転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。

Gai

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第157話 嫌だ

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「全員いるな」

教室に入って来たバイロンとシドウ。
今日から再び授業が始まる。

多くの学生たちは気合の入った顔をしているが……そんな中、イシュドだけが堂々と欠伸を欠いていた。

(間の抜けた顔を……まぁいい)

普段であれば注意するものの、イシュドに関しては色々と諦めているバイロン。

特に注意することなく、生徒たちにあれこれ伝え始めた。

「激闘祭は終ったが、お前たちが騎士団にアピール出来る機会が失われた訳ではない。来年頑張れば良いや……ではなく、今から研鑽を続ける様に」

締めの言葉を言い終え、早速座学の授業に入る。


「少し良いだろうか」

「あん?」

一限目が終わると、イシュドの元にクラスメートの一人が訪れた。

(…………誰だ、こいつ?)

当然、というのは彼等にとって非常に失礼ではあるが、当然の様にイシュドは自分に声を掛けてきたクラスメートの名前を知らなかった。

「何か用か」

「っ……金は、用意してある。是非、一緒に訓練させてほしい」

「「「「「「「「「「っ!!!」」」」」」」」」」

教室にいる殆どの生徒たちが驚き、教室中にざわざわとした空気が広がり始めた。

ただ、イシュドに声を掛けた男子生徒は一切周囲の様子など気にしておらず、じっとイシュドから視線を逸らさず返答を待ち続ける。

さて……何故、この男子生徒がわざわざ金を用意して、イシュドに自分もあなたの訓練に参加させてほしいと頼み込んで来たのか……それは、別クラスの生徒であるミシェラがイシュドたちと共に訓練を行うに至った経緯が要因だった。

かつてミシェラはイシュドとのタイマン勝負に敗れ、その後共に訓練をさせてほしいと頼み込んだが……その際、イシュドはそれ相応の対価を要求した。

その対価は高級料理店で食い盛りの男子が腹一杯食べても支払えるだけの金額だった。
声を掛けた男子生徒が用意した金額は、その金額相当であり、対価としては十分と言えば十分であった。

「ふ~~~~~ん………………嫌だ」

「なっ!!!」

「そんだけ金を用意出来たんだったら、教師の誰かに渡してマンツーマン指導でもしてもらえ」

しかし、じゃらじゃらと音の鳴る袋の中身を見ても、イシュドはクラスメートからの頼みをあっさり断った。

「ど、どうしてだ!!! それ相応の金額は用意した!!」

「みてぇだな。それに関しちゃあ、ちょっと驚いた。けどなぁ~~~~……うん、嫌だ」

「ぐっ!! …………せ、せめて……納得出来る説明を、してくれないか」

ここで「ふざけるな!! こっちが下手に出てれば!!!!!!」と怒りに、暴力に任せたところで、手痛過ぎる蹴りか拳が飛んでくることは解っていた。

「えぇ~~~~、納得出来る説明~~~?」

「イシュド、さすがにそれぐらいは伝えて上げても良いんじゃないかな?」

「俺としちゃあ、それぐらい自分で考えろって感じなんだけど……まぁ、良いか。とりあえずあれだ、お前を見ても、特にそそられねぇ」

魅力がない。

イシュドから見て、目の前のクラスメートは将来的に喰ってみたいと欠片も思えない。

「俺は教師や、道場を開いてる師範じゃねぇんだ。金を貰ったからって、わざわざ興味もねぇやつに構ってやる必要はねぇ」

ごもっとも過ぎる追加ダメージに、男子生徒の体が揺らぐ。

「後なぁ……てめぇ、入学初日かどうか忘れたが、嗤ってただろ」

「っ!!!!!」

名前を覚えてないくせに、嗤われた事に関してはハッキリと覚えている男。

「俺のことをバカにしてたんなら、まずそんな過去のてめぇはいねぇって証明するぐらい、この夏休みで変わろうとしなかったのかよ」

「っ、それ、は……」

男子生徒とて、実家に帰省している間、ただダラダラとだらけていた訳ではない。

「俺と一緒に訓練すれば変われるかもしれない? わざわざ自分以外の何かに縋ってる時点で、お前の向上心なんざその程度なんだよ」

「っ…………」

自分の向上心にケチを付けられれば、誰だって怒りを露わにするものだが……怒りを爆発させたところで無駄、殴り掛かろうとするのはもっと無駄。

それを理解しているからこそ、イシュドの言葉を受け止められるだけの冷静さがあった。

「解ったらさっさと自分の席に戻れ」

「分かった。邪魔したね」

落ち込みは……さすがに隠せない。
受け止められる冷静さこそあったが、まずイシュドに声を掛け、一緒に訓練させてほしいと頼み込むことに多大な勇気が必要だった。

その結果「とりあえず実力を確認してからだな」といった試験すら与えられず「ふ~~~~ん、嫌だ」とあっさりと断られてしまった。

彼が勇気を振り絞ろうとも、イシュドにとっては欠片も気にする必要はない。
それはそれで当たり前の事だが……結果、勇気を振り絞った男子生徒の心に怒りが湧くのも、致し方ない。

(嗤った……確かに、あの時僕は彼の事を嗤ってしまった。しかし……しかし!!! その、一度だけで!!! …………クソっ!!!!!)

たった一度嗤ってしまっただけで、そんな彼の思いは正しいのか否か。

彼の胸の内を聞けば、イシュドは確実に「そりゃ失敗して良い失敗じゃねぇんだぞ、クソカス坊ちゃん」とボールではなくトゲトゲの鉄球をぶん投げられてしまう。


「い、イシュド」

「なんだよ」

「ちょ、ちょっと厳し過ぎだったんじゃない?」

周囲に聞こえないよう、ひそひそ話で会話する二人。

「金さえあれば、俺と一緒に訓練できる。そう思われるより良いだろ」

「それは……そう、かもしれないね」

イシュド意外と関りがないため、平民であるガルフにとっても……クラスメートたちは、決して良好な存在とは言えなかった。

「つか、あいつにも言ったけど、一切そそられねぇし、本気らしい本気も感じられなかった……あの二人みたいにな」

脳裏に浮かぶのは、クールなクソイケメン野郎、ディムナ・カイス。

ザ・王子らしい王子フェイスを持つ優男イケメン、アドレアス・バトレア。

(あいつらは、俺に頼み込むだけじゃなくて、アホみたいに頭を下げやがった…………あのバカ二人にくらべりゃあなぁ……なんか色々と思ってそうな面してやがっけど、クソ浅いんだよ)

勿論、ディムナとアドレアスという現在高等部に在籍してる者たちの中では超有名人である二人がイシュドに土・下・座して頼み込んだという話は広まっていなかった。
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