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一章
12救出劇
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ヒヨクはクヌギの木を熱心に見上げている。追いついて彼の隣に並んで同じように木を見上げると、枝が絡み合ったその先に小さい影が蠢いているのを見つける。
「何だ猫を見てたのか」
「猫……」
ヒヨクはぼうっとしたまま呟いて、どうにか猫を詳しく見ようと目を凝らす。その反応は何だか奇妙だ。
「まさか王子様は猫を初めてみるのか?」
「む、馬鹿にしたか? それと王子はよせ。俺の事はヒヨクと呼ぶが良い。俺が王族だと勘付かれては困るからな」
だとしたら、まずその独特な話し方をやめるところから始める必要がありそうだが、お忍び中でも口調が変わらないという事は変えられないのか必要性に気付いていないのだろう。
「なぁ、行こうぜ。日が暮れる前に休憩小屋まで辿り着かないと後が大変だぞ」
「だが、あの猫は自分で降りられなくなっているのではないか?」
「まさか。猫に限ってそんな訳ないだろ」
とは言うもののどうにも気になってヒヨクと二人で横並びになってしばらく猫を見ていた。思ったより高いところに居るので分かりにくいが恐らくまだ子猫だ。細い枝の上で四肢を突っ張り、体を前後に揺らしては諦めるのを繰り返している。
「……やっぱ降りられないのかも」
「言った通りではないか。おいトキ、これを持っていろ」
言うなりヒヨクは背中に背負っていた籐で編んだ籠をトキに持たせる。見た目以上にずっしりと重たい籠に軽くよろけながら受け取って、一体何が入っているんだと思う暇もなくヒヨクの行動にトキは目を剥いた。
「登るつもりか!?」
「他に方法が無い」
「待てって、お前うちの母さんみたいな奴だな!」
「お主の母君の事は知らぬが、今にも落ちてきそうな幼気な猫を前にしてお主の母君が木登りをするのだとしたら、俺は母君を称賛する」
非難したつもりが屁理屈で返されて、チッと短く舌を鳴らしてヒヨクの襟を掴んで木から遠ざける。
「何をする?」
「俺が登るよ。田舎育ちなんでね、木登りなら子供ん時に散々やった」
籠と自分の荷をヒヨクに預けて袖を捲る。木登りなんていつぶりだろうか。妹たちがもう少し小さかった頃はせがまれて一緒に登っていたが、少なくとも三年は登っていない気がする。
一番低いところの枝に向かって飛び上がりながら枝を掴み、幹を蹴って器用に枝の上に乗り上げた。下から「おお!」と感心する声がすると、まだまだこのくらいで驚かれてはと得意になってすぐ次の枝に移ろうとした。が、上に行くほど細くなる枝はトキの体重を支え切れずあっさり根本から折れてしまった。
「いっ……てぇ!!」
尻もちをつくのは免れたが、両足でまともに着地してしまいジーンと痺れが足から頭に向かって突き抜けていく。
「お主は体格が良いからなぁ」
「アルファなんでねっ!」
まさか落ちるとは思っていなかったので恥ずかしさのあまり大声で言い返すと、ヒヨクは「ん」と言いながら荷物を寄越してくる。王子が交代しろとの仰せである。
「ていうか、足怪我してたんじゃねぇのかよ?」
「もう治った」
「本当か?」
「お主こそ、手を怪我しておろう」
「これは自分でやったんだし。頼むから、あんたは落ちてくれるなよ?」
「そのようなドジは踏まぬ」
「どうだか」
トキの登り方を真似してヒヨクは案外器用にするすると木を登っていく。トキと比べて、三つか四つくらいの子供一人分ほど体が軽そうなヒヨクはとても身軽で、もう少しで子猫が立ち往生している枝まで届くというところまであっという間に到達してしまった。しかし猫が下りられなくなっているという事はつまり、近場に足場となる枝が無い事を示している訳で。
「……届かんな」
ヒヨクが左手で枝を掴みながら目いっぱい右腕を伸ばすが指先が辛うじて猫の足元に掠める程度でとても猫を抱きかかえるには至らない。
