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第53話 素直に、正直に
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「っしゃ!! お前ら、じゃんじゃん呑んで食って良いからな!! 今日は全部俺の奢りだ!!!!」
「「「ゴチになります!!!!」」」
予想外の襲撃者と遭遇したものの、アストたちは見事Bランクモンスター、リベルフを討伐することに成功。
アストは魔石だけを貰い、他の素材は売却し……これまた予想外の収入がフランツたちの懐に入った。
そして夜になり……アストの店、ミーティアに来店。
ルーキーたちは全くカクテルのことなど解らず、アストにアルコール耐性や好みの味などを伝え、後はお任せ。
メニュー表に書かれている料理を選ぶのに必死になっていた。
「ラムコーク、ですか」
「おぅ。なんか、名前の響きが気に入ってな」
「……かしこまりました」
知らないとはいえ、教え子と同じカクテルを呑もうとするフランツを見て、小さな笑みを零すアスト。
(そういえば、後どれぐらいこの街に滞在しようか…………もう結構滞在してるし、そろそろ別の街に移りたい気持ちもあるにはある……そうだな。五日後には出よう)
フランツたちに料理を提供し、楽しく会話をしながら別の街へ向かう日程を考えていると……見知った顔がミーティアを訪れた。
「やぁ、マスター……って、お前はフランツ、か」
「おっ! ルンバートじゃねぇか!! 久しぶりだな! 元気にしてたか? ほら、座れ座れ」
「あ、あぁ」
強引に隣に座らされたルンバート。
彼としては、またミーティアの店主であるアストとのんびりとした会話が出来れば良いと思っており、喧嘩別れに近い別れ方をしてしまった親友と再会する気はサラサラなかった。
仲直りはしたいと思ってはいたが、やはり心の準備というものが必要である。
「ほれ、メニュー表だ」
「ありがとう……………………フランツ、お前の方は、元気にしていたか」
心配だった。
騎士を引退し、教職に就いたことにより、戦闘で死ぬという危機から一気に遠ざかった。
生徒たちの保護者として街の外に出て仕事をすることもあるが、それでも死が隣にある日常とはおさらばした……それは間違いなかった。
だが、フランツは騎士として復帰するのではなく、冒険者として……また死が直ぐ隣にある日常へ向かった。
心配に……思わない訳が無かった。
「おう! 勿論元気にしてたぜ。まっ、今日の冒険者さすがにちょっとびっくりしたけどな!! なっ、お前ら」
「えっと、びっくりって言うか、俺は…………やっぱり、何も出来ない自分の弱さが、悔しいっていう思いが一番強かったっす」
「俺も、同じ気持ちです」
「私も……本当に悔しかったです」
「……フランツ、どういったモンスターと遭遇したんだ」
「元々グレーウルフの毛皮、五体分を納品するって依頼を受けてたんだけどよ。そしたら、十体のグレーウルフを倒し終えた後にリベルフが襲ってきたんだよ」
「り、リベルフだと!!??」
ルンバートは驚きながらも、直ぐにリベルフと何処で遭遇したのかを尋ねた。
「まさか、その様な場所にリベルフが……」
「本当だぜ?」
「あぁ、解っている。お前を疑っている訳ではない…………しかし、一度確認してみる必要があるな」
今回アストたちが探索していた場所は、Bランクモンスターが姿を現せることがまずないエリア。
偶々獲物を狙って現れたという可能性もあるが、他に理由があるかもしれない、という可能性は捨てきれない。
「っと、あまり酒の席で重苦しい話をするものではないな……フランツ、冒険者は……楽しいか」
「おう、中々楽しいぞ。やっぱ憧れを持ってた分、他の奴らよりもその気持ちが大きいってのは解ってるけど……へっへっへ、ニヤニヤが止まらないな」
「そうか………楽しめてるんだな」
十年以上の付き合いがあり、顔を見れば……その笑顔が本当か、それとも何かを隠しているのかぐらい、直ぐに解る。
(楽しさが大き過ぎて、苦労などまるでなさそうだな)
実際のところ、フランツはフランツで悩んでいた事はあるものの、本人はそれを全く苦労とは捉えていなかった。
「……フランツ、正直に話そう。私はな、お前が教職を止めて冒険者という新たな道に行ってしまった事に、悲しさを感じていた」
「…………」
「これから先も、この先の未来を守る後輩たちを育て続けると……思っていたからな」
ルンバートは学生たちが目標に取り組み、目標を達成した時に浮かべる笑顔などを見ることに……教師としてのやりがいを感じていた。
それは親友も同じだと思っており、教職を引退するまで……そんな日々が続くと思っていた。
「身勝手な理由なのは解っている。ただ、そう思っていたから、あの日……素直にお前の新たな門出を祝う事が出来なかった」
「そうだったんだな…………ん? マスター、このカクテルはいったい?」
二人の前に、同じカクテルが置かれた。
「私からのサービスです」
