114 / 167
第114話 また共に
しおりを挟む
(はぁ~~~~…………今後は先輩の驕りとはいえ、自重しないとな)
ナツキが変装用のマジックアイテムを持っていた為、やる用の宿から出る時のあれこれで特に悩む必要はなかった
それはそれでアストにとって有難いことではあるのだが、ノヴァの幹部であるナツキ
と一夜を共にしてしまった……男にとってはこの上なく最高の体験。
アストもあれよこれよと、ゆっくりと思い出していき…………感想としては悪くなかった。
ただ、もしバレたらという不安は当然ある。
(どう考えても……ヴァレアより口が軽そうなんだよな~~~)
バーでの会話を思い出す限り、あまりクランに所属している上での愚痴などはなかった。
機密事項をポロっと話す訳でもなかったたため、その辺りを考慮すればなんだかんだで口が固いのでは? と思えなくもないが、アストの記憶には……ヴァレアにあぁいった報酬のアイデアを伝えたという印象が非常に強い。
(……ポロっとどこかで零されて、ナツキさんやヴァレアのファンたちに囲まれてボコボコにされない内に王都から離れよう)
アストは国王、そして第五王子であるマティアスだけには王都から離れて別の街へ向かうことを伝えようかと思ったが……それはそれで騒がれる要因になりそうだと思い、出発前に王城へ向けて軽く頭を下げてから旅立った。
(? 最近、あの人を見ませんね)
ヴァレアは今日も今日とて仲の良いクランメンバーたちとギルドに丁度良い依頼を探しに来ていた……のだが、いつの間にか丁度良い内容の依頼書ではなく、ある人物を探していた。
「ヴァレア、この依頼なんてどう?」
「えっ、あぁ……そうね。討伐対象の強さ、報酬金……共に悪くないと思うわ」
「ぃよし! 皆もこれで良い?」
「構わないぞ」
「そうだね。その依頼を受けようか」
「んじゃ、受理しに行こっか!!」
元気一杯のハーフドワーフの冒険者が先頭になり、受付の列に並ぶ。
(……さっきのヴァレア、別の事に気を取られてたよな…………つか、誰かを探してた?)
(討伐対象の強さ、報酬金が悪くないっていう感想は咄嗟に口にしただけではないと思うけど…………誰かを、探してたよね)
二人の比較的若い男性冒険者は、クランノヴァの中でもヴァレアと仲が良く……パーティーを組んで活動することが多い。
故に、先程のヴァレアは丁度良い依頼探しに集中していなかったことを見抜いていた。
「そういえばヴァレア、さっき誰か探してた?」
「っ……バレてましたか」
「もう結構付き合いあるからね~~。でも別に怒ってはないよ。ただ、珍しいなって思ってさ。もしかしてぇ……気になる人でもできた?」
「「っ!!」」
ハーフドワーフの女性冒険者がヴァレアに投げかけた質問は、野郎二人が今も最も気になっている内容であり、その答えを知りたいような……逆に知りたくないような気持。
同僚がヴァレアにその質問を投げた瞬間、心がキュッと締め上げられた感覚になるも……野郎二人は口を挟むことはなく、大人しくヴァレアが答えを口にするのを待った。
「いえ、そういった意味での気になる人ではありません」
((ふぅーーーーーー))
ヴァレアの答えに、野郎二人は心の中で安堵の息を吐いた。
「ただ、これまで出会ってきた男性と比べて、普通ではない……不思議な雰囲気を持つ人でしたね」
「ミステリアスな人ってこと?」
「人間らしいところもありますが、そういったタイプの人です。それに、彼とはまた共に冒険してみたいと思っています」
「「っ!!!!????」」
また共に冒険してみたい。
それは女性から男性に送られる……といった性別など関係無しに、冒険者が冒険者に送る最大級の賛辞と言える。
「へぇ~~~。その彼は、そんなにヴァレアの心を惹く人なのね。でも、探しても見つからないって事は、もう王都にはいないの?」
「かもしれませんね。元々彼は旅の冒険者でしたから」
会話の中で、彼に関する名前は一切出てきてない。
しかし、ノヴァに所属する比較的若い冒険者たちの中では……ここ最近有名な冒険者であるため、名前を出さずとも解ってしまう。
(ふ、ふっふっふ。あの二人があんな顔してるのを見られるなんて最高ね。けど、ヴァレアがここまでこう……人を想う顔? をするなんて…………そんなに良い男、いや……漢だったのかしら)
ヴァレアが貴族令嬢というイメージの如く、同じ冒険者であっても平民に対してツンツンした態度を取るタイプではないことは周知の事実。
ただ、恋愛……色恋沙汰に関する想いが顔に出ることはまずない。
「今すぐは無理だろうけど、その彼が冒険者を続けてて、私たちも冒険者として活動を続けてれば、その内また一緒に冒険出来る筈だよ」
「ふふ、そうね。それじゃあ、再開した時に恥をかかない様に、今よりも更に強くならないとね」
最後の最後にまた珍しい笑みを浮かべたヴァレアを見て……ハーフドワーフの女性冒険者はテンションが上がり、野郎二人は依頼を受理してもらう前から瀕死状態に追い込まれた。
ナツキが変装用のマジックアイテムを持っていた為、やる用の宿から出る時のあれこれで特に悩む必要はなかった
それはそれでアストにとって有難いことではあるのだが、ノヴァの幹部であるナツキ
と一夜を共にしてしまった……男にとってはこの上なく最高の体験。
アストもあれよこれよと、ゆっくりと思い出していき…………感想としては悪くなかった。
ただ、もしバレたらという不安は当然ある。
(どう考えても……ヴァレアより口が軽そうなんだよな~~~)
バーでの会話を思い出す限り、あまりクランに所属している上での愚痴などはなかった。
機密事項をポロっと話す訳でもなかったたため、その辺りを考慮すればなんだかんだで口が固いのでは? と思えなくもないが、アストの記憶には……ヴァレアにあぁいった報酬のアイデアを伝えたという印象が非常に強い。
(……ポロっとどこかで零されて、ナツキさんやヴァレアのファンたちに囲まれてボコボコにされない内に王都から離れよう)