「無理すんな。どうしても気になるってんなら都に戻って警邏隊に言えば、梯子を貸してもらえるだろうし」
「その間に落ちたら、どうするっ」
ぐ、と筋を痛めてしまいそうなほど賢明に体を伸ばしたがやはり指先が木の枝をくすぐって終わる。ヒヨクが悩んだのは一瞬だった。
「おいトキ。落ちるかも知れん。避けていろ」
「は? 馬鹿言えって!!」
言うが早いかヒヨクは跨いでいた枝の上に恐る恐る立ち上がり、左手さえも枝から離してしまう。細く脆い枝はヒヨクの動きに合わせて不安定に揺れており、ヒヨクの足も小刻みに震えている。
「命知らずかよ……!!」
荷物を地面に置いて、ヒヨクの立っている真下に行って構える。
「馬鹿者、そこに居てはお主が危ない」
「いいから! よそ見すんな!」
トキに気を取られていたヒヨクの視線はすぐに猫へと戻る。表情を引き締め一歩、二歩、そして三歩と進んだところで漸く猫に手が届いた。すっかり怯えきった猫は存外大人しくヒヨクの腕に抱かれてくれたが、その瞬間バキッという危険極まりない音がして、ヒヨクの立っていた枝が今にも半ばから折れそうになる。
「ヒヨク! 俺が受け止める!」
別の枝に移れないかと視線を彷徨わせていたヒヨクの薄紅の目がトキを捉える。そこからのヒヨクの行動はあまりにも思い切りが良かった。
ヒヨクはまず抱えていた子猫をトキに向かって放り投げた。それを難なく受け止めて地面に下ろすと子猫はさっと逃げていき、視線を木に戻すともうヒヨクの体は枝と共に落ちる寸前だった。間に合わないかに思えたが、ヒヨクは落ちながらも他の枝を掴んで落ちる勢いを殺しながら最後にトキの上に降ってきた。ヒヨクの体をしっかり受け止めて、そのまま後ろに倒れ込むと自分で噛んだ左手の傷が僅かに痛んだ。尻や腰などあちこち打ち付けたが、お互い大きな怪我はなく済んだ。
安堵の溜め息を長めに吐いた後、ヒヨクに向かって怒鳴り付ける。
「あの高さでも人は死ぬんだぞ!!」
トキの腰の上に跨った状態で、ヒヨクはびくりと肩を跳ねさせた。薄紅の瞳を怯えたように大きく見開き、トキの胸についた手は小さく震えている。その時漸く彼がオメガだった事を思い出して、トキの怒鳴り声に固まってしまったヒヨクの体を妹たちにするように抱き寄せて背中を優しく叩いた。
「……悪かった。あんたオメガだったな」
オメガは普通、あまり積極的な性格をしていない。オメガといえば金髪の烏の姫様がそうだったように体格はあまり大きく育つ事がなく、力も弱く競ったり争ったりという事が苦手で、大抵は臆病だ。そういう一般的なオメガと比較してヒヨクの行動があまりにオメガらしくなく、つい彼のバースが頭から抜けてしまっていた。未だ発情期にあるらしい彼の体からは耐えず甘い匂いが漂ってくる。
「……と、降りてくれ。これ以上は反応しそうだ」
そんな場面ではないと頭では理解していても体というやつは正直だ。オメガの発情期の匂いに中てられて腰をぶつけた痛みも忘れて緩く兆し始めている感覚があった。
「す、すまなかった」
すっかり気落ちした様子で大人しくトキの上から降りていき、ヒヨクは半分ぼうっとした様子でトキが放り出していた荷物を拾いに向かう。足取りは覚束なく、まるで突然熱でも出したかのように見えて、トキは立ち上がってヒヨクの腕を引いた。
「まさかまた怪我を隠してるんじゃあ……」
トキに引っ張られるまま振り返ったヒヨクは何故か顔を真っ赤にしていた。
「顔、あっか……」
指摘されて初めて気付いたらしくヒヨクは慌てて手の甲を口元に当てて隠そうとする。が、目元の辺りまで染まっているので全く隠せていない。
「き、気にするな」
ふとヒヨクの腰が引けている事に気付いて視線がそちらに吸い寄せられると、袴を押し上げ垂れた袍の前を膨らませているものが視界に飛び込んできてヒヨクの顔が赤い理由に察しがついた。
「……休憩小屋に行くか」
「あ、ああ」
