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第一章
第44話 魔女と聖女
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広さはエドワード家屋敷の大広間くらいだろうか。教会としては一般的な広さだろう。
これまでのお祝いムードから一転、教会の中は静寂に包まれ、内装は白を基調としていて、とても神秘的な雰囲気だ。
入り口から見て10メートル程先に白髪の神父が立ち、その背後には神々しいまでの壁画が描かれている。
私とヴィルドレット様は静寂の中を真っ直ぐに神父目掛け歩を進める。
今、教会内に居るのは神父と私達のみだ。
これから家族さえ立ち会えない厳格な儀式をこの場所で行うのだが、その内容は至ってシンプル。要は永遠の愛を誓い合うのだ。
この神々しいまでに美しく描かれた『大聖女イリアス』の壁画の前で。
壁画には2人の女が対峙している様が描かれている。
右側に大聖女イリアス――長く美しい桃色髪を靡かせ魔法の杖を手に持ち、その先から神々しい光が放たれている。
一方、それと向かい合う形で、左側に描かれているのは黒いローブを身に纏い、深く被ったフードの縁から短めの銀髪だという事だけが確認できる女の姿。そして、その手にも魔法の杖が握られている。
――破滅の魔女シャルナ。
そう。この壁画の中で大聖女イリアスと対峙しているのは、前世の私だ。
私は壁画を見据えながらヴィルドレット様と共に神父の前で立ち止まった。
「それではこれより縁結びの儀を執り行いたいと存じます。よろしいですかな?」
「はい」
「あぁ」
神父の言葉に返事をすると、神父は軽く頷きそのままクルっと反転、壁画のほうを向いた。
「魔女を討ち滅ぼし大聖女イリアスよ。其方が齎した安寧は今日まで続き、ここにまた2人の男女が愛を芽吹かせ、結ばれようとしている。
願わくば、この2人に聖なる加護を頂きたく存ずる」
破滅の魔女シャルナ(私)を討伐した大聖女イリアスは文字通り神のように崇められ、今こうして人々が平和に過ごせているのも大聖女イリアスが破滅の魔女(私)を倒したお陰で、大聖女イリアス無くして今の世はあり得ない。と、されているらしい。彼女が神として崇められる所以はそれだ。
壁画へ向かっていた神父はこちらへ向き直り、私を見た。
「それではまず、新婦様より大聖女イリアスへ向かって、誓いの言葉を述べて下さい」
縁結びの儀の核心はこれだ。神格化した大聖女イリアスの前で愛を誓う。
前世で命を奪われた相手の前で、ヴィルドレット様との永遠の愛を誓うとは何とも皮肉な事だ。
生きているだけで辛いと感じてしまう程、不幸な前世だった。
孤独感に苛まれ『幸せ』に只々憧れるだけの日々を延々と過ごす事は耐え難く辛かった。
でも、だからといって死にたいと思った事は無かった。クロが居てくれた時はもちろん。クロが死んだ後も、幸せを夢見ながらひたむきに生きていた。
私を殺したイリアスに対して「辛い人生を終わらせてくれてありがとう」だなんて事は全く思わないし、憎い。
不本意ではあるけど、この儀式が秩序ならそれに従うしかない。ここで拒めば、この結婚そのものを拒んだと受け取られるに違いないから。
私は壁画のイリアスの方へ体を向けた。
「私は夫となるヴィルドレット・エドワード様を生涯掛けて愛する事をここに誓います」
神父は私からヴィルドレット様へ視線を移した。
「では、次に新郎様」
ヴィルドレット様も私と同じくイリアスの方へ――って――
はい!?
「あ、あの……ヴィルドレット様!?」
あろう事か、ヴィルドレット様は左側、破滅の魔女シャルナ(私)の方へ体を向けたのだ。
「新郎殿、そちらは魔女ですぞ?」
神父は、ただの間違いだろうと、慌てる事なくそれを正したが、
「魔女。俺は君から受けた呪いにこれまで屈する事しか出来なかった。しかし、俺はようやくそれに抗う決心が出来た。俺は……ハンナと結婚するよ」
???
ヴィルドレット様の言葉の全てが理解不能で、神父も私も呆気に取られる。
「あ、あの、ヴィルドレット何を言っておられるのですか? それに……」
私から受けた呪いって、一体何?
