転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。

Gai

文字の大きさ
326 / 487

第326話 それなら、話は別だ

しおりを挟む
「俺としては、ロブストさんたち以外の連中を疑ってるんすよ」

疑うリスト候補から完全には外せないものの、依頼を受けている最中に自分たちを狙うのは、アンジェーロ学園の者たちにとって、色んな意味でリスクが大きい。

「ぶっちゃけ、他の学園からは反発があったんじゃないっすか? なんであんな強いだけの蛮族なんかをわざわざ招待するんだって」

「なかった、とは言えないのう」

実際のところ、その話はアンジェーロ学園外からだけではなく、内側からも少々上がった。

「だろ。そんな連中からすれば、自分は認めてないって理由で殺すべきだ、なんてクソみてぇな考えを実行するかもしれないじゃないっすか。つっても、俺だけを狙うなら別に良いんすよ、別に」

本気の……殺し合いという場で格上の者と戦う時……数的にも振りとなれば、イシュド的には使いたくなくとも……バーサーカーソウルなどのスキルとはまた別の切り札を使用すれば、どうとでも出来なくはない。

だが、そのレベルの面子が集まれば、シドウとアリンダがいたとしても……全員守れるとは、限らない。

「けどなぁ……ダチに何かあれば、俺は疑わしい連中を全員殺さなきゃならねぇ」

「「っ!!!!!!」」

「…………」

先程の戦意と狂気がミックスされた圧とは異なり、刺す様な殺気を放つイシュド。

「今、たかが友人の為にそこまでするのは馬鹿だと思ったっすか? 考え方は人それぞれだ……否定する気はねぇ。でもな、そうなれば俺が死んでも疑わしきを全員殺す理由は、それで十分なんだよ」

街を、領地を出て……出会った知人、友人、親友。
誰かが理不尽で死ねば…………言葉では言い表せない狂気と憎悪が零れだす。
イシュドには、そうなる確信がある。

「後、リスクを背負うのは、あんたらも同じだろ。なぁ、ロブストさん」

「……エリヴェラの事だね」

「そうだ。あいつが侯爵家以上……いや、せめて伯爵家の生まれであれば、そこまで気にする必要もなかっただろうな。ただ、あいつの実家は男爵家だ。既に歴史に名を残すことが確定していたとしても、目障りに思う奴らはいるでしょう」

エリヴェラは、フィリップの様にセンスや才があるにもかかわらず、世の為人の為に使おうとせずダラダラ過ごしたい……なんて思うタイプではない。

寧ろ、全身全霊で世の為人の為、その聖剣を振るおうとしている。
まさに、聖騎士の鏡とも言える生き方を目指している。

本来であれば、その姿に感心し、そのまま道を外れることなく進んでくれと祈るだけ。
だが……貴族という、明確な権力や立場を持ってしまうが故に、愚か者は物事を自分に都合の良いように解釈し、判断してしまう。

「まぁ、イレギュラーが起きてあいつが死にそうになったら、それはそれで動くぜ。あいつはこの先が楽しみな人間の一人だからな」

「ふふ、随分と彼を気に入ってくれたようだね」

「あいつの事が気に入らない連中は、自分の弱さに対して良い訳しか出来ない連中だけだろ。クソだりぃなと思ったヨセフでさえ、エリヴェラの事を認めてたしな」

自身の弱さを、足りない部分を認められない人間は、否が応でも突き付けられる……自分が頑張っていない、胡坐をかいているだけの現実を。

エリヴェラの実家は男爵家であり、一応貴族ではある。
だが……エリヴェラにとって、途中まで師と言える人物はいても、現在のエリヴェラに対し、教えられる人物はいなかった。

努力とは、正しい環境で、正しい方向に進めば、結果として現れる。

エリヴェラは正しい方向に進もうという心は持っていた。
だが、正しく努力出来る環境が整っていたかと言えば……そうではない。

しかし、それでもエリヴェラは現時点で結果を出してしまった。

「狂戦士のくせに何を怖気づいてんだって思うっすか? さっきも言った通り、俺だけが狙われるなら、まだ良いっすよ。その後実家がどういう反応をするかは知らないっすけどね。ただ……ダチの命が関わってるなら、話は別だ」

何が来ようが、自慢の暴力で全て弾き返して叩き潰してやる……とは言わない。

彼は自身の戦闘力に対し、確かな実力を有している。
それでも、多くの強者たちの強さを身を持って知っているからこそ……慢心もない。

「なぁ、ロブストさん。俺は……何か間違った事を言ってるか?」

「……ふっふっふ、はっはっはっはっはっはっは!!!!!!! いやはや、流石噂以上の狂戦士といったところか。儂を前にして、ここまで物怖じず自身の考えを口にするとは……バトレア王国の未来は明るいのう」