それぞれの荷物を拾って二人は黙って歩き始める。
休憩小屋とは旅人が自由に利用して良い掘っ立て小屋の事だ。風雨が凌げるというだけで他に何があるでもない。暖房器具やちょっとした調理器具が備えつけられていた事もあったようだが見張りが居る訳でもないのですぐに盗まれてしまった。
トキは休憩小屋に到着すると鍋も何も無い埃まみれの竈に途中で拾ってきた枯れ木や枯れ葉を入れた。夜になったら火を付けて暖房にするためだ。
食事は次の邑までさほど距離がないので抜いても何とかなるが、この休憩小屋の近くには清流の小川が流れており、乾燥させた餅をふやかして食べる事が出来るので少し早めの夕食をとる事にした。
何でも好きなものを食べられた王宮の食事が既に恋しい。ほんのいっときの贅沢はまるで毒のようだ。食事の種類の豊富さ、布団の柔らかさ、衛生面にも気を配られており、あの中で生まれ育ったらとても外の世界では生きていけないと思うほどだった。
「ヒヨクは何で旅に出るんだ? しかも王宮の兵士とかじゃなくて、俺みたいなの連れてさ」
当然の疑問をやっと落ち着いて訊ねる事が出来た。シカは何も言わず何も聞かずヒヨクを連れていってほしそうにしていたが、脅してまでトキの予定を変えさせたのだから旅の目的くらい知る権利はあるはずだ。
ヒヨクは薄く切った餅を砕いたものを水で戻しただけのろくに味のしないそれを苦労して食べながら、思ったよりあっさり理由を話した。
「尋ね人を探しておるのだ」
「尋ね人? 昔の知り合いか何かか?」
「そうだ」
「王子自らわざわざ?」
「王子だからこそだ」
最後の一口を目元を引きつらせながら完食し、ヒヨクは続ける。
「無論、事情を知る者に代わりに探させる事は出来る。だが、どうしても俺自ら探したくてわがままを押し通してきたのだ。幸いよく似た顔の王子がもう一人おるしの」
「ふーん?」
次の村で携行食を買い足すつもりでもう一つ餅を取って砕き始めると、ヒヨクが虫でも見たような顔でトキの手元を見る。よっぽど不味かったらしい。
「尋ね人の当てはあんの?」
「いや……ない。以前は北の蛟という邑に住んでいたが、先の雪崩れで行方知れずになったままだ」
パキ、と薄い餅の割れる音が、音を吸う物が少ないせいで屋内に反響する。
「雪崩れに巻き込まれたのか?」
だとしたら恐らく助からなかったろう。獬に回って来た話によれば雪の下敷きになった家は全壊、春の融雪時期を待ってから遺体の捜索がされたようだが、どうやら狼や猪のような屍肉食の動物に綺麗さっぱり片付けられてしまい一人も見つからなかったそうだ。
「それが、助かった者たちに聞いても誰も分からないと答えた。先生は少し変わった人だったから邑の者から敬遠されていたのかも知れん」
「先生って?」
ヒヨクは自分で担いできた籠の中から門衛の目を誤魔化すのに使った煙管を取り出すと、煙草の葉の代わりに緑色の奇妙な色をした粉を詰め始める。
「医者だ。ヒオの事を診ていた人で、あの人にしか分からない薬の調合があるのだ」
火皿に粉を詰め終えたヒヨクは煙管を持ったまま一切の動きを停止した。彼が何に気付いたか察して火種を出してやる。
「それは?」
「火折子って言うらしいけど俺達は火種って呼んでる。そういや、かせつこ、ってセイシンの言葉で無理矢理呼んでる奴もいたなぁ。ってこれ、都で流行った後に邑にも入ってきたって聞いたから、あんたも知ってるんじゃないか?」
細い竹筒の中に種火を残しておく携帯用の物で、蓋を開けて火が燻っている芯に向かって息を吹きかけると、酸素を得た炎が一気に燃え上がる仕組みだ。
煙管というからには火が必要なのだろうと思って出してみたが、貸せとも言わずヒヨクは目を輝かせて火折子を見つめている。その目は玩具を前にした小さな子供のように純粋だ。ありふれた火起こしの道具だが、火折子を使った事が無いのだろうか。
「使うか?」
「ああ」
受け取ったヒヨクは蓋を閉じたままの火折子を今か今かと期待しながら煙管の火皿にあてがっている。残念だがそれでは火はつかない。
