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第135話 ミスが、あったとすれば
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SIDE アリステア
「ッ!!!!」
「フッ!!! セァアアッ!!!」
「ッ!! ガアアアアアッ!!!!」
戦闘が始まってから数分間、アリステアと戦凶鬼は激しい剣戟を繰り返し続けていた。
アリステアの得物はロングソード。
戦凶鬼の得物は大剣……スピードではアリステアが上回っているが、パワーでは戦凶鬼が上回っていた。
(モンスターと、戦ってる気が、しないなッ!!!!)
パワー自慢の相手であれば、これまで何体も沈めてきた。
スピードとテクニック。
それがあれば、パワー自慢のモンスターを崩すことは難しくない。
だが、戦凶鬼はバカみたいに大剣を力任せに振るう狂暴個体ではなく……攻めだけに意識過ぎない技術を有していた。
「疾ッ!!!!!」
連続で放たれた旋風を飛ばす刺突。
ただの牽制……だけではなく、普通にダメージを与える攻撃としても通用する。
「ガアアアアッ!!!!」
(っ、致命傷に関わる刺突だけを落したか……恐ろしい個体だ)
スピードとテクニックをパワーで潰されれば、団長であるアリステアであっても致命傷を食らいかねない。
戦凶鬼の発するプレッシャーを考えれば、あまり時間を掛けられない……それが常識ではあるが、逆にアリステアは五分という時間を設定し、戦凶鬼を削ろうと考えた。
幸いにも、戦凶鬼に再生という鬼に金棒過ぎるスキルは有していないと確認出来た。
加えて……戦凶鬼は戦凶鬼で、自身のことを油断ならない存在だと認識していることを感じ取った。
(焦れば、それはそれでありだ)
五分というのは、アストたちが土竜を相手に耐えられると予想した時間。
それまでの間……アリステアは人間という考えて考えて考え続け、生き抜いてきた生物というアドバンテージを活かし、的確な攻めを続けた。
当然、リスクを背負わずダメージを与えられる相手ではない。
戦凶鬼の攻撃を食らう可能性が高まるの踏まえ、それでも受けるダメージは最小限に抑え、剣技以外の攻撃や殺意の強弱……目線によるフェイント。
相手が普通のモンスターよりも知能が高く、暴れ回ることしか考えていないモンスターとは違うからこそ、それらの行動によく引っ掛かった。
(このままいけば、予定通り……っ!!!!)
それでも……今回の戦闘、アリステアが何かをやらかしてしまった事があるとすれば……それは目の前の敵、戦凶鬼のみに意識が集中してしまっていたこと。
Aランクモンスターの相手を……しかも一人で担っていると考えれば、決してやらかしやミスとは言えない。
仲間を、同僚たちを信じていたからこその選択とも言えた。
だが、大量の木々が切断された音が耳に入り……ほんの一瞬だけ、今回の討伐戦に参加してくれた冒険者、アストのことを視界に入れた。
(アス、トっ!!!!!?????)
舌を噛んだ、内臓が少し損傷した……そのレベルで済まない量を吐血したアスト。
それを見てしまった瞬間、本当に僅かな時間ではあるものの、戦凶鬼の斬撃を……アリステアはガードしなければならない状況に追い込まれた。
大剣技……烈風。
あらゆる武器の中で、ハンマーや斧などの武器と同じパワーを長所とした武器。
そんな武器のスキル技の中でも珍しく、烈風は使用者のスピードを上げる技。
「ぐっ!!!!!!!!!!」
動きが速くなろうとも、軌道が解っていれば、アリステアレベルの猛者には対処されてしまう。
だが、今回はほんの僅かな隙を突かれ、ガードという選択肢を仕入れられた。
尚且つ……体勢が不十分だった。
(私は……何を、やっているんだッ!!!!!!!)
アストが、冒険者であることは知っている。
冒険者として……死を恐れない覚悟を持っている事も。
だが、それは決していつ死んでも構わないと、簡単に命を投げ出せるタイプの人間とイコールではない。
無理はする。
それでも、自分が生き残れる範囲での無茶。
それが本当の意味で、冒険者として最も適している思考、戦い方である。
だが……アストはそんな最も適した戦い方を捨てた。
何故か?
理由は一つしかない。
このままではジリ貧だと……誰かが死ぬと、解ってしまったからである。
「ッ!?」
(何を、躊躇う必要がある!!!!!)
アリステアには……使いたくない、スキルがあった。
女性しかいない騎士団の団長であり、清廉潔白なイメージを求められる。
それ自体は悪いことではなく、寧ろ求められて当然という思いすらあった。
だが……そのスキルは、アリステアが団長という立場に就く前に、ある戦いで身に付けあ……会得してしまったスキルがあった。
騎士として、団長として活動する以上……どうしてもイメージという足枷が、そのスキルを使うことを拒んだ。
「破ァァアアアアア゛ア゛ア゛ッ!!!!!!!」
この期に及んで、自分は何を気にしているのかと……そんな事に囚われ、大切な仲間たちを殺してしまうのかと。
激情が、心を支配した。
次の瞬間……アリステアの体から、闇が零れた。
「ッ!!!!」
「フッ!!! セァアアッ!!!」
「ッ!! ガアアアアアッ!!!!」
戦闘が始まってから数分間、アリステアと戦凶鬼は激しい剣戟を繰り返し続けていた。
アリステアの得物はロングソード。
戦凶鬼の得物は大剣……スピードではアリステアが上回っているが、パワーでは戦凶鬼が上回っていた。
(モンスターと、戦ってる気が、しないなッ!!!!)
