転移したらダンジョンの下層だった

Gai

文字の大きさ
565 / 1,293

五百四十四話 ゼロになってからグサグサ

しおりを挟む
「まっ、当然こうなるよな」

訓練場に移り、生徒たちとゼルートが模擬戦を始めてから約三十分……ダイアスの目の前には疲労とプライドがズタボロに折られた生徒たちが倒れていた。

「大体こんなもんだよな。うんうん、学生らしくてなによりだ」

そしてソウスケが意識的に言葉のナイフを飛ばし、生徒たちの背中にグサリと刺さり、HPがゼロからマイナスになった。

自身の見た目と年齢、ランクのせいで弱く思われたりするのは仕方ない。
だが、そこかでストレス発散はしたいと思い、ついオーバーキルをかます。

「どうだ、自分で言うのもなんだけど、見た目で判断したら痛い目に合う強さだっただろ」

疲れがあるというのも一つの理由だが、それよりも自分が今まで積み上げてきた強さをプライドをへし折られた影響が強く、まともに頷くことが出来ない。

しかし、ソウスケにコテンパンに負けたのは紛れもない事実。
否定の声は一つも上がらなかった。

「それと、一つ言いたいんだが……お前ら誰も鑑定系のスキルを持ってないだろ。なのに俺が弱いって決めつけるのは良くないというか……馬鹿丸出しだと思うぞ」

もう一つナイフを投げた。

ただ、事前に鑑定でこっそりと生徒たちのステータスを除いたので、誰も鑑定系のスキルを持っていないというのは知っている。

そしてそれを知ってしまうと、少々言葉は厳しいが思わず注意せずにはいられなかった。

「そもそも外見で人の実力を判断するのも良くないが、まずは鑑定系のスキルを持っていないなら。戦う前から相手の実力を断定するのは良くないぞ」

まさしくその通りなので、ミレアナやザハークだけではなくダイアスも頷く。

「外見が幼い。でも自分たちは鑑定系のスキルを持っていない。だが、相手はダイアスが連れて来た冒険者。そういった情報が揃ってるんだから、ちょっとは警戒しながら戦えよ」

もう一発ナイフが投げられ、膝を付いていた生徒たちが耐え切れず、地面に倒れ込んだ。

ソウスケの鋭いナイフでダメージを受けている生徒が多数いるが、何一つ間違ったことは言っていない。
そして生徒たちが物理的なダメージよりも、精神的に大きなダメージを負っているのを見てもダイアスの心は痛んでおらず、寧ろ羨ましいと思っていた。

(こういった早い段階でソウスケ君の様な強者と戦えたことは、紛れもない幸運だ。ここで挫折を味わえるのも、な……)

ソウスケは冒険者の中でも例外中の例外の存在。
その体は、文字通り神の手によってつくり替えられた人間。

この世界ではエリートに分類されるSクラスの生徒たちであっても、敵わないのは至極当然。

「お前ら、Sクラスの生徒……つまり、エリートなんだろ。だったら、もう少しクール頭を持ったらどうだ。全員が暑苦しい猪突猛進なイノシシとは言わないけどさ。血に頭が上る奴が多いよ」

「ソウスケ君、それぐらいにしてやってくれ。それ以上言うと、生徒たちが立ち直れなくなってしまうからさ」

「ん? ……確かに、そうかもしれないな。でも、体力はまだあるだろうし……よし、まだ時間はあるんだから有効活用しよう」

まだ授業が終わるまで数十分はある。
幸いにも、ソウスケが上手く手加減していたので大怪我を負った生徒は一人もいない。

「お前ら、適当に半々に別れてミレアナとザハークと模擬戦だ」

「す、直ぐにですか」

「あぁ、直ぐにだ。俺と戦った時間なんてたった数分だろ。それに十数人で戦うんだ。そこら辺は考えて戦え。あっ、それと……十数人で戦うんだから簡単に倒せるとか、的外れなことを考えるんじゃねぇぞ。ザハークはこの前、ソロでAランクのモンスターを倒したんだ」