「それ、蓋を開けて」
「ふむ」
「焦げてるところあるだろ? そこに強く息を吹きかける」
一度目は遠慮したのか火がつかず、二度目は思い切って胸に溜めた息を一気に吹きかけて着火に成功する。
「おお!!」
ボッと音を立てて火が灯り、ヒヨクの赤い瞳の中で橙に光る炎がゆらゆらと踊る。
誰でも使っているような日用品程度で感じ入った様子のヒヨクは、しばらく火を眺めてから火皿の謎の粉に火を移した。蓋を閉じて戻ってきた火折子はさっきよりも筒の部分が熱くなっていた。
まぁ、宮中じゃあ寒いと一言言えば、侍女が火鉢に火を入れてくれるだろうし。
なんて思って煙管を吸い始めたヒヨクを微笑ましい気分で見つめる。つんけんしていて他人を寄せ付けない奴かと思ったが存外素直だ。トキと同い年だが目が大きく幼顔のせいで煙管があまり似合っていない。
「な、何だ。人の顔を見てにやけるな」
「いやぁ? んな事よりそれ、煙草じゃないよな。何吸ってるんだ?」
「薬だ。オメガの発情期の症状を軽くしてくれる。先生の故郷の辺りに自生していたものを少しだけ王宮の庭でも育てておるのだ」
「発情期の症状……」
とどのつまり性衝動だ。ヒヨクに聞こえない声で呟いて勝手に顔が熱くなる。
「男のオメガって一発抜いてすっきり、とかならないんだなぁ」
「んっ!? ゴホッ、ゴフッ」
「おいおい、本当にその薬大丈夫か?」
煙を吐き出し激しく咽せるヒヨクの背中を擦ってやると、涙を目の縁に滲ませて「もういい」と言う。そのどこか扇情的な光景にぐん、と腰に熱が集まるのを感じて慌ててヒヨクから目を逸らす。
こんな状態で一晩ここに二人きり。そう思うと一気に期待、否、不安が募り始める。
「よくもまぁオメガを番でもないアルファなんかに……」
「別に、番われても構わんのだろう。オメガの王子は玉座に相応しくないという事だ」
「それシカが言ったのか?」
「違う。あれはそのような事を考える男ではない」
ではどのような事を考える男なのだろう。うんちくを語るのが好きで些か胡散臭い感じのする……。
「そういやシカってオメガじゃないだろ?」
思えば一度もあの男からオメガらしい匂いを感じた事が無かった事に今更思い至る。候補戦の間中あれだけ一緒にいたにもかかわらずだ。「シカはベータだ」と答えが返ってきて納得する。
「それで、あんたはどうなんだ?」
「何だ? どういう意味だ?」
改めてヒヨクがゆっくりと煙管を吸い始めると、彼の寝所に通された先で同じ匂いを嗅いだ記憶が蘇ってくる。煙たいほど焚かれていた複雑な香りのする伽羅のお香には、この煙管からする匂いが混じっていたようだ。あれはヒヨク自身の匂いを誤魔化すためと彼の性衝動を抑えるための二つの意味があったのだ。
「強引に番われたっていいって思ってんのかって聞いてんだよ」
「俺は……」
あの日、候補戦最後の日、予想外の事だったせいかアルファとしての欲求の抑制を完全に失ったトキから自分のうなじを守るように手で覆っていたヒヨク。あの姿を覚えていれば答えは聞くまでもないはずが、ヒヨクは「別に」と投げやりに言う。
「望んだ相手と番える訳でもなし、俺は誰に噛まれようが構わぬ」
自分の事を大事にしないような言い方にムッとする。「自分なんて」という言葉がトキは好きではない。冗談では言ったとしても心の底から自分を卑下した事など一度もない。何故なら自分を卑下する事は自分を慕ってくれる人や大切に思ってくれる人まで下げる事になってしまうからだ。
「嘘吐けって。そういう言葉が出るって事は、本当はちゃんと望んだ人と番になりたいって思ってるって事だろ? 素直な方が可愛いぜ、ヒヨク様」
ヒヨクはぱちぱち長い睫毛をしばたたかせた後、「うるさい」と蚊の鳴くような声で言ってトキから顔を逸らしてしまった。余計な事を言ったかと思ったが、単純に照れているだけのようだ。すぐに赤くなりやすい性質のようで、耳やうなじが薄っすら染まっているのを見つけて、トキはいよいよ立ち上がって無意味に屈伸などをして気を逸らした。
