執事なんかやってられるか!!! 生きたいように生きる転生者のスローライフ?

Gai

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第110話 欲しいんだ

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「それでね、バトムス。君に頼みたい事があるんだ」

「俺に頼みたいこと? 豚骨ラーメンか?」

「確かに豚骨ラーメンは食べたいけど、それではないんだ」

言葉通り、確かに豚骨ラーメンは食べたい。
出来れば……夕食後の訓練を終え、大浴場で汗を流した後に食べたい。

アルフォンスの経験上、そのタイミングで食べる豚骨ラーメンが一番美味しいと感じる。
しかし、本日改めてバトムスに頼みたい事は、それではなかった。

「バトムス、君に僕の短剣を造ってほしいんだ」

「………………えっ」

本日、二度目の硬直を体験したバトムス。
アルフォンスが伝えた内容は至ってシンプルではあるが、バトムスからすればちょっと何を言ってるのか解らなかった。

「ごめん、アル。もう一回言ってもらっても良いか」

「うん、良いよ。バトムスに僕の短剣を造ってほしいんだ」

(……………お、俺の聞き間違いじゃ、なかった)

基本的に、王族からの製作依頼というのは、非常に光栄である。
店であれば、看板にそういったセールスポイントを記すことも許される。

だが、バトムスからすれば「おいおいおいおい、おいおいおい。本気でちょっと待ってくれ」と、色々とツッコミたい内容である。

「なぁ、アル。俺はまだ十代前半の若造だ」

「そうだね。僕と同じ若造だね」

「……確かに、火の扱いとか、刃物を研いだりする経験は……見習いの鍛冶師と同レベルぐらいあるかもしれない。でもな、俺はペーペーもペーペーの超新米野郎なんだ」

言葉から解る通り、バトムスはアルフォンスからの頼みを断ろうとしている。

ゴルドやジェナからすれば、何故王族からの頼みを断ろうとしているのかと、アルフォンスの友人と言えど、詰め寄る気持ちが……本来ならば、芽生える。

しかし、本人が語る通り、バトムスは十代になりたての若造も若造。
ゴルドとジェナは過去にバトムスが造った短剣を視たことがあり……感想は、若過ぎる新米鍛冶師が造った物にしては、上出来なはず……といったところ。

それを造った本人も自覚しているからこそ……アルフォンスにはもっと合う短剣があるからこそ、自分に頼むのではなく他の者に頼んでほしいと思っている。

それはそれで正しい考えであるため、寧ろ二人とも申し訳なさそうな表情をしていた。

「そうかもしれない。でもね、バトムス。僕はバトムスが造った短剣が欲しいんだ」

「うっっっ!!!!」

あなたの造った物が欲しい。
それは製作者としては、非常に……非常に非常に光栄な言葉である。

ステータスを見てそう言っているのではなく、本人を見て言っているのであれば、尚更嬉し過ぎるというもの。
加えて、アルフォンスは本当に真っすぐバトムスにそう伝えたことで、何故かバトムスにはアルフォンスの後ろから光が見えた。

(う、嬉しいは嬉しいんだけど……いや、でも)

鍛冶の研鑽は当然続けている。
それでも、自分が一人前になったとは欠片も思っておらず、半人前に至ったとすら思っていない。

「なぁ、バトムス。その……仮に俺が短剣を造ったとして、それをどうするんだ」

「勿論、訓練や模擬戦、実戦で使うよ」

「…………………」

バトムスはなんとか……本当になんとかギリギリで、大きな溜息をつくのを堪えた。

「安心してほしい、バトムス。今回は頼みであると同時に、依頼であることも自覚している。だから、ちゃんと料金も用意しているよ」

造ってもらう。
であれば、金を支払わなければならない。
アルフォンスは友達だからタダでも良いだろ、なんて欠片も思わない。

そんなやり取りをする会い柄は、友達ではないとすら思っている。

そんなアルフォンスが用意した金額は、金貨二十枚。

「~~~~~~~っっっ!!! ……ふぅーーーーーー。アルフォンス、頼むにしても、額が多いよ」

金貨二十枚。
前世の知識を活かして儲けているバトムスからすれば、見慣れた金額ではあるが、実際に商品として金貨二十枚の物が、どれほどの品質を有しているか理解しているからこそ、高過ぎる依頼額だと伝えた。

「……………バトムス。これは、色んな意味を込めて用意した金額なんだ」

「っ!!!」

「だから、この額から減らすことはないよ」

その表情から、バトムスは友人が更に何を言いたいのか、理解してしまう。

この額から増やすことはあっても、減らすことはないよ……と。

「…………………………」

「それとね、ちゃんと素材も用意してるんだ」

「へっ」

どうすればアルフォンスが諦めてくれるか。
それを必死で考えていると、更に逃げ道を防ぐ言葉が告げられた。

「ゴルド」

アルフォンスから促されたゴルドは、アイテムバッグの中からアルフォンスが今回の為に用意した素材をテーブルの上に取り出す。

「っっっっ…………ちゃ、ちゃんと、考えてるん、だな」

「うん」

バトムスからすれば、まずミスリル鉱石があることにツッコみたいが、その他の風属性モンスターの魔石や……アルフォンスのこれからの成長を考えれば必須な、サイズ調整の効果を付与することが可能な鉱石が用意されていた。

「これらを使って、バトムスに僕の短剣を造ってほしい」

「……………………………解った。解ったよ。俺の降参だ」

両手を上げ、降参のポーズを取ったバトムス。

仕方ないという思いで心の中、頭の中で一杯であるバトムス……ただ、幾つか条件を出す必要があった。
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