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少年期[850]持つ気も興味もない
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「お待たせしました」
三人が丁度朝食を食べ終わったあたりの時間に、学園からの馬車が到着。
「随分と良い馬車ね」
ゲイルたちと一緒に学園に向かう途中、馬車の内装を見たアレナが一言、そう零した。
「英雄を運ぶ馬車となれば、あまり安い物を使うのは良くないと思ったのだろう」
「ルウナ……その呼び方は止めてくれって」
「おっと、すまんすまん」
ルウナはゼルートがあまり好みの呼び方ではないと解っていながらも、偶に英雄と呼んでからかっていた。
「多分、学園が所有している貴族を乗せるための、専用の場所なんでしょうね……って、ゼルートも貴族になったんだし、当然の対応と言えば当然よね」
「……なのかもな」
ゼルートは既に自身の新しい家名を国に申請し、それは承諾された。
ゼルート・アドレイブ。
それがゼルートの新しいフルネームとなった。
(俺が新しい貴族、ねぇ…………気にしてもしょうがないよな)
いずれこうなるかもしれないと予測はしていたが、それでも変な気分ではある。
「それで、家門のシンボルは決まったの?」
「……全く考えてない」
新しい領地を持つわけではないが、国からはできればアドレイブ家だけの家門デザインを考えてほしいと伝えられている。
期限は決められていない為、ゼルートは未だほったらかしにしていた。
「別に領地を持つ貴族って訳じゃないんだし、直ぐに決める必要はないと思ってさ」
「それはそうかもしれないけど、自分の騎士を持つことになったりしたら、絶対に必要になってくるわよ」
「俺の騎士? ……今のところ、そんな存在を持つ気は一ミリもないよ」
貴族の令息や令嬢から、正真正銘の貴族となれば当然、自分に仕える貴族をもつことが出来る。
しかし、これからも冒険者として人生を送るゼルートとしては、全く持って興味がない話だった。
「皆さま、学園に到着しました」
「はい」
使者がドアを開け、三人が馬車から降りると……目の前にはこれから三人が教師として働く学園があった。
(どう見ても、中学校や高校以上の……大学並みの大きさ、だよな?)
前世で殆ど大学を見たことがないので確信は持てないが、相当広い施設ということだけは解った。
しかし、今までさんざん大きな街や屋敷、城などを生で見てきた甲斐があってか、特に驚きはしなかった。
「お待ちしてました、ゼルート・アドレイブさん。アレナさんとルウナさんもお越しいただきありがとうございます」
門の前に、一人の教師が立っており、三人に対して感謝の言葉を述べる清楚系イケメン。
「こちらの方は、当学園の二年生の学年主任を務めるコルトさんです」
「そうなんですね。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
差し出された手に握手をし、ゼルートは一つ疑問を持った。
(この人、戦争に参加したのかな? でも、冒険者専門の学園から誰かが参加したって話は聞かなかったし……この人ぐらいのレベルなら、参加要請があってもおかしくないと思うんだが)
ゼルートの見立てでは目の前の清楚系イケメン……イーサン・コルトは先日の戦争に参加しても、それなりの功績を残せる実力を有していると感じた。
「イーサン・コルトです。早速ですが、軽く学園の施設案内をしたいと思います。あっ、従魔の方達もご一緒で大丈夫ですので」
「ありがとうございます」
既に情報伝達はされている為、ゲイルたちがわざわざ人の姿になる必要はなく、普段通りの姿のまま堂々と校内に入った。
まだ授業は始まっていないが、学園の中に入ると教師だけではなく学生の姿もちらほらと見える。
当たり前だが、情報が伝達されていたとしても……校内で堂々とモンスターが歩いている光景を見れば、驚く。
腰を抜かす者もいた。
しかし、リザードマンとスライムと子供のドラゴンというセットを見て、先日伝えられた情報を思い出す。