今から夜が来るのが楽しみ、否、恐ろしい。
「何だ猫を見てたのか」
「猫……」
ヒヨクはぼうっとしたまま呟いて、どうにか猫を詳しく見ようと目を凝らす。その反応は何だか奇妙だ。
「まさか王子様は猫を初めてみるのか?」
「む、馬鹿にしたか? それと王子はよせ。俺の事はヒヨクと呼ぶが良い。俺が王族だと勘付かれては困るからな」
だとしたら、まずその独特な話し方をやめるところから始める必要がありそうだが、お忍び中でも口調が変わらないという事は変えられないのか必要性に気付いていないのだろう。
「なぁ、行こうぜ。日が暮れる前に休憩小屋まで辿り着かないと後が大変だぞ」
「だが、あの猫は自分で降りられなくなっているのではないか?」
「まさか。猫に限ってそんな訳ないだろ」
とは言うもののどうにも気になってヒヨクと二人で横並びになってしばらく猫を見ていた。思ったより高いところに居るので分かりにくいが恐らくまだ子猫だ。細い枝の上で四肢を突っ張り、体を前後に揺らしては諦めるのを繰り返している。
「……やっぱ降りられないのかも」
「言った通りではないか。おいトキ、これを持っていろ」
言うなりヒヨクは背中に背負っていた籐で編んだ籠をトキに持たせる。見た目以上にずっしりと重たい籠に軽くよろけながら受け取って、一体何が入っているんだと思う暇もなくヒヨクの行動にトキは目を剥いた。
「登るつもりか!?」
「他に方法が無い」
「待てって、お前うちの母さんみたいな奴だな!」
「お主の母君の事は知らぬが、今にも落ちてきそうな幼気な猫を前にしてお主の母君が木登りをするのだとしたら、俺は母君を称賛する」
非難したつもりが屁理屈で返されて、チッと短く舌を鳴らしてヒヨクの襟を掴んで木から遠ざける。
「何をする?」
「俺が登るよ。田舎育ちなんでね、木登りなら子供ん時に散々やった」
籠と自分の荷をヒヨクに預けて袖を捲る。木登りなんていつぶりだろうか。妹たちがもう少し小さかった頃はせがまれて一緒に登っていたが、少なくとも三年は登っていない気がする。
一番低いところの枝に向かって飛び上がりながら枝を掴み、幹を蹴って器用に枝の上に乗り上げた。下から「おお!」と感心する声がすると、まだまだこのくらいで驚かれてはと得意になってすぐ次の枝に移ろうとした。が、上に行くほど細くなる枝はトキの体重を支え切れずあっさり根本から折れてしまった。
「いっ……てぇ!!」
尻もちをつくのは免れたが、両足でまともに着地してしまいジーンと痺れが足から頭に向かって突き抜けていく。
「お主は体格が良いからなぁ」
「アルファなんでねっ!」
まさか落ちるとは思っていなかったので恥ずかしさのあまり大声で言い返すと、ヒヨクは「ん」と言いながら荷物を寄越してくる。王子が交代しろとの仰せである。
「ていうか、足怪我してたんじゃねぇのかよ?」
「もう治った」
「本当か?」
「お主こそ、手を怪我しておろう」
「これは自分でやったんだし。頼むから、あんたは落ちてくれるなよ?」
「そのようなドジは踏まぬ」
「どうだか」
トキの登り方を真似してヒヨクは案外器用にするすると木を登っていく。トキと比べて、三つか四つくらいの子供一人分ほど体が軽そうなヒヨクはとても身軽で、もう少しで子猫が立ち往生している枝まで届くというところまであっという間に到達してしまった。しかし猫が下りられなくなっているという事はつまり、近場に足場となる枝が無い事を示している訳で。
「……届かんな」
ヒヨクが左手で枝を掴みながら目いっぱい右腕を伸ばすが指先が辛うじて猫の足元に掠める程度でとても猫を抱きかかえるには至らない。
「無理すんな。どうしても気になるってんなら都に戻って警邏隊に言えば、梯子を貸してもらえるだろうし」
「その間に落ちたら、どうするっ」
