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第二章
第75 消えた新妻
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ハンナの後を追って食堂を飛び出した俺は人混みの中にハンナの姿を探す。
まだ近くにいるはずだ。
着ていた服装に似た女性一人一人に目を凝らし、違うと思ったら次へ次へと視線を移していく。
「ハンナ!!」
堪らず声に出してハンナを呼ぶが、行き交う人々がもの珍しそうな表情でこちらを向くだけでその中にハンナの顔は無い。
――いない。
目で探すのを諦めて俺は駆け出した。
日が傾きだし、青かった空はオレンジ色に染まろうとしていた。
「はぁ……はぁ……」
行き交う人混みの中を一人、俺は手を膝につき息を切らす。
俺は決して小さくないこの街の全てを巡りながら、必死にハンナの姿を探した。しかし今だに見つけ出せずにいる。
「――っ」
息を整え、再び駆け出そうと――
「お坊ちゃま!!」
後ろからルイスの声に呼び止められた。
「いくら待てど一向に戻って来る気配がありませんでしたので――」
ルイスは違和感に気づいたようで、辺りに視線を巡らせ、再び口を開いた。
「ハンナお嬢様は?」
◎
コッコッコと人差し指でテーブルを叩く音が大広間に響く。苛立ちを全面に出した父が口を開いた。
「して、ハンナは何故お前のもとを去るに至った?」
「…………」
言葉に詰まらせる俺に父は続ける。
「ハンナは帰ってくるんだろうな?」
「……いいえ。 おそらくは……」
「おそらくは――何だ?」
高圧的に続きを促す父に、
『……ごんなさい――』
俺はハンナの去り際の様子を思い出し、それに答える。
「おそらく、こちらへは戻らないものかと……」
ダンッ!!と、父がテーブルを叩いた。
「何故だ!? お前、ハンナに何をした? 何故このような事になった!?理由を言え!」
「…………」
何故?と聞かれても答えようが無い。
もし、答えるとするならば、それは俺の中での想い人、即ち魔女の存在をハンナに知られた為だ、と、答えるしかない。
しかし、そんな事を言ってしまえば俺は全てを打ち明けなければならなくなる。
俺の前世が魔女の飼い猫だった事。魔女に恋心を抱いていた事。そして、その恋心を今もまだ持ち続けている事を。
そんな事を言えるはずもない。だから俺は口をつぐむしかできない。
――ダンッ!!
「……何故かと、聞いている。 言え」
父の苛立ちは頂点に達し、それが表情に見て取れる。次で言わなければおそらく殴り掛かってくるだろう。それほど高圧的で怒りを宿した目で俺を睨んでくる。
「…………」
それでも俺は吐くわけにはいかない。そもそもどう説明していいのか分からない俺は沈黙を守り続けた。
――ガタッ!
そんな俺に痺れを切らしたのか椅子に座っていた父がとうとう立ち上がった。 丁度その時だった。
「旦那様、お坊ちゃま――」
スカーレット家へ身を寄せたであろうハンナ自身へ向けた和解の親書と、スカーレット男爵卿へ心配と迷惑をかけてしまった事への謝罪、及び後日ハンナを迎えに伺いたい旨を綴った親書を届けに行っていたルイスが血相を変えて戻って来た。
「どうしたルイス、ハンナはやはりスカーレット家へ戻っていたか!?」
普段飄々として滅多に慌てる事のないルイスのただならぬ様子に父が恐る恐る問いかると、
「――――」
ルイスは首を横に振った。
「いいえ。 ハンナお嬢様はスカーレット家へは戻られておりませんでした」
「「何!?」」
既に夜は更けている。一体ハンナは何処へ……。
◎
ハンナが姿を消した翌日、突如王家から出された一報は衝撃的な内容だった。
《現代へ蘇りし『破滅の魔女』の公開処刑を明日、王城にて行う》
まだ近くにいるはずだ。
着ていた服装に似た女性一人一人に目を凝らし、違うと思ったら次へ次へと視線を移していく。
「ハンナ!!」
堪らず声に出してハンナを呼ぶが、行き交う人々がもの珍しそうな表情でこちらを向くだけでその中にハンナの顔は無い。
――いない。
目で探すのを諦めて俺は駆け出した。
日が傾きだし、青かった空はオレンジ色に染まろうとしていた。
「はぁ……はぁ……」
行き交う人混みの中を一人、俺は手を膝につき息を切らす。
俺は決して小さくないこの街の全てを巡りながら、必死にハンナの姿を探した。しかし今だに見つけ出せずにいる。
「――っ」
息を整え、再び駆け出そうと――
「お坊ちゃま!!」
後ろからルイスの声に呼び止められた。
「いくら待てど一向に戻って来る気配がありませんでしたので――」
ルイスは違和感に気づいたようで、辺りに視線を巡らせ、再び口を開いた。
「ハンナお嬢様は?」
◎
コッコッコと人差し指でテーブルを叩く音が大広間に響く。苛立ちを全面に出した父が口を開いた。
「して、ハンナは何故お前のもとを去るに至った?」
「…………」
言葉に詰まらせる俺に父は続ける。
「ハンナは帰ってくるんだろうな?」
「……いいえ。 おそらくは……」
「おそらくは――何だ?」
高圧的に続きを促す父に、
『……ごんなさい――』
俺はハンナの去り際の様子を思い出し、それに答える。
「おそらく、こちらへは戻らないものかと……」
ダンッ!!と、父がテーブルを叩いた。
「何故だ!? お前、ハンナに何をした? 何故このような事になった!?理由を言え!」
「…………」
何故?と聞かれても答えようが無い。
もし、答えるとするならば、それは俺の中での想い人、即ち魔女の存在をハンナに知られた為だ、と、答えるしかない。
しかし、そんな事を言ってしまえば俺は全てを打ち明けなければならなくなる。
俺の前世が魔女の飼い猫だった事。魔女に恋心を抱いていた事。そして、その恋心を今もまだ持ち続けている事を。
そんな事を言えるはずもない。だから俺は口をつぐむしかできない。
――ダンッ!!
「……何故かと、聞いている。 言え」
父の苛立ちは頂点に達し、それが表情に見て取れる。次で言わなければおそらく殴り掛かってくるだろう。それほど高圧的で怒りを宿した目で俺を睨んでくる。
「…………」
それでも俺は吐くわけにはいかない。そもそもどう説明していいのか分からない俺は沈黙を守り続けた。
――ガタッ!
そんな俺に痺れを切らしたのか椅子に座っていた父がとうとう立ち上がった。 丁度その時だった。
「旦那様、お坊ちゃま――」
スカーレット家へ身を寄せたであろうハンナ自身へ向けた和解の親書と、スカーレット男爵卿へ心配と迷惑をかけてしまった事への謝罪、及び後日ハンナを迎えに伺いたい旨を綴った親書を届けに行っていたルイスが血相を変えて戻って来た。
「どうしたルイス、ハンナはやはりスカーレット家へ戻っていたか!?」
普段飄々として滅多に慌てる事のないルイスのただならぬ様子に父が恐る恐る問いかると、
「――――」
ルイスは首を横に振った。
「いいえ。 ハンナお嬢様はスカーレット家へは戻られておりませんでした」
「「何!?」」
既に夜は更けている。一体ハンナは何処へ……。
◎
ハンナが姿を消した翌日、突如王家から出された一報は衝撃的な内容だった。
《現代へ蘇りし『破滅の魔女』の公開処刑を明日、王城にて行う》
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