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第16話 殺させない

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「お前ら、ここからは気を引き締めろよ」

道中で何度かモンスターと遭遇するも、想定外のモンスターが襲い掛かってくることはなく、アストたちは無事に盗賊団の根城付近に到着。

「んじゃ、サクッとあの見張りを潰してくれ」

「はいよ」

「任せてくれ」

洞窟タイプの根城には三人の見張りが立っていた。

元々見張りを殺すと決めていたアーチャーたちが弦を引き……高速の矢を発射。
三人の内、二人は頭部を貫かれて即死したが……もう一人の見張りの頭に矢が刺さろうとした瞬間、障壁が展開された。

「ッ!!!??? てきしゅ、ぅ……」

「盗賊のくせに、良いマジックアイテム身に付けてるんだな」

奇襲から一人だけ生き残ったが、事前に万が一を想定していたアストが背後から首を切断。

洞窟の奥にまで声が届くことはなかった。

「アスト、助かった。まさかあいつらの矢を防げるほどのマジックアイテムを身に付けていたとはな」

「…………どうやら、再度発動するまでかなり時間を有するタイプのマジックアイテムだったようですね」

再度発動するまで半日ほど時間を有するタイプは、その分防げる攻撃の幅も広がる。
とはいえ、再度矢が放たれていれば瞬殺できるため、障壁の強度に油断しているとあっさりと殺されてしまう。

アストは普段通りの動きで一度だけ強矢を防いだマジックアイテムを盗賊から剥ぎ取り、全員でアジトの中に突入。

「ッ!? 敵襲だ、ぁ」

大勢の盗賊たちがいる大広間への道中で盗賊と遭遇するも、インファイターの冒険者が速攻で距離を詰め、首骨を粉砕。

「お前ら、足音や気配はもう消さなくて良い。行くぞ」

さすがに残りの盗賊たちに存在を知られてしまったと悟り、これ以上は奇襲に徹するのではなく……戦闘者らしく、真正面から攻め込む。

「お前らぁあああ!!! 餌が向こうから来やがったんだ!!!! 全部平らげちまうぞ!!!!!」

スラディスに負けない大きな筋肉を持つ男が大剣を担ぎながら部下たちに指示を飛ばす。

(……見掛け倒しの筋肉、ではないな)

大剣使いの大男が見掛け倒しの筋肉ダルマではないと把握するも、アストに不安はなかった。
事前に話し合った通り、遊撃手として戦場を駆けまわる。

(こいつら……武器の質が悪くない。しかも、何人かどころではなく……十人ぐらい、マジックアイテムを身に付けてる)

街から街に移動する承認を襲えば手に入らなくもないのだが、それでもあまりにも揃っている。

「シッ!!!」

「っ!? んの、クソガキがッ!!!!」

「そっちも、クソ盗賊だろ」

「がはっ!!!!????」

本当にそこら辺の盗賊団とは訳が違う。
そう思いながらもアストは慌てることなくロングソードを振るい、盗賊たちの喉を切り裂き、危機が迫っているDランク冒険者たちの援護を行う。

「ぎっ!!??」

「サンキュー、アストさん!!!!」

見方によっては、彼らが成長出来る機会を奪っているかもしれない。

しかし……アストとしては、できれば目の前で同業者が死ぬのは防ぎたかった。
既に冒険者として活動を始めて三年……敵にしろ味方にしろ、目の前で人が死ぬ光景は何度も見てきた。

(出来る限り……俺がいる戦場で、味方は殺させない)

アストの動きは非常に合理的であった。

遠距離攻撃では顔面か足元を狙い、動きを止めるか視界を邪魔する。
斬撃では脚を斬り裂くか、もしくは喉を少し切り裂く。

どんな人間であっても……善人悪人関係無く、根性があればアドレナリンなどの要素も含めて、腕を片方切断されたとしても、残った腕で攻撃を仕掛けてくる。

ただ……よほど器用な人間でなければ、脚を切断されてしまうと大きくバランスを崩してしまう。

「あの黒髪野郎を殺せ!!!!!」

「っと、狙われるか」

アシストの数は既に五を越えていた。
キル数も三に到達しており……よっぽどのバカでなければ、今現在冒険者側で一番厄介な存在はアストであった。

「卑怯とは、言わせないぜ?」

アストは自分に敵の意識が集中していると解かると、二つ目のマジックアイテムを装備。
二つとも速度強化の効果が付与された指輪であり……多少戦えてる程度の盗賊では、
そのスピードに付いて来れない。

「ッ! ほっ! せぁあああ!!!!」

自分に迫る近距離攻撃に対し、全て斬撃刃を飛ばして歩みを止めた。

「「「「「っ!!??」」」」」

「あまり、俺たち冒険者を嘗めるなよ」

アストに意識が集中するということは、それだけ背後が無防備になる。
彼等の連撃でアストを殺す……最低でも腕や脚の一本でも奪えていたら御の字であったが、逆に軽くない斬撃刃を防御させられてしまい、逆に体勢が崩れてしまい……背後から迫る攻撃に対応出来なくなる。

(っ!!!??? こっちも、一応準備しておくか)

自分を狙った盗賊たちの対処は殆ど終えたアスト。

戦況も既に中盤が過ぎ、終盤に差し掛かる中……強烈な魔力の膨らみを感じたアストは詠唱を始めた。
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