アストは国王、そして第五王子であるマティアスだけには王都から離れて別の街へ向かうことを伝えようかと思ったが……それはそれで騒がれる要因になりそうだと思い、出発前に王城へ向けて軽く頭を下げてから旅立った。
(? 最近、あの人を見ませんね)
ヴァレアは今日も今日とて仲の良いクランメンバーたちとギルドに丁度良い依頼を探しに来ていた……のだが、いつの間にか丁度良い内容の依頼書ではなく、ある人物を探していた。
「ヴァレア、この依頼なんてどう?」
「えっ、あぁ……そうね。討伐対象の強さ、報酬金……共に悪くないと思うわ」
「ぃよし! 皆もこれで良い?」
「構わないぞ」
「そうだね。その依頼を受けようか」
「んじゃ、受理しに行こっか!!」
元気一杯のハーフドワーフの冒険者が先頭になり、受付の列に並ぶ。
(……さっきのヴァレア、別の事に気を取られてたよな…………つか、誰かを探してた?)
(討伐対象の強さ、報酬金が悪くないっていう感想は咄嗟に口にしただけではないと思うけど…………誰かを、探してたよね)
二人の比較的若い男性冒険者は、クランノヴァの中でもヴァレアと仲が良く……パーティーを組んで活動することが多い。
故に、先程のヴァレアは丁度良い依頼探しに集中していなかったことを見抜いていた。
「そういえばヴァレア、さっき誰か探してた?」
「っ……バレてましたか」
「もう結構付き合いあるからね~~。でも別に怒ってはないよ。ただ、珍しいなって思ってさ。もしかしてぇ……気になる人でもできた?」
「「っ!!」」
ハーフドワーフの女性冒険者がヴァレアに投げかけた質問は、野郎二人が今も最も気になっている内容であり、その答えを知りたいような……逆に知りたくないような気持。
同僚がヴァレアにその質問を投げた瞬間、心がキュッと締め上げられた感覚になるも……野郎二人は口を挟むことはなく、大人しくヴァレアが答えを口にするのを待った。
「いえ、そういった意味での気になる人ではありません」
((ふぅーーーーーー))
ヴァレアの答えに、野郎二人は心の中で安堵の息を吐いた。
「ただ、これまで出会ってきた男性と比べて、普通ではない……不思議な雰囲気を持つ人でしたね」
「ミステリアスな人ってこと?」
「人間らしいところもありますが、そういったタイプの人です。それに、彼とはまた共に冒険してみたいと思っています」
「「っ!!!!????」」
また共に冒険してみたい。
それは女性から男性に送られる……といった性別など関係無しに、冒険者が冒険者に送る最大級の賛辞と言える。
「へぇ~~~。その彼は、そんなにヴァレアの心を惹く人なのね。でも、探しても見つからないって事は、もう王都にはいないの?」
「かもしれませんね。元々彼は旅の冒険者でしたから」
会話の中で、彼に関する名前は一切出てきてない。
しかし、ノヴァに所属する比較的若い冒険者たちの中では……ここ最近有名な冒険者であるため、名前を出さずとも解ってしまう。
(ふ、ふっふっふ。あの二人があんな顔してるのを見られるなんて最高ね。けど、ヴァレアがここまでこう……人を想う顔? をするなんて…………そんなに良い男、いや……漢だったのかしら)
ヴァレアが貴族令嬢というイメージの如く、同じ冒険者であっても平民に対してツンツンした態度を取るタイプではないことは周知の事実。
ただ、恋愛……色恋沙汰に関する想いが顔に出ることはまずない。
「今すぐは無理だろうけど、その彼が冒険者を続けてて、私たちも冒険者として活動を続けてれば、その内また一緒に冒険出来る筈だよ」
「ふふ、そうね。それじゃあ、再開した時に恥をかかない様に、今よりも更に強くならないとね」
最後の最後にまた珍しい笑みを浮かべたヴァレアを見て……ハーフドワーフの女性冒険者はテンションが上がり、野郎二人は依頼を受理してもらう前から瀕死状態に追い込まれた。
255
あなたにおすすめの小説
何でも奪っていく妹が森まで押しかけてきた ~今更私の言ったことを理解しても、もう遅い~
秋鷺 照
ファンタジー
「お姉さま、それちょうだい!」
妹のアリアにそう言われ奪われ続け、果ては婚約者まで奪われたロメリアは、首でも吊ろうかと思いながら森の奥深くへ歩いて行く。そうしてたどり着いてしまった森の深層には屋敷があった。
ロメリアは屋敷の主に見初められ、捕らえられてしまう。
どうやって逃げ出そう……悩んでいるところに、妹が押しかけてきた。
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。
異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~
繭
ファンタジー
高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。
見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に
え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。
確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!?
ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・
気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。
誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!?
女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話
保険でR15
タイトル変更の可能性あり
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる