異世界バーテンダー。冒険者が副業で、バーテンダーが本業ですので、お間違いなく。

Gai

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第31話 知らないんだから、仕方ないじゃん……だよね?

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「え、えぇ……大丈夫、だったの?」

「大丈夫だから、今こうして冒険者としてシーナたちと仕事出来てるんだよ。それに、ルーキーの頃から夜道には気を付けようって用心深さがあったからな」

決してそういった街から近い店でバイトしていた訳ではなかったが、偶に現役のホスト……引退したホストの笑い話などを聞く機会もあった。

ニュースでホストが女性に刺されたという話も聞くが、女性の自称恋人やストーカー一歩手前の連中に絡まれることも偶にある。
そのため、既に村の中で同年代の面倒なガキに絡まれたこともあってか、ルーキーとして冒険者人生をスタートしたばかりの頃から夜道には十分に気を付けていた。

「…………つまり、生粋の恨まれやって事なのね」

「ぅおい、ちょっと待て。なんでそうなるんだよ」

「だって、何人も寝取って来たんでしょ? 生粋のヤ〇チ〇じゃない」

「おい待て待て、一応あんた僧侶だろ」

「僧侶で冒険者だから問題無いしよ」

「あっそ……じゃなくてだ。別に俺は人の女を取ったことはないっての」

寝取り行為を行ったことは一度もないと断言するアスト。
本人が言う通り、恋人や旦那がいる女性と寝たことは一度もない。

当たり前の話だが、前世であっても今世であってもバレれば面倒になるのは間違いない問題。
アストの中の男が反応する機会はあっても、これまで全て理性が推し潰してきた。

「えぇ~~~。だって、寝取ったから夜道に刺されそうになったんじゃないの?」

「違うって。俺が一晩過ごした女性冒険者に惚れてた奴だったんだよ」

「なるほど、そういう事であったか。それはアストも災難だな」

パーティーの情報収集を担当している竜人族のロクターはしみじみとした表情でアストの苦労を称える。

本人の宣言通り、今まで一度も恋人や人妻を寝取ってきたことはなかったが、うっかりBSSをやらかしてしまった事は何度かあった。

アストが営むバー、ミーティアには冒険者の客が多く訪れるため、彼らの恋愛談などを聞くことは出来るが……一応彼等にもプライバシー意識があるのか、自分よりランクが下……後輩たちの恋愛を話のネタにはしない。

そのため、そういった情報を知らないまま向こうからアプローチを掛けられ……アストにその気が生まれてしまえば、後はお部屋へレッツゴーで到着すれば大乱闘である。

あまり同業者たちにバレないように部屋へ行ったところで、壁に耳あり障子に目あり。
それぐらいの隠し事はいつの間にかバレてしまうもの。

「だっはっはっはっは!!!!! ロクターの言う通り、そいつあぁ災難だなアスト!!! んで、その嫉妬深々野郎はどうしたんだよ」

「ボコって衛兵に突き出したに決まってるだろ」

「なっはっは!!!! そりゃそうするよな!! にしても、その暴走した野郎ども馬鹿だよな~~~。だってよ、アストはそいつらを彼女にしたり、男にとって丁度良い関係を長期間持とうとしたりしたわけじゃねぇんだろ」

「早ければ二十日前ぐらいには別の街に移るからな」

「だろ~~~。そりゃ意中の女が自分以外の男で女になりゃあ、思うところはあんのかもしれねぇけどよぉ……だからって感じだよな~、ロルバ」

「そうだな。アストに嫉妬してしまうのは仕方ないかもしれないが、思うところがあったとしても、攻めてギルドの訓練場で相手をしてほしいと、正々堂々と申し込むべきだろう! アストもそういった対応の仕方なら、断らないだろう」

「まぁな。何回もはごめんだけど、普通に自分と模擬戦、試合を行って欲しいって頼まれたら一回ぐらいは受けるよ」

アストも男であるため、良いなと思う女性からアプローチされれば、普通に年頃であるため断るという選択肢がまずない。

手を出してはいけない相手には出さないが、そこまで同業者の事情を気にしてられないというぶっちゃけた本音もある。

(俺が先に好きだったって言われてもなぁ……だったらさっさと告れよって、あの時
は心の底から思ったな。別に相手はアイドルや女優じゃないんだから、絶対に手の届かない存在って訳じゃないのに)

フラれる確率が高かったとしても、同じ冒険者……もしくは、同じギルドという組織に属している従業員。

普通に告白出来はする。
加えて、自身の成果を自分から下手にアピールせずとも、人伝に伝わる環境がある。

アストからすれば、本当にもっと自分から頑張れよと、今までBSSが理由で襲い掛かって来たバカたちに再度ツッコミたい。

「けどよ、昔にそれを体験しても、まだ誘われればやるんだろ」

「それは俺も男だからな。店で知り合ったのが先だとちょっと職業的に躊躇うところがあるけど」

「へぇ~~~? あ、因みになんだけどさ。アストはバーテンダーとしても働いてるわけじゃん? 店を無茶苦茶にしてやろうって考えを持ちながら襲い掛かって来た奴とかもいるんじゃねぇの?」

「…………何人かいたな」

「うぇ、マジかよ」

ガリアスとしては半分……八割ほど冗談のつもりの質問だった。

「でも、毎回その時は客に結構厳つめの同業者がいたから、俺がどうこうするまえに
その客が酒が不味くなるだろ、つって怒鳴りながら死なない程度にボコボコにしてくれてたな」

アストはその時の何とも言えない光景は、今でも簡単に思い出せた。
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