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第78話 運次第
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「っし、到着」
走って走って走り続け、次の目的地……スルパーに到着。
「採掘は明日からだな」
街からも見える位置に、コルバ鉱山という漆黒石が採掘出来る鉱山がある。
まだ昼から数時間程度しか経っておらず、アストなら……やろうと思えば今からでも採掘に向かえるが、その日は大人しく宿を取って早めに爆睡。
翌日、軽く情報を得る為にギルドへ向かうと、やや雰囲気が沈んでいた。
(? 何かあったのか? 鉱石の採掘量が急激に減ったとか、そういうのは止めてほしいんだが)
考えるよりも聞いた方が早い。
アストは直ぐに近くにいたギルド職員に声を掛けた。
「すいません。先日スルパーに来たばかりなんですけど、もしかしてコルバ鉱山で何か問題でも起こりましたか?」
「えぇ、そうですね。実は、アイアンイーターが出現しまして」
「アイアンイーターが、ですか」
アイアンイーターとは、鉄を好むワーム。
ランクはCと、簡単に倒せるモンスターではない。
鉱山を縦横無尽に動き回ることができ、戦う場所が鉱山ではなくとも、地面に潜ることが出来るため、動きを捉えるのが厄介な難敵。
(けど、ここにいる冒険者たちが、そこまで深刻になるほどか?)
鉱山を有する街、冒険者ギルドにとって、アイアンイーターはまさに天敵、最悪のお邪魔虫。
即刻排除するべき害虫。
「……見た感じ、この街で活動してる冒険者の方々なら、討伐は深刻な雰囲気になるほど難しくはないと思いますけど」
「実は、今回コルバ鉱山に現れたアイアンイーターは、鉱石だけではなく人を好んで食すタイプのようなんです」
「い゛っ……なる、ほど。それは悩みの種と言いますか」
アイアンイーターが何故鉱石ではなく、人も好んで食べるようになるのか。
この世界では、まだ鉄分という存在が幅広く認識されていない。
その為、過去の例から稀にそういったタイプのアイアンイーターが現れる、という認識しかされておらず、明確な理由は解明されていなかった。
(人を好んで食べるアイアンイーター、か。そりゃこれだけ冒険者たちが沈むわけだ)
鉱山には幅広いランクの冒険者たちが採掘に向かっている。
採掘出来る鉱石にもよるが……手に入れた鉱石によっては、懐が一気に温かくなる。
場合によっては、人生が変わると言っても過言ではない。
だからこそ……いつ、自分を狙って現れるかもしれないアイアンイーターを警戒するのは、非常に危うい。
「これからコルバ鉱山に採掘へ向かうのであれば、例のアイアンイーターが討伐されてから向かうことをお勧めします」
「分かりました。ありがとうございます」
非常にバッドニュースではあるが、知っていると知らないとでは心構えが変わってくる。
ただ、変わらないことがあると言えば……人の肉を好むアイアンイーターが住み着いていると知っても、アストがコルバ鉱山へ向かうのを止めない事。
厄介なモンスターがいる事を知ることが出来た。
人を好んで狩る個体の多くは、何故か人を……冒険者や兵士、騎士を狩るのが上手い。
対象がCランクのモンスターであれば、Bランクのモンスターに挑むつもりぐらい心構えでなければ……あっさり食われてしまうこともある。
(とはいえ、関わらないで済むなら、それが一番なんだけどな)
副業として活動してるから、という訳ではない。
そもそも冒険者とは正義のヒーローではなく、英雄や勇者でもない。
稀にそう呼ばれる猛者が現れることもあるが、それは外野がそう呼んでるだけであり、冒険者たちにそういった称号に見合う行動をしなければならない理由はない。
個人的に命を懸けて戦わなければならない戦いは、先日終えた。
後は目的の漆黒石を採掘することに全力を尽くすだけであり、基本的に人肉大好きアイアンイーターの討伐などしたくない。
「鉱山に来るのも久しぶりだな」
まだ冒険者になって数年のアストだが、当初からまんべんなく依頼を受けており、既に採掘経験は十分ある。
採掘用のツルハシも亜空間の中にしまっているので、何かを準備する必要は一切ない。
(そんじゃ、がっつり肉体労働といきますか)
目的の鉱石が出るまで、掘って掘って掘りまくる。
モンスターの討伐もそれなりに重労働ではあるが、アストの中で一番体を動かして働いてるな~~~と思うと仕事は、間違いなく採掘作業だった。
「……ここら辺を掘るか」
今現在、人肉大好きアイアンイーターがコルバ鉱山に住み着いているという情報が出回っていることもあって、ライバルは非常に少ない。
とはいえ、アストはドワーフの様に鉱石の気配、匂いを感じることは出来ず、エルフの様に土の精霊の力を借りて……などといった事は出来ず、ただ直感を信じて採掘するのみ。
「…………まだまだ全然足りないな」
結果、途中途中で襲い掛かって来たモンスターを倒しながら採掘し続け、漆黒石は樽の十分の一ぐらいしか採掘出来なかった。
(あと何日掛かることやら)
人肉大好きアイアンイーターが怖いため、その日のうちにスルパーへ帰還して夕食を食べて即爆睡……することはなく、逆にバーを開きたくなり、明日も採掘するというのに営業を始めた。
走って走って走り続け、次の目的地……スルパーに到着。
「採掘は明日からだな」
街からも見える位置に、コルバ鉱山という漆黒石が採掘出来る鉱山がある。
まだ昼から数時間程度しか経っておらず、アストなら……やろうと思えば今からでも採掘に向かえるが、その日は大人しく宿を取って早めに爆睡。
翌日、軽く情報を得る為にギルドへ向かうと、やや雰囲気が沈んでいた。
(? 何かあったのか? 鉱石の採掘量が急激に減ったとか、そういうのは止めてほしいんだが)
考えるよりも聞いた方が早い。
アストは直ぐに近くにいたギルド職員に声を掛けた。
「すいません。先日スルパーに来たばかりなんですけど、もしかしてコルバ鉱山で何か問題でも起こりましたか?」
「えぇ、そうですね。実は、アイアンイーターが出現しまして」
「アイアンイーターが、ですか」
アイアンイーターとは、鉄を好むワーム。
ランクはCと、簡単に倒せるモンスターではない。
鉱山を縦横無尽に動き回ることができ、戦う場所が鉱山ではなくとも、地面に潜ることが出来るため、動きを捉えるのが厄介な難敵。
(けど、ここにいる冒険者たちが、そこまで深刻になるほどか?)
