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八百二十九話 死線
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「おい、あのおっさんの事知ってるか?」
「あの人は轟炎流の師範だよ」
「轟炎流って、あの轟炎流か……はは、そりゃ期待出来るな」
「一緒に行動してた俺としては、期待出来るどころではないと思うよ」
同じエイリスト王国側の戦闘者に、先日も一緒に行動していた戦闘者がレガースの凄さを口にする。
どこもかしこもルクローラ王国が送り込む戦闘者たちの強さに肩よりはなく、レガースが所属する部隊の者たちが「あぁ……もう駄目だ」と思ったのは一度や二度ではない。
そんな状況下でも、年長者で尚且つ一番の実力者が何度も彼らに希望を与えた。
「偶に敵の部隊で残った猛者と一騎打ちをすることがあるんだけど、あの人は……相手の攻撃を一つも貰わずに倒してしまうんだ」
「回避が得意なのか? でも……ぱっと見、かなり腕力には自信がありそうに感じるが」
レガースは……剣士であるが、侍でもある。
故に肉体的に全盛期を越えたと思われる年齢であるにも関わらず、その肉体は他者に力強さを感じさせる。
「さっきの戦闘を観て、あのソウスケ君という方と戦った騎士は……確かに、ほんの少しだけ可哀想だと思った。でも……レガースさんの戦いぶりを見てきた僕としては、これからレガースさんと戦うことになる騎士の方が可哀想に思ってしまいます」
これから命懸けの戦いを行う戦闘者に対して、可哀想だという思いを向ける行為は失礼だと解っている。
解っているが……彼に何度も救われてきた青年は、もう既にレガースが敵を斬り伏せる光景が見えていた。
「……先に、言わせていただきます」
「なにかな」
渋いおじ様系騎士は真剣目を向けながら……剣を抜く前に宣言した。
「この死合い。先程の戦いの様には出来ない」
今回の戦いに審判はいない。
開始の合図や決着に関しては……本人たちの意思で決める。
つまり、生かすも殺すも本人達次第。
「私は……あなたを殺す」
特別恨みがある訳ではない。
戦争という場でその感情を持てば……待っているのは破滅。
戦争中に恨みを盛ってしまうなど論外。
渋いおじ様系騎士はレガースに対し、一欠片も憎しみや恨みといった負の感情は持っていない。
決着は死以外あり得ないと宣言した理由は……至極単純。
レガースという剣士に……戦闘者は、殺すつもりで挑まなければな勝てないと本能が理解しているから。
そしてその事実は、渋いおじ様系騎士の理性も納得し、瞳に殺気を宿していた。
「奇遇だな。俺もそのつもりだ……あなたは強いからな」
そこで二人は口を閉じ……ほぼ同時に柄へ手を伸ばした。
「ッ!!!!!」
渋いおじ様系騎士が扱う武器はロングソード。
クロスレンジは長くはないが、短くもない。
ただ、本気をぶつけるのであれば……近づかなければならない。
(……これほどまでに、明確な境界線を見せるか)
既に柄に手をかけ、自慢の愛剣は抜剣済み。
後は全力で一歩踏み出せば自身のクロスレンジに相手が入る。
しかし……渋いおじ様系騎士はその一歩が踏み出せなかった。
レガースはまだ名刀、残焔を抜いていない。
いつでも抜けるように構えている。
そう……居合の構えを取っており、先程の言葉通りレガースも殺すつもりでこの決闘に臨んでいる。
圧倒的な戦意、殺気を纏った居合の構えは……渋いおじ様系騎士だけではなく、周囲の観戦者たちにまでその危険区域がハッキリと見える。
(っ!!! ……さ、寒気しかしないな)
実際に立ち向かってはいない。
本当に自分があの構えの前に立ったら……そう想像しただけで、多くの者が震えた。
しかし、一撃必殺と言える居合にも弱点はある。
遠距離からの攻撃に弱く、攻撃を防ぐには必然的に抜刀しなければならない。
一流の侍であれば納刀しながら動くことも可能だが、放つ居合の威力は必然的に落ちる。
(逃げて……なるものか!!!!!)
