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三十話 始まる前に謝罪
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王都に到着し、数日後には学生による最強を決めるトーナメントが開催された。
大会は高等部だけではなく、中等部でも行われている。
その為、学園内の厳しい選抜戦を潜り抜けた者だけが出場出来るのだが……当然のように、アスクとアルネも出場していた。
結果、アスクは二年生ながらに、中等部の個人戦で優勝。
アルネは一年生ながらに、ベストエイトという好成績を収めた。
そして次男であるフーネスは……惜しくも、ベストフォーという結果になった。
死力を尽くした戦いとなり、勝負内容としては、どちらが勝ってもおかしくなかった。
フーネスはそんな他者からの慰めなど、邪魔としか思っていない。
負けたらそこまで。
一位以外の結果はいらない。
そんな思いが強く……準決勝で自分を負かした相手と戦う、昨年から兄を超える逸材だと囁かれている男の姿、ブラハム・ダグレスの強さを脳裏に焼き付けた。
そんな現学生最強である男は、決勝戦であるにもかかわらず、対戦相手を圧倒。
相手の学生がフーネスとの戦いで、大きくスタミナを消費していたことで、試合内容がそこまで良いものではなくなった……という見方も出来る。
怪我や消費した魔力はポーションでなんとか出来るが、スタミナは難しい。
スタミナを向上させるポーションはあるが、それを使用すれば、ドーピング扱いになってしまう。
(……できれば、万全の状態で戦いたかったものだ)
ブラハムの勝利に、観客たちは盛り上がっている。
そもそも見た目が良い。
身長は百八十センチを優に超えており、体は筋肉質。
紫色の髪はウルフカットで揃えられており、容姿はいかつい系のイケメン。
少々強面ではあるが、その絶対的な力を使って傲慢な振る舞いを行うこともないので、殆ど悪評が立つことはない。
そして、観客たちにとって、準決勝のフーネスと決勝に上がった最上級生が行った、勝つか負けるかのギリギリのバトルは確かに対好物。
しかし、いき過ぎていなければ、圧倒的な力で対戦相手を圧倒する内容も、また心が躍る。
(来年には、俺も騎士か)
今までの学園生活が脳裏に過り……小さく笑いながらリングを去ろうとしたブラハムだが、審判にまだリング上に留まっていてくれと頼まれる。
(いったい何があるのだ?)
言われるがままに、リング上に留まるブラハム。
すると、司会者が大きな声で、スペシャルマッチがこれから行われることを告げた。
勿論……ブラハム・ダグレスはそんな事知らされていない。
それでも、若干の期待はあった。
運営が自分のスペシャルマッチとして用意した相手であれば、これまでの試合より楽しめるのではないかと。
そして司会者の宣言から数秒後、スペシャルマッチの相手が通路から現れた。
現れた男は……自分と同じ、もしくは歳下であろう男だった。
(……誰だ?)
ブラハムはクランドほど情報が頭に入っていない訳ではないが、殆ど社交界に顔を出さないクランドの容姿を、全く覚えていなかった。
本当に誰なのだ?
そう思っている時、審判の説明を聞いてようやく思い出した。
(そうか、この男が)
槍の名家に生まれ、その将来を期待されていたが、槍のスキルを習得出来なかった男。
現在でもその事実は変わらず、クランドは一般的に考えれば、落ちこぼれの部類に当てはまるだろう。
しかし、社交界で歳上の同じく槍を扱う名家の令息と対峙し、その際に素手で圧倒したという話が残っている。
その話はブラハムの耳にも入っており、当時は面白い者がいると、興味を持ったのを覚えている。
そして司会者が長々と二人の強さや、勝負の予想などを口にする中、クランドは終始無言。
ブラハムも自分から話しかけるような性格ではないので、二人に無駄な会話はない。
ただ……試合が始まる直前、クランドの口が開いた。
「すまない」
直前になって零れた言葉に、ブラハムはいったいどういう意味なのか……その場では理解出来なかった。
「スペシャルマッチ……始めぇえええっ!!!!!」
「ハンティングフィールド」
開始と同時に呟かれた言葉。
全く聞き覚えがない単語に、一瞬思考がどういった意味なのか解き明かそうと働く。
次の瞬間、自身の周囲に結界が張られたことを察知。
「カバディ」
再び対戦相手のクランドが何かを呟いたと思った瞬間に、撃鉄の様な衝撃が襲い掛かる。
幸いにも大剣でガードすることには成功……したが、大剣を支える両腕全体に痺れが残った。
「ッ!?」
やはり、今まで戦ってきた学生とは比べ物にならない。
ブラハムが期待を膨らませた時には、次の衝撃が彼を襲う。
それは……見えない壁への激突。
もしかしたら結界系のスキルを発動したと察知はしていたが、あまりにも距離が短い。
それもその筈であり、クランドが発動した技は絶対領域・ハンティングフィールド。
縦六点五メートル、横八メートルの空間。
そう……カバディの選手が、基本的に自由に動ける空間。
発動した本人もその空間内でしか動けなくなるが、初見で何が起こったのか把握するには、非常に困難。
発動には魔力の九割を消費するという条件があるが、その効果は絶大。
