転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。

Gai

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第98話 絶対に軽くではない

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「ほ、本当に今から行くの?」

「おぅ、そうだぞ。まだちょっと明るいし……つっても帰ってくる頃には暗くなってるか。そんでも夜にモンスターと戦うの慣れてるしな。んじゃ、行ってくるわ」

「ま、待て!! お、俺も……俺も行こう」

満腹な体を無理矢理動かし、付いて行くと宣言するダスティン。

その行動にガルフとフィリップは再度驚きを隠せず……イシュドはその本気の眼を見て、ニヤッと笑った。

「ダスティンパイセン、その根性は買います。やっぱりパイセンみたいな人が騎士になるべきだと思いますよ。ただ、俺が行こうと思ってるエリアは今のパイセンたちが行けば……七割ぐらいの確率で結構危険な場面に遭遇するかもしれないんで、止めといた方が良いっすよ」

「そ、そうなのか……」

自分も行くと宣言したダスティンだが、己の体の状態が今現在どういった内容なのか把握出来ないほど満腹感で思考が乱れてはいなかった。

「それじゃ、そういう訳だから眠くなったら寝ちゃっててくれ」

そう言い、イシュドは本当に屋敷から出て街の外に出て……モンスターがうじゃうじゃと徘徊している森へと入って行った。


「「「………………」」」

イシュドが部屋から出て仮に向かった後……三人は完全に黙っていた。

(い、今から狩りって…………レグラ家ではこれが普通って、ことなのかな)

(いきなりシドウ先生に死合いを申し込むくらいだし、戦うのが超好きなのは解ってたけどよぉ……さすがにちょっとぶっ飛び過ぎじゃないか?)

(俺たちと同じぐらい食べていたにもかかわらず、まるで食後の運動と言わんばかりに……これが、俺達一般的な令息と魔境で育った戦士の違いか)

レグラ家の人間であっても、これから夜になろうというのに森へ狩りに行くのは珍しい。
戦うのが超大好きなのはその通りだが、今回が学園生活で鈍った体を元に戻すのが目的。
そして世間一般的には、ダスティンたちは一般的な令息という枠には当てはまらない。

「ん? 入っても大丈夫だぞ」

ノックする音が聞こえたのでフィリップが答えると、入ってきたのはミシェラたち三人であった。

「あら、イシュドはいないのですの?」

「あいつなら狩りに行ったぞ」

「………………は?」

「安心しろ。お前の耳は腐ってないし、遠くもなってない。でも、もう一度だけ言ってやるよ。イシュドの奴はこの時間から森に入って狩りを始めるらしいぜ」

「………………冗談、ではないのですの?」

「全くもって冗談じゃねぇぞ。さすがに俺もお前と同じ反応だよ」

フィリップからイシュドが何処に行ったのかを聞いた三人は、全員同じ反応であった。

「軽く体を動かしに行った、ということですか?」

「さぁ、どうだろうな? あいつ、今日はずっと筋トレばっかしてたから、軽くじゃなくてがっつり体を動かしに行くんじゃないか?」

鈍った体を叩き起こしにいくため、本当に生死の懸かった戦いまでは行わないものの、軽くではなくがっつり暴れるのは間違いない。

「モンスターは、夜に活動する個体の方が狂暴性が高い……という事を、イシュドが知らない訳有りませんよね?」

「クリスティール先輩、モンスターとの戦闘とかなら、イシュドの方が先輩っすよ。知らない訳ないじゃないっすか」

寧ろそれはイシュドにとってスパイスでしかない。

「ダスティンパイセンが一緒に行こうとしたっすけど、さすがに止められたっすね」

「……………………イシュドもそこまで鬼ではなかったという事ですのね」

「だろうな」

イシュドが何処に行ったのか聞いた三人は、先程までのガルフたちと同じく、沈黙状態となってしまう。

「……訓練場に行こうかな」

沈黙を破ったガルフに、注目が集まる。

「まだ今日書き出した反省点を改善できてないし。それに、まだ寝る時間には早いしさ」

ガルフの言う通り、まだ時間は六時半過ぎ。
この世界でも寝るにはまだ早い時間である。

満腹感でこのまま寝てしまいという気持ちはあるが……今、ガルフの中にはそれよりもとにかく体を動かしたいという思いが強く燃え上がっていた。

「良いですわね。私もやりますわ」

「私も行います」

「ったく……お前ら元気過ぎかよ」

大きなため息を吐きながら、フィリップはベッドから腰を下ろしながら着替え始めた。

「ふっふっふ。そうですね……ダスティン、私たちも負けてられませんね」

「あぁ、そうだな!!!」

友が動いているのに、もしかしたら先に進もうとしてるのかもしれないのに、自分たちが止まってられる訳がない。

そう思ったガルフたちはメディに声を掛け、朝から夕方まで訓練に使っていた訓練場を今から使っても良いかと尋ねる。

するとメルディは笑みを零しながら了承した。

「さてと、さすがに真剣を使う訳にはいかねぇな」

「どうしてですの?」

「お前なぁ……軽く模擬戦とかやった際にうっかり腕が斬り飛んだりしたらどうするつもりなんだよ」

「そ、そそそそうでしたわね!!」

現在、回復要員たちは訓練場に居ない。
彼等を呼ぶ……という手段もあるが、そもそも今からガルフたちが行うのは自主訓練。

回復要員たちにとっては、完全に勤務時間外であり、残業になってしまう。
ガルフたちは自分たちが客でありと自覚しているため、さすがに自主訓練時間にも付き合って欲しいと図々しいことは言えなかった。

「幸いにも置いてあるポーションは使ってい良いみてぇだから、武器は木製のもんを使って……魔力はなしにした方が良いだろうな」

「フィリップの言う通りですね」

フィリップたちが振るえば、たとえ刃がなく木製の得物であっても彼らが振るえば肌や肉は斬れてもおかしくないが……そこまで考えることなく、彼らは本日の反省点を修正すべく体を動かし続けた。


「よぅ、お前ら。まだ訓練してたんか」

「い、イシュド……お、おかえり」

「おぅ、ただいま」

メディからガルフたちが何処にいるのか尋ね、訓練場にやって来たイシュド。

ガルフたちは息を切らしながら近寄り……数秒後、ようやく気付いた。
イシュドから圧倒的に血の匂いがすることに。

「え、えっと…………け、結構戦ってきたん、だね?」

「そうだな~。全部で五十体ぐらい倒したか? これでもマジ氷山の一角だから、全く減ってないんだけどな~~。あっ、そうだ。これから殺ったモンスターの死体解体するけど、美味い肉ゲットしたから、後で食うか?」

さっき夕食食べたのに? と誰かがツッコもうとしたが、それから数時間……真面目に動き続けたこともあって、数人のお腹が鳴り……ガルフたちはこくりと頷いた。
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