ポロっと発した言葉に、生徒全員が口をあんぐりと開けて驚いた。

「ミレアナも同じぐらいの実力を持ってるから、模擬戦って次元で戦うな。殺す気で戦っても問題無い。それじゃ……まずはミレアナからとだ」

「お任せください。あなたたち、一分だけ時間を上げます。その間に二チームに別れなさい」

ミレアナの少々冷たい声に怯えながら、生徒たちはチームのバランスを考えて別れ始めた。
しおりを挟む
感想 254

あなたにおすすめの小説

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

転生幼子は生きのびたい

えぞぎんぎつね
ファンタジー
 大貴族の次男として生まれたノエルは、生後八か月で誘拐されて、凶悪な魔物が跋扈する死の山に捨てられてしまった。  だが、ノエルには前世の記憶がある。それに優れた魔法の才能も。  神獣の猫シルヴァに拾われたノエルは、親を亡くした赤ちゃんの聖獣犬と一緒に、神獣のお乳を飲んで大きくなる。  たくましく育ったノエルはでかい赤ちゃん犬と一緒に、元気に楽しく暮らしていくのだった。  一方、ノエルの生存を信じている両親はノエルを救出するために様々な手段を講じていくのだった。 ※ネオページ、カクヨムにも掲載しています

精霊に愛された錬金術師、チートすぎてもはや無敵!?

あーもんど
ファンタジー
精霊の愛し子で、帝国唯一の錬金術師である公爵令嬢プリシラ。 彼女は今日もマイペースに、精霊達と楽しくモノ作りに励む。 ときどき、悪人を断罪したり人々を救ったりしながら。 ◆小説家になろう様にて、先行公開中◆ ◆三人称視点で本格的に書くのは初めてなので、温かい目で見守っていただけますと幸いです◆

公爵閣下、社交界の常識を学び直しては?

碧井 汐桜香
ファンタジー
若い娘好きの公爵は、気弱な令嬢メリシアルゼに声をかけた。 助けを求めるメリシアルゼに、救いの手は差し出されない。 母ですら、上手くやりなさいと言わんばかりに視線をおくってくる。 そこに現れた貴婦人が声をかける。 メリシアルゼの救いの声なのか、非難の声なのか。

奪う人たちは放っておいて私はお菓子を焼きます

タマ マコト
ファンタジー
伯爵家の次女クラリス・フォン・ブランディエは、姉ヴィオレッタと常に比較され、「控えめでいなさい」と言われ続けて育った。やがて姉の縁談を機に、母ベアトリスの価値観の中では自分が永遠に“引き立て役”でしかないと悟ったクラリスは、父が遺した領都の家を頼りに自ら家を出る。 領都の端でひとり焼き菓子を焼き始めた彼女は、午後の光が差す小さな店『午後の窓』を開く。そこへ、紅茶の香りに異様に敏感な謎の青年が現れる。名も素性も明かさぬまま、ただ菓子の味を静かに言い当てる彼との出会いが、クラリスの新しい人生をゆっくりと動かし始める。 奪い合う世界から離れ、比較されない場所で生きると決めた少女の、静かな再出発の物語。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

ボンクラ王子の側近を任されました

里見知美
ファンタジー
「任されてくれるな?」  王宮にある宰相の執務室で、俺は頭を下げたまま脂汗を流していた。  人の良い弟である現国王を煽てあげ国の頂点へと導き出し、王国騎士団も魔術師団も視線一つで操ると噂の恐ろしい影の実力者。  そんな人に呼び出され開口一番、シンファエル殿下の側近になれと言われた。  義妹が婚約破棄を叩きつけた相手である。  王子16歳、俺26歳。側近てのは、年の近い家格のしっかりしたヤツがなるんじゃねえの?

大陸を散策する聖女と滅ぶ王国~婚約破棄が引き金~

鷲原ほの
ファンタジー
傲慢な王子と侯爵令嬢が、厳しく制約された聖女を解き放ってしまう婚約破棄騒動。 犠牲を強いてきた王国は傾き、されど転生者は異世界の不思議に目を輝かせるだけ。

処理中です...