アストがこっそりと作っていたカクテルの名は……オールド・ファッションド。
今も昔も変わらず愛されているカクテルの一つ。
「「「ゴチになります!!!!」」」
予想外の襲撃者と遭遇したものの、アストたちは見事Bランクモンスター、リベルフを討伐することに成功。
アストは魔石だけを貰い、他の素材は売却し……これまた予想外の収入がフランツたちの懐に入った。
そして夜になり……アストの店、ミーティアに来店。
ルーキーたちは全くカクテルのことなど解らず、アストにアルコール耐性や好みの味などを伝え、後はお任せ。
メニュー表に書かれている料理を選ぶのに必死になっていた。
「ラムコーク、ですか」
「おぅ。なんか、名前の響きが気に入ってな」
「……かしこまりました」
知らないとはいえ、教え子と同じカクテルを呑もうとするフランツを見て、小さな笑みを零すアスト。
(そういえば、後どれぐらいこの街に滞在しようか…………もう結構滞在してるし、そろそろ別の街に移りたい気持ちもあるにはある……そうだな。五日後には出よう)
フランツたちに料理を提供し、楽しく会話をしながら別の街へ向かう日程を考えていると……見知った顔がミーティアを訪れた。
「やぁ、マスター……って、お前はフランツ、か」
「おっ! ルンバートじゃねぇか!! 久しぶりだな! 元気にしてたか? ほら、座れ座れ」
「あ、あぁ」
強引に隣に座らされたルンバート。
彼としては、またミーティアの店主であるアストとのんびりとした会話が出来れば良いと思っており、喧嘩別れに近い別れ方をしてしまった親友と再会する気はサラサラなかった。
仲直りはしたいと思ってはいたが、やはり心の準備というものが必要である。
「ほれ、メニュー表だ」
「ありがとう……………………フランツ、お前の方は、元気にしていたか」
心配だった。
騎士を引退し、教職に就いたことにより、戦闘で死ぬという危機から一気に遠ざかった。
生徒たちの保護者として街の外に出て仕事をすることもあるが、それでも死が隣にある日常とはおさらばした……それは間違いなかった。
だが、フランツは騎士として復帰するのではなく、冒険者として……また死が直ぐ隣にある日常へ向かった。
心配に……思わない訳が無かった。
「おう! 勿論元気にしてたぜ。まっ、今日の冒険者さすがにちょっとびっくりしたけどな!! なっ、お前ら」
「えっと、びっくりって言うか、俺は…………やっぱり、何も出来ない自分の弱さが、悔しいっていう思いが一番強かったっす」
「俺も、同じ気持ちです」
「私も……本当に悔しかったです」
「……フランツ、どういったモンスターと遭遇したんだ」
「元々グレーウルフの毛皮、五体分を納品するって依頼を受けてたんだけどよ。そしたら、十体のグレーウルフを倒し終えた後にリベルフが襲ってきたんだよ」
「り、リベルフだと!!??」
ルンバートは驚きながらも、直ぐにリベルフと何処で遭遇したのかを尋ねた。
「まさか、その様な場所にリベルフが……」
「本当だぜ?」
「あぁ、解っている。お前を疑っている訳ではない…………しかし、一度確認してみる必要があるな」
今回アストたちが探索していた場所は、Bランクモンスターが姿を現せることがまずないエリア。
偶々獲物を狙って現れたという可能性もあるが、他に理由があるかもしれない、という可能性は捨てきれない。
「っと、あまり酒の席で重苦しい話をするものではないな……フランツ、冒険者は……楽しいか」
「おう、中々楽しいぞ。やっぱ憧れを持ってた分、他の奴らよりもその気持ちが大きいってのは解ってるけど……へっへっへ、ニヤニヤが止まらないな」
「そうか………楽しめてるんだな」
十年以上の付き合いがあり、顔を見れば……その笑顔が本当か、それとも何かを隠しているのかぐらい、直ぐに解る。
(楽しさが大き過ぎて、苦労などまるでなさそうだな)
実際のところ、フランツはフランツで悩んでいた事はあるものの、本人はそれを全く苦労とは捉えていなかった。
「……フランツ、正直に話そう。私はな、お前が教職を止めて冒険者という新たな道に行ってしまった事に、悲しさを感じていた」
「…………」
「これから先も、この先の未来を守る後輩たちを育て続けると……思っていたからな」
ルンバートは学生たちが目標に取り組み、目標を達成した時に浮かべる笑顔などを見ることに……教師としてのやりがいを感じていた。
それは親友も同じだと思っており、教職を引退するまで……そんな日々が続くと思っていた。
「身勝手な理由なのは解っている。ただ、そう思っていたから、あの日……素直にお前の新たな門出を祝う事が出来なかった」
「そうだったんだな…………ん? マスター、このカクテルはいったい?」
二人の前に、同じカクテルが置かれた。
「私からのサービスです」
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今も昔も変わらず愛されているカクテルの一つ。
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