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第112話 申し分ない
「ふぅーーーーー…………っし、やるか」
轟々と燃える炉の炎を前に、呼吸を……精神を整え、短剣造りを始めるアルフォンス。
(ただ、漫然と造るんじゃ駄目だ。あいつの為に、アルの為に……アルに合う、アルの為の短剣を造るんだ)
これからバトムスが使うのは、普段から使用している鉄鉱石。
言わば、感覚を研ぎ澄ませるための踏み台。
それでも……目的もなくただ打てば、普段と変わらない……もしくはそれ以下の短剣が出来上がるだけ。
(鋭さがメインではあるが、堅さも忘れない…………付け加えるならば、決してメインではない、か)
アルフォンスのメイン武器は細剣。
サブ武器として短剣を使うことは出来るが、バトムスから視れば……得意なのはロングソード。
短剣の腕は、剣ではない槍の腕とどっこいどっこいといった程度。
ただ……二刀流の中でも、細剣と短剣の二刀流は珍しくない。
(あいつの強さを支えられる……そんな短剣を造る)
既に、覚悟は決めている。
炉の炎だけではなく、心の炎も盛り上がっている。
「さぁ……いくぞ」
十分熱した鉄に、本気で……信念を込め、鎚を振るい始めた。
「で、では始めましょうか」
「あぁ」
バトムスが短剣製作に勤しむ中、アルフォンスは友人に言われた通り……というより、元々予定の一つとして組み込んでいたルチアとの訓練を始めていた。
因みに、隣にはどうせならばとシエルも参加している。
ルチアとしては、シエルが立場を越えてアルフォンスを想っている!!!! なんてことが欠片もない事を知っているので、快く受け入れた。
(って、そういえばなんであのバカはいないのかしら)
あのバカとは、勿論バトムスのことである。
アルフォンスがアブルシオ辺境伯家に来れば、気に食わない事ではあるが、基本的にバトムスが彼の隣にいる。
なんでお前が!!!!! ……とは、アルフォンスがバトムスの事を友人と認識しているため、口が裂けても言えない。
(……まっ、いいでしょう)
ここで尋ねなかったことが正解か、それとも不正解か……今のルチアに、解る訳がなかった。
「それと、一つ提案があるんだけど良いかな」
「はい、なんでしょうか」
「ジョゼフ、という僕たちより一つ歳上の騎士見習いはいないかい」
「ジョゼフですか? ジョゼフでしたら、あちらの方で訓練していますが」
アルフォンスの……王子の口から、アブルシオ辺境伯家に属する者とはいえ、騎士見習いの名前が出たことに、ほんの少し驚かされたルチア。
しかし、アルフォンスの口からジョゼフの名前が出た理由は、いたって単純なものだった。
アルフォンスとバトムスは手紙で互いの近況を伝え合っており、その手紙の中で友人であるジョゼフの事を伝えっていた。
「彼とも、共に訓練をしたい」
「っ!!!??? ……わ、分かりました。少々お待ちを」
何故彼も? とは言わなかった。
ジョゼフはバトムスと共に訓練を行うことが多く、同世代の中では頭一つ……最近では頭二つ抜けているすら思える模擬戦の勝率を誇る。
当然……まだ十一ではあるが、既に低ランクモンスターとの戦闘経験もある。
実力、技術を考慮してもアルフォンスと共に訓練を行う相手としては申し分ないと言えた。
「えっ!!!!???? ど、どうしてですか!!!!!?????」
実力や技術は申し分なくとも、そもそもジョゼフとしては「何故僕が第五王子のアルフォンス様と訓練を!!!!!?????」といった気持ちの方が大きい。
「どうもこうも、アルフォンス様からお誘いがあったからよ」
「だ、だから、その…………な、何故ですか?」
「…………」
その問いに関しては、ルチアもジョゼフの気持ちが良く解る。
とはいえ、アルフォンスからの提案である。
本人にその自覚がなくとも……実質、命令に等しい。
なので、ジョゼフには拒否権がないに等しかった。
「せっかく第五王子と一緒に訓練できる良い機会だと思いなさい」
「で、ですが」
「………………こ、今回の様な件を見逃せば、バトムスになんて言われるか考えなさい」
苦そうに……本当に苦そうにしながらも、その思いを飲み込みながらルチアはジョゼフの心に火を付ける内容を告げた。
「っ!!!! ………………わ、分かりました。是非、共に訓練させていただきます!!!!」
「それじゃあ、行くわよ」
「はい!!!!!!」
悔しい。
自分で火を付けさせる内容を口にしながら、なんでよ!!!!!!! と怒鳴りたい……説教したい気分である。
何故自分の言葉には素直に応じず、バトムスを理由に引き出そうとすれば応えるのか。
(……~~~~~~っっっ…………信頼関係、なのでしょうね)
感情に出さないだけでまだまだバトムス関連に関しては怒りっぽいところはあるが、それでもルチアは戦闘力だけが成長している訳ではない。
ジョゼフにとって、ルチアは将来的に騎士になれば、守るべき人物の一人となる存在。
しかし、ジョゼフにとってバトムスは……純粋な友人。
どちらと明確な信頼関係があるかといえば、間違いなくバトムスである。
(…………友人にはならずとも、いずれと感じる者たちには、少しぐらい声を掛けてた方が良いのかしら)
ほんの少し将来の事を案じながらも、ルチアはアルフォンスたちと共に訓練を始めた。
