838 / 1,083
連載
少年期[996]権利はあった筈
しおりを挟む
SIDE 蒼天の翼
「……フィンザス、本当に良かったのか?」
「何がだい、ドルク」
かつて失った仲間の一件に……一応区切りが付いた蒼天の翼。
彼等はこれ以上アレナがいる街に留まるのは良くないと思い、その日の内に別の街へと向かった。
そして現在、丁度良い場所で野営を行い、リーダーであるフィンザスと熊人族のドルクが見張りを行っている。
「アレナのこと……好きだったんだろ」
「はは……うん、そうだね。好きだよ、今でも……まだ、その想いは消えてない」
「それなら、その想いぐらいは伝えても良かったんじゃないか?」
ドルクから見て、フィンザスは自分に対して少々完璧主義が過ぎるところがあると思っていた。
冒険者同士の恋愛に関してはあれこれジンクスがあるものの、ドルクから見てフィンザスとアレナはお似合いだった。
ただ……フィンザスは細かく深く、どうすればアレナを守れるかを真剣に考えていた。
まだ付き合ってもいないのに、そこまで細かく考えるのは早くないか? とツッコみたい部分はあるものの、ドルクや他のメンバーもそこがフィンザスらしいと思っている。
(あれだけ他の女たちから告白されたりアプローチされたり……挙句の果てには貴族令嬢からそういうアプローチもされた事があるのに……全部断って来たんだ。俺なら、よろしくねぇってのは解ってるけど、一回ぐらい誘惑に負けそうだぜ)
アレナを必ず助け出す前に国外で活動していた時もその内面に、イケメンフェイスに惹かれる女性は後を絶たなかった。
どんな時も……何処でも、リーダーであるフィンザスはしっかりと一人の女性に対し、真剣に向き合っていた。
勿論、パーティーの事も常に考えており、とある知り合いの学者からは脳みそが二つあるのではと疑われたことがある。
「…………そうだね。確かに……伝えても罰は当たらなかったかもしれない。でもさ、何か……あの場面でそれを伝えるのは、卑怯だと思ったんだ」
解らなくはない。
状況を今一度脳裏に思い浮かばせて振り返ると……あの流れで最後にその想いを伝えるのは卑怯。
あまりそういうのに機敏ではないドルクも納得してしまう。
それでも……ドルクはフィンザスにこれまでを見てきたこともあり、それぐらいは無視しても良いのではないという思いもあった。
「けどよ、あそこで言えなかったら……もう、伝える機会はないだろ」
「そうだね……初恋は実らないって言うけど、今回の一件で本当にその通りだなって思い知ったよ」
「……やっぱり、俺は卑怯だとしても、あそこで自分の想いを伝える権利が、フィンザスにはあったと思う」
「ありがとう、ドルク。そう言ってくれるだけでも幾分か楽になるよ……でも、あそこで僕の想いをアレナに伝えたとしても、アレナの心は……決心は揺るがなかったよ」
実際に伝えていない為、本当にフィンザスが口にした通り、アレナの決心が揺るがなかったとは限らない。
限らないものの……元パーティーメンバーであったドルクとしても、望みが高いとは思えなかった。
「けど、そこで僕が想いを伝えてしまえば、ただアレナを苦しめて……辛い思いをさせてしまう。そんな結末を僕は望まない。お互いに涙を流しながらも……最後は、笑顔で別れたかった」
「…………ったく、どこまでイケメンだな、お前は」
一人の男として、心の底からそう思った。
この男は、紛れもなくカッコイイ漢だと。
(アレナもこんな良い男を逃がしやがって……二度と出会えるか分からんと言うのに……いや、まだ子供ではあるが、リーダーであるゼルート君……さん? は実力だけならフィンザスより上か……しかし)
「おいおい、急に変な顔してどうしたんだんよ」
「むっ、俺は俺でちょっと真剣に考えてただけだ……それで、初恋は終ってしまった訳だが、これからどうするんだ?」
「そうだね……自分で言うのもあれだけど、まだ若いんだ。変にそれじゃあ次の恋に! って焦らず、ゆっくり見て出会っていこうと思うよ」
「そうか」
このリーダーには幸せになって欲しい。
ドルクは改めてそう思った。
「……フィンザス、本当に良かったのか?」
「何がだい、ドルク」
かつて失った仲間の一件に……一応区切りが付いた蒼天の翼。
彼等はこれ以上アレナがいる街に留まるのは良くないと思い、その日の内に別の街へと向かった。
そして現在、丁度良い場所で野営を行い、リーダーであるフィンザスと熊人族のドルクが見張りを行っている。
「アレナのこと……好きだったんだろ」
「はは……うん、そうだね。好きだよ、今でも……まだ、その想いは消えてない」
「それなら、その想いぐらいは伝えても良かったんじゃないか?」
ドルクから見て、フィンザスは自分に対して少々完璧主義が過ぎるところがあると思っていた。
冒険者同士の恋愛に関してはあれこれジンクスがあるものの、ドルクから見てフィンザスとアレナはお似合いだった。
ただ……フィンザスは細かく深く、どうすればアレナを守れるかを真剣に考えていた。
まだ付き合ってもいないのに、そこまで細かく考えるのは早くないか? とツッコみたい部分はあるものの、ドルクや他のメンバーもそこがフィンザスらしいと思っている。
(あれだけ他の女たちから告白されたりアプローチされたり……挙句の果てには貴族令嬢からそういうアプローチもされた事があるのに……全部断って来たんだ。俺なら、よろしくねぇってのは解ってるけど、一回ぐらい誘惑に負けそうだぜ)
アレナを必ず助け出す前に国外で活動していた時もその内面に、イケメンフェイスに惹かれる女性は後を絶たなかった。