鉱山を有する街、冒険者ギルドにとって、アイアンイーターはまさに天敵、最悪のお邪魔虫。
即刻排除するべき害虫。
「……見た感じ、この街で活動してる冒険者の方々なら、討伐は深刻な雰囲気になるほど難しくはないと思いますけど」
「実は、今回コルバ鉱山に現れたアイアンイーターは、鉱石だけではなく人を好んで食すタイプのようなんです」
「い゛っ……なる、ほど。それは悩みの種と言いますか」
アイアンイーターが何故鉱石ではなく、人も好んで食べるようになるのか。
この世界では、まだ鉄分という存在が幅広く認識されていない。
その為、過去の例から稀にそういったタイプのアイアンイーターが現れる、という認識しかされておらず、明確な理由は解明されていなかった。
(人を好んで食べるアイアンイーター、か。そりゃこれだけ冒険者たちが沈むわけだ)
鉱山には幅広いランクの冒険者たちが採掘に向かっている。
採掘出来る鉱石にもよるが……手に入れた鉱石によっては、懐が一気に温かくなる。
場合によっては、人生が変わると言っても過言ではない。
だからこそ……いつ、自分を狙って現れるかもしれないアイアンイーターを警戒するのは、非常に危うい。
「これからコルバ鉱山に採掘へ向かうのであれば、例のアイアンイーターが討伐されてから向かうことをお勧めします」
「分かりました。ありがとうございます」
非常にバッドニュースではあるが、知っていると知らないとでは心構えが変わってくる。
ただ、変わらないことがあると言えば……人の肉を好むアイアンイーターが住み着いていると知っても、アストがコルバ鉱山へ向かうのを止めない事。
厄介なモンスターがいる事を知ることが出来た。
人を好んで狩る個体の多くは、何故か人を……冒険者や兵士、騎士を狩るのが上手い。
対象がCランクのモンスターであれば、Bランクのモンスターに挑むつもりぐらい心構えでなければ……あっさり食われてしまうこともある。
(とはいえ、関わらないで済むなら、それが一番なんだけどな)
副業として活動してるから、という訳ではない。
そもそも冒険者とは正義のヒーローではなく、英雄や勇者でもない。
稀にそう呼ばれる猛者が現れることもあるが、それは外野がそう呼んでるだけであり、冒険者たちにそういった称号に見合う行動をしなければならない理由はない。
個人的に命を懸けて戦わなければならない戦いは、先日終えた。
後は目的の漆黒石を採掘することに全力を尽くすだけであり、基本的に人肉大好きアイアンイーターの討伐などしたくない。
「鉱山に来るのも久しぶりだな」
まだ冒険者になって数年のアストだが、当初からまんべんなく依頼を受けており、既に採掘経験は十分ある。
採掘用のツルハシも亜空間の中にしまっているので、何かを準備する必要は一切ない。
(そんじゃ、がっつり肉体労働といきますか)
目的の鉱石が出るまで、掘って掘って掘りまくる。
モンスターの討伐もそれなりに重労働ではあるが、アストの中で一番体を動かして働いてるな~~~と思うと仕事は、間違いなく採掘作業だった。
「……ここら辺を掘るか」
今現在、人肉大好きアイアンイーターがコルバ鉱山に住み着いているという情報が出回っていることもあって、ライバルは非常に少ない。
とはいえ、アストはドワーフの様に鉱石の気配、匂いを感じることは出来ず、エルフの様に土の精霊の力を借りて……などといった事は出来ず、ただ直感を信じて採掘するのみ。
「…………まだまだ全然足りないな」
結果、途中途中で襲い掛かって来たモンスターを倒しながら採掘し続け、漆黒石は樽の十分の一ぐらいしか採掘出来なかった。
(あと何日掛かることやら)
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