報連相がしっかりと行われていたため、てんやわんやな状況になることはなかった。
三人が丁度朝食を食べ終わったあたりの時間に、学園からの馬車が到着。
「随分と良い馬車ね」
ゲイルたちと一緒に学園に向かう途中、馬車の内装を見たアレナが一言、そう零した。
「英雄を運ぶ馬車となれば、あまり安い物を使うのは良くないと思ったのだろう」
「ルウナ……その呼び方は止めてくれって」
「おっと、すまんすまん」
ルウナはゼルートがあまり好みの呼び方ではないと解っていながらも、偶に英雄と呼んでからかっていた。
「多分、学園が所有している貴族を乗せるための、専用の場所なんでしょうね……って、ゼルートも貴族になったんだし、当然の対応と言えば当然よね」
「……なのかもな」
ゼルートは既に自身の新しい家名を国に申請し、それは承諾された。
ゼルート・アドレイブ。
それがゼルートの新しいフルネームとなった。
(俺が新しい貴族、ねぇ…………気にしてもしょうがないよな)
いずれこうなるかもしれないと予測はしていたが、それでも変な気分ではある。
「それで、家門のシンボルは決まったの?」
「……全く考えてない」
新しい領地を持つわけではないが、国からはできればアドレイブ家だけの家門デザインを考えてほしいと伝えられている。
期限は決められていない為、ゼルートは未だほったらかしにしていた。
「別に領地を持つ貴族って訳じゃないんだし、直ぐに決める必要はないと思ってさ」
「それはそうかもしれないけど、自分の騎士を持つことになったりしたら、絶対に必要になってくるわよ」
「俺の騎士? ……今のところ、そんな存在を持つ気は一ミリもないよ」
貴族の令息や令嬢から、正真正銘の貴族となれば当然、自分に仕える貴族をもつことが出来る。
しかし、これからも冒険者として人生を送るゼルートとしては、全く持って興味がない話だった。
「皆さま、学園に到着しました」
「はい」
使者がドアを開け、三人が馬車から降りると……目の前にはこれから三人が教師として働く学園があった。
(どう見ても、中学校や高校以上の……大学並みの大きさ、だよな?)
前世で殆ど大学を見たことがないので確信は持てないが、相当広い施設ということだけは解った。
しかし、今までさんざん大きな街や屋敷、城などを生で見てきた甲斐があってか、特に驚きはしなかった。
「お待ちしてました、ゼルート・アドレイブさん。アレナさんとルウナさんもお越しいただきありがとうございます」
門の前に、一人の教師が立っており、三人に対して感謝の言葉を述べる清楚系イケメン。
「こちらの方は、当学園の二年生の学年主任を務めるコルトさんです」
「そうなんですね。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
差し出された手に握手をし、ゼルートは一つ疑問を持った。
(この人、戦争に参加したのかな? でも、冒険者専門の学園から誰かが参加したって話は聞かなかったし……この人ぐらいのレベルなら、参加要請があってもおかしくないと思うんだが)
ゼルートの見立てでは目の前の清楚系イケメン……イーサン・コルトは先日の戦争に参加しても、それなりの功績を残せる実力を有していると感じた。
「イーサン・コルトです。早速ですが、軽く学園の施設案内をしたいと思います。あっ、従魔の方達もご一緒で大丈夫ですので」
「ありがとうございます」
既に情報伝達はされている為、ゲイルたちがわざわざ人の姿になる必要はなく、普段通りの姿のまま堂々と校内に入った。
まだ授業は始まっていないが、学園の中に入ると教師だけではなく学生の姿もちらほらと見える。
当たり前だが、情報が伝達されていたとしても……校内で堂々とモンスターが歩いている光景を見れば、驚く。
腰を抜かす者もいた。
しかし、リザードマンとスライムと子供のドラゴンというセットを見て、先日伝えられた情報を思い出す。
報連相がしっかりと行われていたため、てんやわんやな状況になることはなかった。
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