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第96話 神でも仏でもない
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「ところで、烈風竜と戦う前に、互いの手札について少し話しておきたいのだけど……良いかしら」
「…………まぁ、そうだな。互いの手札を知らないまま、烈風竜と戦うのは厳しいだろう」
ヴァレアの言っている事は、非常に最もな話である。
とはいえ、アストとしてはなるべく話したくない内容が多い。
「まずは私から教えるわ」
自分の手札を晒す。
それがどれだけ相手に情報を握らせるか……それが解らないほどポンコツではない。
という訳で、信用を得る為にまずは自分から伝え始めた。
「私の基本的な武器は細剣、はもう知ってるわね。一応、刀も修練中の身ではあるけど使えるわ。それと、属性魔法は火と雷、あと二つほどではないけど、風が使えるわ」
(……もろ細剣や刀系の武器を扱うのにピッタリな属性だな)
最初にヴァレアが晒したとなれば、アストも伝えなければならない。
「俺は基本的にロングソードを使ってるが、他にも双剣や重量級の武器……後、ヴァレアほどではないが、刀も使える」
「重量級の武器まで使えるのね」
「正直、ただ使えるというだけだから、あまり期待しないでくれると助かる。魔法は…………風が一番得意かな」
「……武器に纏うだけではなく、大砲とも思って良さそうね」
何を隠しているのかは解らない。
しかし、詰まった間からヴァレアはある程度察した。
「多少程度だ。後、遠距離攻撃限定ではあるが、壁役の様な真似も出来る。ただ、純粋なタンクの様な防御は出来ない」
「随分と珍しいスキル? なのね」
「それと、狂化に似た技を使える。見境なく襲い掛かることはないから、大技の準備が整ったりしたら、声を掛けてくれ。そうすれば反応出来る」
「……見かけによらずワイルドな戦い方も出来るのね」
他にも使える技などはあるが、それ以上は伝えなかった。
「私は主にスピードで戦場をかき回した方が良さそうね」
「…………では、なるべく俺は烈風竜の動きを止めることに集中した方が良さそうだな」
烈風竜は風属性のドラゴンであり、その他の属性竜と比べてスピードに優れている。
「それにしても、烈風竜か……話しか聞いたことがないのだが、他の風属性のドラゴンと比べて、体が火竜並みに大きいのだろ」
「えぇ、そうらしいわね。倒し応えがあるわ」
(もしかしなくても、ちょっとバトルジャンキー味がある? それか、烈風竜の素材から出来上がる自分の刀が楽しみ過ぎて、かなり昂ってる感じか?)
三対七ほどで、両方の気持ちがヴァレアの心にあった。
そしてぶらりぶらりと歩き……時にはもう少しで到着する街まえの距離を考え、走って移動し……徐々に目的の街へと向かっていた。
「さて、宿を探しましょうか」
「そうだな」
あともう一日移動すれば、目的の烈風竜の姿が確認されている最寄り街に到着する。
(ん~~、時間が時間だからな。良い感じの宿が開いてれば良いんだが)
既に夕方を少し過ぎており、街に訪れている者たちで部屋が埋め尽くされていてもおかしくない……といったアストの嫌な予感は見事的中。
「アスト……これで、何件目でしょうか」
「四件目だな、ヴァレア。まさかこんなに埋まってるとはな」
良さげな宿を何件も回るも、全て埋まっていた。
(しょうがない。少しお高めな宿の方も見てみるか)
切り替えて他の宿を探そうとすると、二人に……正確にはヴァレアに下品な声が掛けられた。
「よう、綺麗な姉ちゃん。あんただけで良かったら、俺らの宿に止めてやるぜ~~~」
下品な声の主は、そこまで悪くない品質の装備を身に付けている……声にピッタリな見た目をしている同業者。
「結構ですわ」
即断って宿から出ようとするが、こういった輩は一度断られたからといって、諦めるような物分かりの良い大人ではない。
「おいおい待てよ。とりあえず一緒に酒を呑もうぜっ!?」
早足で近づいてきた男はヴァレアを引き止めようと腕を伸ばすが、すかさずアストが手首を掴んだ。
「断ってるんだから、素直に引いてもらって良いですか」
「じゃ、邪魔すんじゃ、ねぇよガ、キっ!!!???」
絡まれ歴……幼少期なども合わせれば十年は越えているアスト。
既に明らかに面倒で簡単に諦めてくれない輩がヴァレアに声を掛けてきた時点で、身体強化の効果が付与された指輪を取り出し、セットしていた。
「俺たちの邪魔をしてるのはあんた達だ。俺も男だから盛りたい気持ちは解るが、ナンパしようとして断られたなら、諦めて娼館に行ってくれ」
「だから、てめぇには、用はねぇんだ、よっ!!!!!」
右手首の痛みを堪えながら、輩は空いている左腕で殴り掛かるも……アストはあっさりと躱した。
「俺は三回も我慢しないんで」
「い゛っ!!!!!?????」
輩が身体強化のスキルを使用するだろうと予測しており、見事的中。
アストも身体強化のスキルを使い、更に強化した握力で輩の手首を握り潰した。
「ガキいいい!!! 何してくれてん、だ!?」
「どうしたんですか? 引かないんでしょう、戦るんでしょう。さっさと刃を抜いてくださいよ」
輩の仲間が集まり、文句を口にした瞬間、アストは速攻でロングソードを抜いて威嚇。