パワー自慢の相手であれば、これまで何体も沈めてきた。
スピードとテクニック。
それがあれば、パワー自慢のモンスターを崩すことは難しくない。
だが、戦凶鬼はバカみたいに大剣を力任せに振るう狂暴個体ではなく……攻めだけに意識過ぎない技術を有していた。
「疾ッ!!!!!」
連続で放たれた旋風を飛ばす刺突。
ただの牽制……だけではなく、普通にダメージを与える攻撃としても通用する。
「ガアアアアッ!!!!」
(っ、致命傷に関わる刺突だけを落したか……恐ろしい個体だ)
スピードとテクニックをパワーで潰されれば、団長であるアリステアであっても致命傷を食らいかねない。
戦凶鬼の発するプレッシャーを考えれば、あまり時間を掛けられない……それが常識ではあるが、逆にアリステアは五分という時間を設定し、戦凶鬼を削ろうと考えた。
幸いにも、戦凶鬼に再生という鬼に金棒過ぎるスキルは有していないと確認出来た。
加えて……戦凶鬼は戦凶鬼で、自身のことを油断ならない存在だと認識していることを感じ取った。
(焦れば、それはそれでありだ)
五分というのは、アストたちが土竜を相手に耐えられると予想した時間。
それまでの間……アリステアは人間という考えて考えて考え続け、生き抜いてきた生物というアドバンテージを活かし、的確な攻めを続けた。
当然、リスクを背負わずダメージを与えられる相手ではない。
戦凶鬼の攻撃を食らう可能性が高まるの踏まえ、それでも受けるダメージは最小限に抑え、剣技以外の攻撃や殺意の強弱……目線によるフェイント。
相手が普通のモンスターよりも知能が高く、暴れ回ることしか考えていないモンスターとは違うからこそ、それらの行動によく引っ掛かった。
(このままいけば、予定通り……っ!!!!)
それでも……今回の戦闘、アリステアが何かをやらかしてしまった事があるとすれば……それは目の前の敵、戦凶鬼のみに意識が集中してしまっていたこと。
Aランクモンスターの相手を……しかも一人で担っていると考えれば、決してやらかしやミスとは言えない。
仲間を、同僚たちを信じていたからこその選択とも言えた。
だが、大量の木々が切断された音が耳に入り……ほんの一瞬だけ、今回の討伐戦に参加してくれた冒険者、アストのことを視界に入れた。
(アス、トっ!!!!!?????)
舌を噛んだ、内臓が少し損傷した……そのレベルで済まない量を吐血したアスト。
それを見てしまった瞬間、本当に僅かな時間ではあるものの、戦凶鬼の斬撃を……アリステアはガードしなければならない状況に追い込まれた。
大剣技……烈風。
あらゆる武器の中で、ハンマーや斧などの武器と同じパワーを長所とした武器。
そんな武器のスキル技の中でも珍しく、烈風は使用者のスピードを上げる技。
「ぐっ!!!!!!!!!!」
動きが速くなろうとも、軌道が解っていれば、アリステアレベルの猛者には対処されてしまう。
だが、今回はほんの僅かな隙を突かれ、ガードという選択肢を仕入れられた。
尚且つ……体勢が不十分だった。
(私は……何を、やっているんだッ!!!!!!!)
アストが、冒険者であることは知っている。
冒険者として……死を恐れない覚悟を持っている事も。
だが、それは決していつ死んでも構わないと、簡単に命を投げ出せるタイプの人間とイコールではない。
無理はする。
それでも、自分が生き残れる範囲での無茶。
それが本当の意味で、冒険者として最も適している思考、戦い方である。
だが……アストはそんな最も適した戦い方を捨てた。
何故か?
理由は一つしかない。
このままではジリ貧だと……誰かが死ぬと、解ってしまったからである。
「ッ!?」
(何を、躊躇う必要がある!!!!!)
アリステアには……使いたくない、スキルがあった。
女性しかいない騎士団の団長であり、清廉潔白なイメージを求められる。
それ自体は悪いことではなく、寧ろ求められて当然という思いすらあった。
だが……そのスキルは、アリステアが団長という立場に就く前に、ある戦いで身に付けあ……会得してしまったスキルがあった。
騎士として、団長として活動する以上……どうしてもイメージという足枷が、そのスキルを使うことを拒んだ。
「破ァァアアアアア゛ア゛ア゛ッ!!!!!!!」
この期に及んで、自分は何を気にしているのかと……そんな事に囚われ、大切な仲間たちを殺してしまうのかと。
激情が、心を支配した。
次の瞬間……アリステアの体から、闇が零れた。
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