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十六話 一番の悩みの種は
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「それにしても、羨ましい限りだ」
オルガはとある一室で、歳の近い他家の当主から、嘘偽りない言葉を伝えられた。
「ふふ……確かに、息子たちの出来の良さを考えれば、自信を持って誇らしいと言える」
とある一室にはオルガを含めた、四人の当主がテーブルを囲んで話している。
そんな中、話題はオルガの息子や娘に移る。
「ロ二アス君は、間違いなく騎士になれるだろう。もしかしたら、オルガを超える魔槍使いになるかもしれないな」
「プレッシャーを掛けたくないから、あまり大きな声では言えないが、そうなると確信しているよ」
自分も幼き日は才ある者だと思っていた。
その考えは間違いなく、出世街道を歩んできた。
しかし……槍の扱いや魔法の腕、あるゆる面を考え、長男であるロ二アスは自分を超える逸材だと確信している。
同じテーブルを囲んで話す当主たちも、自分の息子や娘に自信がない訳ではない。
ただ、ロ二アスは天才たちの中でも頭一つか二つ抜けた存在。
それは全員共通の考えだった。
「ロ二アス君に加えて、フーネス君も優秀だ。本当に、オルガが羨ましいよ」
「あいつも……壁を乗り越えようと、毎日必死に戦っているからな」
ライガー家の次男、フーネス。
一時は少々傲慢な性格になりかけていたが、結局槍技を習得出来なかったクランドに負け、その後の事情によって、完全に吹っ切れた。
そこから強くなることに一直線。
今ではクランドとの関係も……まだ多少ギクシャクしてはいるが、決して悪くはない。
「偶に、今日はもう休みなさいと言ってしまう時がある。そこが、少し心配だ」
「そうだな。無茶のし過ぎは良くない」
強くなりたい。
その気持ちが強い者ほど、普段の鍛錬から無茶をしてしまう傾向が強い。
この場にいる四人、全員がそれを体験済みで、少々痛い目を見ている。
最近はオーバーワークしてしまう日が減ってきてはいるが、相変わらず自分を鍛えることに超集中している。
母親であるレイナは当然心配しており、ライガー家に仕える者たちにも心配する者は多い。
そんな家族や使用人たちの心配を無下にすることはないが、フーネスの高まり続ける強くなりたいという気持ちは、そう簡単に落ち着かない。
「ところで、息子たちの婚約者探しは進んでいるのか?」
「……こんな事言うのはおかしいと解っているが、今一番の悩みの種はそれだ」
本気で悩みが表情に現れるオルガ。
ロ二アスとフーネスの様々なステータスを考えれば……未だに婚約者がいなのは、確かにおかしい状況。
二人は容姿の種類こそ違えど、イケメンな部類に入ることは間違いない。
親の爵位関係無く、女の子の中には二人を狙う者が多い。
当主たちも、伯爵家の中でも槍の名門であるライガー家と縁を結びたいと申し出る者は多い。
紹介される令嬢たちは二人に勝るとも劣らない者ばかりだが、未だに縁は成立していない。
まずロ二アスは……他家の令息と比べても圧倒的にモテるが、自身を高めることが最優先事項。
令嬢との交友など、二の次。
女性嫌いという訳ではないが、そこまで興味がない。
いずれはライガー家を継ぐために嫁を迎え入れなければならない、というのは理解している。
なので、一応王都の学園で生活する中で、婚約者を見つけようと思ってはいる。
ただ……実際に見つけられるかは、今のところ不明。
「二人とも強くなることに対して貪欲だからね」
「そは嬉しいのだが……将来を共にする者ができれば、心に余裕が生まれると思うのがな」
ロ二アスとは逆で、フーネスは一般的な男子らしく、そこそこ異性に興味がある。
好みの令嬢に近づかれたら、胸がドキドキすることは珍しくない。
しかし……心の中に、兄であるロ二アスに……弟であるクランドにとって、恥じない存在でありたいという思いが強い。
その為、婚約者……恋人に近い存在をつくることは、自身の停滞に繋がってしまうと考える部分がある。
(フーネスはロ二アスの様にならないと思っていたが、予想外な状況になってしまったものだ)
フーネスの気持ちを押し切り、無理矢理婚約者を付けようとは思えない。
その強い向上心は親として、一人の戦闘者として尊重したい。
ただ、婚約者が出来たからといって、弱くなるとは限らない。
「まっ、女遊びを覚えられてしまうのは困るがな!」
「……二人に限って、そうなることはないと思っている」
天才が天才であることに怠けることなく、高みを目指し続ける。
一度は折れかかるも、小さなプライドを捨て、兄弟から誇れるような存在を目指す。
そんな二人の原動力となっているのが……三男の存在。
「二人とも良き騎士になるのは間違いないだろう。ところで、彼はやはり騎士を目指さないのか?」
「あぁ、もう気持ちは完全に固まっている」
「話は聞いていたが……ふむ、神はなんとも残酷な事をするな」
彼という言葉が指す者はライガー家の三男、クランド。
一時はライガー家の伝統を受け継ぐことが出来ず、ロ二アスをも超える逸材……という言葉は陰に埋もれた。
多くの者がそう思ったが、とある一件でその評価は覆った。
槍を使わず、槍を持つ者を制した。