渋いおじ様系騎士が選んだ道は……正面突破。
「あの人は轟炎流の師範だよ」
「轟炎流って、あの轟炎流か……はは、そりゃ期待出来るな」
「一緒に行動してた俺としては、期待出来るどころではないと思うよ」
同じエイリスト王国側の戦闘者に、先日も一緒に行動していた戦闘者がレガースの凄さを口にする。
どこもかしこもルクローラ王国が送り込む戦闘者たちの強さに肩よりはなく、レガースが所属する部隊の者たちが「あぁ……もう駄目だ」と思ったのは一度や二度ではない。
そんな状況下でも、年長者で尚且つ一番の実力者が何度も彼らに希望を与えた。
「偶に敵の部隊で残った猛者と一騎打ちをすることがあるんだけど、あの人は……相手の攻撃を一つも貰わずに倒してしまうんだ」
「回避が得意なのか? でも……ぱっと見、かなり腕力には自信がありそうに感じるが」
レガースは……剣士であるが、侍でもある。
故に肉体的に全盛期を越えたと思われる年齢であるにも関わらず、その肉体は他者に力強さを感じさせる。
「さっきの戦闘を観て、あのソウスケ君という方と戦った騎士は……確かに、ほんの少しだけ可哀想だと思った。でも……レガースさんの戦いぶりを見てきた僕としては、これからレガースさんと戦うことになる騎士の方が可哀想に思ってしまいます」
これから命懸けの戦いを行う戦闘者に対して、可哀想だという思いを向ける行為は失礼だと解っている。
解っているが……彼に何度も救われてきた青年は、もう既にレガースが敵を斬り伏せる光景が見えていた。
「……先に、言わせていただきます」
「なにかな」
渋いおじ様系騎士は真剣目を向けながら……剣を抜く前に宣言した。
「この死合い。先程の戦いの様には出来ない」
今回の戦いに審判はいない。
開始の合図や決着に関しては……本人たちの意思で決める。
つまり、生かすも殺すも本人達次第。
「私は……あなたを殺す」
特別恨みがある訳ではない。
戦争という場でその感情を持てば……待っているのは破滅。
戦争中に恨みを盛ってしまうなど論外。
渋いおじ様系騎士はレガースに対し、一欠片も憎しみや恨みといった負の感情は持っていない。
決着は死以外あり得ないと宣言した理由は……至極単純。
レガースという剣士に……戦闘者は、殺すつもりで挑まなければな勝てないと本能が理解しているから。
そしてその事実は、渋いおじ様系騎士の理性も納得し、瞳に殺気を宿していた。
「奇遇だな。俺もそのつもりだ……あなたは強いからな」
そこで二人は口を閉じ……ほぼ同時に柄へ手を伸ばした。
「ッ!!!!!」
渋いおじ様系騎士が扱う武器はロングソード。
クロスレンジは長くはないが、短くもない。
ただ、本気をぶつけるのであれば……近づかなければならない。
(……これほどまでに、明確な境界線を見せるか)
既に柄に手をかけ、自慢の愛剣は抜剣済み。
後は全力で一歩踏み出せば自身のクロスレンジに相手が入る。
しかし……渋いおじ様系騎士はその一歩が踏み出せなかった。
レガースはまだ名刀、残焔を抜いていない。
いつでも抜けるように構えている。
そう……居合の構えを取っており、先程の言葉通りレガースも殺すつもりでこの決闘に臨んでいる。
圧倒的な戦意、殺気を纏った居合の構えは……渋いおじ様系騎士だけではなく、周囲の観戦者たちにまでその危険区域がハッキリと見える。
(っ!!! ……さ、寒気しかしないな)
実際に立ち向かってはいない。
本当に自分があの構えの前に立ったら……そう想像しただけで、多くの者が震えた。
しかし、一撃必殺と言える居合にも弱点はある。
遠距離からの攻撃に弱く、攻撃を防ぐには必然的に抜刀しなければならない。
一流の侍であれば納刀しながら動くことも可能だが、放つ居合の威力は必然的に落ちる。
(逃げて……なるものか!!!!!)
渋いおじ様系騎士が選んだ道は……正面突破。
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