転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。

Gai

文字の大きさ
86 / 500

第86話 良き隣人

「うっす、ただいま~~」

「イシュド様、おかえりなさいませ……あの、一つだけお聞きしてもよろしいでしょうか」

「ん? 何がだ」

「その…………退学になって戻って来た、という訳ではないのですよね」

領主の令息に失礼な質問であるのは間違いないが、イシュドはその程度の失礼でキレるほど短気ではない。

「なっはっは!!! 安心しろ。連絡した通り、長期休暇に入ったからクラスメートを連れて来たってだけだ。まっ、問題は合法的に起こしてきたから、退学にはならないって」

「そうでしたか、流石イシュド様です。では、中へどうぞ」

合法的に問題を起こした……この言葉に対して、特に焦りや驚きを感じることなく対応し、流石ですと口にする。

(仕える兵士や騎士、魔法使いたちまで脳筋ではないと言っていましたが……本当なのですの?)

そもそも門兵が領主の令息に「退学になったから戻って来たのではないのですよね?」という質問をする時点で、普通の家では色々とアウトである。

「う~~~し、あの遠くに見えるのが屋敷だ。道沿いに行けば着く」

「「「「っ…………」」」」」

ガルフはあまり比べるものがないため、ただ街の活気に対して純粋に驚き……イブキは事前に辺境伯という爵位が上からどの位置にあるのか、という知識が主なため……多少なりとも驚きはするものの、賑わい具合に納得の表情を浮かべていた。

しかし……これまで色々と噂、人伝? で聞かされていた光景とは全く違う活気、住んでいる人々の服装や外見……建物の外装など、多分耳に入っていた話とは違うのだろうなと予想は出来ていても、やはし再度驚かずにはいられなかった。

「おいおい、お前ら何か固まってんだ。ほら、行くぞ!!」

「お、おぅ。すまんすまん」

イシュドの後を付いて行くフィリップたちだが……噂と違う光景に驚く様子は……田舎から都会に初めて出てきた子供の様である。

そしてイシュドは屋敷に到着するまでの道中、子供から大人……老人たち、多くの者たちから声を掛けられていた。

「イシュドって、とても民から慕われてるんだね」

「……そうと言えるのかもな。つっても、元から俺の家系は領民たちと仲が良かったって言うか……多分だけど。、本本当に領民たちからすれば領の経営を行てくれている、良き隣人って感じなんじゃねぇか? 一定の敬意みたいなのはあるだろうけど、恐れを感じてる人は殆どいねぇんじゃねぇか?」

イシュドは特に尊敬されたいという気持ちはないため、本当に丁度良い距離感だと思っていた。

「他の貴族たちが聞けば、怒鳴り声を撒き散らしそうだな」

「そりゃまぁ、他者から敬意を向けられる、その敬意を感じることに快感を感じる奴もいるだろうし……後は、その家の教え? 平民は自分たちの道具だ、なんてゴミみたいな内容を生まれてくる子供たちに教えてたら、そりゃゴミみたいな思想を持つやつが永遠と現れ続けるよな」

「なんと言いますか、本当にイシュド君の言葉は我々にとって耳が痛いですね」

クリスティール自身は良い意味で真っ当な貴族令嬢ではあるが、今しがたイシュドが口にしたような者たちは何人も見てきた。

その度に不快感を感じ、決して民の存在を、命を軽視するような言葉に同意してこなかったものの……自分にそんな彼らの思考を変えることは出来ないと完全に諦めていた。

「全くだな。しかし、今の俺たちでは変えられない現実でもある」

「私としましては、だからといって諦めたくありません」

「会長パイセンは立派っすね~~。でも、あんま無茶しない方が良いんじゃないっすか?」

「それは……やはり、私の力が足りないからでしょうか」

本気で表情が沈む様子に、イシュドは「本当に真面目で良い人だな~~、抱きてぇな~~」とちょっとピンクな事を考えながら自身の持論を述べた。

「そういう訳じゃないっすよ。俺らが出来ることは、基本的に生まれた自領を豊かにすることだけ。平民をゴミ、道具だと思ってる様な連中が統治してる領は、外国と同じ。そう考えれば、どれだけ全てを正しい方向にもっていくのが難しいか解るんじゃないっすか」

「………………イシュド君。もしかしてですが、レグラ家の現当主から自分の後を継がないかって言われたことがありませんか」

「ん~~~~~…………今よりもっとガキの頃に、冗談で言われたことがある様なないような……まっ、本当に言われてたとしても、マジで冗談で言われただけっすよ」

いつもの笑顔で否定するイシュドだが、全員が心の中で「絶対に冗談ではない」とツッコんだ。

「うっし、到着だ」

屋敷に到着したイシュドたち。
既に屋敷にイシュドがクラスメート達を連れて帰って来たという話は伝わっており、多数の騎士や魔法使い、従者たちがわざわざ屋敷の外に出て出迎えの準備を行っていた。

「「「「「「「「「「お帰りなさいませ!!! イシュド様!!!!」」」」」」」」」」

「は~~い、ただいま~~~~。お出迎えありがたな。んじゃ、戻って戻って~~」

自分をわざわざ出迎えてくれたのは素直に嬉しいが、同時に恥ずかしい気持ちも湧き上がってくるため、さっさと解散してほしい。

そんなイシュドから自身の持ち場に戻ってと言われた彼らは、言われた通り素直に持ち場へ戻って行くが……多くの者たちはミシェラ、イブキ、クリスティールに一度視線を送っていた。

(男友達を連れてくることは予想していたが、まさか女の学友まで連れてくるとは……)

(いやぁ~~~、あんな美女たちを連れてくるなんてぇ……もしや、全員が嫁候補!!!???)

(もしかして、イシュド様は婚約者を探しに学園に入学したのかしら? 当主様たちがあまり気にしてないとはいえ、貴族なのだから一応血統は重用よね。色々と疑問だったけど、それが目的なら納得ね)

全員、殆ど同じような事を考えていた。

(お前ら……何を考えてんのか、背中から滲み出てんぞ)

対して、イシュドは彼らがいったい何を考えているのか、ある程度予想は付いていたものの、仕事に戻れと言ったのは自分であるため、わざわざ呼び留めて訂正しようとはしなかった。

(ん? この足音は……)

こちらに向かってくる足音を察知したイシュドは、素早くガルフたちに自分より前に出るなとジェスチャーを送った。
感想 55

あなたにおすすめの小説

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

転生したら魔王のパートナーだったので、悪役令嬢にはなりません。

Y.ひまわり
恋愛
ある日、私は殺された。 歩道橋から突き落とされた瞬間、誰かによって手が差し伸べられる。 気づいたら、そこは異世界。これは、私が読んでいた小説の中だ。 私が転生したのは、悪役令嬢ベアトリーチェだった。 しかも、私が魔王を復活させる鍵らしい。 いやいや、私は悪役令嬢になるつもりはありませんからね! 悪役令嬢にならないように必死で努力するが、宮廷魔術師と組んだヒロイン聖女に色々と邪魔されて……。 魔王を倒すために、召喚された勇者はなんと転生前の私と関わりの深い人物だった。 やがて、どんどん気になってくる魔王の存在。前世に彼と私はどんな関係にあったのか。 そして、鍵とはいったいーー。 ※毎日6時と20時に更新予定。全114話(番外編含む) ★小説家になろうでも掲載しています。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜

鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。 誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。 幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。 ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。 一人の客人をもてなしたのだ。 その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。 【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。 彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。 そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。 そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。 やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。 ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、 「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。 学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。 ☆第2部完結しました☆

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!