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連載
少年期[265]嬉し涙
しおりを挟むセフィーレによって放たれた火と風の魔力によって生み出されたドラゴンの咢により、心臓を噛み千切られたオーガジェネラルはゆっくりと地面に膝を付き、前のめりに倒れ込む。
大きな音を立ててオーガジェネラルが地面に倒れ伏したのを確認したセフィーレは、ようやくオーガジェネラルを倒す事が出来たのだと実感した。
「・・・・・・私は、倒す事が、出来たのだな。試練を・・・・・・アゼレード家の試練を達成する事が出来たのだな」
戦いの最中に思いはすれど、一度も泣き言を言わなかったセフィーレの涙が零れ落ちる。
勿論嬉し涙だなのだが、それは直ぐにおさまらず流れ続けた。
「「「セフィーレ様!!!!!!」」」
「うぉ、っとっとっと!!??」
今までの努力が証明されたという実感を得ていたセフィーレに従者であるカネル、ソブル、リシアの三人は嬉しさのあまりセフィーレと同様に涙を流しながら抱き着いた。
本来男性であるソブルが主であるセフィーレに抱き着こうものなら、お互いの家の格式的に罪に問われても可笑しくないのだが、今それを咎める者は誰もいない。
「ふぅ・・・・・・最後の一撃は凄かったな。見事だった」
「風と火の魔力を混ぜたドラゴンの咢。例えオーガジェネラルが万全の状態であり、ガードをしていても致命傷になりうる一撃だったわね」
「ああ、その火力も凄かったけど俺が一番驚いたのは最後の最後だったな」
レイピアを突き出した直線状に向かったセフィーレの技は、オーガジェネラルに当たる一歩手前で軌道を変えた。
自身が放った魔法の軌道を変えるのはある程度才能が有り、修練を積んだ魔法使いならば殆どが出来る芸当なのだが、それをセフィーレはぶっつけ本番で大量の魔力を込めた技の軌道を変えた。
魔法、技に込めた魔力の量が多ければ多いほどコントロールは難しくなる。
しかしセフィーレは持ち前のセンスと才能、そして消える事無い信念でやり遂げてしまった。
勿論今回出来たからと言って、完全にコントロールする事が出来た訳では無い。
それでも、ゼルートは驚かずにはいられなかった。
(本当に凄い人だな・・・・・・いや、今までしっかりと努力し続けた人ならば、例え今回出来たからと言って完全に軌道を変える事が出来た訳でなくとも、この場場面で成功させたのは必然と言える筈だ)
努力すれば必ず結果が出る、報われる。
そんな事は無いとゼルートは断言できる。特にこの世界ではどんなに努力しようとも、理不尽な権力で潰されてしまう事もある。
ただ、努力しなかった者に最良の結果は訪れないとゼルートは思った。
自身の父親は元々は冒険者の身でありながら貴族へと成り上がった。
兄と姉は手紙伝えだが、上手く学園生活をおくれている。
ゼルートの友達であるリルにゴーラン、マーレルにスレンも同年代に敵はいないのではと思えるほど強くなっている。
(俺の様にチートを持ってい無いのにも関わらず成り上がっている人は確かにいる)
「なに老けた表情をしているんだゼルート」
「老けた表情ってなんだよ、老けた表情って・・・・・・心は老けていても見た目は老けてねーーよ。寧ろ幼いわ!!!」
「・・・・・・ふむ。確かにそれもそうだな。特に考え方は老けている気がするな」
間違ってはいないし、自分でも似たようなセリフを吐いたのだが、いざ仲間から言われるとグサッとゼルートの心に突き刺さった。
「ルウナの言う通りね。まぁ・・・・・・取りあえずお疲れ様ゼルート」
「おう、二人もお疲れ様。上に戻ったらゆっくり休んでからたっぷり飯食べようぜ」
「ゼルートに賛成だ。肉が私を待っている!!!」
ルウナの言葉に二人は笑いながら、一先ず五人・・・・・・では無く四人落ち着くのを待った。
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応援ありがとうございます!
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