支え合い、励まし合いながら、苦しくとも険しい人生を共に歩んで行く誓いこそが結婚なんじゃないの?
確かにこの結婚は急遽決まった貴族同士の政略結婚。私とヴィルドレット様も今日初めて会った。
だけれど、私はこの結婚を心から喜んでいるし、ヴィルドレット様の事を心から愛する誓いも立てている。
私はこの結婚に本気で臨んでいるけどヴィルドレット様はそうではないという事?
やっぱり今日の明日、いきなり結婚するのは気が引ける?
――それとも何? 本気だったけど、実際に会ってみて私はヴィルドレット様の好みのタイプでは無かったとか?
まぁ、貴族の間では美人で大人っぽい女性がモテるって言うしね……
それに引き換え、私は童顔で実年齢よりも幼く見られる事が多い……
「よろしければ、理由を……お聞かせ願えませんか?」
その真意を知るべく私は問いた。
で、それに対してヴィルドレット様からもたらされた答えが――
「……この結婚は『政略結婚』だ。故に、この結婚に『愛』は要らないはずだが?」
私が思い描いた幸せのかたちを壊すものだった。
やっぱりこうなるか……
実は、私にとってこの展開は全く予想していなかった事ではなく、むしろ想定内の事。
ただ、その『想定内』は最悪の展開である事に間違はない。
それでも私はなんとか食い下がろうと、ローブの裾をぎゅっと握り締めながら必死に言葉を紡ぎ出す。 結婚の為に――
「確かにこの結婚は政略結婚であり、今の私達の間に愛は無いのかもしれません。ですが、そんな寂しい事を仰らないで下さい。 私はこの結婚に希望を持ち、幸せな結婚生活を夢みているんです。 たとえ政略結婚であっても共に生活していく中で自然と愛は芽生えていくかと思うのですが――」
「――いや、私は無いと思う。……永遠に」
再びヴィルドレット様の言葉が遮った。
そ、そこまで言い切らなくても……
この一言に私の心は砕け散り、その後に返す言葉を失った。
思わず涙が溢れそうになった。でも、なんとか堪える。
今、この人に涙を見せたくない。
「……結婚式は明日だ。今ならまだ間に合う。この結婚取りやめるか?」
今の私の心情を悟った上での提案だろうが、この期に及んで私に選択権はもはや無い。
「いいえ。結構です! 予定通り明日、私達の結婚式を執り行いましょう。」
さっきまでの弱々しい声音から一転、低いトーンではっきりとした口調で私は答えた。 少しばかりの怒りの感情を込めながら。
さて、私達の結婚の有無について話を戻すと、私はこの結婚を無かった事にするつもりは無い。
そもそも、『――妻になってくれるか?』と言われている時点で、下級貴族の私の口からこの結婚を無くす事は出来ない。
それに、形はどうあれ前世の頃から夢焦がれた結婚が現実のものとなるのだ。 夫婦となれるのだ。
こんな形でも『嬉しい』の感情がある事に自分でも驚く。
それほどまでに私は結婚に憧れていたのだろう。 苦楽を共にし、男と女、常に隣りに寄り添い、綺麗な出来事も汚い出来事も出会ってからの一生を共に歩む――そんな結婚の形に。
とはいえ、永遠に愛されない結婚かぁ……という落胆の念も同時にあるのも事実で。
おそらくは愛そうともしてくれないのだろう。
正直腹立たしい気持ちもあるが、私はヴィルドレット様に対して腹を立てれる程きれいな女でもない。
いずれにせよ今更、無くす事の出来ないこの結婚。幸せになれるか、なれないかは私次第だろう。
いつか……
――『愛してる』と。
心からそう言われる女になりたい。そうなれるように努力しよう。いや、そうならなければならないのだ。
誰の為でもない、私自身の為に――
0
あなたにおすすめの小説
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する
ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。
夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。
社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。
ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。
「私たち、離婚しましょう」
アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。
どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。
彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。
アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。
こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。
何もしない公爵夫人ですが、なぜか屋敷がうまく回っています
鷹 綾
恋愛
辺境公爵カーネル・クリスの妻となったフィレ・バーナード。
けれど彼女は、屋敷を仕切ることも、改革を行うことも、声高に意見を述べることもしなかった。
指示を出さない。
判断を奪わない。
必要以上に関わらない。
「何もしない夫人」として、ただ静かにそこにいるだけ。
それなのに――
いつの間にか屋敷は落ち着き、
使用人たちは迷わなくなり、
人は出入りし、戻り、また進んでいくようになる。
誰かに依存しない。
誰かを支配しない。
それでも確かに“安心できる場所”は、彼女の周りに残っていた。
必要とされなくてもいい。
役に立たなくてもいい。
それでも、ここにいていい。
これは、
「何もしない」ことで壊れなかった関係と、
「奪わない」ことで続いていった日常を描く、
静かでやさしい結婚生活の物語。
【完結】王宮内は安定したらしいので、第二王子と国内の視察に行ってきます!(呼ばれたみたいなので、異世界でも生きてみます。の続編です)
まりぃべる
恋愛
異世界に呼ばれた佐川マリア。マリア・サガワとしてこの世界で生きて行く事に決め、第二王子殿下のルークウェスト=ヴァン=ケルンベルトと一緒に、この国をより良くしていきます!って、実際は2人で旅行がしたかっただけ?
呼ばれたみたいなので、異世界でも生きてみます。の続編です。
長くなりましたので、前作の続きでは無く新しくしました。前作でしおりを挟んでくれた方ありがとうございました。
読んでなくても分かるようにしております。けれど、分かりにくかったらすみません。
前作も読んで下さると嬉しいです。
まだまだ未熟なので、稚拙ではありますが、読んでいただけると嬉しいです。
☆前作で読者様よりご指摘が有りましたのでこちらにも記載しておきます。
主人公の年齢は設定としてありますが、読者様が主人公になれたらな(もしくは好きな年齢に当てはめて読めたら)という思いを込めて敢えて年齢を記載していません。
あなたの側にいられたら、それだけで
椎名さえら
恋愛
目を覚ましたとき、すべての記憶が失われていた。
私の名前は、どうやらアデルと言うらしい。
傍らにいた男性はエリオットと名乗り、甲斐甲斐しく面倒をみてくれる。
彼は一体誰?
そして私は……?
アデルの記憶が戻るとき、すべての真実がわかる。
_____________________________
私らしい作品になっているかと思います。
ご都合主義ですが、雰囲気を楽しんでいただければ嬉しいです。
※私の商業2周年記念にネップリで配布した短編小説になります
※表紙イラストは 由乃嶋 眞亊先生に有償依頼いたしました(投稿の許可を得ています)
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる