33 / 92
三十三話 だからこそ、優勝は逃せない
しおりを挟む
「自分本来の目的を達成することよりも、家門の名誉を優先したからです」
「……そうか」
クランドが何を言っているのか、ブラハムはおおよそ理解した。
ブラハムもクランド程ではないが、強敵との戦いを好む。
それもあり、クランドの実力を肌で感じ取った時は、心が震えた。
殴って蹴られた分、存分に返したいという思いがあったが、それは叶わなかった。
「それと、退屈そうなブラハムの気持ちに応えられないなと思って」
「ふ、ふふふ。そんな事を考えていたのか」
本人としては、まさか本心を見透かされていたとは、という気持ち。
だが、クランドからすれば、ブラハムが学生たちとのバトルを退屈に感じていたのは明白。
「だから、すいませんでした」
「改めて謝る必要はない。それに、あんな一方的な結果になったのは、俺が結界に気を取られていたからだ」
学生の中にも、結界を使う者は多少存在する。
そんな学生との戦闘経験もあるブラハムだが、絶対に脱出することが出来ない。
今までに感じたことがない圧迫感を感じ、クランドが放つ初撃に対し、完全に反応が遅れてしまった。
(それだけじゃない。俺がクランドの強さを見極められていなかった。それが一番の要因だろう)
正確に把握できていなかった自分に対し、クランドは把握していたからこそ、超短期決戦に持ち込んだ。
「それに、お前が放つ攻撃はどれも見事だった。何度意識が飛びそうになったことか」
「どうも」
クランドとしては、鬼心開放まで使ったにもかかわらず、最後の一撃を食らうまで意識が飛ばなかった、ブラハム
の耐久力に驚嘆していた。
その後、クランドとブラハムは二人だけで会話を続ける。
二人に間に割って入りたい……という思いを持つ生徒たちはいたが、二人と自分の格の違いに気付き、おいそれと話に加わろうと、実際に動くことは出来なかった。
(……負けてらんねぇな)
この場は、大会に参加した生徒たちを労う会。
その会には当然……クランドの兄であるフーネスがいた。
二人の戦いは、フーネスもしっかり観ていた。
しっかり観ていたが……正直、何が起こったのか大半は解らなかった。
とはいえ、クランドがカバディという謎のスキルを使ったことだけは理解している。
それは見事的中しているが、謎のスキルだけでクランドがブラハムに勝利したとは思っていない。
学園に入学してから、日々戦闘訓練の授業以外でも鍛えてきたフーネス。
しかし、弟であるクランドの成長を垣間見え……自分はまだまだだと痛感。
クランドが今回の大会に、スペシャルゲストとして参加しただけであり、学生になった訳ではないのは理解している。
加えて、ブラハムも現在三年生なので、来年には卒業して騎士になっている。
来年の大会には、群を抜いて強いライバルがいない。
その状況下で手にした優勝は価値があるのか?
そう考える者もいるだろうが、フーネスにとっては、その様な状況下で優勝出来なければ、尚更強さを証明できないと考えていた。
こうしてクランドは現学生たちに刺激を与え、大会を見に来ていた観客たちに大きな衝撃を与えて……王都から去った。
「それでは、行ってきます」
「あまり無茶はし過ぎるなよ」
「お父さんの言う通りよ。本当に駄目だと感じたら、引くことも勇気なのよ」
「えぇ、解ってますよ。父さん、母さん」
王都でのスペシャルマッチを終え、屋敷に戻ってから一週間後、いよいよ屋敷を出て冒険者としての道をスタートする。
目指す場所は……冒険者のルーキーにとって、それなりに優しい街、ハリストン。
その街を目指し、リーゼと共に行く。
両親、ライガー家に仕える従者たちと別れ、二人でハリストンへ目指すのだが……そう簡単には到着できない。
街から街へ移動していれば、当然モンスターに襲われることがある。
「よし、解体しようか」
「では、見張りをします」
とはいえ、並みのモンスターでは二人の相手にならない。
ブラハム戦を観ていれば解る通り、クランドは大きく成長しており、並みのモンスターではキャントする必要がない。
ただ、集団戦ともなれば話は別。
現在二人だけでハリストンへ向かっており、リーゼは何度も振り帰ってしまう様な魅惑の美女。
「よぅ、兄ちゃん。ちょっとお話ししようか」
「なんなら、そっちの姉ちゃんを置いてってくれるなら見逃してやるよ」
「どうだ、悪くない提案だろ」
当然というか、残念ながらというか……盗賊という害虫にも遭遇してしまう。
(どこが悪くない提案なんだ?)
