転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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千十一話 無視、放置は出来ない?

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「……ソウスケさん、少しお尋ねしてもよろしいでしょうか」

グレンゼブル帝国に向かって旅を始めた道中、ミレアナは少し気になったことをソウスケに尋ねた。

「おぅ、なんだ?」

「グレンゼブル帝国から爵位を授与したい……なんて申し出をされた場合、どうするのですか」

ソウスケの名自体は、既に他国にもチラホラと広まっている。
実際にその実力を見たことがない者は、これまでソウスケたちに叩き潰されてきた者たちと同様に嘗めた態度を取るだろうが……それでも、初対面でそのおかしさ……普通ならあり得ない部分を感じ取ることが出来る。

当然、国としてはソウスケのような強者は何かしらの方法を使って繋ぎ止めておきたい。

しかし、無理に何かしらの手段を用いて繋ごうとすれば、逆に潰されてしまう可能性大。
そんな事は少し頭が回る者であれば直ぐに気付くものだが……それでもどうにか出来ないかと考えてしまうのが権力者。

「丁重にお断りするしかないな。男爵どころか、騎士の爵位すら受け取りたくない」

「ソウスケさんらしい答えだな。だが、人間とはある意味モンスターより強欲だろう。そう簡単に諦めないのではないか?」

「そりゃそうだろうけど……目の前でAランクのドラゴンの死体でも見せれば、大人しくなってくれそうじゃないか?」

モンスターの死体。
それは所有者の力量を示すのに適した物だが……他人に依頼して倒してもらったのではないかと疑う者もいる。

実際に、ソウスケほどの財力の持ち主であれば、高名な冒険者……大規模な有名クランに頼んで討伐してもらうことが可能。

それでも……アホみたいな金額を報酬金と用意せなばならず、基本的にそんな真似はしない出来ない。

「ふむ、それもそうだな。バカでも鑑定の効果が付与されたマジックアイテムで視れば、本物か否かは一目で解るだろう」

「解ったとしても、ホラを吹きそうなバカもいそうですが……そこまで考えてはキリがないですね」

「そういう事だ。まっ、これまで通りなるようになるだろ」

この異世界に来てから、本当に行き当たりばったりで生きてきたソウスケ。

そうやって生きてきた結果、本当になるようになってきたという事もあり、妙な自信があった。


「っ!! ソウスケ様たちでしたか。もしや、ドラゴニックバレーにお向かいでしょうか」

「そんなところです」

様呼びは止めてくれと心の中でツッコむが、圧倒的な速さで戦争を終わらせ、その間もなるべく同じ部隊のメンバーが死なないように動き、危機に瀕している部隊を発見すれば即座に救援へ向かう。

そんなまさに英雄と呼ぶに相応しい活躍を見せたソウスケたちとその一行を、様付けで呼ぶなと言うのは色々と無理な話である。

「お気を付けて!!!!」

良い敬礼をしながら見送る国境の兵士。

仕事熱心だな~とソウスケが思っていると、別の兵士が直ぐに上官の元へ向かい……自国の英雄が、グレンゼブル帝国へ向かったことを報告。

「何っ!!!!???? それは本当なのか!!!」

「はい!!! ギルドカードも確認しました!!!!」

ソウスケのパーティー構成は、まず見た目からして非常に特徴的。

パーティーのリーダーであるソウスケは、外見が一目で強者と解かる様な姿ではなく、本当に年相応の見た目。
そしてパーティーメンバーのミレアナは何度見してしまうか解らない程、恐ろしい魅力の持ち主。

最後はもう一人のパーティーメンバー……ではなく、非常に鬼人族に似ているオーガの従魔、ザハーク。
非常に珍しいパーティー構成であり、有名税を利用して真似しようとしても、真似出来る構成ではない。

そして戦場や冒険者としての活動でもあれだけ功績を上げていながら、二人の冒険者ランクはB。
それもそれで、彼らが本当にあのソウスケたちなのだと証明する要素となる。

「目的はドラゴニックバレーだと仰っていましたが……」

「そうか…………彼らの冒険者としての活動を考えれば嘘だとは思えないが……一応、報告しておく必要があるな」

決して……決してソウスケはエイリスト王国に所属している人間という訳ではないが、それでも彼らが他国へ向かったという事実は、そのまま放置……見なかったことにしておくには無理がある事だった。
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