ぐ、と筋を痛めてしまいそうなほど賢明に体を伸ばしたがやはり指先が木の枝をくすぐって終わる。ヒヨクが悩んだのは一瞬だった。
「おいトキ。落ちるかも知れん。避けていろ」
「は? 馬鹿言えって!!」
言うが早いかヒヨクは跨いでいた枝の上に恐る恐る立ち上がり、左手さえも枝から離してしまう。細く脆い枝はヒヨクの動きに合わせて不安定に揺れており、ヒヨクの足も小刻みに震えている。
「命知らずかよ……!!」
荷物を地面に置いて、ヒヨクの立っている真下に行って構える。
「馬鹿者、そこに居てはお主が危ない」
「いいから! よそ見すんな!」
トキに気を取られていたヒヨクの視線はすぐに猫へと戻る。表情を引き締め一歩、二歩、そして三歩と進んだところで漸く猫に手が届いた。すっかり怯えきった猫は存外大人しくヒヨクの腕に抱かれてくれたが、その瞬間バキッという危険極まりない音がして、ヒヨクの立っていた枝が今にも半ばから折れそうになる。
「ヒヨク! 俺が受け止める!」
別の枝に移れないかと視線を彷徨わせていたヒヨクの薄紅の目がトキを捉える。そこからのヒヨクの行動はあまりにも思い切りが良かった。
ヒヨクはまず抱えていた子猫をトキに向かって放り投げた。それを難なく受け止めて地面に下ろすと子猫はさっと逃げていき、視線を木に戻すともうヒヨクの体は枝と共に落ちる寸前だった。間に合わないかに思えたが、ヒヨクは落ちながらも他の枝を掴んで落ちる勢いを殺しながら最後にトキの上に降ってきた。ヒヨクの体をしっかり受け止めて、そのまま後ろに倒れ込むと自分で噛んだ左手の傷が僅かに痛んだ。尻や腰などあちこち打ち付けたが、お互い大きな怪我はなく済んだ。
安堵の溜め息を長めに吐いた後、ヒヨクに向かって怒鳴り付ける。
「あの高さでも人は死ぬんだぞ!!」
トキの腰の上に跨った状態で、ヒヨクはびくりと肩を跳ねさせた。薄紅の瞳を怯えたように大きく見開き、トキの胸についた手は小さく震えている。その時漸く彼がオメガだった事を思い出して、トキの怒鳴り声に固まってしまったヒヨクの体を妹たちにするように抱き寄せて背中を優しく叩いた。
「……悪かった。あんたオメガだったな」
オメガは普通、あまり積極的な性格をしていない。オメガといえば金髪の烏の姫様がそうだったように体格はあまり大きく育つ事がなく、力も弱く競ったり争ったりという事が苦手で、大抵は臆病だ。そういう一般的なオメガと比較してヒヨクの行動があまりにオメガらしくなく、つい彼のバースが頭から抜けてしまっていた。未だ発情期にあるらしい彼の体からは耐えず甘い匂いが漂ってくる。
「……と、降りてくれ。これ以上は反応しそうだ」
そんな場面ではないと頭では理解していても体というやつは正直だ。オメガの発情期の匂いに中てられて腰をぶつけた痛みも忘れて緩く兆し始めている感覚があった。
「す、すまなかった」
すっかり気落ちした様子で大人しくトキの上から降りていき、ヒヨクは半分ぼうっとした様子でトキが放り出していた荷物を拾いに向かう。足取りは覚束なく、まるで突然熱でも出したかのように見えて、トキは立ち上がってヒヨクの腕を引いた。
「まさかまた怪我を隠してるんじゃあ……」
トキに引っ張られるまま振り返ったヒヨクは何故か顔を真っ赤にしていた。
「顔、あっか……」
指摘されて初めて気付いたらしくヒヨクは慌てて手の甲を口元に当てて隠そうとする。が、目元の辺りまで染まっているので全く隠せていない。
「き、気にするな」
ふとヒヨクの腰が引けている事に気付いて視線がそちらに吸い寄せられると、袴を押し上げ垂れた袍の前を膨らませているものが視界に飛び込んできてヒヨクの顔が赤い理由に察しがついた。
「……休憩小屋に行くか」
「あ、ああ」
それぞれの荷物を拾って二人は黙って歩き始める。
休憩小屋とは旅人が自由に利用して良い掘っ立て小屋の事だ。風雨が凌げるというだけで他に何があるでもない。暖房器具やちょっとした調理器具が備えつけられていた事もあったようだが見張りが居る訳でもないのですぐに盗まれてしまった。
