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第33話 推薦はあった
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ルーキーの中でもとび抜けた戦闘力と考える頭を有していたアストは、新人の頃から歳上の先輩たちと関わることが多かった。
そして街から街へ短期間の間に移動することが多く、その分多くの冒険者たちを見てきた。
だからこそ、目の前の同僚が伸びしろがある……一流を乗り越えた先にある領域と言われているBランクに到達出来る可能性を持っているのか否かがある程度解るようになってきていた。
元々話だけは聞いていたが、ロルバとガリアスの戦いっぷりを見て、確信に変わった。
「へっへっへ、よせやい。褒めたって何も出ねぇぜ」
「そうよ、アスト。褒めたらこのバカ、絶対に調子に乗っちゃうから」
「そうなのか? けど、今のは純粋な賞賛だ」
先輩のご機嫌取り、持ち上げるのは後輩冒険者に一応必要なスキル。
アストもバーテンダーである時は、下手に客の機嫌を悪くさせないように接しているが……今のはご機嫌取りなどではなく、百パーセント純粋な称賛であった。
「はっはっは!!!! ありがとう、アスト。俺もその勝算は素直に嬉しい。しかし、それを言うならアストも同じであろう」
「そうだな。接近戦が得意であるにもかかわらず、剣技を利用した遠距離攻撃だけで攻めるという選択肢を素直に取れる。まずこれはガリアスにない判断力」
「うぐっ!!」
いきなり仲間から自身の弱点を突かれ、顔が歪むガリアス。
接近戦が得意な者が接近戦で戦う。
当たり前の事ではあるが、時には遠距離攻撃が重要になる場面も存在する。
「本当は推薦が来てたりするんじゃないのか?」
「……そうだな。来たことはある、でも断ってる」
「??? なんでだよ。Bランクにあがりゃあ、手に入る金も増えるぜ?」
「やっぱりバカねぇ~~~」
「ぅおい、バカバカ言うんじゃねぇ。本当にバカになったらどうすんだよ」
「そんなの私たちがカバーするから問題無いに決まってるでしょ」
「お、おぅ。そうか」
予想外のフォローに戸惑うガリアスだが、何故アストが推薦を断ったのかは解っていない。
「んで、なんでアストは推薦を断ったんだよ」
「これ以上嫉妬で面倒が増えるのを防ぐためでしょ。ねぇ、アスト」
「シーナの言う通りだよ、ガリアス。今までも十分絡まれてきて…………しっかり話せば解ってくれる奴が多いのが救いだったけど、それでも面倒という思いは毎回消えないからな」
自分は転生者だから、強くなるという行為に関しては完全にフライングスタートしてたから仕方ない。
今までそう思って耐えてきた。
ただ……アストも人である。
前世での年齢は二十二と、成人……社会人にはなっていたものの、まだまだ精神が成熟しているとは言い難い。
転生したからといって、今世で生きてきた十八年分が加算されることもない。
「それにほら、俺は普段からソロで活動してるだろ。だから、余計に目立つと思うんだよ」
「………………そうか。悲しくはあるが、アストにとっても本業の邪魔になりかねない事も考えれば、致し方なしなんだろうな」
「ふふ、解ってくれてるようでなによりだ、ロルバ」
そもそもアストの本業は冒険者ではなくバーテンダー。
本業の地位すら欲しておらず、副業に関しても本当にある程度で良かった。
(なんて、こいつらみたいな実力があるだけじゃなく、人格までまともな奴ら以外の前で言えば、余計な怒りを買うんだろうけどな)
冒険者として活動するなら強さ、金、権力を目指して当然!!! と考える者は決して少なくない。
そういった者たちからしても、アストという存在は目障りに感じる。
(……やはり、Bランクに上がれる戦闘力を持っている。それでも本人の意思、そしてギルドもランクアップによって起こる問題を把握しているからこそ、上げられないんだろうな…………難しいもんだな)
最近歳が二十を越えたロルバはまだまだ戦う事に、冒険者として上を目指すことへの興味が強いものの……その他の事に関しても多少の興味を持っていた。
(それでも、本人が現状に幸せを感じているのであれば、俺達がこれ以上とやかく言うことではないか)
敬意を持つ同業者として出来ることは……アストの要望通り、なるばく早く仕事を終わらせることだった。
そして翌日、五人は木の上を注意深く観察しながら進んでいた。
「ふわぁ~~~~。あぁ~~~~、Bランクのモンスターでも出てこね~かな~~~」
「なにアホなこと言ってんのよ。ソニックイーグルの卵を回収する。それが私たちの目的でしょ。そんな面倒な相手と戦ってる労力はないっての」
「Bランクの方が金になるし、アストだってなんだかんだBランクのモンスターと戦うだけなら、悪くねぇだろ」
「おいこら、何無視してんのよ」
(朝から元気な二人だな~)
Bランクモンスターの素材の方が金になる。
それは確かに間違いないが、攻略難易度が格段に上がるのも確か。
