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第93話 他の報酬……
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「おまたせしましたわ」
ヴァレアと模擬戦? を行ってから約十日後、ようやくヴァレアがアストの元を訪れてきた。
「このモンスターの討伐を手伝って頂きますわ」
「……これまた、骨がありそうなモンスターですね」
テーブルの上に置かれた資料にはモンスターの名前、詳細な情報、現在何処で姿が確認されているかといった情報が記載されていた。
記載されているモンスター名は……烈風竜、ブリーゼル。
「やはり、刀に求めるのは殺傷力、切れ味だと判断しました」
「それはそうですね」
既にアストはベルダーからグリフォンの素材をメインにした刀を受け取っていた。
モンスターを相手に試し斬りも行っており、いかに切れ味という要素が重要なのか理解している。
「ただ、烈風竜、ですか……妥当だとは解りますけど」
風竜に属するドラゴンの一種だが、通常の風竜よりも抜き出た存在。
ランクはBランクに分類されているが、Bランクの中でも最上位の存在であるのは間違いない。
「勿論、素材は私だけで独占しませんわ」
(……随分と、俺の事を認めてくれてるみたいだが、何があった? 先日の模擬戦のお陰か?)
先日互いの剣をぶつけ合ったことも一つの理由だが、ヴァレアは自分の刀の素材とするモンスターを調べている間に、アストという冒険者の存在についても調べていた。
ギルドが情報を伝えずとも、王都には情報が溢れている。
なにより……王都には、過去にアストと共に冒険者が訪れていた。
そういった実際にアストの強さを目にした冒険者たちに飯代を奢り、情報を手に入れることに成功したヴァレア。
「望むのであれば、他の報酬も用意します」
「他の報酬、ですか……分かりました。そちらに関しては考えておきます。では、出発は……明日からですか?」
「そうですね…………二日後にします」
「分かりました」
出発の時間を決め、解散。
アストは基本的に準備は整ってはいるものの、購入しておいた方が良い物はないかと考えながら街を散策した。
(…………っ、しっかりと、どういった物ならと、明言しておくべきでしたでしょうか)
アストと別れた後、ヴァレアも準備の為に行きつけの店へと向かっていた。
そんな中、アストに対して他の報酬も用意する、と伝えた内容に関して悩んでいた。
烈風竜の素材以外の報酬となれば、普通に考えれば金銭となる。
しかし、アストに関する情報を集めたヴァレアは、彼が冒険者の活動をしながら、バーテンダーとして活動している事も当然知っていた。
彼の店は評判であり、他のバーと比べて、とても値段が良心的。
その値段で提供できるのは……冒険者として十分に稼いでいるからである。
金銭に不自由していないとなれば、他に何を渡せば良いと考えるも……ヴァレア自身が心底欲していた名刀を持っているのであれば、彼女自身がコレクションしている武器を渡すのは……意味がない。
その他の酒、美術品、マジックアイテムを集めているといった情報もない。
(強烈な女性好きという情報はなかったけれど、それでも彼も男…………か、覚悟しておくべきかしら)
ヴァレアは言うまでもなく、非常にモテる。
貴族界で生きていた時からモテており、婚約話はいくつも舞い込んできたが、結果として全て断っていた。
何度か相手側が諦めきれず粘られることもあったが、全て実力で黙らせてきた。
故に、冒険者になった今でも純潔。
(しかし、今まで私に声を掛けてきた男性たちと比べて、歳が近い割には非情に落ち着きがあった……いやしかし)
彼女の憧れとなった人物から、そういった男ほど実は……という話を聞かされたことがある。
「ヴァレアじゃないか。何をそんな難しい顔をしてるんだ?」
「っ、師匠!!!!」
バッタリと出くわした人物は、ヴァレアが刀という武器に振れる切っ掛けとなった上司の一人……ナツキという冒険者だった。
「まだ、同業者に勝負で負けた件を引きずっているのか?」
ヴァレアと同じクランに属しているため、名刀を懸けた勝負に負けたことは当然知っている。
「いえ、その件に関してはもう引きずっていません。ただ……」
頼れる上司、師匠ということもあり、今自分が悩んでいる内容について零した。
「冒険者が副業、バーテンダーが本業という不思議なスタイルの冒険者がいることは耳にしていたが……なるほど。噂の大半は事実だったか。さて、他の報酬についてどうすべきか、だったな」
頼れる上司も女性。
期待の眼差しを向けて答えを待つヴァレア。
「………………簡潔に言うと、それは確かに彼に対する報酬になるだろう」
「ッ」
「加えて、ヴァレア。お前にとっても良い経験になる筈だ」
「い、良い経験、でえすか?」
「お前から見て、そのアストという青年は名刀を懸けた勝負に負けたという点を除けば、悪い点はないのであろう」
「それは……はい、その通りです」
「噂の話から、下手なリスクを取るタイプではないと推測出来る。であれば、初めてを捨ててしまう相手としては、悪くない相手だ」
ナツキは痴女ではないものの、清純な女性という訳でもない。
寧ろ、今回の一件に関しては強くその報酬内容を押そうとすら思った。
ヴァレアと模擬戦? を行ってから約十日後、ようやくヴァレアがアストの元を訪れてきた。
「このモンスターの討伐を手伝って頂きますわ」
「……これまた、骨がありそうなモンスターですね」
テーブルの上に置かれた資料にはモンスターの名前、詳細な情報、現在何処で姿が確認されているかといった情報が記載されていた。
記載されているモンスター名は……烈風竜、ブリーゼル。
「やはり、刀に求めるのは殺傷力、切れ味だと判断しました」
「それはそうですね」
既にアストはベルダーからグリフォンの素材をメインにした刀を受け取っていた。
モンスターを相手に試し斬りも行っており、いかに切れ味という要素が重要なのか理解している。
「ただ、烈風竜、ですか……妥当だとは解りますけど」
風竜に属するドラゴンの一種だが、通常の風竜よりも抜き出た存在。
ランクはBランクに分類されているが、Bランクの中でも最上位の存在であるのは間違いない。
「勿論、素材は私だけで独占しませんわ」
(……随分と、俺の事を認めてくれてるみたいだが、何があった? 先日の模擬戦のお陰か?)