トキは休憩小屋に到着すると鍋も何も無い埃まみれの竈に途中で拾ってきた枯れ木や枯れ葉を入れた。夜になったら火を付けて暖房にするためだ。
食事は次の邑までさほど距離がないので抜いても何とかなるが、この休憩小屋の近くには清流の小川が流れており、乾燥させた餅をふやかして食べる事が出来るので少し早めの夕食をとる事にした。
何でも好きなものを食べられた王宮の食事が既に恋しい。ほんのいっときの贅沢はまるで毒のようだ。食事の種類の豊富さ、布団の柔らかさ、衛生面にも気を配られており、あの中で生まれ育ったらとても外の世界では生きていけないと思うほどだった。
「ヒヨクは何で旅に出るんだ? しかも王宮の兵士とかじゃなくて、俺みたいなの連れてさ」
当然の疑問をやっと落ち着いて訊ねる事が出来た。シカは何も言わず何も聞かずヒヨクを連れていってほしそうにしていたが、脅してまでトキの予定を変えさせたのだから旅の目的くらい知る権利はあるはずだ。
ヒヨクは薄く切った餅を砕いたものを水で戻しただけのろくに味のしないそれを苦労して食べながら、思ったよりあっさり理由を話した。
「尋ね人を探しておるのだ」
「尋ね人? 昔の知り合いか何かか?」
「そうだ」
「王子自らわざわざ?」
「王子だからこそだ」
最後の一口を目元を引きつらせながら完食し、ヒヨクは続ける。
「無論、事情を知る者に代わりに探させる事は出来る。だが、どうしても俺自ら探したくてわがままを押し通してきたのだ。幸いよく似た顔の王子がもう一人おるしの」
「ふーん?」
次の村で携行食を買い足すつもりでもう一つ餅を取って砕き始めると、ヒヨクが虫でも見たような顔でトキの手元を見る。よっぽど不味かったらしい。
「尋ね人の当てはあんの?」
「いや……ない。以前は北の蛟という邑に住んでいたが、先の雪崩れで行方知れずになったままだ」
パキ、と薄い餅の割れる音が、音を吸う物が少ないせいで屋内に反響する。
「雪崩れに巻き込まれたのか?」
だとしたら恐らく助からなかったろう。獬に回って来た話によれば雪の下敷きになった家は全壊、春の融雪時期を待ってから遺体の捜索がされたようだが、どうやら狼や猪のような屍肉食の動物に綺麗さっぱり片付けられてしまい一人も見つからなかったそうだ。
「それが、助かった者たちに聞いても誰も分からないと答えた。先生は少し変わった人だったから邑の者から敬遠されていたのかも知れん」
「先生って?」
ヒヨクは自分で担いできた籠の中から門衛の目を誤魔化すのに使った煙管を取り出すと、煙草の葉の代わりに緑色の奇妙な色をした粉を詰め始める。
「医者だ。ヒオの事を診ていた人で、あの人にしか分からない薬の調合があるのだ」
火皿に粉を詰め終えたヒヨクは煙管を持ったまま一切の動きを停止した。彼が何に気付いたか察して火種を出してやる。
「それは?」
「火折子って言うらしいけど俺達は火種って呼んでる。そういや、かせつこ、ってセイシンの言葉で無理矢理呼んでる奴もいたなぁ。ってこれ、都で流行った後に邑にも入ってきたって聞いたから、あんたも知ってるんじゃないか?」
細い竹筒の中に種火を残しておく携帯用の物で、蓋を開けて火が燻っている芯に向かって息を吹きかけると、酸素を得た炎が一気に燃え上がる仕組みだ。
煙管というからには火が必要なのだろうと思って出してみたが、貸せとも言わずヒヨクは目を輝かせて火折子を見つめている。その目は玩具を前にした小さな子供のように純粋だ。ありふれた火起こしの道具だが、火折子を使った事が無いのだろうか。
「使うか?」
「ああ」
受け取ったヒヨクは蓋を閉じたままの火折子を今か今かと期待しながら煙管の火皿にあてがっている。残念だがそれでは火はつかない。
「それ、蓋を開けて」
「ふむ」
「焦げてるところあるだろ? そこに強く息を吹きかける」
一度目は遠慮したのか火がつかず、二度目は思い切って胸に溜めた息を一気に吹きかけて着火に成功する。