「い、いや、べ……別に、ほら、あれだ」
「戦る気はないんですよね。それなら、最初からそうしてください」
それだけ言い残し、アストは納剣してヴァレアと共に外に出て、他の宿を探し始めた。
「…………まぁ、そうだな。互いの手札を知らないまま、烈風竜と戦うのは厳しいだろう」
ヴァレアの言っている事は、非常に最もな話である。
とはいえ、アストとしてはなるべく話したくない内容が多い。
「まずは私から教えるわ」
自分の手札を晒す。
それがどれだけ相手に情報を握らせるか……それが解らないほどポンコツではない。
という訳で、信用を得る為にまずは自分から伝え始めた。
「私の基本的な武器は細剣、はもう知ってるわね。一応、刀も修練中の身ではあるけど使えるわ。それと、属性魔法は火と雷、あと二つほどではないけど、風が使えるわ」
(……もろ細剣や刀系の武器を扱うのにピッタリな属性だな)
最初にヴァレアが晒したとなれば、アストも伝えなければならない。
「俺は基本的にロングソードを使ってるが、他にも双剣や重量級の武器……後、ヴァレアほどではないが、刀も使える」
「重量級の武器まで使えるのね」
「正直、ただ使えるというだけだから、あまり期待しないでくれると助かる。魔法は…………風が一番得意かな」
「……武器に纏うだけではなく、大砲とも思って良さそうね」
何を隠しているのかは解らない。
しかし、詰まった間からヴァレアはある程度察した。
「多少程度だ。後、遠距離攻撃限定ではあるが、壁役の様な真似も出来る。ただ、純粋なタンクの様な防御は出来ない」
「随分と珍しいスキル? なのね」
「それと、狂化に似た技を使える。見境なく襲い掛かることはないから、大技の準備が整ったりしたら、声を掛けてくれ。そうすれば反応出来る」
「……見かけによらずワイルドな戦い方も出来るのね」
他にも使える技などはあるが、それ以上は伝えなかった。
「私は主にスピードで戦場をかき回した方が良さそうね」
「…………では、なるべく俺は烈風竜の動きを止めることに集中した方が良さそうだな」
烈風竜は風属性のドラゴンであり、その他の属性竜と比べてスピードに優れている。
「それにしても、烈風竜か……話しか聞いたことがないのだが、他の風属性のドラゴンと比べて、体が火竜並みに大きいのだろ」
「えぇ、そうらしいわね。倒し応えがあるわ」
(もしかしなくても、ちょっとバトルジャンキー味がある? それか、烈風竜の素材から出来上がる自分の刀が楽しみ過ぎて、かなり昂ってる感じか?)
三対七ほどで、両方の気持ちがヴァレアの心にあった。
そしてぶらりぶらりと歩き……時にはもう少しで到着する街まえの距離を考え、走って移動し……徐々に目的の街へと向かっていた。
「さて、宿を探しましょうか」
「そうだな」
あともう一日移動すれば、目的の烈風竜の姿が確認されている最寄り街に到着する。
(ん~~、時間が時間だからな。良い感じの宿が開いてれば良いんだが)
既に夕方を少し過ぎており、街に訪れている者たちで部屋が埋め尽くされていてもおかしくない……といったアストの嫌な予感は見事的中。
「アスト……これで、何件目でしょうか」
「四件目だな、ヴァレア。まさかこんなに埋まってるとはな」
良さげな宿を何件も回るも、全て埋まっていた。
(しょうがない。少しお高めな宿の方も見てみるか)
切り替えて他の宿を探そうとすると、二人に……正確にはヴァレアに下品な声が掛けられた。
「よう、綺麗な姉ちゃん。あんただけで良かったら、俺らの宿に止めてやるぜ~~~」
下品な声の主は、そこまで悪くない品質の装備を身に付けている……声にピッタリな見た目をしている同業者。
「結構ですわ」
即断って宿から出ようとするが、こういった輩は一度断られたからといって、諦めるような物分かりの良い大人ではない。
「おいおい待てよ。とりあえず一緒に酒を呑もうぜっ!?」
早足で近づいてきた男はヴァレアを引き止めようと腕を伸ばすが、すかさずアストが手首を掴んだ。
「断ってるんだから、素直に引いてもらって良いですか」
「じゃ、邪魔すんじゃ、ねぇよガ、キっ!!!???」
絡まれ歴……幼少期なども合わせれば十年は越えているアスト。
既に明らかに面倒で簡単に諦めてくれない輩がヴァレアに声を掛けてきた時点で、身体強化の効果が付与された指輪を取り出し、セットしていた。
「俺たちの邪魔をしてるのはあんた達だ。俺も男だから盛りたい気持ちは解るが、ナンパしようとして断られたなら、諦めて娼館に行ってくれ」
「だから、てめぇには、用はねぇんだ、よっ!!!!!」
右手首の痛みを堪えながら、輩は空いている左腕で殴り掛かるも……アストはあっさりと躱した。
「俺は三回も我慢しないんで」
「い゛っ!!!!!?????」
輩が身体強化のスキルを使用するだろうと予測しており、見事的中。
アストも身体強化のスキルを使い、更に強化した握力で輩の手首を握り潰した。
「ガキいいい!!! 何してくれてん、だ!?」
「どうしたんですか? 引かないんでしょう、戦るんでしょう。さっさと刃を抜いてくださいよ」
輩の仲間が集まり、文句を口にした瞬間、アストは速攻でロングソードを抜いて威嚇。
「い、いや、べ……別に、ほら、あれだ」
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