転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。

Gai

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第321話 同じ腐れ縁だが……

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「それで、イシュドには先に答えてもらったが、フィリップたちはどうなのだ」

割と恥ずかしい思いをしながらも応えた身としては、是非ともイシュド以外の答えも聞いてみたいヨセフ。

「だってよ」

「えぇ~~~~。俺は……ん~~~~~~…………イシュドとかヨセフみたいに、こいつなら隣にいるイメージが浮かぶとか、そう思える奴がマジでいねぇからな~~~」

自分がチャランポランなところは、一生このままだと理解している。
だからこそ、本当に恋愛的な意味でも、将来的な意味でもこの人なら……と思える人物が浮かばない。

「本当にいないのか?」

「いねぇなぁ~~~……強いて言えば、クリスティールパイセンかね~~~」

「おっ、マジかよフィリップ」

「いやいや、強いて言えばだからな、イシュド」

ニヤニヤと笑みを浮かべ、楽しそうにしているイシュドに向けて、強いて言えばという言葉を強調するフィリップ。

「ふっふっふ。ほんでほんで、クリスティールパイセンのどこが良いって思ったんだよ、フィリップ」

「ったく、この野郎…………はぁ~~、まぁ良いか」

さすがに自分だけノーダメージでやり過ごすのは無理だろうと思い、観念しながら理由を話し始めた。

「あんま特別な感覚とかはねぇよ。ただ、あの人は腐れ縁的な部分があって、他の令嬢たちよりも俺の事を解ってるところがあるからな」

「ほ~~~~ん、なるほどねぇ~~~~……でもよ、腐れ縁でいくとデカパイの奴がいるだろ。あいつはどうなんだよ」

イシュドの言う通り、普段から共に行動しているメンバーの中では、ミシェラもクリスティールと同じく、フィリップにとって腐れ縁に当たる人物。

しかし、ミシェラの名前(デカパイ)が出た瞬間、フィリップは一気に眉をへの字に曲げた。

「ないない、あり得ないっつーの。イシュド、俺とあいつはお前とあいつぐらい相性が合わないんだよ。仮に神の悪戯かなんかで一緒になってみろ……喧嘩のし過ぎのストレスで若ハゲになっちまうぜ」

「「「「……っ!!」」」」

ヨセフたちは脳内で若ハゲになったフィリップを咄嗟にイメージしてしまい……思わず吹き出してしまった。

「なっはっは!!! フィリップの若ハゲか……はは、それはそれで見てみてぇな」

「勘弁してくれ。そりゃ歳取ったらハゲるもんだけど、歳相応の時じゃねぇと嫌だぜ」

「それもそうか。けどよ、フィリップ、世の中には喧嘩するほど仲が良いって言葉があるんだぜ」

イシュドがニヤニヤと笑いながら口にした言葉に対し、今この場で人生経験が豊富なツートップ、シドウとクルトが過去を振り返り……イシュドと同じく、ニヤニヤと笑みを浮かべながら頷いた。

「確かに、イシュドの言う通り……俺の周りでも、そういった人たちはいるね」

「俺の知り合いにもいるな~~。つか、そいつら、そのまま付き合ってこの前結婚までいったからな」

「……それ、マジ、っすか?」

「マジもマジ、大マジだぜ」

フィリップからすれば、何故よくケンカしてしまう様な相手と付き合えるのか……結婚まで出来てしまうのか、全くもって意味不明過ぎて理解出来なかった。

「そうなん、すか…………なぁ、イシュド」

「なんだ」

「そういうのって、割と普通なのか?」

「ん~~~~~~~……さぁ、どうだろうな。なんで喧嘩をするか、それにもよるんじゃねぇの」

イシュドとしては、実家内、領地内で出会ってきた者たちとは基本的に仲良くなってるため、自分にとって喧嘩するほど仲の良い人物には出会ったことがなかった。

ただ、人と関わることに躊躇いがなく、寧ろ積極的に関わってきたからこそ、解るところもある。

「マジで意見が合わない、性格の不一致が過ぎる、後は……片方の性格が終わってるとか?」

「俺じゃん」

「なっはっは!!! そういう感じで即答すると思ったぜ。でもな、フィリップ。それはお前、自分を下卑し過ぎってやつだぜ」

笑っては……いる。
表情は、普段通りのイシュドである。
ただ……ほんの少し、不機嫌さが混ざっている。

自分から見た自分と、他人から見た自分は違う。
それぐらいは、なんとなく解っているフィリップ。

(…………良い奴、だよな。ったく)

関りがある者の中でも、他人の小さな機微を感じ取れる者でなければ解らない変化に、フィリップは気付いた。

「そうか……けど、性格が合わねぇのは間違いねぇと思うけどな」

「性格なんざ、大なり小なり違いがあるもんだ。本当の意味でそういう関係になれて、長続きすんのは……互いの本音を隠さずぶつけ合えるか、なんじゃねぇの」

「本音を隠さず、ねぇ…………確かに、隠してねぇかも」

イシュドは、当然ながら貴族の知り合いは多くない。
だが、領地に暮らす者たちの中に知人、友人は多く、そういった者たちの話を聞いていると喧嘩するか否かはさておき、互いの本音を伝え合えるカップルや夫婦は良い意味で長続きしていることに気付いた。

「隠せば、蓋をすれば、どこかで爆発するだろうな」

「さっき話してた、性欲や他の欲に似てるな」

「かもな。ぶっちゃけ、それが原因で鬱憤が溜まりに溜まった女の人が爆発して、夫を後ろから刺した、なんて事件? もあったしな」

旦那を背後から刺す、もしくは殺す。

それは決して平民の世界だけで起こる事件ではなく、貴族の世界でも稀にではあるが起こり得る事件。

特に貴族の世界では妻となる人物の性格、能力によっても異なるが、旦那が亭主関白タイプになることが珍しくない。
故に、ただあまり干渉がないなどであればまだしも、モラハラを重ねるようなことがあれば……最終的に自身の首を絞めてしまう可能性がある。

「だから、互いの不満とかそういうのを遠慮なくぶつけられる関係性の方が、案外上手くいったりするんだよ」

「……解らなくもねぇって感じだけど、それでもそいつと一緒にいられるか? ってイメージ出来るのも大事なんじゃねぇの?」

イシュドの言う事も理解出来なくはない。
ただ、それでもフィリップとしては、全くもって自分がミシェラの隣に立っているイメージなど浮かばなかった。

「なっはっは!! それは確かにそうかもな。んじゃ、次は…………ガルフだな」

一番面白そうという理由で、アドレアスはメインディッシュに回されてしまった。
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