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第10話 当然、生き残りたい
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新しい街に訪れてから数週間、まだ街にマックスたちが滞在しているお陰もあって、他の冒険者たちと衝突せずに穏やかな日々を過ごせていた。
(マックスさんたちがちょいちょい話してくれているお陰か、割とお客さんが来てくれてる……悪くないな)
屋台バー、ミーティアを展開して一人目の客を待っていると、一人の青年……いや、少年が現れた。
「あ、あの。ここがミーティアって言うバー、ですか?」
「えぇ、その通りです。自分は店主のアストと申します。さぁ、おかけになってください」
「し、失礼します。あっ、ぼ、僕はリーデです。一応、冒険者として、活動してます」
「そうなんですね。自分も昼間は同じく冒険者として活動してます」
「マックスさんから、色々とお聞きしてます。とても強い方だと」
相変わらず場の空気を読んで空気を悪くすることはないが、それはそれでこれはこれ。
自慢したい事を抑えないのが冒険者。
マックスやパーティーメンバーのタンクの男、エルフの女も一緒にアストの戦闘力やカクテル作り、料理の腕などに関して同業者たちに自慢していた。
「それは照れますね。では、こちらがメニューになります」
「………………す、すいません。お、お任せ? でも良いですか」
マックスと一緒に夕食を食べる機会があったリーデは、マックスや他二人から、アストのバーで呑むなら何々がお勧めだ! と伝えられてはいたが、お酒に全く詳しくないリーデは全く覚えられなかった。
「かしこまりました。アルコールはお強いですか?」
「一応それなりに吞めるんですけど、軽い方が個人的に嬉しいです」
「なるほど。では……味も、優しい雰囲気なタイプがよろしいでしょうか」
「そ、そうですね。あまり独特だったり、強烈な味でなければ」
「かしこまりました」
それなりに吞めるが、軽い方が嬉しい。
味は優しいタイプでオッケー。
考えが纏まったアストは早速手を動かし、オールドファッションド・グラスとチョコレートリキュールを三十㏄、牛乳を百㏄と氷を用意。
氷、チョコレートリキュール(カルーア)、牛乳の順に入れていき、バー・スプーンでステアして完成。
「お待たせしました、こちらカルーアミルクになります」
「あ、ありがとうございます」
普段、冒険者らしくエールを呑むことが多いリーデにとって、白色がメインの酒…というのは、
なんとも未知な存在だった。
「っ!!! ……お酒、なんですけど、凄く呑みやすいですね。それに、凄く優しい甘さというか」
「お気に召していただいたようでなによりです」
「…………本当に、凄く、美味しいです」
凄く美味しい。
単純な言葉ではあるが、料理、ドリンク……食事を作る者にとっては、この上なく嬉しい言葉である。
ただ、そう口にしてくれた者の顔が、どこか悲しげであった。
「……何か、ありましたか」
「っ…………その、さっき言った通り、僕は冒険者として、活動してるんですけど……臆病、なんですよ」
愚痴、とはまた違う。
己の恥を……ぽつぽつと語り始めた。
冒険者として成長出来ていない。いざという時に体が固まる、判断が鈍る。
恐怖を…………強く感じてしまう。
「死ぬことが怖くて、臆病なままで冒険者として大成することなんて出来ないって解ってるん、です。けど……どうしても、感じなとこで一歩踏み出せなくて」
「…………そうですか」
リーデの思いを、アストは決して馬鹿にしなかった。
それは思っても口に出さなかったという訳ではなく、恐怖という感情は冒険者として成功した部類に入るアストも持っている心だからである。
「これは個人的な考えですが、恐怖心を失った冒険者は遅かれ早かれ、戦闘の中で死ぬと思います」
「……そ、それは悪いことなんですか?」
「騎士という職業に就いている方であれば、それこそが騎士の生き様、と考えるかもしれません。ただ、冒険者は生き延びてなんぼのもの……というより、戦闘で死にたくないという思いを持つのは当然の事かと」
「あ、アストさんも、そうなんですか」
「えぇ、勿論です」
同世代の者たちより常に一歩、もしくは数歩リードしながら生きてきたアスト。
カクテルという特別なスキルもあり、これまで順調に人生を送って来た…………しかし、最強ではない。
加えて、初めてモンスターと出会った時、彼らはアストを発見するなり……本気の殺意を向けて襲い掛かって来た。
その時感じた恐怖は、今でも覚えている。
幸いにも前に前にと進んでいたお陰で、戦闘者としての童貞をその場で捨てることが出来たが、諸々の理由でオロオロドバー、してしまった。
「俺の本業はバーテンダーです。こうしてお客さんにカクテルを、料理を提供しながら楽しく話す……そんな日々を、死ぬまで続けたい。だから、冒険の中で死んでもそれはそれで本望、なんて思いは全くありません」
「そうなん、ですね…………で、でもアストさんはとても強いんですよね! それは、どうして」