どんな時も……何処でも、リーダーであるフィンザスはしっかりと一人の女性に対し、真剣に向き合っていた。
勿論、パーティーの事も常に考えており、とある知り合いの学者からは脳みそが二つあるのではと疑われたことがある。
「…………そうだね。確かに……伝えても罰は当たらなかったかもしれない。でもさ、何か……あの場面でそれを伝えるのは、卑怯だと思ったんだ」
解らなくはない。
状況を今一度脳裏に思い浮かばせて振り返ると……あの流れで最後にその想いを伝えるのは卑怯。
あまりそういうのに機敏ではないドルクも納得してしまう。
それでも……ドルクはフィンザスにこれまでを見てきたこともあり、それぐらいは無視しても良いのではないという思いもあった。
「けどよ、あそこで言えなかったら……もう、伝える機会はないだろ」
「そうだね……初恋は実らないって言うけど、今回の一件で本当にその通りだなって思い知ったよ」
「……やっぱり、俺は卑怯だとしても、あそこで自分の想いを伝える権利が、フィンザスにはあったと思う」
「ありがとう、ドルク。そう言ってくれるだけでも幾分か楽になるよ……でも、あそこで僕の想いをアレナに伝えたとしても、アレナの心は……決心は揺るがなかったよ」
実際に伝えていない為、本当にフィンザスが口にした通り、アレナの決心が揺るがなかったとは限らない。
限らないものの……元パーティーメンバーであったドルクとしても、望みが高いとは思えなかった。
「けど、そこで僕が想いを伝えてしまえば、ただアレナを苦しめて……辛い思いをさせてしまう。そんな結末を僕は望まない。お互いに涙を流しながらも……最後は、笑顔で別れたかった」
「…………ったく、どこまでイケメンだな、お前は」
一人の男として、心の底からそう思った。
この男は、紛れもなくカッコイイ漢だと。
(アレナもこんな良い男を逃がしやがって……二度と出会えるか分からんと言うのに……いや、まだ子供ではあるが、リーダーであるゼルート君……さん? は実力だけならフィンザスより上か……しかし)
「おいおい、急に変な顔してどうしたんだんよ」
「むっ、俺は俺でちょっと真剣に考えてただけだ……それで、初恋は終ってしまった訳だが、これからどうするんだ?」
「そうだね……自分で言うのもあれだけど、まだ若いんだ。変にそれじゃあ次の恋に! って焦らず、ゆっくり見て出会っていこうと思うよ」
「そうか」
このリーダーには幸せになって欲しい。
ドルクは改めてそう思った。
84
あなたにおすすめの小説
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜
日々埋没。
ファンタジー
「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」
かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。
その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。
レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。
地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。
「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」
新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。
一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。
やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。
レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~
ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国の辺境で、ただ静かに生き延びたいと願う少年、ヴァン。
彼に正義感はない。あるのは、前世の記憶と、母が遺した『物理法則を応用した高圧魔力』という危険な理論だけだ。
敵の大軍が迫る中、ヴァンは剣も振るわず、補給線と心理を切り裂く。
結果、敵軍は撤退。代償も、喝采も、彼には無意味だった。
だが、その「効率的すぎる勝利」は帝国の目に留まり、彼は最高峰の『帝国軍事学院』へと引きずり出される。
「英雄になりたいわけじゃない。生き残りたいだけだ」
謎の仮面メイド『シンカク』、命を取引に差し出した狼耳の少女『アイリ』。
少年は選択する。正義ではなく、最も費用対効果の高い道を。
これは、合理が英雄譚を侵食していく、学園ミリタリーファンタジー。
【※作者は日本語を勉強中の外国人です。翻訳ソフトと辞書を駆使して執筆しています。至らない点もあるかと思いますが、物語を楽しんでいただければ幸いです。】
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
王家も我が家を馬鹿にしてますわよね
章槻雅希
ファンタジー
よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。
『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。