結局多くの謎はそのまま分からないまま私達の結婚式は無事?に終わった。
これまでのお祝いムードから一転、教会の中は静寂に包まれ、内装は白を基調としていて、とても神秘的な雰囲気だ。
入り口から見て10メートル程先に白髪の神父が立ち、その背後には神々しいまでの壁画が描かれている。
私とヴィルドレット様は静寂の中を真っ直ぐに神父目掛け歩を進める。
今、教会内に居るのは神父と私達のみだ。
これから家族さえ立ち会えない厳格な儀式をこの場所で行うのだが、その内容は至ってシンプル。要は永遠の愛を誓い合うのだ。
この神々しいまでに美しく描かれた『大聖女イリアス』の壁画の前で。
壁画には2人の女が対峙している様が描かれている。
右側に大聖女イリアス――長く美しい桃色髪を靡かせ魔法の杖を手に持ち、その先から神々しい光が放たれている。
一方、それと向かい合う形で、左側に描かれているのは黒いローブを身に纏い、深く被ったフードの縁から短めの銀髪だという事だけが確認できる女の姿。そして、その手にも魔法の杖が握られている。
――破滅の魔女シャルナ。
そう。この壁画の中で大聖女イリアスと対峙しているのは、前世の私だ。
私は壁画を見据えながらヴィルドレット様と共に神父の前で立ち止まった。
「それではこれより縁結びの儀を執り行いたいと存じます。よろしいですかな?」
「はい」
「あぁ」
神父の言葉に返事をすると、神父は軽く頷きそのままクルっと反転、壁画のほうを向いた。
「魔女を討ち滅ぼし大聖女イリアスよ。其方が齎した安寧は今日まで続き、ここにまた2人の男女が愛を芽吹かせ、結ばれようとしている。
願わくば、この2人に聖なる加護を頂きたく存ずる」
破滅の魔女シャルナ(私)を討伐した大聖女イリアスは文字通り神のように崇められ、今こうして人々が平和に過ごせているのも大聖女イリアスが破滅の魔女(私)を倒したお陰で、大聖女イリアス無くして今の世はあり得ない。と、されているらしい。彼女が神として崇められる所以はそれだ。
壁画へ向かっていた神父はこちらへ向き直り、私を見た。
「それではまず、新婦様より大聖女イリアスへ向かって、誓いの言葉を述べて下さい」
縁結びの儀の核心はこれだ。神格化した大聖女イリアスの前で愛を誓う。
前世で命を奪われた相手の前で、ヴィルドレット様との永遠の愛を誓うとは何とも皮肉な事だ。
生きているだけで辛いと感じてしまう程、不幸な前世だった。
孤独感に苛まれ『幸せ』に只々憧れるだけの日々を延々と過ごす事は耐え難く辛かった。
でも、だからといって死にたいと思った事は無かった。クロが居てくれた時はもちろん。クロが死んだ後も、幸せを夢見ながらひたむきに生きていた。
私を殺したイリアスに対して「辛い人生を終わらせてくれてありがとう」だなんて事は全く思わないし、憎い。
不本意ではあるけど、この儀式が秩序ならそれに従うしかない。ここで拒めば、この結婚そのものを拒んだと受け取られるに違いないから。
私は壁画のイリアスの方へ体を向けた。
「私は夫となるヴィルドレット・エドワード様を生涯掛けて愛する事をここに誓います」
神父は私からヴィルドレット様へ視線を移した。
「では、次に新郎様」
ヴィルドレット様も私と同じくイリアスの方へ――って――
はい!?
「あ、あの……ヴィルドレット様!?」
あろう事か、ヴィルドレット様は左側、破滅の魔女シャルナ(私)の方へ体を向けたのだ。
「新郎殿、そちらは魔女ですぞ?」
神父は、ただの間違いだろうと、慌てる事なくそれを正したが、
「魔女。俺は君から受けた呪いにこれまで屈する事しか出来なかった。しかし、俺はようやくそれに抗う決心が出来た。俺は……ハンナと結婚するよ」
???
ヴィルドレット様の言葉の全てが理解不能で、神父も私も呆気に取られる。
「あ、あの、ヴィルドレット何を言っておられるのですか? それに……」
私から受けた呪いって、一体何?
結局多くの謎はそのまま分からないまま私達の結婚式は無事?に終わった。
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