そんなライガー家の者らしからぬ結果を残した令息は、今後最も騎士団が手に入れられなかった最強の戦闘者として、後悔され続ける。
オルガはとある一室で、歳の近い他家の当主から、嘘偽りない言葉を伝えられた。
「ふふ……確かに、息子たちの出来の良さを考えれば、自信を持って誇らしいと言える」
とある一室にはオルガを含めた、四人の当主がテーブルを囲んで話している。
そんな中、話題はオルガの息子や娘に移る。
「ロ二アス君は、間違いなく騎士になれるだろう。もしかしたら、オルガを超える魔槍使いになるかもしれないな」
「プレッシャーを掛けたくないから、あまり大きな声では言えないが、そうなると確信しているよ」
自分も幼き日は才ある者だと思っていた。
その考えは間違いなく、出世街道を歩んできた。
しかし……槍の扱いや魔法の腕、あるゆる面を考え、長男であるロ二アスは自分を超える逸材だと確信している。
同じテーブルを囲んで話す当主たちも、自分の息子や娘に自信がない訳ではない。
ただ、ロ二アスは天才たちの中でも頭一つか二つ抜けた存在。
それは全員共通の考えだった。
「ロ二アス君に加えて、フーネス君も優秀だ。本当に、オルガが羨ましいよ」
「あいつも……壁を乗り越えようと、毎日必死に戦っているからな」
ライガー家の次男、フーネス。
一時は少々傲慢な性格になりかけていたが、結局槍技を習得出来なかったクランドに負け、その後の事情によって、完全に吹っ切れた。
そこから強くなることに一直線。
今ではクランドとの関係も……まだ多少ギクシャクしてはいるが、決して悪くはない。
「偶に、今日はもう休みなさいと言ってしまう時がある。そこが、少し心配だ」
「そうだな。無茶のし過ぎは良くない」
強くなりたい。
その気持ちが強い者ほど、普段の鍛錬から無茶をしてしまう傾向が強い。
この場にいる四人、全員がそれを体験済みで、少々痛い目を見ている。
最近はオーバーワークしてしまう日が減ってきてはいるが、相変わらず自分を鍛えることに超集中している。
母親であるレイナは当然心配しており、ライガー家に仕える者たちにも心配する者は多い。
そんな家族や使用人たちの心配を無下にすることはないが、フーネスの高まり続ける強くなりたいという気持ちは、そう簡単に落ち着かない。
「ところで、息子たちの婚約者探しは進んでいるのか?」
「……こんな事言うのはおかしいと解っているが、今一番の悩みの種はそれだ」
本気で悩みが表情に現れるオルガ。
ロ二アスとフーネスの様々なステータスを考えれば……未だに婚約者がいなのは、確かにおかしい状況。
二人は容姿の種類こそ違えど、イケメンな部類に入ることは間違いない。
親の爵位関係無く、女の子の中には二人を狙う者が多い。
当主たちも、伯爵家の中でも槍の名門であるライガー家と縁を結びたいと申し出る者は多い。
紹介される令嬢たちは二人に勝るとも劣らない者ばかりだが、未だに縁は成立していない。
まずロ二アスは……他家の令息と比べても圧倒的にモテるが、自身を高めることが最優先事項。
令嬢との交友など、二の次。
女性嫌いという訳ではないが、そこまで興味がない。
いずれはライガー家を継ぐために嫁を迎え入れなければならない、というのは理解している。
なので、一応王都の学園で生活する中で、婚約者を見つけようと思ってはいる。
ただ……実際に見つけられるかは、今のところ不明。
「二人とも強くなることに対して貪欲だからね」
「そは嬉しいのだが……将来を共にする者ができれば、心に余裕が生まれると思うのがな」
ロ二アスとは逆で、フーネスは一般的な男子らしく、そこそこ異性に興味がある。
好みの令嬢に近づかれたら、胸がドキドキすることは珍しくない。
しかし……心の中に、兄であるロ二アスに……弟であるクランドにとって、恥じない存在でありたいという思いが強い。
その為、婚約者……恋人に近い存在をつくることは、自身の停滞に繋がってしまうと考える部分がある。
(フーネスはロ二アスの様にならないと思っていたが、予想外な状況になってしまったものだ)
フーネスの気持ちを押し切り、無理矢理婚約者を付けようとは思えない。
その強い向上心は親として、一人の戦闘者として尊重したい。
ただ、婚約者が出来たからといって、弱くなるとは限らない。
「まっ、女遊びを覚えられてしまうのは困るがな!」
「……二人に限って、そうなることはないと思っている」
天才が天才であることに怠けることなく、高みを目指し続ける。
一度は折れかかるも、小さなプライドを捨て、兄弟から誇れるような存在を目指す。
そんな二人の原動力となっているのが……三男の存在。
「二人とも良き騎士になるのは間違いないだろう。ところで、彼はやはり騎士を目指さないのか?」
「あぁ、もう気持ちは完全に固まっている」
「話は聞いていたが……ふむ、神はなんとも残酷な事をするな」
彼という言葉が指す者はライガー家の三男、クランド。
一時はライガー家の伝統を受け継ぐことが出来ず、ロ二アスをも超える逸材……という言葉は陰に埋もれた。
多くの者がそう思ったが、とある一件でその評価は覆った。
槍を使わず、槍を持つ者を制した。
そんなライガー家の者らしからぬ結果を残した令息は、今後最も騎士団が手に入れられなかった最強の戦闘者として、後悔され続ける。
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