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第二章
第47話 聖女を名乗る悪魔
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私は今、フェリクス王子からのお呼び立てで王城を訪れている。
「君の訪れを今か今かと待ち侘びていたところだよ。アリス」
「わたくしもですわ。フェリクス様」
フェリクス王子は顔を見るや否や私を抱き寄せ、キスをした。
「僕は君を選んで正解だったよ。君のように可憐で美しい女性は世界中どこを探しても見つからないだろう」
「まぁ、フェリクス様ったらお上手ですこと」
「その言葉使いも、僕との結婚を見据えての事かい?」
今の私の身分はまだ平民だ。こんな貴族令嬢みたいな言葉使いは元々していない。しかし、フェリクス様と結婚すれば私も王族となる。
「えぇ。 妻としてフェリクス様に恥をかかせない為にも、今の内に言葉使いから変えていかなければ、と思いまして」
「なんて素晴らしい心構えなんだ。 こんな君に嫌がらせをしていたなんて、やはりシンシアは処刑して正解だったようだ」
シンシア――フェリクス王子の元婚約者だ。
「シンシア様の処刑に立ち会うのはとても辛かったですわ。しかし、わたくしは聖女。ひたすら祈り続け、目を背く事無く、彼女の最期をしっかりと見届けましたわ。思い出しただけで涙が……」
嘘だけど。涙を堪えるどころか笑いを堪えるのに必死だったわ!
「虐められて尚、シンシアの事で心を痛め、涙まで流せる君は本当に優しい心の持ち主なんだな。 やはり君の前世は大聖女イリアスで間違いないようだ」
……よし、よし。 単純な男で助かるわ。
正直、私が大聖女イリアスの生まれ変わりである事に疑念を抱く者は多い。 なにせ、魔力以外で証明出来るものが無いのだから。
フェリクス王子においても半信半疑といったところだろう。
しかし、今の演技で落ちた。 前世が大聖女イリアスである事をフェリクス第一王子に信じ込ませられたのはかなり大きい。
この調子で行けば、再び前世頃のような栄光を、きっと今世でも手に入れられるはず。ただ、その道のりはまだまだ険しいだろうけれど。
今世でもまた、破滅の魔女みたく恰好の踏み台が現れてくれないかしらねぇ。
「それはそうと、フェリクス様。今日はどういったご用件で?」
「あぁ、そうだったな。目の前の君に夢中になって忘れていたよ」
「まぁ」
私に見惚れない男なんて居ないわ。
「僕の新しい婚約者である君のお披露目パーティーを開こうと思ってね」
「まぁ! わたくしのような平民にはもったいないご厚意、大変嬉しく存じます。」
「それと、僕達の結婚式の話も進めていこう。絶対に結婚しないと思っていた、あのヴィルドレットが結婚したらしいからね。僕も負けてはいられない」
「え……なんですって!? あの、ヴィルドレット様が結婚なさったですって!?」
私はフェリクス王子の言葉の前半部分には全く触れず、後半部分にだけ噛みついたような反応を示した。
「……あ、あぁ。」
私の剣幕に押されてたじろぐフェリクス王子。
「いつですか!? 誰と!?」
「……今日、ちょうど今結婚式を挙げているところだろう」
ここへ来る途中、エドワード領の方角から盛大な歓声が上がっていたのはそれか。
「ですから、誰と!?」
「……ハンナ・スカーレットという男爵令嬢らしいが……」
私が本当に、最も欲した男は王国一の美丈夫と謳われるヴィルドレット様だ!
しかし、ヴィルドレット様は生涯未婚を公言していたはず。だから仕方なく次点候補のフェリクス王子と婚約した。
一体どこの小娘が、ヴィルドレット様を射止めたというの!?
私より幸せな女なんて絶対に認めない!許さない!!
ハンナ・スカーレットとか言ったわね。今に見ておきなさい。あんたのその場所は私のものよ。
「君の訪れを今か今かと待ち侘びていたところだよ。アリス」
「わたくしもですわ。フェリクス様」
フェリクス王子は顔を見るや否や私を抱き寄せ、キスをした。
「僕は君を選んで正解だったよ。君のように可憐で美しい女性は世界中どこを探しても見つからないだろう」
「まぁ、フェリクス様ったらお上手ですこと」
「その言葉使いも、僕との結婚を見据えての事かい?」
今の私の身分はまだ平民だ。こんな貴族令嬢みたいな言葉使いは元々していない。しかし、フェリクス様と結婚すれば私も王族となる。
「えぇ。 妻としてフェリクス様に恥をかかせない為にも、今の内に言葉使いから変えていかなければ、と思いまして」
「なんて素晴らしい心構えなんだ。 こんな君に嫌がらせをしていたなんて、やはりシンシアは処刑して正解だったようだ」
シンシア――フェリクス王子の元婚約者だ。
「シンシア様の処刑に立ち会うのはとても辛かったですわ。しかし、わたくしは聖女。ひたすら祈り続け、目を背く事無く、彼女の最期をしっかりと見届けましたわ。思い出しただけで涙が……」
嘘だけど。涙を堪えるどころか笑いを堪えるのに必死だったわ!
「虐められて尚、シンシアの事で心を痛め、涙まで流せる君は本当に優しい心の持ち主なんだな。 やはり君の前世は大聖女イリアスで間違いないようだ」
……よし、よし。 単純な男で助かるわ。
正直、私が大聖女イリアスの生まれ変わりである事に疑念を抱く者は多い。 なにせ、魔力以外で証明出来るものが無いのだから。
フェリクス王子においても半信半疑といったところだろう。
しかし、今の演技で落ちた。 前世が大聖女イリアスである事をフェリクス第一王子に信じ込ませられたのはかなり大きい。
この調子で行けば、再び前世頃のような栄光を、きっと今世でも手に入れられるはず。ただ、その道のりはまだまだ険しいだろうけれど。
今世でもまた、破滅の魔女みたく恰好の踏み台が現れてくれないかしらねぇ。
「それはそうと、フェリクス様。今日はどういったご用件で?」
「あぁ、そうだったな。目の前の君に夢中になって忘れていたよ」
「まぁ」
私に見惚れない男なんて居ないわ。
「僕の新しい婚約者である君のお披露目パーティーを開こうと思ってね」
「まぁ! わたくしのような平民にはもったいないご厚意、大変嬉しく存じます。」
「それと、僕達の結婚式の話も進めていこう。絶対に結婚しないと思っていた、あのヴィルドレットが結婚したらしいからね。僕も負けてはいられない」
「え……なんですって!? あの、ヴィルドレット様が結婚なさったですって!?」
私はフェリクス王子の言葉の前半部分には全く触れず、後半部分にだけ噛みついたような反応を示した。
「……あ、あぁ。」
私の剣幕に押されてたじろぐフェリクス王子。
「いつですか!? 誰と!?」
「……今日、ちょうど今結婚式を挙げているところだろう」
ここへ来る途中、エドワード領の方角から盛大な歓声が上がっていたのはそれか。
「ですから、誰と!?」
「……ハンナ・スカーレットという男爵令嬢らしいが……」
私が本当に、最も欲した男は王国一の美丈夫と謳われるヴィルドレット様だ!
しかし、ヴィルドレット様は生涯未婚を公言していたはず。だから仕方なく次点候補のフェリクス王子と婚約した。
一体どこの小娘が、ヴィルドレット様を射止めたというの!?
私より幸せな女なんて絶対に認めない!許さない!!
ハンナ・スカーレットとか言ったわね。今に見ておきなさい。あんたのその場所は私のものよ。
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