カバディ男の異世界転生。狩られたい奴はかかってこい!!

Gai

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十一話 今はまだ無理

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(あれは……ワイルドボア、だったか?)

目の前に現れた生物を、モンスターの情報をまとめた図鑑で見たことがあった。

ワイルドボアのランクはD。
当たり前だが、子供が戦う様なモンスターではない。

クランドは着実にレベルを上げているが、それでも普通は単独で討伐など不可能なのだが……それでも、クランドは騎士たちの前に歩み出た。

「いや、俺が相手をします」

「クランド様、あいつは今まで相手しきたモンスターと違います」

「それは解ります。なので、俺が本当にピンチになったら、助太刀をお願いします」

「ちょっ」

そう言い残し、強化スキルを使用しながら更に一歩前に出た。

(中学生の時……高校生や大人を相手にしてた時と同じ感覚だな)

やはり、今まで戦ってきたモンスターとは、文字通りレベルが違う。
ただ……クランドはその現状を、心の底から楽しんでいた。

「カバディ」

キャントを開始し、更に身体能力を強化。

「ボォォアアアッ!!!」

獲物が向かうかやらって来たことを確認し、ワイルドボアも完全に殺る気スイッチが入った。

大きな牙に、鋭いタックル。
どれも今のクランドが食らえば、一発で殺られてしまう。

「ッ~~~~~!!! 囲むぞ!!」

「「あぁ!!」」

どの方向からでも対処出来るように、騎士たちはワイルドボアを囲う様な位置で待機。

(ぶっ飛んでる人だとは思ってたけど、ちょっとぶっ飛び過ぎじゃないですか!?)

クランドに「とりあえず自分一人で大丈夫だ」と言われてしまったら、一先ずソロでの行動を見逃すしかない。
しかし、クランドに何かあればお叱りを受けるのは騎士たち。

「カバディ」

それが解かっているからこそ、クランドはキャントを行いながら、まずはワイルドボアの力を確認し始めた。

幸いにもスピード、判断力の速さではクランドが勝っている為、今のところ攻撃は食らっていない。
とは言っても、囲っている三人は不安で不安でしかたなかった。

(木を容易にブチ折る突進力……ふふ、色々と思い出すな)

クランド……大河がカバディプレイヤーとして活躍している頃、触れられて点になることも恐れず、タックルで自分を潰しに来ようとする単語アンティ守備がいた。

当然、点を取られることを顧みない、決死のタックルは恐ろしい。

(けど、そういう人を一人だけ相手してるって考えると……やりやすいな)

「カバディ」

決死のタックルも、統率の取れた守備からいきなり飛び出てくるからこそ、虚を突かれて沈められる。

「やっぱり……躱すのは上手いな」

皮肉ではない。
純粋に騎士はクランドの回避能力、読みを褒めていた。

速さという点に関しては、ワイルドボアに負けてないからこそ通じる回避力。

(でも、木に頭をぶつけたぐらいで潰れませんよ)

ワイルドボアは例え岩にぶつかろうとも、その衝撃で意識を失うことはない。

「カバディ」

回避に専念していたクランドも、徐々にカウンターを入れていく。

身体強化のスキルとキャントによる強化が重なり合っていることで、通常の蹴りではないことは確か。

カウンター……不意を突かれた形ではあるので、ワイルドボアも多少はよろめく。
しかし、直ぐに体勢を整え、再びタックルを行う。

「カバディ」

今度は顔近くに蹴りをぶち込んだが、その衝撃が脳まで達することはなかった。

(脳震盪でもしてくれたら、その隙に思いっきりぶち込めるんだけどな)

決して鈍まではないワイルドボアの速さを考えると、力を溜めてからの攻撃を難しい。

(まっ、文句を言っても仕方ない)

自力でワイルドボアを倒すために動き出す。

「カバディ」

既にワイルドボアがどのタイミング以降は、高校転換が出来ないのか見極めている。

本音を言えば、パワー武器に真正面から倒したいところだが、まだ自分にそれだけの力はない。

(ここだ!!)

故に、小細工を使用。
クランドは魔法の才があまりない。

しかし……魔力操作で工夫すれば、攻撃を飛ばすことは出来る。

「ッ!!??」

指に岩を纏い、ジャブの感覚で……指先の岩を飛ばした。
ロケットパンチならぬ、ロケットフィンガー。

その鋭い岩の指は、防御力が皆無の目に片目に命中。
ジャブの勢いが乗っており、片目を潰すことに成功。

タックルは中途半端に終わり、再度木に激突した。
しかし……今回は木が折れることはなかった。

「カバディ!!!」

ジャブを放った後、即座にジャンプ。
中途半端なタックルを躱し、体を宙で回転。

そして今度は指だけではなく拳に岩を纏い、渾身の一撃を頭部に叩きこんだ。

「ッ!? ボ、ァ」

度重なる衝撃に、視界が揺れる。

そんなワイルドボアに情けをかけることはなく、再度……今度は同じ個所に鉄槌をかました。

「カバディ」

渾身の二撃を叩きこみ、その場から跳んだクランドは、まだ戦闘状態。
骨が砕けた……それが解かる二撃をぶち込むことに成功したが、それでも油断出来ない。

「クランド様……あなたの勝ちです」

しかし、クランドよりも多くの死を今まで見てきた騎士たちは、もうワイルドボアが戦えないと一目で解った。

まだフラフラと動き、獲物にタックルをぶちかまそうとするワイルドボアだったが、途中で力尽き、その場から動かなくなった。
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