二人がそんなアホ過ぎる要求を受け入れるわけがなく、戦闘開始。
「カバディ」
「死になさい」
二人とも戦闘者としての童貞、処女は捨てているので、盗賊たちに慈悲はない。
数的には盗賊たちが有利ではあるが、クランドが鋭い指で喉や頸動脈を裂いていき、リーゼの捉えられない容赦ない攻撃魔法によって殲滅。
通りすがりの街にそれを報告し、報告を受けた冒険者ギルドが冒険者たちが兵を失ったアジトに乗り込み、殲滅。
二人が自分たちに襲い掛かってきた盗賊を、一人残さず全滅させたこともあり、アジト壊滅はスムーズに行われた。
「……そうか」
クランドが何を言っているのか、ブラハムはおおよそ理解した。
ブラハムもクランド程ではないが、強敵との戦いを好む。
それもあり、クランドの実力を肌で感じ取った時は、心が震えた。
殴って蹴られた分、存分に返したいという思いがあったが、それは叶わなかった。
「それと、退屈そうなブラハムの気持ちに応えられないなと思って」
「ふ、ふふふ。そんな事を考えていたのか」
本人としては、まさか本心を見透かされていたとは、という気持ち。
だが、クランドからすれば、ブラハムが学生たちとのバトルを退屈に感じていたのは明白。
「だから、すいませんでした」
「改めて謝る必要はない。それに、あんな一方的な結果になったのは、俺が結界に気を取られていたからだ」
学生の中にも、結界を使う者は多少存在する。
そんな学生との戦闘経験もあるブラハムだが、絶対に脱出することが出来ない。
今までに感じたことがない圧迫感を感じ、クランドが放つ初撃に対し、完全に反応が遅れてしまった。
(それだけじゃない。俺がクランドの強さを見極められていなかった。それが一番の要因だろう)
正確に把握できていなかった自分に対し、クランドは把握していたからこそ、超短期決戦に持ち込んだ。
「それに、お前が放つ攻撃はどれも見事だった。何度意識が飛びそうになったことか」
「どうも」
クランドとしては、鬼心開放まで使ったにもかかわらず、最後の一撃を食らうまで意識が飛ばなかった、ブラハム
の耐久力に驚嘆していた。
その後、クランドとブラハムは二人だけで会話を続ける。
二人に間に割って入りたい……という思いを持つ生徒たちはいたが、二人と自分の格の違いに気付き、おいそれと話に加わろうと、実際に動くことは出来なかった。
(……負けてらんねぇな)
この場は、大会に参加した生徒たちを労う会。
その会には当然……クランドの兄であるフーネスがいた。
二人の戦いは、フーネスもしっかり観ていた。
しっかり観ていたが……正直、何が起こったのか大半は解らなかった。
とはいえ、クランドがカバディという謎のスキルを使ったことだけは理解している。
それは見事的中しているが、謎のスキルだけでクランドがブラハムに勝利したとは思っていない。
学園に入学してから、日々戦闘訓練の授業以外でも鍛えてきたフーネス。
しかし、弟であるクランドの成長を垣間見え……自分はまだまだだと痛感。
クランドが今回の大会に、スペシャルゲストとして参加しただけであり、学生になった訳ではないのは理解している。
加えて、ブラハムも現在三年生なので、来年には卒業して騎士になっている。
来年の大会には、群を抜いて強いライバルがいない。
その状況下で手にした優勝は価値があるのか?
そう考える者もいるだろうが、フーネスにとっては、その様な状況下で優勝出来なければ、尚更強さを証明できないと考えていた。
こうしてクランドは現学生たちに刺激を与え、大会を見に来ていた観客たちに大きな衝撃を与えて……王都から去った。
「それでは、行ってきます」
「あまり無茶はし過ぎるなよ」
「お父さんの言う通りよ。本当に駄目だと感じたら、引くことも勇気なのよ」
「えぇ、解ってますよ。父さん、母さん」
王都でのスペシャルマッチを終え、屋敷に戻ってから一週間後、いよいよ屋敷を出て冒険者としての道をスタートする。
目指す場所は……冒険者のルーキーにとって、それなりに優しい街、ハリストン。
その街を目指し、リーゼと共に行く。
両親、ライガー家に仕える従者たちと別れ、二人でハリストンへ目指すのだが……そう簡単には到着できない。
街から街へ移動していれば、当然モンスターに襲われることがある。
「よし、解体しようか」
「では、見張りをします」
とはいえ、並みのモンスターでは二人の相手にならない。
ブラハム戦を観ていれば解る通り、クランドは大きく成長しており、並みのモンスターではキャントする必要がない。
ただ、集団戦ともなれば話は別。
現在二人だけでハリストンへ向かっており、リーゼは何度も振り帰ってしまう様な魅惑の美女。
「よぅ、兄ちゃん。ちょっとお話ししようか」
「なんなら、そっちの姉ちゃんを置いてってくれるなら見逃してやるよ」
「どうだ、悪くない提案だろ」
当然というか、残念ながらというか……盗賊という害虫にも遭遇してしまう。
(どこが悪くない提案なんだ?)
二人がそんなアホ過ぎる要求を受け入れるわけがなく、戦闘開始。
「カバディ」
「死になさい」
二人とも戦闘者としての童貞、処女は捨てているので、盗賊たちに慈悲はない。
数的には盗賊たちが有利ではあるが、クランドが鋭い指で喉や頸動脈を裂いていき、リーゼの捉えられない容赦ない攻撃魔法によって殲滅。
通りすがりの街にそれを報告し、報告を受けた冒険者ギルドが冒険者たちが兵を失ったアジトに乗り込み、殲滅。
二人が自分たちに襲い掛かってきた盗賊を、一人残さず全滅させたこともあり、アジト壊滅はスムーズに行われた。
21
あなたにおすすめの小説
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。
シトラス=ライス
ファンタジー
万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。
十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。
そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。
おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。
夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。
彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、
「獲物、来ましたね……?」
下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】
アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。
*前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。
また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!
最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる