執事なんかやってられるか!!! 生きたいように生きる転生者のスローライフ?

Gai

文字の大きさ
103 / 166

第103話 どうすれば……

しおりを挟む
SIDE ファスラル、ネルド、ノスト、マルダー

「なんなんだよ、あいつは!!!!!」

夕食を終え、それぞれが泊っている宿に戻る中、ファスラルは荒れていた。

「ファスラル、街中なんじゃから少しは落ち着きなさい」

「うっ……け、けどよぉ、爺ちゃん」

(まぁ、そうなってしまうのも解らんくはないか)

先程高級料理の個室で行った話を思い出せば、ファスラルが場所を選ばず怒りの感情を零してしまうのも、無理はないことだった。

今回の孫自慢大会、結果はバトムスの圧勝だった。

負けたファスラルたちとしては、なんとかリベンジマッチしたいところ。
というより、当然……もう一回は戦るチャンスがあると思っていた。

なにも、ファスラルたちは明日、また自分たちと戦え!!! と言うつもりはなかった。
もっと先で、今よりも強くなって、今度こそバトムスに勝つぞ!!! と気合を入れて戦いに挑みたかった。

「あいつ、あんなあっさり……おかしくないか!?」

「まぁ~~~、そうじゃのぅ…………あまりにも熱くない奴ではあるな」

「だろ!!!!」

ファルトンから見たバトムスは、あまりにも達観し過ぎていた。

ファスラルたちとの戦いに関しても先を先を見て考えて戦っており、あっという間に終わらせてしまった。

(出会って数日とはいえ、友人とはいかずとも知人にはなったと思うんじゃが……こんな事言うのもあれじゃが、ちゃんと同世代の友達はおるんかの?)

あまりにも達観し過ぎているため、友人の孫であるにもかかわらず、つい深いところまで心配してしまうファルトンだった。





「…………」

「ふふ。珍しく膨れているね、ネルド」

「っ、ごめんなさい」

宿への帰り道、ネルドは珍しくふくれっ面をしながら不満な気持ちを無意識に零していた。

そこを祖父に指摘されて謝るも、シャルプは全く怒っていなかった。

「大丈夫だよ。それにしても、なんともまぁ……はは、面白い子だったね」

「……彼とは、本当にもう会えないのでしょうか」

面白い子。
ネルドはその言葉を聞いて、バトムスに対して祖父を取られたと……そういった嫉妬を抱くことはなかった。

何故なら、ネルドも同じような感情を抱いたから。

(おや? これは……)

バトムスは、ネルドにとって全く出会ったことがないタイプの人間。
自分に、自分たちに対してあれだけ圧勝しておきながら、その事に対して一切自慢気にすることがなく……自分たちを下に見ることがない。

加えて、それだけの実力を持っていながら執事候補としての道を進むつもりがなく、ましてや騎士の道に進むつもりもない。

本当に出会ったことがないタイプの人間であり、単純に面白いと感じた人間……だからこそ、ファスラルと同じくリベンジマッチをしたいという気持ちは勿論ある。
ただ、それを抜きにしても、もう一度会ってみたいという思いもあった。

(とはいえ、本人にその気がないと難しいよね~~)

難しい事は解っている。
ただ、可愛い孫のためだと思い、シャルプはなんとか頭を捻ってアイデアを出そうとする。





「世の中、あのような者がいるのですね」

筋肉祖父と筋肉孫の帰り道、先に口を開いたのは筋肉孫……マルダーであった。

「そうだな。俺も、少し驚いている」

「…………」

「ふふ。もう一度、試合をしたいという顔だな」

「……はい。確かに、俺は自分は負けました。それは間違いありません。ですが……このままというのは……っ!!」

マルダーは誰彼構わず、負けた相手に対して「負けたままで終われるか!!! もう一度俺と戦え!!!!!」と、一方的な闘志を燃やす子ではない。

彼の根っこも根っこにある焚き木に火が付いた相手にこそ、もう一度戦いたいと、リベンジマッチをしたいという思いが燃え上がる。

ただ、その相手であるバトムスから、マルダーではなく全員に対して……ハッキリと、もう一度会うつもりはないと告げられてしまった。

「しかし…………これは、自分の我儘なのは、解っています」

「あぁ……そうだな」

孫の言葉を肯定しつつも、ガリダスとしては……後一度ぐらいは、孫にバトムスと戦わせ上げたいと思っていた。

(あの達観した少年の心を動かす何かを用意する…………それしか、方法はないか)

可愛い孫の為ならば、頑張れる。
それが爺ちゃんであった。




「面白い子だったね」

「はい、そうですね。面白い人でした」

魔術師である祖父と孫の帰り道は、それほど不満が零れていなかった。

ゲルダンは大人として、魔術師としてバトムスのことを面白い存在だと思っており、ノストは……決して強がって面白いと口にしていた訳ではなかった。

完膚なきどころではなく、ファスラルと同じぐらい速さで試合を決められ、瞬殺されてしまった。
バトムスにもう一度で会う事はない、といった事を言われた際、ファスラルたちと同じくリベンジマッチが出来ないという怒りはあった。

ただ、四人の中では比較的思考が大人びているノストは、バトムスが普通ではない存在だと……多少なりとも感じ取っていた。
そんな同世代の少年と……友達になりたいのかは、解らない。

それでも、もう一度話してみたい。
そう思る存在であった。

「……お爺様。どうすれば、彼ともう一度会えるでしょうか」

「そうだね~~~。何か、楽しいお誘いをすれば、乗ってくれるかもしれないね」

「楽しいお誘い、ですか」

バトムスにとって楽しいお誘いとは何なのか。
真剣に考える孫を見て、祖父であるゲルダンは嬉しそうに笑みを零すのだった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

ゲームちっくな異世界でゆるふわ箱庭スローライフを満喫します 〜私の作るアイテムはぜーんぶ特別らしいけどなんで?〜

ことりとりとん
ファンタジー
ゲームっぽいシステム満載の異世界に突然呼ばれたので、のんびり生産ライフを送るつもりが…… この世界の文明レベル、低すぎじゃない!? 私はそんなに凄い人じゃないんですけど! スキルに頼りすぎて上手くいってない世界で、いつの間にか英雄扱いされてますが、気にせず自分のペースで生きようと思います!

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

処理中です...