転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。

Gai

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第159話 離れてるなら、どうする?

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「なぁ、会長パイセン。飯奢ってくれんのは嬉しいけどよ、懐は大丈夫なのか?」

学園生活が再び始まってから数日後の夕方、イシュドはクリスティールと二人でとある料理店の個室で夕食を食べていた。

ちなみに、ガルフの傍にはフィリップだけではなく、バイロンも付いている為、バカが暴走しても問題無く鎮圧出来る。

「えぇ、大丈夫ですよ。なんせ、イシュド君のお陰で随分と稼ぐことが出来ましたから」

イシュドの実家に世話になっていた際、実戦で討伐したモンスターの素材は冒険者ギルドに買い取ってもらっていた。

クリスティールは実家に帰省してからもモンスターを狩り、レグラ家に世話になった際に見に付けた解体技術で懐を暖めていた。

「それがまだ残ってんなら別に良いんだけどよ。んで、俺に用があるんだろ。やっぱあれか、クラスメートが俺に依頼してきた件か?」

「その通りです。イシュド君が、依頼を断った件についてです」

「……会長パイセン、俺……それらしい答えは、この前言ったと思うぜ」

生徒の長、生徒会長という立場に就いたからといって、そこまで面倒を見る必要はない。

それらしい言葉を伝えた記憶がイシュドの頭に残っていた。
当然、クリスティールもそれは覚えていた。

「えぇ、ちゃんと覚えてますよ。ただ…………私としては、やはり完全に無視することは出来ないと思って」」

「お人好しだね~~~。んで、俺に飯を奢って、俺がどんな事を考えてるか知りてぇと」

「私も多少は考えてきましたが、やはりイシュド君の考えをお借りすることになるかと」

「ふふ……別に良いよ。こうしてわざわざ美味い飯を奢ってくれてる訳だしな」

多少面倒に感じても、相談相手が話の解るクリスティールということもあり、断るつもりはなかった。

これがミシェラからの誘いであれば、何かしらの罠があると疑い、そもそも外食することを拒否した。

「んで、会長パイセンは俺らと他の凡たちとの差を埋める為には、何が必要だと思ってんの」

「やはり、覚悟の差でしょう」

「覚悟の差、ね。間違ってはいないか。つっても、若干一名そこら辺怪しい奴はいるけど」

「彼には彼なりの原動力があるということで納得しています」

覚悟云々の話になった場合、どうしてもこいつは……と思ってしまう人物に関しては、二人ともしっかりシンクロしていた。

「イシュド君がクラスメートからの依頼を断った理由は、ある程度聞いてます。教わる前にまず変わるべきところがある。そこが、彼らにとっての覚悟と言えるかと」

「……確かに、そこに何かしらの変化? があったなんなら、俺も直ぐ断りはしなかっただろうな」

「勿論、誰かが覚悟を見せたからといって、その人物の世話をイシュド君にお願いしようとは思っていません」

まず変わらなければならない点を変えている。
加えて……そもそもの話、イシュドがその頼み込んできた同級生に対して、そそると感じるか否か。

そのラインを突破出来ていなければ、共に訓練するという許可は下りない。
それはクリスティールも良く解っている。

「そりゃなによりだ。そんで、それを他の連中に伝えるのか」

「ただ伝えるだけではなく、刺激すると言いますか……おそらく、諦めている人たちは完全に諦めているでしょう」

イシュドが激闘祭で披露した戦いっぷりは、自分に才能がある……天才だと勘違いしていた坊ちゃん嬢ちゃんを地の底に叩き落とすには十分過ぎた。

「別に、頑張り方が解らないとか、そういう連中以外は放っておいても良いと思うんだけど」

「イシュド君、そういう訳にはいきません。イシュド君にとっては興味がないことかもしれませんが、彼ら……彼女たちは、民を、この国を守る存在となるのです」

「…………あぁ~~~~~、はいはいなるほどね。そりゃまぁ、あれだな。学生のうちから腐ってるより、ちゃんと前向いてた方が良いか」

クリスティールの言う通り、大して興味はない。

だが、彼ら彼女たちの向上心が失われた結果、守られたはずの命が失われたというのは、やや思うところがある。

「ですので、どうにか彼らの向上心や闘争心を刺激できればと考えています」

「穴はあるけど、それが一番の手ではありそうだな」

「そう言ってもらえるとホッとします。ですが、イシュド君の言う通り、肝心の向上心や闘争心を刺激する言葉などを考えられていなくて」

(……誰が、他の学生たちに伝えるのかにもよるけど…………会長パイセンなら、問題はねぇか)

イシュドが言ったところで、煽りにしかならない可能性が非常に高い。

他の生徒たち、教師たちであっても…………多くの学生たちの心を動かすのは難しい。

「刺激する言葉、ねぇ~~~~~~。俺の場合、特に落ち込んだりとかなかったからな」

「前進以外の気持ちはなかったと」

「おぅ。なんつ~か、会長パイセンも知ってるだろうけど、うちの末っ子はちょっとレグラ家とは毛色がかなり違うタイプなんだよ」

「えぇ、確かにそうですね」

大人しく、戦闘に関してあまり興味がなく、錬金術に対して非常に強い興味を持っているレグラ家の末っ子、アスラ。

そんなある意味レグラ家という環境の中では珍しい子のことを、クリスティールはしっかり覚えていた。

「あれが許されてるからな。叱られた記憶とかもないに等しいし…………っと、話しがそれなたな。まっ、とりあえず強くなる事に関してはま……なんて言えば良いか迷うな………………終わりなき競争ってやつ? だから、アホみたいにダッシュし続けてきた俺に他の連中が速攻で追いつくことなんて、まず無理なんだよ」

終わりなき競争。
既に大きな差があるからこそ、追いつくことは不可能。

そんな……非常に解り易い説明を受け、クリスティールは思わず苦笑いを零す。

レグラ家で過ごす中で、クリスティール自身も確実に成長を実感していたが、それでもまだイシュドの背中が見えたとは思っていない。

「じゃあどうするのかって話になるだろ。んなの、方法は一つしかねぇと思わないか」

「……死ぬほど走って走って走る続ける、ということね」

「はっはっは!!!!!! 流石会長パイセン。話が早くて助かるぜ。言っとくが、俺がゆっくり歩んでるのは卒業するまでの間だけだ。ぶっちゃけ、シドウ先生がいるお陰で止まることはねぇけどな」

遥か先にいるにもかかわらず、イシュドは止まることなく歩み続ける。

追い付けるわけないじゃないか? そんな言い訳を口にする者は必ずいるだろう。
しかし、イシュドにとっては……心底どうでもいい言い訳である。
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