アストしては半々……ロルバ達とならという信頼もあり、ややBランクモンスターと戦っても良いかもという思いの方が大きかった。
しかし運良くBランクモンスターとは遭遇することはなく探索二日目の昼食後、目的の巣を発見した。
そして街から街へ短期間の間に移動することが多く、その分多くの冒険者たちを見てきた。
だからこそ、目の前の同僚が伸びしろがある……一流を乗り越えた先にある領域と言われているBランクに到達出来る可能性を持っているのか否かがある程度解るようになってきていた。
元々話だけは聞いていたが、ロルバとガリアスの戦いっぷりを見て、確信に変わった。
「へっへっへ、よせやい。褒めたって何も出ねぇぜ」
「そうよ、アスト。褒めたらこのバカ、絶対に調子に乗っちゃうから」
「そうなのか? けど、今のは純粋な賞賛だ」
先輩のご機嫌取り、持ち上げるのは後輩冒険者に一応必要なスキル。
アストもバーテンダーである時は、下手に客の機嫌を悪くさせないように接しているが……今のはご機嫌取りなどではなく、百パーセント純粋な称賛であった。
「はっはっは!!!! ありがとう、アスト。俺もその勝算は素直に嬉しい。しかし、それを言うならアストも同じであろう」
「そうだな。接近戦が得意であるにもかかわらず、剣技を利用した遠距離攻撃だけで攻めるという選択肢を素直に取れる。まずこれはガリアスにない判断力」
「うぐっ!!」
いきなり仲間から自身の弱点を突かれ、顔が歪むガリアス。
接近戦が得意な者が接近戦で戦う。
当たり前の事ではあるが、時には遠距離攻撃が重要になる場面も存在する。
「本当は推薦が来てたりするんじゃないのか?」
「……そうだな。来たことはある、でも断ってる」
「??? なんでだよ。Bランクにあがりゃあ、手に入る金も増えるぜ?」
「やっぱりバカねぇ~~~」
「ぅおい、バカバカ言うんじゃねぇ。本当にバカになったらどうすんだよ」
「そんなの私たちがカバーするから問題無いに決まってるでしょ」
「お、おぅ。そうか」
予想外のフォローに戸惑うガリアスだが、何故アストが推薦を断ったのかは解っていない。
「んで、なんでアストは推薦を断ったんだよ」
「これ以上嫉妬で面倒が増えるのを防ぐためでしょ。ねぇ、アスト」
「シーナの言う通りだよ、ガリアス。今までも十分絡まれてきて…………しっかり話せば解ってくれる奴が多いのが救いだったけど、それでも面倒という思いは毎回消えないからな」
自分は転生者だから、強くなるという行為に関しては完全にフライングスタートしてたから仕方ない。
今までそう思って耐えてきた。
ただ……アストも人である。
前世での年齢は二十二と、成人……社会人にはなっていたものの、まだまだ精神が成熟しているとは言い難い。
転生したからといって、今世で生きてきた十八年分が加算されることもない。
「それにほら、俺は普段からソロで活動してるだろ。だから、余計に目立つと思うんだよ」
「………………そうか。悲しくはあるが、アストにとっても本業の邪魔になりかねない事も考えれば、致し方なしなんだろうな」
「ふふ、解ってくれてるようでなによりだ、ロルバ」
そもそもアストの本業は冒険者ではなくバーテンダー。
本業の地位すら欲しておらず、副業に関しても本当にある程度で良かった。
(なんて、こいつらみたいな実力があるだけじゃなく、人格までまともな奴ら以外の前で言えば、余計な怒りを買うんだろうけどな)
冒険者として活動するなら強さ、金、権力を目指して当然!!! と考える者は決して少なくない。
そういった者たちからしても、アストという存在は目障りに感じる。
(……やはり、Bランクに上がれる戦闘力を持っている。それでも本人の意思、そしてギルドもランクアップによって起こる問題を把握しているからこそ、上げられないんだろうな…………難しいもんだな)
最近歳が二十を越えたロルバはまだまだ戦う事に、冒険者として上を目指すことへの興味が強いものの……その他の事に関しても多少の興味を持っていた。
(それでも、本人が現状に幸せを感じているのであれば、俺達がこれ以上とやかく言うことではないか)
敬意を持つ同業者として出来ることは……アストの要望通り、なるばく早く仕事を終わらせることだった。
そして翌日、五人は木の上を注意深く観察しながら進んでいた。
「ふわぁ~~~~。あぁ~~~~、Bランクのモンスターでも出てこね~かな~~~」
「なにアホなこと言ってんのよ。ソニックイーグルの卵を回収する。それが私たちの目的でしょ。そんな面倒な相手と戦ってる労力はないっての」
「Bランクの方が金になるし、アストだってなんだかんだBランクのモンスターと戦うだけなら、悪くねぇだろ」
「おいこら、何無視してんのよ」
(朝から元気な二人だな~)
Bランクモンスターの素材の方が金になる。
それは確かに間違いないが、攻略難易度が格段に上がるのも確か。
アストしては半々……ロルバ達とならという信頼もあり、ややBランクモンスターと戦っても良いかもという思いの方が大きかった。
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