轟々と燃える炉の炎を前に、呼吸を……精神を整え、短剣造りを始めるアルフォンス。
(ただ、漫然と造るんじゃ駄目だ。あいつの為に、アルの為に……アルに合う、アルの為の短剣を造るんだ)
これからバトムスが使うのは、普段から使用している鉄鉱石。
言わば、感覚を研ぎ澄ませるための踏み台。
それでも……目的もなくただ打てば、普段と変わらない……もしくはそれ以下の短剣が出来上がるだけ。
(鋭さがメインではあるが、堅さも忘れない…………付け加えるならば、決してメインではない、か)
アルフォンスのメイン武器は細剣。
サブ武器として短剣を使うことは出来るが、バトムスから視れば……得意なのはロングソード。
短剣の腕は、剣ではない槍の腕とどっこいどっこいといった程度。
ただ……二刀流の中でも、細剣と短剣の二刀流は珍しくない。
(あいつの強さを支えられる……そんな短剣を造る)
既に、覚悟は決めている。
炉の炎だけではなく、心の炎も盛り上がっている。
「さぁ……いくぞ」
十分熱した鉄に、本気で……信念を込め、鎚を振るい始めた。
「で、では始めましょうか」
「あぁ」
バトムスが短剣製作に勤しむ中、アルフォンスは友人に言われた通り……というより、元々予定の一つとして組み込んでいたルチアとの訓練を始めていた。
因みに、隣にはどうせならばとシエルも参加している。
ルチアとしては、シエルが立場を越えてアルフォンスを想っている!!!! なんてことが欠片もない事を知っているので、快く受け入れた。
(って、そういえばなんであのバカはいないのかしら)
あのバカとは、勿論バトムスのことである。
アルフォンスがアブルシオ辺境伯家に来れば、気に食わない事ではあるが、基本的にバトムスが彼の隣にいる。
なんでお前が!!!!! ……とは、アルフォンスがバトムスの事を友人と認識しているため、口が裂けても言えない。
(……まっ、いいでしょう)
ここで尋ねなかったことが正解か、それとも不正解か……今のルチアに、解る訳がなかった。
「それと、一つ提案があるんだけど良いかな」
「はい、なんでしょうか」
「ジョゼフ、という僕たちより一つ歳上の騎士見習いはいないかい」
「ジョゼフですか? ジョゼフでしたら、あちらの方で訓練していますが」
アルフォンスの……王子の口から、アブルシオ辺境伯家に属する者とはいえ、騎士見習いの名前が出たことに、ほんの少し驚かされたルチア。
しかし、アルフォンスの口からジョゼフの名前が出た理由は、いたって単純なものだった。
アルフォンスとバトムスは手紙で互いの近況を伝え合っており、その手紙の中で友人であるジョゼフの事を伝えっていた。
「彼とも、共に訓練をしたい」
「っ!!!??? ……わ、分かりました。少々お待ちを」
何故彼も? とは言わなかった。
ジョゼフはバトムスと共に訓練を行うことが多く、同世代の中では頭一つ……最近では頭二つ抜けているすら思える模擬戦の勝率を誇る。
当然……まだ十一ではあるが、既に低ランクモンスターとの戦闘経験もある。
実力、技術を考慮してもアルフォンスと共に訓練を行う相手としては申し分ないと言えた。
「えっ!!!!???? ど、どうしてですか!!!!!?????」
実力や技術は申し分なくとも、そもそもジョゼフとしては「何故僕が第五王子のアルフォンス様と訓練を!!!!!?????」といった気持ちの方が大きい。
「どうもこうも、アルフォンス様からお誘いがあったからよ」
「だ、だから、その…………な、何故ですか?」
「…………」
その問いに関しては、ルチアもジョゼフの気持ちが良く解る。
とはいえ、アルフォンスからの提案である。
本人にその自覚がなくとも……実質、命令に等しい。
なので、ジョゼフには拒否権がないに等しかった。
「せっかく第五王子と一緒に訓練できる良い機会だと思いなさい」
「で、ですが」
「………………こ、今回の様な件を見逃せば、バトムスになんて言われるか考えなさい」
苦そうに……本当に苦そうにしながらも、その思いを飲み込みながらルチアはジョゼフの心に火を付ける内容を告げた。
「っ!!!! ………………わ、分かりました。是非、共に訓練させていただきます!!!!」
「それじゃあ、行くわよ」
「はい!!!!!!」
悔しい。
自分で火を付けさせる内容を口にしながら、なんでよ!!!!!!! と怒鳴りたい……説教したい気分である。
何故自分の言葉には素直に応じず、バトムスを理由に引き出そうとすれば応えるのか。
(……~~~~~~っっっ…………信頼関係、なのでしょうね)
感情に出さないだけでまだまだバトムス関連に関しては怒りっぽいところはあるが、それでもルチアは戦闘力だけが成長している訳ではない。
ジョゼフにとって、ルチアは将来的に騎士になれば、守るべき人物の一人となる存在。
しかし、ジョゼフにとってバトムスは……純粋な友人。
どちらと明確な信頼関係があるかといえば、間違いなくバトムスである。
(…………友人にはならずとも、いずれと感じる者たちには、少しぐらい声を掛けてた方が良いのかしら)
ほんの少し将来の事を案じながらも、ルチアはアルフォンスたちと共に訓練を始めた。
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