「ロブストさん、俺は別に卒業後、騎士になるつもりはないんで、別に明るいとは限らないっすよ」

「のっほっほ! そうじゃったか。確かに、お主が騎士になれば上司と喧嘩が耐えなそうじゃのう……して、その件だが、勿論儂の方でしっかりと手を回させてもらう」

「そうっすか…………俺は、あなたの何を担保に、その言葉を信じれば良い。この学園の存在っすか? それとも、あなたの親族か……それとも命か」

「「ッ!!!!」」

先程までの言動に関しては、圧に押されていたからというのもあるが、まだ理由が理由であるため感情が昂ることはなかった。

だが、再度……無視出来ない言動が耳に入り、男女二人はアイテムバッグに収納している武器に手を伸ばす衝動を必死に抑える。

「クソ生意気でクソ失礼だと思うっすか? そう思われて結構ですよ。貴族が……
さらに言えば、大人が多くの意味で汚い、ズルいなんてのは世界の常識でしょう」

「のっほっほ、それは確かに最もな常識じゃのう…………ひとまず、これを担保にしようか」

そう言いながら、ロブストはアイテムリングの中から、五つのアイテムを取り出した。

「今回の討伐依頼が終わるまで、是非……君に預かってもらっておこう」

「っ……なるほど。こいつは、担保になりそうっすね」

ロブストがアイテムリングから取り出したアイテムは、全て……剣である。

当然、ただの剣ではなく、全てが聖剣。
五つの内、二つがランク七の聖剣であり、もう三つが……ランク八の、聖剣。

文字通り、ロブストが持つ最強の武器であり、相棒たちである。
しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

お子ちゃま勇者に「美味しくないから追放!」された薬師、田舎でバフ飯屋を開く

ファンタジー
現代日本から転生した味覚オタクの薬師ユージンは、幼い勇者パーティの“保護者枠”として命を守るため口うるさくしていたが、「薬が苦い」「うるさい」と追放される。 田舎ミズナ村で薬膳小料理屋「くすり香」を開いた彼の“バフ飯”は冒険者を覚醒させ、村を救い、王都の薬利権すら揺らす。 一方、追放した子どもたちはユージンの真意を知って大泣きするが、彼は戻らない──自分の人生を取り戻すために。

異世界で大往生した私、現代日本に帰還して中学生からやり直す。~最強の補助魔法で、冴えないおっさんと最強美女を操って大金持ちになります~

タカノ
ファンタジー
異世界へ転移し、聖女として崇められ、愛する家族に囲まれて88歳で大往生した……はずだった。 目が覚めると、そこは現代日本。 孤児の中学2年生、小金沢ヒナ(14)に戻っていた。 時間は1秒も進んでおらず、待っていたのは明日のご飯にも困る極貧生活。 けれど、ヒナの中身は酸いも甘いも噛み分けたおばあちゃん(88歳)のまま! 「もう一度、あの豊かで安らかな老後(スローライフ)を手に入れてみせる!」 ヒナは決意する。異世界で極めた国宝級の【補助魔法】と【回復魔法】をフル活用して、現代社会で大金を稼ぐことを。 ただし、魔法は自分自身には使えないし、中学生が目立つと色々面倒くさい。 そこでヒナがビジネスパートナー(手駒)に選んだのは―― 公園で絶望していた「リストラされた冴えないおっさん」と、 借金取りに追われる「ワケあり最強美女」!? おっさんを裏から魔法で強化して『カリスマ社長』に仕立て上げ、 美女をフルバフで『人間兵器』に変えてトラブルを物理的に粉砕。 表向きはニコニコ笑う美少女中学生、裏では彼らを操るフィクサー。 「さあ善さん、リオちゃん。稼ぎますよ。すべては私の平穏な老後のために!」 精神年齢おばあちゃんの少女が、金と魔法と年の功で無双する、痛快マネー・コメディ開幕!

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~

存在証明
ファンタジー
不慮の事故によって異世界に転生したカイ。異世界でも家族に疎まれる日々を送るがある日赤い瞳の少年と出会ったことによって世界が一変する。突然街を襲ったスタンピードから2人で隣国まで逃れ、そこで冒険者となったカイ達は仲間を探して冒険者ライフ!のはずが…?! はたしてカイは運命をぶち壊して幸せを掴むことができるのか?! 火・金・日、投稿予定 投稿先『小説家になろう様』『アルファポリス様』

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル 異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった 孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。 5レベルになったら世界が変わりました

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

処理中です...