一緒に夕食を食べたマックスから、どう強いのか聞いている。
命懸けの戦いに対して恐怖を抱いているのであれば、何故そこまで強いのか……縋る思いでリーデはアストが持っている答えを尋ねた。
(マックスさんたちがちょいちょい話してくれているお陰か、割とお客さんが来てくれてる……悪くないな)
屋台バー、ミーティアを展開して一人目の客を待っていると、一人の青年……いや、少年が現れた。
「あ、あの。ここがミーティアって言うバー、ですか?」
「えぇ、その通りです。自分は店主のアストと申します。さぁ、おかけになってください」
「し、失礼します。あっ、ぼ、僕はリーデです。一応、冒険者として、活動してます」
「そうなんですね。自分も昼間は同じく冒険者として活動してます」
「マックスさんから、色々とお聞きしてます。とても強い方だと」
相変わらず場の空気を読んで空気を悪くすることはないが、それはそれでこれはこれ。
自慢したい事を抑えないのが冒険者。
マックスやパーティーメンバーのタンクの男、エルフの女も一緒にアストの戦闘力やカクテル作り、料理の腕などに関して同業者たちに自慢していた。
「それは照れますね。では、こちらがメニューになります」
「………………す、すいません。お、お任せ? でも良いですか」
マックスと一緒に夕食を食べる機会があったリーデは、マックスや他二人から、アストのバーで呑むなら何々がお勧めだ! と伝えられてはいたが、お酒に全く詳しくないリーデは全く覚えられなかった。
「かしこまりました。アルコールはお強いですか?」
「一応それなりに吞めるんですけど、軽い方が個人的に嬉しいです」
「なるほど。では……味も、優しい雰囲気なタイプがよろしいでしょうか」
「そ、そうですね。あまり独特だったり、強烈な味でなければ」
「かしこまりました」
それなりに吞めるが、軽い方が嬉しい。
味は優しいタイプでオッケー。
考えが纏まったアストは早速手を動かし、オールドファッションド・グラスとチョコレートリキュールを三十㏄、牛乳を百㏄と氷を用意。
氷、チョコレートリキュール(カルーア)、牛乳の順に入れていき、バー・スプーンでステアして完成。
「お待たせしました、こちらカルーアミルクになります」
「あ、ありがとうございます」
普段、冒険者らしくエールを呑むことが多いリーデにとって、白色がメインの酒…というのは、
なんとも未知な存在だった。
「っ!!! ……お酒、なんですけど、凄く呑みやすいですね。それに、凄く優しい甘さというか」
「お気に召していただいたようでなによりです」
「…………本当に、凄く、美味しいです」
凄く美味しい。
単純な言葉ではあるが、料理、ドリンク……食事を作る者にとっては、この上なく嬉しい言葉である。
ただ、そう口にしてくれた者の顔が、どこか悲しげであった。
「……何か、ありましたか」
「っ…………その、さっき言った通り、僕は冒険者として、活動してるんですけど……臆病、なんですよ」
愚痴、とはまた違う。
己の恥を……ぽつぽつと語り始めた。
冒険者として成長出来ていない。いざという時に体が固まる、判断が鈍る。
恐怖を…………強く感じてしまう。
「死ぬことが怖くて、臆病なままで冒険者として大成することなんて出来ないって解ってるん、です。けど……どうしても、感じなとこで一歩踏み出せなくて」
「…………そうですか」
リーデの思いを、アストは決して馬鹿にしなかった。
それは思っても口に出さなかったという訳ではなく、恐怖という感情は冒険者として成功した部類に入るアストも持っている心だからである。
「これは個人的な考えですが、恐怖心を失った冒険者は遅かれ早かれ、戦闘の中で死ぬと思います」
「……そ、それは悪いことなんですか?」
「騎士という職業に就いている方であれば、それこそが騎士の生き様、と考えるかもしれません。ただ、冒険者は生き延びてなんぼのもの……というより、戦闘で死にたくないという思いを持つのは当然の事かと」
「あ、アストさんも、そうなんですか」
「えぇ、勿論です」
同世代の者たちより常に一歩、もしくは数歩リードしながら生きてきたアスト。
カクテルという特別なスキルもあり、これまで順調に人生を送って来た…………しかし、最強ではない。
加えて、初めてモンスターと出会った時、彼らはアストを発見するなり……本気の殺意を向けて襲い掛かって来た。
その時感じた恐怖は、今でも覚えている。
幸いにも前に前にと進んでいたお陰で、戦闘者としての童貞をその場で捨てることが出来たが、諸々の理由でオロオロドバー、してしまった。
「俺の本業はバーテンダーです。こうしてお客さんにカクテルを、料理を提供しながら楽しく話す……そんな日々を、死ぬまで続けたい。だから、冒険の中で死んでもそれはそれで本望、なんて思いは全くありません」
「そうなん、ですね…………で、でもアストさんはとても強いんですよね! それは、どうして」
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