転移したらダンジョンの下層だった

Gai

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千九十四話 普通に危ないから

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「…………ソウスケさん」

「なんだ、ザハーク。ミレアナが言った通り、お前はもう今日戦うだけ戦ったんだから、あのドラゴンとは戦ったらダメだぞ」

「それは解っている。ただ……あのドラゴンと、魔法だけで戦うのは相性が悪いのではないか」

戦い過ぎだバカ野郎とザハークがミレアナに叱られた後、三人は一体の雷竜に遭遇。

風竜と同様に素早く、全体的な攻撃力が高い。
そして……あまり知られてはいないが、ドラゴンの中では他の属性のドラゴンと比べて、やや魔法に対する抵抗力が高い。

「……っぽいね。まぁ、そもそも素早い相手に魔法だけで挑むって時点で、相性が悪過ぎるんだけどね」

世の中にはそこら辺の百凡の魔法使いたちとは違い、前衛やサポートの狩人などがいなくとも、一人で強敵を討伐出来る魔法使いがいる。

だが、そんな彼等であっても、雷竜や風竜の様な素早く攻撃力も半端ではないモンスターを一人で対応するのは難しい。

「けど、ミレアナだからね……大丈夫だよ」

現在そんな雷竜と戦闘中のミレアナはウィンドステップを発動し、脚力を強化。

戦場を駆け回りながら雷竜の攻撃を避け、杖で強化した魔法を叩き込んでいた。

「……あれは、魔法使いに相応しい戦い方なのか?」

「そこに関してはツッコミどころありそうだけど、今ミレアナが発動してるウィンドステップは風魔法スキルの魔法なわけだから、他の魔法使いたちでも出来ないわけじゃない」

「単に、他の魔法使いどもが努力をしていないだけだと」

「固定概念に囚われてるのか、勝手に限界を決め付けてるのか……それとも魔法だけ尖るべきだと思ってるのかは解らないけど…………まぁ、そもそも一人で戦おうとする魔法使いがいないし、周りもそれは危険だって止めるからかな」

「そうか…………確かに、それが普通なのか」

ザハークはモンスターではあるが、ソウスケたちと共に旅をする中で、多くの冒険者たちをちらちらと見てきた。

だからこそ、ミレアナが中々に頭のおかしい戦闘力を、魔法だけで戦える力を持っていることぐらいは解っていた。

「話は戻るけど、今回は杖の質を確かめてるわけだから、ミレアナの戦い方はそんなに関係無いよ。ザハークが試していたハンマーに関しても、あれだけ結構雑に使ったのに壊れなかったっていうのが一番の利点だって解ったわけだしさ」

「……ハンマーを使う力自慢たちは、あぁいった戦い方をしないのか」

「状況によっては、思いっきり真正面から戦り合うかもしれないけど……うん、普通はしないんじゃないかな」

普通じゃない自分が普通を語るのはどうなんだと思いつつ話すソウスケだが、その考え自体は間違ってはいない。

ただ、ソウスケは忘れていた。
主にBランクドラゴンの素材を使って三人が造ったロングソードや大剣、ハンマーに杖などは……三人の研鑽もあって、並みの強さではない。

それらの武器を購入する者たちは、果たして普通の冒険者や騎士たちなのか。



「ふぅーーーー、お待たせしました」

「お疲れ様。どうだった、自作の杖の使い心地は」

「……悪くはない、といったところでしょうか」

普段は杖を使って魔法を発動しないミレアナ。
だが、自作の杖を使うことで魔力の消費量を抑えられ、発動した攻撃魔法を強化出来たりと、確実に杖を使って魔法を発動するメリットは感じた。

それでも製作者だからか、中々褒めることはなかった。

「辛口だね」

「そうでしょうか。なるべく素材を破壊をしてしまわないようにと気を付けていましたが、討伐するのに五分以上かかりましたので、妥当な評価かと」

サラッと縛りを設けて戦っていたと口にするミレアナ。
ソウスケとザハークもなんとなく気付いてはいた。

「魔法だけで倒したんだから、もっと評価を上げても良いと思うけど……まっ、それを決めるのはミレアナだしね」

ソウスケはソウスケで自作のロングソードや双剣の評価を付けるため、解体と見張りを二人に任せ、適当なドラゴンを探し始めた。
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