異世界バーテンダー。冒険者が副業で、バーテンダーが本業ですので、お間違いなく。

Gai

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第149話 まず、巡り合えない

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「ようやく、見えてきたな」

猛ダッシュで移動して到着、猛ダッシュで移動して到着を数回繰り返した後、アストはようやく目的の街……ラプターに到着。

ダンジョン名、暗恐の烈火を有するラプターはダンジョン都市という名に相応しい大きさであり、一度訪れて滞在したことがあるアストであっても、全てを知っている訳ではない。

「おっ、アストじゃないか」

「お久しぶりです」

顔見知りの門兵に声を掛けられ、アストもその門兵のことを覚えていた。

「もしかして、ラプターを拠点にする気になってくれたのか?」

「いえ、そういう訳ではありません。ただ、久しぶりにダンジョンを探索しようかなと思って」

「そうかい。まっ、それなら仕方ねぇか」

通行審査はあっさり終わり、アストは街の中に入ると……とりあえず以前、ラプターに滞在している際に泊まっていた宿へと向かった。

(……以前と比べて、少し活気が増したか?)

ラプターが有するダンジョン、暗恐の烈火は合計で四十階層もある大型に分類される
ダンジョン。

ダンジョンの階層数が多ければ多いほど出現するモンスターの数も多く、高価な素材が手に入る。
勿論、階層が下に行けば行くほど強力な力を持つモンスターが増え、トラップの危険性も上がる。

ただ、冒険者たちには多くの者たちが挑み、集めてきた情報がある。
それでもどうしようもない困難というのは訪れるが、それでも情報の利を活かして冒険者たちは上手く探索する。

持ち帰られた素材や、宝箱に入っていたマジックアイテムなどは買い取られ、巡り巡って経済を発展させていく。

「ここは、そんなに変わってなさそうだな」

以前泊まっていた宿に到着し、アストは従業員に約一か月分の宿泊費と食費を渡した。
アストと顔見知りではない従業員はその日数や手に取った額に驚くも、上客を疑うことはなく、部屋に案内した。

「ふぅ~~~~~……相変わらず、居心地が良い部屋だな」

ベッドに寝転がり、数分ほど寝転がった後……まだ夕食を食べるにしても、寝るにしても早い時間ということもあり、アストはなんとなく冒険者ギルドへと向かった。

「こっちも、そんなに変わってないな」

懐かしさを感じながら、ゆっくりと中へと入り、再び懐かしさを感じる。

そして、いつも通り一人でギルドに入って来たアストに対し、同業者たちや従業員たちが視線を向けてくるも、アストは特に気にせずクエストボードの前へと向かう。

(張り出されてる依頼は……そんなに変わってないみたいだな…………ん? テンペストウルフの討伐依頼? 初めて見るな……暗恐の烈火じゃあ、まず出現しないモンスターだ)

テンペストウルフは先日、アストがウェディーたち女性騎士団と共に戦ったリブルアーランドドラゴンと同じく、Aランクのモンスター。

稀に階層に似合わない強さを持つモンスターが出現することはある。
しかし、テンペストウルフは持ち合わせている属性的に、暗恐の烈火に出現するモンスターではない。

(……可能性があるとすれば、誰かが転移トラップに引っ掛かって、その先でテンペストウルフと遭遇した、か…………パーティー事転移したなら、討伐出来る可能性は……あるか)

前回ラプターに訪れた際に出会った同業者たちを思い出すアスト。
その中には当然、基礎的な戦闘力がアストよりも高い冒険者もおり、彼等ならばとテンペストウルフに敵うと思えなくもない。

(一度討伐出来たんだから、もう一度と考えたのかもしれないが、転移トラップの先に生息している個体なら、まず誰も巡り合うとはしないだろうな)

ダンジョンに設置されている転移トラップは複数の種類が存在する。
まずは純粋に同じ階層の、全くことなる場所に転移させる。
次に、現在探索中の階層よりも上の階層……もしくは下の階層。過去には、地上に戻されるタイプの転移トラップも確認されている。

嫌がらせではあるが、上の階層や地上に戻される分にはまだ恐ろしさはないが、下の階層に転移させられてしまうと……現段階で探索していた階層が探索適性階層だった場合、モンスターの強さの差によって為す術なく殺されてしまう可能性が十分ある。

帰還石という、地上に戻ることが出来るマジックアイテムも存在するが、非常に高価であるため中々手に入れることが出来ない。

そして……ある部屋、空間に転移させるタイプである場合……ダンジョンが、明確な試練を与えてくる。
場合によっては、地獄と呼んでも構わない。

その分、その試練を……地獄を乗り越えた場合、それ相応の報酬がある。
仮にアストの予想通り、テンペストウルフを特別な部屋に転移された場所で遭遇し、見事討伐したのであれば、Aランクモンスターの素材以外にも極上の報酬が用意される。

「ったく……冒険者は駒じゃないっての」

つい、そんな言葉を零してしまったアスト。

そんなアストに、一人の受付嬢が声を掛けてきた。
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