執事なんかやってられるか!!! 生きたいように生きる転生者のスローライフ?

Gai

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第86話 期限付きで

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「バトムス……今すぐにという訳じゃなんだけど、頼みがある」

「アルが俺に? 珍しいな」

遊びに来ることはあっても、その間に何か頼み事をされるという事はなかった。

豚骨ラーメンに関しても、最初は寧ろバトムスの方がアルフォンスに食べさせたいと思っていただけである。

「うん……もしかしたら、バトムスに迷惑を掛けるかもしれない」

「ほぅ」

一度でいいから、他の王族……もしくは貴族の令息や令嬢たちと茶会に参加してほしいと……などであれば、確かにバトムスにとっては非常に迷惑と言える。

だが、それなりにアルフォンスと交流するようになったバトムスは、彼が本当にそのまま迷惑な頼みをするようには思えなかった。

「そのだね、僕たちがもっと大きくなって、強くなったら……期限付きで、僕と冒険してほしいと思って」

「冒険、か」

アルフォンスは、将来的に進む道は既に騎士の道と決めている。
王子と言えど、まだ八歳の子供なのだから、進む道を変えてもおかしくないのだが……それでも、彼の心は既に進むべき道を決めていた。

ただ、それと同時に冒険者という職業にも、多少なりとも興味は持っていた。

実際に貴族の令息ではあるが、現在冒険者として活動しているランクの高い者から経験談を聞くこともあり……冒険という旅に、強い興味を持つようになった。

しかし、王族という立場である自分が、そういった道に進んではならないと考えているアルフォンス。
実際のところ、父親である国王もアルフォンスが冒険者の道に進みたいと言えば、二つ返事で構わないと返すことはない

王族の関係者たちも、様々な理由で思い留まるんだと伝える。

実際に、本当にただアルフォンスが冒険するだけならばまだしも、王族に対してバカな態度や行動を取る者が……冒険者という皮を被って活動していようとも、王族の威厳という点を考えれば、笑って放置することは出来ない。

「……期限付きってことは、冒険者として行動するって訳ではない感じか?」

「場合によっては、そうした方が良いのかもしれないと考えている。ただ、数年以上も活動するつもりはない…………長くて、一年といったところかな」

(一年、一年……一年かぁ…………確かに冒険をするってなると、それぐらい活動しないと冒険したって気がしないのかもしれないけど……俺にとっての一年と、アルフォンスにとっての一年は違うだろうからな……)

実際に言葉にすれば、友人が決して良い顔をしないことは解る。

ただ、自分の一年という時間の価値と、アルフォンスにとっての一年の価値は違うとバトムスは断言出来る。

「………………ぶっちゃけ、俺は構わないと思ってる」

「ほ、本当かい!!」

「お、おぅ。冒険者として活動し続けることには興味が無いけど、偶に旅をするぐらいなら楽しいだろうからな。ただ、これから俺たちが歳を重ねて強くなったとしても、多分旅をする時期的には二十になってないだろ」

「そのつもりだね」

「そうなると…………やっぱり、俺たちだけじゃあ、アルのお父さん……国王陛下や后様も安心して送り出してくれないんじゃないか」

「アルフォンス様、私もバトムス君と同じく、まずはお二人を説得するところから始めなければならないかと」

期間限定で、世界を旅したい。
その頼みに関して……ゴルドは国王陛下と后が受け入れてくれるか否かに関して言うと……受け入れはしてくれるのではないかと思っていた。

アルフォンスは第五王子であり、上に四人の王子……更に下にも王子がおり、当然のように王女もいる。

王族という立場でありながら、アルフォンスは非常に常識人ではあるが……全員が全員、アルフォンスの様な常識人ではない。
偶に我儘を言うことはあるが、それは全て本当の意味で己が前に進む為。

本当の意味で子供らしい我儘は……友人に会いに行くための時しか使っていない。
そのため、アルフォンスが滅多に言わない本気の我儘であれば、お二人も受け入れるのではないのかというのが、ゴルドの考えだった。

ただ、その壁を越えることが出来たとしても、まだ越えなければならない壁が存在している。

「アルと俺……俺が行くとなると、自動的にパーズも付いてくる」

後五年か六年、もしくはそれ以上の時間が経てば、パーズは間違いなくBランクモンスターに相応しい実力を得ることになる。
オッドアイという特殊な身体的特徴を有していることになると、更に上の領域に達する可能性もある。

ただ、人数的に見ると、やはり少なさが否めない。

「けど……部隊、パーティー構成? ってやつを考えると、パーズがいざとなればタンクになれるから………………魔法が得意な奴と、弓とか短剣とかが使えて、斥候の役割を果たせる奴がいれば、良い感じになる……かな」

あくまで冒険者として活動するならばの話ではあるが、バトムスが語る通りウィザードとレンジャーが加われば、パーティー構成としては問題無いと言えた。
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