クランドの匙加減によって多少は変化するが、上に逃げ切ることも不可能。
そんな逃げ場のない状況に追い込まれたブラハムに、次の一手が襲い掛かる。
大会は高等部だけではなく、中等部でも行われている。
その為、学園内の厳しい選抜戦を潜り抜けた者だけが出場出来るのだが……当然のように、アスクとアルネも出場していた。
結果、アスクは二年生ながらに、中等部の個人戦で優勝。
アルネは一年生ながらに、ベストエイトという好成績を収めた。
そして次男であるフーネスは……惜しくも、ベストフォーという結果になった。
死力を尽くした戦いとなり、勝負内容としては、どちらが勝ってもおかしくなかった。
フーネスはそんな他者からの慰めなど、邪魔としか思っていない。
負けたらそこまで。
一位以外の結果はいらない。
そんな思いが強く……準決勝で自分を負かした相手と戦う、昨年から兄を超える逸材だと囁かれている男の姿、ブラハム・ダグレスの強さを脳裏に焼き付けた。
そんな現学生最強である男は、決勝戦であるにもかかわらず、対戦相手を圧倒。
相手の学生がフーネスとの戦いで、大きくスタミナを消費していたことで、試合内容がそこまで良いものではなくなった……という見方も出来る。
怪我や消費した魔力はポーションでなんとか出来るが、スタミナは難しい。
スタミナを向上させるポーションはあるが、それを使用すれば、ドーピング扱いになってしまう。
(……できれば、万全の状態で戦いたかったものだ)
ブラハムの勝利に、観客たちは盛り上がっている。
そもそも見た目が良い。
身長は百八十センチを優に超えており、体は筋肉質。
紫色の髪はウルフカットで揃えられており、容姿はいかつい系のイケメン。
少々強面ではあるが、その絶対的な力を使って傲慢な振る舞いを行うこともないので、殆ど悪評が立つことはない。
そして、観客たちにとって、準決勝のフーネスと決勝に上がった最上級生が行った、勝つか負けるかのギリギリのバトルは確かに対好物。
しかし、いき過ぎていなければ、圧倒的な力で対戦相手を圧倒する内容も、また心が躍る。
(来年には、俺も騎士か)
今までの学園生活が脳裏に過り……小さく笑いながらリングを去ろうとしたブラハムだが、審判にまだリング上に留まっていてくれと頼まれる。
(いったい何があるのだ?)
言われるがままに、リング上に留まるブラハム。
すると、司会者が大きな声で、スペシャルマッチがこれから行われることを告げた。
勿論……ブラハム・ダグレスはそんな事知らされていない。
それでも、若干の期待はあった。
運営が自分のスペシャルマッチとして用意した相手であれば、これまでの試合より楽しめるのではないかと。
そして司会者の宣言から数秒後、スペシャルマッチの相手が通路から現れた。
現れた男は……自分と同じ、もしくは歳下であろう男だった。
(……誰だ?)
ブラハムはクランドほど情報が頭に入っていない訳ではないが、殆ど社交界に顔を出さないクランドの容姿を、全く覚えていなかった。
本当に誰なのだ?
そう思っている時、審判の説明を聞いてようやく思い出した。
(そうか、この男が)
槍の名家に生まれ、その将来を期待されていたが、槍のスキルを習得出来なかった男。
現在でもその事実は変わらず、クランドは一般的に考えれば、落ちこぼれの部類に当てはまるだろう。
しかし、社交界で歳上の同じく槍を扱う名家の令息と対峙し、その際に素手で圧倒したという話が残っている。
その話はブラハムの耳にも入っており、当時は面白い者がいると、興味を持ったのを覚えている。
そして司会者が長々と二人の強さや、勝負の予想などを口にする中、クランドは終始無言。
ブラハムも自分から話しかけるような性格ではないので、二人に無駄な会話はない。
ただ……試合が始まる直前、クランドの口が開いた。
「すまない」
直前になって零れた言葉に、ブラハムはいったいどういう意味なのか……その場では理解出来なかった。
「スペシャルマッチ……始めぇえええっ!!!!!」
「ハンティングフィールド」
開始と同時に呟かれた言葉。
全く聞き覚えがない単語に、一瞬思考がどういった意味なのか解き明かそうと働く。
次の瞬間、自身の周囲に結界が張られたことを察知。
「カバディ」
再び対戦相手のクランドが何かを呟いたと思った瞬間に、撃鉄の様な衝撃が襲い掛かる。
幸いにも大剣でガードすることには成功……したが、大剣を支える両腕全体に痺れが残った。
「ッ!?」
やはり、今まで戦ってきた学生とは比べ物にならない。
ブラハムが期待を膨らませた時には、次の衝撃が彼を襲う。
それは……見えない壁への激突。
もしかしたら結界系のスキルを発動したと察知はしていたが、あまりにも距離が短い。
それもその筈であり、クランドが発動した技は絶対領域・ハンティングフィールド。
縦六点五メートル、横八メートルの空間。
そう……カバディの選手が、基本的に自由に動ける空間。
発動した本人もその空間内でしか動けなくなるが、初見で何が起こったのか把握するには、非常に困難。
発動には魔力の九割を消費するという条件があるが、その効果は絶大。
クランドの匙加減によって多少は変化するが、上に逃げ切ることも不可能。
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