先日互いの剣をぶつけ合ったことも一つの理由だが、ヴァレアは自分の刀の素材とするモンスターを調べている間に、アストという冒険者の存在についても調べていた。
ギルドが情報を伝えずとも、王都には情報が溢れている。
なにより……王都には、過去にアストと共に冒険者が訪れていた。
そういった実際にアストの強さを目にした冒険者たちに飯代を奢り、情報を手に入れることに成功したヴァレア。
「望むのであれば、他の報酬も用意します」
「他の報酬、ですか……分かりました。そちらに関しては考えておきます。では、出発は……明日からですか?」
「そうですね…………二日後にします」
「分かりました」
出発の時間を決め、解散。
アストは基本的に準備は整ってはいるものの、購入しておいた方が良い物はないかと考えながら街を散策した。
(…………っ、しっかりと、どういった物ならと、明言しておくべきでしたでしょうか)
アストと別れた後、ヴァレアも準備の為に行きつけの店へと向かっていた。
そんな中、アストに対して他の報酬も用意する、と伝えた内容に関して悩んでいた。
烈風竜の素材以外の報酬となれば、普通に考えれば金銭となる。
しかし、アストに関する情報を集めたヴァレアは、彼が冒険者の活動をしながら、バーテンダーとして活動している事も当然知っていた。
彼の店は評判であり、他のバーと比べて、とても値段が良心的。
その値段で提供できるのは……冒険者として十分に稼いでいるからである。
金銭に不自由していないとなれば、他に何を渡せば良いと考えるも……ヴァレア自身が心底欲していた名刀を持っているのであれば、彼女自身がコレクションしている武器を渡すのは……意味がない。
その他の酒、美術品、マジックアイテムを集めているといった情報もない。
(強烈な女性好きという情報はなかったけれど、それでも彼も男…………か、覚悟しておくべきかしら)
ヴァレアは言うまでもなく、非常にモテる。
貴族界で生きていた時からモテており、婚約話はいくつも舞い込んできたが、結果として全て断っていた。
何度か相手側が諦めきれず粘られることもあったが、全て実力で黙らせてきた。
故に、冒険者になった今でも純潔。
(しかし、今まで私に声を掛けてきた男性たちと比べて、歳が近い割には非情に落ち着きがあった……いやしかし)
彼女の憧れとなった人物から、そういった男ほど実は……という話を聞かされたことがある。
「ヴァレアじゃないか。何をそんな難しい顔をしてるんだ?」
「っ、師匠!!!!」
バッタリと出くわした人物は、ヴァレアが刀という武器に振れる切っ掛けとなった上司の一人……ナツキという冒険者だった。
「まだ、同業者に勝負で負けた件を引きずっているのか?」
ヴァレアと同じクランに属しているため、名刀を懸けた勝負に負けたことは当然知っている。
「いえ、その件に関してはもう引きずっていません。ただ……」
頼れる上司、師匠ということもあり、今自分が悩んでいる内容について零した。
「冒険者が副業、バーテンダーが本業という不思議なスタイルの冒険者がいることは耳にしていたが……なるほど。噂の大半は事実だったか。さて、他の報酬についてどうすべきか、だったな」
頼れる上司も女性。
期待の眼差しを向けて答えを待つヴァレア。
「………………簡潔に言うと、それは確かに彼に対する報酬になるだろう」
「ッ」
「加えて、ヴァレア。お前にとっても良い経験になる筈だ」
「い、良い経験、でえすか?」
「お前から見て、そのアストという青年は名刀を懸けた勝負に負けたという点を除けば、悪い点はないのであろう」
「それは……はい、その通りです」
「噂の話から、下手なリスクを取るタイプではないと推測出来る。であれば、初めてを捨ててしまう相手としては、悪くない相手だ」
ナツキは痴女ではないものの、清純な女性という訳でもない。
寧ろ、今回の一件に関しては強くその報酬内容を押そうとすら思った。
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