「おお!!」
ボッと音を立てて火が灯り、ヒヨクの赤い瞳の中で橙に光る炎がゆらゆらと踊る。
誰でも使っているような日用品程度で感じ入った様子のヒヨクは、しばらく火を眺めてから火皿の謎の粉に火を移した。蓋を閉じて戻ってきた火折子はさっきよりも筒の部分が熱くなっていた。
まぁ、宮中じゃあ寒いと一言言えば、侍女が火鉢に火を入れてくれるだろうし。
なんて思って煙管を吸い始めたヒヨクを微笑ましい気分で見つめる。つんけんしていて他人を寄せ付けない奴かと思ったが存外素直だ。トキと同い年だが目が大きく幼顔のせいで煙管があまり似合っていない。
「な、何だ。人の顔を見てにやけるな」
「いやぁ? んな事よりそれ、煙草じゃないよな。何吸ってるんだ?」
「薬だ。オメガの発情期の症状を軽くしてくれる。先生の故郷の辺りに自生していたものを少しだけ王宮の庭でも育てておるのだ」
「発情期の症状……」
とどのつまり性衝動だ。ヒヨクに聞こえない声で呟いて勝手に顔が熱くなる。
「男のオメガって一発抜いてすっきり、とかならないんだなぁ」
「んっ!? ゴホッ、ゴフッ」
「おいおい、本当にその薬大丈夫か?」
煙を吐き出し激しく咽せるヒヨクの背中を擦ってやると、涙を目の縁に滲ませて「もういい」と言う。そのどこか扇情的な光景にぐん、と腰に熱が集まるのを感じて慌ててヒヨクから目を逸らす。
こんな状態で一晩ここに二人きり。そう思うと一気に期待、否、不安が募り始める。
「よくもまぁオメガを番でもないアルファなんかに……」
「別に、番われても構わんのだろう。オメガの王子は玉座に相応しくないという事だ」
「それシカが言ったのか?」
「違う。あれはそのような事を考える男ではない」
ではどのような事を考える男なのだろう。うんちくを語るのが好きで些か胡散臭い感じのする……。
「そういやシカってオメガじゃないだろ?」
思えば一度もあの男からオメガらしい匂いを感じた事が無かった事に今更思い至る。候補戦の間中あれだけ一緒にいたにもかかわらずだ。「シカはベータだ」と答えが返ってきて納得する。
「それで、あんたはどうなんだ?」
「何だ? どういう意味だ?」
改めてヒヨクがゆっくりと煙管を吸い始めると、彼の寝所に通された先で同じ匂いを嗅いだ記憶が蘇ってくる。煙たいほど焚かれていた複雑な香りのする伽羅のお香には、この煙管からする匂いが混じっていたようだ。あれはヒヨク自身の匂いを誤魔化すためと彼の性衝動を抑えるための二つの意味があったのだ。
「強引に番われたっていいって思ってんのかって聞いてんだよ」
「俺は……」
あの日、候補戦最後の日、予想外の事だったせいかアルファとしての欲求の抑制を完全に失ったトキから自分のうなじを守るように手で覆っていたヒヨク。あの姿を覚えていれば答えは聞くまでもないはずが、ヒヨクは「別に」と投げやりに言う。
「望んだ相手と番える訳でもなし、俺は誰に噛まれようが構わぬ」
自分の事を大事にしないような言い方にムッとする。「自分なんて」という言葉がトキは好きではない。冗談では言ったとしても心の底から自分を卑下した事など一度もない。何故なら自分を卑下する事は自分を慕ってくれる人や大切に思ってくれる人まで下げる事になってしまうからだ。
「嘘吐けって。そういう言葉が出るって事は、本当はちゃんと望んだ人と番になりたいって思ってるって事だろ? 素直な方が可愛いぜ、ヒヨク様」
ヒヨクはぱちぱち長い睫毛をしばたたかせた後、「うるさい」と蚊の鳴くような声で言ってトキから顔を逸らしてしまった。余計な事を言ったかと思ったが、単純に照れているだけのようだ。すぐに赤くなりやすい性質のようで、耳やうなじが薄っすら染まっているのを見つけて、トキはいよいよ立ち上がって無意味に屈伸などをして気を逸らした。
今から夜が来るのが楽しみ、否、恐ろしい。
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