カバディ男の異世界転生。狩られたい奴はかかってこい！！

七話 おかわり待ったなし

アスクとの訓練を終えた後、家族揃って夕食を食べ始める。

食卓には当然……餃子が並んでいる。

「これが、クランドが新しく考えた料理か」

匂いは……上品ではない。
そこだけを考えると、一般的に庶民が食べる料理。
そう思うのが普通だが……オルガは、アスクが考えた料理は美味いと信頼していた。

「米と一緒に食べると美味しいですよ」

そう言いながら、クランドは次々に餃子と米を交互に食べていく。

「…………うむ、最高だな」

息子のアドバイス通り、米と一緒に食べると……もう食べる手が止まらなくなった。

夫のオルガが勢い良く食べ始めたことで、妻のエリカとレイナも恐る恐る口に入れると、オルガと同じ流れを辿る。

「……ちっ」

軽く舌打ちをするフーネス。
あまり良い思いを抱いていない弟が考えた料理など、食いたくもない。

という、子供らしい思いが心にある。
ただ……尊敬する父親が美味いと言葉にし、二人の母もどんどん食べ始めたので……仕方ないといった気持ちで一口食べた。

これはフーネスも以前までの経験から解っていたことだが……クランドが考え、作る料理は美味かった。
料理に罪はなく、フーネスは黙々と餃子と米、野菜料理を食べ始める。

ロ二アスやアスク、クランドにとって三つ下の妹アルネや姉であるミラルは変に疑うことなく、もりもりと食べていた。

そして食べ盛りの子供たちには、皿にあった分だけでは足らず、直ぐに追加の餃子が届く。

「ふむ、これまた良い料理だった……クランド、今回の料理も以前と同じで良いのだな」

「はい、お願いします」

その会話だけで特許に関する話は終了。

クランドは満腹状態でダラダラするのは好ましくないと思っており、直ぐに訓練場へと向かった。
こうして自分を鍛えることに余念がなく、手の空いた騎士たちが集い、クランドにアドバイスを送り、模擬戦相手にもなった。

そんな殆ど訓練、料理が少々の日々を繰り返すクランドだが、貴族の令息らしく、社交界に出る。

以前まではオルガ、エリカ譲りの整った容姿と、将来有望であろう実力を秘めていることから、多くの令嬢たちに言い寄られていた。

しかし、五歳を過ぎても槍技のスキルを習得出来できず……それが何年も続いた結果、言い寄ってくる令嬢は殆どいなくなった。
クランドとしては本当に親しい友人たちとのみ話したいという事もあり、その状況は大きな声で言えないが、願ったり叶ったり。

ただ……今回参加したも社交界では、結局クランドが槍技のスキルを習得できず、良く解らないカバディというスキルを習得したという話が広まっていた。

「やぁ、クランド。久しぶりだね」

「あぁ、久しぶりだな」

パーティー会場に入ると、友人である令息との再会に喜ぶクランド。

しかし、同じパーティー会場にいる多くの子供たち……主に令息たちが小声で笑ったり、子バカにする様な目を向けていた。

（解りやすいな～。貴族の子供なんだから、ひとまずそういった思いとかは隠しておくべきだと思うんだが……年齢を考えれば、まだ無理か）

現実的に考えて、他の子供たちから自分がそういった感情や思いを向けられるステータスというのは理解している。

クランドは槍技のスキルだけではなく、ライガー家を象徴する風魔法のスキルも習得出来ていない。
加えて、現在でも習得している火魔法と土魔法のスキルレベルはそこまで上がっていない。

それらの理由から、他の令息たちが今までちやほやされていたクランドを下に見て、小バカにするのは当然の流れだった。

「全く、何を見てるんだか」

「そう怒るなって。怒ったところで、俺を下に見ている奴らの目や心が変わることはない」

「それはそうかもしれないけど……それでも、友達がバカにされるて、心を落ち着かせるのは無理だよ」

「そうか……ありがとな」

前世という事情を考えれば、弟言えるほど年齢が離れた子供からの言葉だが、それでもクランドは心の底から嬉しいと感じていた。

そして正式にパーティーが始まってからも、二人の会話に誰かが入ってくることはなく、時折クランドを小バカにする声がぽつぽつと零れる。

（俺を馬鹿にしながらも、喧嘩を売ってこない辺り、可愛いもんだよな）

幼い頃、交流会などでその実力を発揮し、多くの同性代をビビらせたことがあった。

今のクランドはライガー家の血を引いてないのでは？　と思えるほど色々と欠落している様に思えるが、令息たちの記憶からは、同世代を一撃で仕留めるクランドの強さが確かに残っていた。

一度馬鹿にし始めてしまったら、もう後には引き返せないという事もあり、殆どの同年代の令息たちはその良くない流れに乗ってしまっていた。

クランドの友人は同じ伯爵家の出だが、クランドが槍技のスキルを習得できなかったり、魔法の才能がなくとも裏切ろうとはしなかった。
両親も武に理解がある人物であり、クランドとの交流を絶てと横暴なことを言うこともなく、今でも友人関係でいられている。

たとえ二人だけであっても、美味い飯を食べながら楽しく喋っている二人の元に、厄介な客が歩を進めてきた。